100話 ルシ=ファルの憂鬱とうなぎの鳴き声
〜ルシ=ファル@第九圏のその下〜
・・・・相変わらず地べたというものは冷たいな・・・・
しかし聞こえる・・・・
地響きとともに・・・・
マ=モンが、明確に反旗を翻したか・・・・
時間の問題ではあったが、些か性急だな・・・・
モレ・クをお目付役にしたが、どうやら裏目に出たらしい・・・・
まあ、セイ・ゼブルの画策もあったのだろう・・・・
問題は、セイ・トンが行方不明だ、ということだ・・・・
ラグナロクが興り、それと同時にその気配が消えた・・・・
あのセイ・トンが呑まれる、ということがあるだろうか・・・・
マイ・テンの(劣化)コピーにして、無類の不滅性を有するバケモノ・・・・
あれは、勝手にゲエンナ・ハーデースへと昇華していく予定であったのだが・・・・
他方で、ジューダスに、変化はない・・・・
しかも、ゲエンナ・ハーデースは顕現してない・・・・
ということは、イザヤでもアスモデウスでもないものに呑まれたことになる・・・・
これがマ=モンだとすると、些か厄介だな・・・・・
セイ・ゼブルが興したい暴食は、バ・アルの抵抗で、まだ時間がかかるようだしな・・・・・
マ=モンのねらいは、新世界の主であろう・・・・・
そのために、まずはジューダスを呑み込みたいといったところか・・・・・
さて・・・・・どう邪魔するか・・・・・
やはり、またメフォストか・・・・・
〜ヨシュア〜
うう〜〜
痛い・・
腕がいてぇ〜〜
生えてきた左腕が痛いのだ・・
シモン曰く・・・・
「主様、これは拒絶反応ですな。シンセシスの後遺症です。逆に言えば、パルケ・ルシスに芽生えた魂が融合を拒んでいるということで、ここを乗り越えれば人間と金属のキマイラになれますぞ!」
おいおい
勝手に人をモンスターにするんじゃないよ。
だが、ともあれ痛いのは嫌だ。
「そうなりますと、やはり魂の昇華以外に方法が考えられませんな(本当はこれを外せばいいのですが、それはもったないので・・・)。どうですか? 一丁、バシッと燃やしますか?」
よだれを垂らさんばかりにシモンが興奮している。
シモンはよほど、俺っちのキャンプファイヤーがお好みらしい。
まあ、あんなもんでこの痛いのが治るのなら安いものだ。
では・・・
「ちょ、ちょっとお待ちください、主様。紐帯はいかがするおつもりで?」
チュータイ?
「パルケ・ルシスほどの希少な魂を昇華させようというのです、そんじょそこらの小悪魔では話にならんでしょう。」
確かに・・・・
俺は、ジロリとアス・デウスとアバ・トンをみた。
この2人は、かなり消耗しているらしく、カルミラやシモンが治療している。
特にアバ・トンは昏睡から覚めない。
俺っちが飛ばしたガンにカルミラが気がついた。
「ヨシュア様。この2人にはお役目があります。ひとつは、あのサマ・エルの回収です。そして、ザラムの強者、ロトの征伐ですわ。ですので、それが完了するまではどうかご容赦をお願い致します。」
・・・・・その後ならいいの?
しかし、そんなに我慢もできない。
んー、そうなると…
とにかくまあ、思いっきり燃やしてみて、都合いいのが都合よく燃えれば、それでいいのではないか?(知らんけど)
昔の人は言ったね。成るように成る、と。
つか、ゴチャゴチャ悩んだところで、どうにもならん。
とにかく、ズキズキと痛いのだ。
我慢ならん!
俺はできるだけ荘厳な雰囲気を醸し出し、はっきりと言った。
「カルミラ・・・シモン・・・我に策あり(本当は何もない)」
とりあえず、これ以上色々言わせないように、キリッとした表情を作り、ズキズキと痛む左腕を掲げた。
「焔よ! パルケ・ルシスと我は一つとならん!!!」
こーゆーのはさ、勢いなわけ。
俺っちのエートスとやらは空前絶後だって、シモンも言ってたじゃん?
疼痛を吹き飛ばす意味でも、躊躇なし! 全力で! 出すぜ?
ヒュルヒュルヒュル・・・・・・・
Gyaギャギャギャオオおお〜ー〜ー〜ーン!!!!!!!
Duドリュリュリュリュリュー〜ー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
・・・・・・・
マジか。
砂漠の空に浮かぶ綿菓子のカスみたいな雲が、俺っちの放った竜巻焔に巻き込まれて消えてなくってしまった。
この立ち姿・・・・ラオウみたいだな。
もはや、気象とも呼べる俺の焔。
見た感じはスクリューのごとく、うねりまくる巨大な青いソフトクリームであったが・・・・・
・・・・・ゴゴゴゴゴ・・・・・
嫌な予感がする。
明らかに何かが迫っている。
地響きが大きい。
かなり近い。
いや、真下だ!
ズゴーン!!
あ、うなぎ。
砂漠のど真ん中に巨大うなぎが突如首をのぞかせた。
何だこいつ、首しか出していないくせに4〜5mはあるぞ?
俺は、シモンを見た。
俺たちの目は、ガッと、バッチリ、あった。
俺たちは今同じ気持ち(のはず)だ!
そう、今日は蒲焼きだね!!
しかし、シモンは引き続き緊張の面持ちで、俺を見つめる。
多分、白ワインか赤ワインかの判断に迷っているのだろう。
分かるぜ、難しいよな。
ふ
いいかい、シモンよ。
白焼きなら白ワイン。
甘ダレの蒲焼きなら赤ワインがいいだろう。
俺の見立てででは、こいつはかなり脂がのっている。
つまり白焼きは良くなさそうだ。匂いがきつくなるからな。
したがって、どっぷりとあま〜いタレまみれにして、焦げるくらいに焼いてやる。
つまりだ・・・・赤 だな。
俺は、左腕を突き出した。
なぜかって?
右手は俺のだからだ。
はぐりん、悪いが任せるぜ?
左手が液状に溶け、うなぎにかかる。
!
え?
いかん!
これはまずいぞ。
想定していなかった。
くそっ!! カルミラに任せるべきだったか・・・
・・・・うなぎが苦しんでいる。
そりゃそうだろう。
ああ〜〜やっちまった〜〜
俺は、再びシモンを見る。
シモンは、唖然とした表情でうなぎを見ている・・・
そうだろうそうだろう・・・すまん、シモンよ
俺、やっちまったな・・・ごめん
あんなに水銀かけたら、もう食えないよな。
俺、なんか違う攻撃が出るかと思ったのよ。
ファイヤー系のさ。ほら、水銀とファイヤーの混合アタック的な?
まさかの毒液とは・・・・
うなぎが暴れまわり、そこらの砂がうねる流砂のような状況になった。
「ヨシュア様! ひとまず退避をお願い致します。」
カルミラが俺を抱え、アバ・トンもついでに抱える。
シモンは、アス・デウスを抱えた。
俺の左手は、手首から先がない状況である。
・・・・これ、戻るのかな?
G、Gいギギギギギギギギギーー〜〜〜〜!!!
お、うなぎが鳴いた。
ザップ〜〜ん
巨大な砂の波が立ち上がり、巨大うなぎ君は絶賛はぐりん(俺の腕の支店)に消化されている。
あーあ。少し味見をしたかったが、水銀中毒は悲惨である。モアブで散々見た。
しかたがない、これを食うのはやめておこう。
「カルミラ・・・終わったようだな?」
いわゆるフラグを立ててみた。
うまくいけばもう1匹出るかもしれないからな。
・・・・・・
ピチャピチャと、はぐりんがウナギを溶かしている。
・・・・どうやら、お代わりはないようだ・・・・ちっ
「・・・・ヨシュア様。恐ろしいことです・・・・」
?
この恐ろしい人が恐ろしいという。
何が?
「あ、あれは、4大悪魔王の一角、セイ・トンです・・・・」
セイ・トン
ふ〜ん。
うなぎの悪魔ね〜
今更な〜
悪魔的なうまさだ〜〜(藤原)、みたいな感じ?
もしくは、悪魔的なお値段だ〜〜w、とか?
俺が、この緊張した雰囲気に耐えられず、ひとり内心でボケていると、シモンが青くなりながら解説を始めた。
「あ、主様。謎多きセイ・トンは、肉体を持つ唯一の悪魔です。肉体を持つがゆえに色欲の悪魔王と呼称されております。し、しかもその不滅性は、ウラノスの外側にあるとされております。しかしその代わり、エートスのようなものはありません。目撃例は少なく、ただ、赴くままに人であれ、悪魔であれ、天使でさえも喰い荒らしてきたとのことで・・・・。 その貪欲なまでの食欲と盲目なまでの肉欲から、悪魔界の君主ルシ=ファル様ですら、手を焼く厄介者なのです。ルシ=ファル様に地中深く封じられ、今まで、その正体はわかりませんでしたが・・・・まさかうなぎの化身だったとは・・・しかも、それを、こ、このように・・・・た、たお・・・・・・・・」
まーた始まった。
シモンのブツブツは、もはや趣味だから好きにさせてやろう。
ところで悪魔社会?って、結構杜撰だよな。
4大悪魔王とかいってる割には、行方不明だったり、封じられてたりさ。
てゆうか、俺、王様倒しちゃったの?
まずくないの?
はぐりんがプリンプリンしながら、俺の方へ戻ってきた。
・・・・おかしい・・・・
あーんなにでっかいうなぎを食べておいて、俺の左手サイズのままって・・・・どう考えても、おかしいよね?
どこ行っちゃったの、あのうなぎ?
ペチャリ
当たり前のように、俺の左手としてくっついた。
・・・・・・
・・・・・・
ん?
あれ?
痛くねー。
治った。
ふ
仕組みだとか、メカニズムだとか、処方箋だとか、そうゆうものは、ヒマな偉い人のやることであって、俺っちのような庶民は、結果痛くなければそれでいいのだ。
シモンやカルミラは言いたいことがあるのだろう。
顔を見ればわかる。
でもさ、俺はちょっと疲れた。
ズキズキと痛みだしてから、治るまでに色々あった(気がする)。
腹も減った。
うなぎもない。
話は後だ。
「シモン。痛みがひいた。まずは、食事にしようではないか」
「・・・・は・・・・。 あ、主様。 このシモン=アザゼル。何度でも申し上げます。この命、いやこの私めの存在の全てを主様に捧げ申し上げます。どうか、どうかこれまでのご無礼をご容赦ください・・・・」
え?
どうした?急に。
俺は、ぼんやりとカルミラを見た。
ぎょ!
カルミラは、ぐったりと肩を落とし、号泣していた。
「よ、ヨシュア様ぁ・・・グスグス・・・えーん・・・ さ、さすがですぅ〜〜〜」
なんで?
しょうがないので、まだ意識のある(だろう)アス・デウスを見た。
「ぐへ、ぐへっ グヘヘへへ〜〜」
だめだ、こいつは。
もちろん、アバ・トンは相変わらずショートパンツからパンツをチラ見させながら気絶したまんまだ。
最後に、俺は自分の腹をみた。
ぐー
お腹すいたね。
ついに100話に到達致しました。
この100話目は、いくつかのパラレルストーリーのうちの一つです。
この話を生み出せたのも、「感想」で応援していただた方(先日お一人からいただけました)のお陰です。
本当にありがたかったです。
去年の11月から書き始めて、途中挫折した期間もありましたが、なんとか100話にたどり着きました。
これからも頑張って執筆しますが、どうか皆様のあたたかい励ましをいただけると幸いです。
どうぞよろしくお願い致します。




