10話 教会と勇者と川
〜教会組織の総本山がある宗教都市ヴァティクーン〜
その大聖堂において、教会最大のイベントともいえる勇者聖別の儀式が行われた。
聖別とは、聖油を介し、神の加護による特別な存在へと昇華させる儀式である。
そして勇者とは、教会のトップである教皇が神の預言に従い指名され、この聖別によって真なる勇者の名を授かるものを指す。
この勇者聖別の儀式には、教皇を頂点に、12人の枢機卿、144人大司教が、その奇跡の証人として臨席している。
教皇は、聖油を勇者の足首に注ぎながら、厳かに唱えた。
「父なる神よ。貴方の御心のまま、ここに勇者、ダヴィド=メシアの生誕を宣言します。」
そして156人の証人は、全員が首を垂れ、祈りを捧げた。
真なる勇者は、立ち上がり、跪く教皇の肩に手をやり、はっきりとした声で言った。
「教皇様。私、ダヴィド=メシアは、従者マステマとともに、異端者どもに拉致された聖獣リヴァイア=サンを奪還してまいります。どうか神のご加護を」
〜ヨシュア〜
「なあ、ヨシュア。俺たちどこに向かってんの?」
これだからやなんだよ。
そうゆうのも含めて、相談相手が欲しかったわけ。
こいつ、完全に考えることを放棄してんな。てかお前、仕事いいの?
まあ俺の方で、ある程度考えはまとめたけどさ。
「メフォストよ。私たちは真の救済を求めて、試練に臨まねばならぬのだ。」
まずは、『前域』を目指そうと思う。
このスカタンも、全くの役立たずというわけでもなく、この世界の仕組みを色々聞き出すことができた。
まず驚くべきは、この俺たちのいる人間界は、地獄に含まれるらしい。
確かに考えてみれば、地獄みたいに辛いこともたくさんあるし、パンも石のごとく固い。
地獄は、浅い順に①門(人間界)、②前域(亡者界)、③第一圏〜第九圏(悪魔界)となっているそうだ。
正直言って、この悪魔界には用はない。
ただ、そのひとつ前の『前域』は重要である。
なぜなら、そこは『煉獄』への待合室でもあるからだ。
つまり『門』から入って、『前域』がある。
ここが待合室で、そっから下ると悪魔界、そっから『煉獄』というお山を登ると天国に通じるというのだ。
そして、その『煉獄』の中にデメテルがいるということだ。
あ、いや、ムカつくが、まだ、仕返しとかそうゆうことを具体的に考えているわけでは、ない。
このあほは、残念ながら煉獄に行ったことはなく、アホ過ぎて(推測)第一圏にぶち込まれたらしい。
じゃあ、上りと下りの分かれ道はどうなっているのかというと、これを『煉獄門』という。
なんでもペテロというおっさんが、鍵を管理しているらしい。
多分、しょぼい亡者どもにとっては閻魔様、大悪魔やデメテルにとってはホテルのドアマンみたいなものだろう。
ちなみにこのバカ(笑)にとっては閻魔様らしい。
煉獄もなんか細かな構造があるみたいだが、バカたれには分からないとのことだった。
これが天使だった頃は、その頂上(楽園)の一部、つまり隔離された天国でぬくぬくしていたので、下の方のことは知らないんだと。
落ちぶれたねー。
ということで、『前域』に行けば、なんかもうちょっと色々とわかるんじゃないかなー、と思ったわけである。
ペテロというおっさんにも興味がある、変な意味じゃなくて。
でも、こうやってトボトボ歩いてっけど、どうやっていくの?
ちょっと悔しいが、このボケなすに頼らざるを得まい。
「メフォスト。『前域』を目指す。案内しなさい。」
「お。帰るんか。じゃあ、『川』に行かないとな。」
お前は、桃太郎か?
どんぶらこーどんぶらこ〜ってか。
いや、川に行くのはおばあさんの方か。。。くそ。
この説明不足のアホンダラによく聞くと、『川』のこっちとあっちで『門』と『前域』が区切られているらしい。
そこに渡し舟があるから、それを使えばさっくりと『前域』に行けるよ、とのことだった。
・・・じゃ、ま。行くか。
俺たちは、『川』に向かった。




