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 街中がどよめき、そして沸いた。


「今さら来るわけない!」

「ただ寄っただけだろう」

「通りすぎるんじゃあ?」


等々…噂をされたがちゃんと来たのだ。


 10歳時の子供の約束がちゃんと守って貰える…?

とっくに諦めていた私の心だったが、流石に久しぶりにイリヤに会える喜びで胸が高鳴っていった。


 イリヤに会える!

 彼はどんな風に成長したのだろう?

あの美しい金色の瞳でまた見つめて貰える日が来るなんて夢のようだった。


 幼いイリヤの優しい微笑みが目に浮かんだ。




******************



 翼竜に乗って何人もナタの街にアルトゥルから人が降りてきた。


中でも目を引いたのは…


 中心にいる美しい青年だった。

 時々青みがかって見える艶やかな金の髪に麗しい金の瞳。


まさに神の国からやって来た、そんな神々しさがあった。


ーーーイリヤだ!!


一目見てすぐに分かった!あの人はイリヤだ。


 なんて夢のように美しいのだろう…。


あの美しい人が私を迎えに来てくれた!!


私は三年も待たされた事など吹っ飛びそうだった。


 久しぶり会った彼に目を奪われたまま動けないほど、私は彼に見とれてしまった。

 改めて再会したイリヤの姿に心を射ぬかれて、もう周りの声も状況も分からなくなるほどだった。

胸の高鳴りは激しくなるばかりで苦しいほどだ。


 諦めたつもりでも私はイリヤの事を全く諦められていなかった!!

彼の事が大好きなまま今また成長した彼に更に恋をしてしまったのだ。



*****************



 結納金や結納の品を見た両親はもはや何を喋っているのかわからない程の喜びだった。


 街中の人が出てきて皆が喜んでくれて私は送り出された。


 アルトゥルに向かう為にびくびくしながら翼竜に乗せられる。初めて見る翼竜を前に空を飛ぶ喜びよりも恐怖が湧いてきた。


 飛び立った翼竜の後ろから街中の人の「おめでとう」「良かったね」と言う歓声が聴こえた。


 自分が育った街がどんどん遠退く。


 皆が喜んでくれたのは嬉しかった。

 しかしさっきまで舞い上がっていたが翼竜に乗った事により正気になった私は、どんどん不安が膨らんでいく。


 ナタの街の人達は喜んでくれたがアルトゥルの人は私を歓迎してくれるのか?

 何よりも迎えが三年も遅れたと言うことは反対されていたとか不味い事があるのでは…?



 そして…


 迎えに来てくれた?と思われるイリヤ本人とは一言も口が利けていない。

それどころか常に間に従者さんが数人いてガードしている。全く近寄る事も出来ていなかった。



 でもこれからゆっくり話していって、離れていた時間を埋めていけば良い…そんな風に自分に言い聞かせた。


 翼竜は【天空浮遊皇国アルトゥル】上空を軽く廻って飛んでくれ、それからお城に着地した。


 ざっと見ただけだったがアルトゥルにはお城に街もあった。山や森も川もあり水も豊富そうだった。


 地上から見ているよりもずっと広い印象だった。


 お城に近づく。

 私は自分の国のお城も見たことがないので、詳しくはないのだがとても大きく立派な建物だと思った。

 大きな塔が三本あり、屋根はエメラルドグリーンで城全体が白く耀く。壁は白いレンガのようだった。所々装飾が施されていて芸術的で豪華な作りのようだ。

 私は見たこともない世界に動揺し、そして期待が弾んでいった。

こんな美しいところで暮らせるの!?


 お城はアルトゥル全体の少し小高い位置にあり街並みが一望出来る。

 お城に着くと沢山の衛兵さんが待ち構えて並んでいた。



 私は私のお世話係兼通訳と名乗ったエリヴィラと言う女性に手を引かれて竜から降りた。

 これでやっとイリヤと話が出来る…と思うとエリヴィラが厳しい口調で言った。

「マリー様よろしいですか?よくお聞きください。これから婚儀まで30日間マリー様はこの国の言葉や風習を学び、お妃様となる教育を受けます。その30日間イリヤ皇子と口を利くことは許されません。これは昔からの()()()()です。必ずお守り下さい。」


「イリヤと口を利けない?でもまだ一言も話が出来てないのに?……もし…もし話をしてしまったらどうするのですか?」

いきなりそんな事を言われても納得出来なかったので質問してみた。


「もちろんお国に帰っていただきます!!」

エリヴィラは冷たくバッサリと言った。



ええーーーーーーーーーーーーーーーーー!?


 30日間イリヤと話が出来ない!?で…でも30日間無事に乗りきったらイリヤと結婚出来ると言うこと!?

この”行き遅れ女”の私がイリヤと結婚出来る!?


 あんなに皆に喜んで貰って送り出されたのに、どの面下げて帰れと?

もう私にあとはない!!


 もし私が帰ったら……きっと街の皆様の視線が怖すぎる…!!

そして喜んでくれた両親をガッカリさせたくない!!(これ大事)


 30日間喋らなければ良いのでしょう?

余裕ですよ!

 だってイリヤがいなくなってからの9年と迎えに来なかった3年思えば短い短い!!

 そして愛があればきっと大丈夫な筈!!

何て言ってもイリヤは私を迎えに来てくれたんだ!!

幼い頃と変わらずに私を愛してくれる筈!


 そう思って私は離れた位置にいるイリヤの方に視線を向けた。


 ああなんて綺麗で麗しいイリヤ…

 風に靡く金の髪が目映いです!

 私はイリヤに見とれた。


 するとイリヤが私の方を見た。

 初めてイリヤと目があった!



!!!!



 それは8年離れていた愛しい恋人を見る熱い瞳ではなく、氷のような冷たさ…冷たいを通り越して憎悪のような瞳だった。


 え?


蔑むような瞳で私を見たイリヤはすぐに私から視線を逸らした。



 今のは…!?


今のはいったい何!!!?


















昨日一話目公開時にはイラストはありませんでしたが描いたので一話目に貼りました。

よろしくどうぞ

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