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MagicKnight of Kingdoms  作者: 朝倉新五郎
9/21

#9 ギルドパーティー

 やはりと言うべきか、仕方がなくと言うべきかアズはギルド黒き剣の外部顧問という形で関わることとなった。

 ギルドメンバーではなく相談役、しかし仲間というような立場である。

 早速アズはギルド会館の隣の建物を入手した。本来はギルド会館や宿屋に使用される規模の建物である。

 土地は全て星帝のものであるため、正しくは使用権を買う事となる。

 

 「やあ、引っ越してきたよ」

 アズはギルドに毎日顔を出すが何もしない日々が続いた。これはワルツのレベルを見るためである。徐々に上がってきている。留守がちでもあるし何処かのダンジョンに毎日行っているのだろう。ここ数日誰も見かけない。

 アズは探してみることにした。もちろん狩りという遊びをやりながらであるが。

 

 

 「しかしこのドライグランダーは強力だな。君がレベル30になるまで借りてても本当にいいのか?ワルツ君」

 ライドはしげしげと剣を眺めていた。

 「使わないともったいないじゃないですか、僕はこのビオモンデールで十分です。あとそろそろワルツって呼び捨てして下さいよ、なんか新入り気分が抜けないんです」

 アズから貰った装備はギルドメンバーに行き渡り、以前と比べて効率良く狩りが出来るようになっていた。

 

 「やっほー」

 何の前触れもなくアズが声をかけてきた。

 「こんな遠くのダンジョンにも来るんだね。何日も留守だから遠征だと思って小規模ダンジョンを飛び回ったよ。レベルが17になってるね、パーティにしては早いよな」

 理由もなくアズはダンジョンからダンジョンへとワルツを探していた。探してどうしようとも考えていない。

 

 「飛び回ったって、もしかして」間髪入れずに「うん、グリフォンだけど」

 もはや自分の強さを知られてしまっているため自分の本性以外は隠す必要は無い。だが、自力でグリフォンを手に入れた者はほぼ居ない。数十回倒してやっと笛がドロップするかどうかという極めてレアなアイテムを持っているということになる。

 

 「それほどの力を有しながら、騎士団にも法術士団にも入団しないのですか?貴方であれば黒十字騎士団や国王にも選ばれるかと思うのですが」

 ライドは思っていたことを口にした。

 アズの力量は黒狼騎士団団長を凌駕するかも知れない。実際にはアズに勝てる相手はこの世界には居ないのだが。

 「騎士団の名誉や地位には興味が無いよ、俺は子爵位とか公爵位を持っているから今あるもので満足さ。それに自由に楽しくが一番だよ」

 

 アズは初めの数日以外は自由気ままに生きてきた。支配者となった今でも最低限のこと以外は行わない、自分の自由を捨てることはこの先もないだろう。

 

 「公爵様で子爵様・・・それならば納得がいきます。あえて騎士団に入らずとも富豪の貴方ならば」

 ライドが目をつぶって腕組みをして首を縦に振ったが

 「俺は公爵位の銀貨と子爵位の銀貨合わせても年10万枚位だよ、持っている金貨や銀貨のほとんどは晶石を換金したものだし」

 

 貴族や王は仮の領地を持っている。実際に支配しているのは星帝なのだが、その領地の基準収穫量に税率を掛けた銀貨が毎年星帝から支給される。領民も農奴のような扱いではなく農業労働者として銀貨を貰って働いており、実った作物は豊作でも凶作でも全て星帝のものになり、穀物の価格はコントロールされているため商人が買い占めて値段を釣り上げたり出来ない。

 そのような者が出た場合、数年間ダンピングが行われるため結局は破産することになる。以前数回行って数十人の大商人を破産に追い込んだ事がある。

 

 「ちなみに此処のボスは15階層のオーガキングだけど倒しに行くかい?俺もパーティーに入れてもらえればだけど」

 簡単に言ってのけたがワルツの強さを見るためだ。

 「途中で最強の敵はオーガナイトだね、どうする?」

 ライドは自分たちのパーティだけでの攻略のため見ておきたかったので

 「最前衛をお任せして良いのであれば」だが少し震えていた。自分たち12人でもオーガナイトは戦える相手では無い上にオーガキングなどと戦えば殲滅されることは必至だ。

 

 「おっけー、じゃ行こうか、センシティブロケーションで全周囲警戒するけど君達も後ろに注意してね、特にクークック君だっけ?君はシーフスキルでSPを使い切るつもりで。

 3階層からオーガが少し出てくるようになるから。けど俺が守るんで心配しすぎないように」

 センシティブロケーションは不適合者であるスカウトの上級スキルなのだがキルドの者達は普通に受け入れていた。

 

 アズは背中の長大な剣を引き抜いた。ダネルグレット、ビーツの後期の作品の中でも特別な魔剣だ。

 警戒しつつもぶらぶらと12人を引き連れて、出てくる敵を一閃で切り捌いていく。

 「アズさん、その角の向こうに5匹居ますよ、多分オークです。オークナイトも混じっています」

 

 しかしアズはそのまま角まで歩いた。

 「ベリアリックウィンド!ファイアボール!」

 5匹を一撃で屠った。

 「強えぇな、ファイアボールって初期魔法だろ?ティア」

 ドバリスがファイアマジシャンのティアに訊くと

 「そうだよ、でもあれは別物だね、スペルマスター50レベル以上、ファイアボールのレベルは15以上は確実だな。それより驚いたのはベリアリックウィンドは風系魔法なんだよ、しかもスペルマスターのね。威力はわからないけどあの人2つ以上の属性のスペルマスターってことになる、ほとんど不可能だよそんなことは、何者なんだろうね」

 専門のマジシャンは魔法の威力を見れば大体のレベルがわかる。確実にスペルマスター以上の魔法だ。

 

 「そうだ、グラントール君はブルーステータスだったね、騎士団に入るつもりなのか?」

 このままナイトになってレベル50にまで上げれば黒狼は無理としても7大騎士団の一つには入団出来る。

 しかし

 「私、いや我々の目的はランドーク星帝陛下が封印したと言われる10本の聖剣のどれかを手に入れることです」

 ライドはその後のことは考えていないようだった。

 

 「そうか、1本は場所を知っているよ。調べた結果だけどメラススの塔の200階層、グレートドラゴンの巨窟に描かれた魔法陣の下にあるはず。特殊な封印が施されているからアルケミスト系、レベルの高いワイザーかドクターの知識が必要だろうけど」

 一番難しい場所だけを教えることにした。グレートドラゴン相手ではナイトとスペルマスター合わせて100人を動員しても皆殺しにされてしまうだろう。ゴールドドラゴンなら高レベルの2次職40人も集めればなんとかなる、しかしグレートドラゴンは強さの桁が違う。

 「そ・・・そうですか。そこは無理でしょうね、最難関ではなく比較的難度の低い場所のものを探します。それでも命がけになるでしょうけれど」

 苦笑いされたので

 「そうだね、地道に情報を集めて探せば見つかると思うよ」とだけ言って終わりにした。

 

 最下層までゆっくりと時間を掛けて降りたが、アズが居るため間接攻撃で皆は余裕のある戦闘が出来た。

 「さて、この部屋がボス部屋だけど、オーガキングが1匹、オーガナイトが8匹出てくる。皆一斉攻撃で頼むね、接近戦じゃなく距離をとってソードマンやシーフもスキルで頼んだよ」

 扉を蹴り開けるとそこはかなり広い部屋になっていた。間髪を入れず

 「オクタスラッシュ!ブレイドスラッシュ!ハードストライク!サンダーブレイク!アイスダガー!」

 「ファイアウォール!」

 「ソードスラッシュ!」

 「ポイズンベヌム!サウザントショット!」

 「ダメージコントロール!」

 「エリアヒール!」

 「プラントオブニードル!」

 巨大な嵐が部屋の中を吹き荒れた。

 それが静まると、部屋の中に晶石が9個転がっているだけだった。

 「1撃かよ、すげーなナイトスキル」

 ドバリスは感心したが、オクタスラッシュ等のナイトスキルでも1撃でオーガキングやオーガナイトを屠ることは出来ない。スキルレベルを極めた上での攻撃である。ドラゴンでも倒せるだろう。

 「今確か、アイスダガーって・・・」ティアは絶句してしまった。アズが水系魔法も使えると知ったためだ。

 

 「さて、帰ろうか。みんな俺の近くに来て」

 アズ達は帰還アイテムを使いダンジョン最深部から地上へと戻った。

 「転移系のマジックアイテムですか?ダンジョン内で使えるようなものは聞いたことがないんですが」

 ライドは自分の中の知識を総動員していた。

 「ああ、これはドロップしたレアアイテムを加工して作ってもらったもので名前は無いよ。クライアンの魔法工房の試作品だね。世界樹の枝と何かを合成して作れると聞いてるけど」

 バッグからもう1本を出して見せた。「俺もそんなにたくさん持ってるわけじゃないからあまり使わないようにしてるけど」

 そう言ったが1000本は持っている。アズの「多い」は数十万が基本となっているためこのように話す。

 そして持っている数が少ないのは素材となるアイテムのドロップ率が低いためである。

 買うとしても材料はシャドウフラクターのドロップアイテムが必要なので銀貨1万枚以上の価値になってしまうだろう。そんな物は誰も使わない。

 

 「グラントール君はレベル43になったね、50で転職するのかな?俺のおすすめは99でのクラスチェンジだけど」

 かなり難しいことを簡単に言ってのけるアズに対して

 「いえ、レベル50でクラスチェンジしようと考えています。ナイトのスキルは強力ですので」

 ライドは早く強くなりたかった。

 「そっか、まあそれが妥当かな、レベル99はかなり苦労するから」

 ソードマンのスキルは5つだがナイトのスキルは7つあり、それぞれがソードマンのものより強力である。インペリアルセイヴァーに成れる可能性の無い今ではソードマンレベル50でのクラスチェンジは妥当な判断だ。

 

 ◇

 

 「エコーロケーション、ルバラン」

 オサムは王宮に連絡を取った。

 「はい、皇大御神様いかがなされましたのでしょうか」

 「えーと、建物を買ったんでな給仕3名と執務の出来る誰か1名よこしてくれないか?場所はわかるな?そっちでモニター出来るはずだから頼んだぞ」

 3階建ての建物に一人では怪しまれる恐れがある。それにギルドのメンバーには公爵位と子爵位を持つ貴族だと告げているので使用人が居たところで問題は無いだろう」

 「承知いたしました。給仕は女性の方がよろしいでしょうか。執務はどの程度の者を御所望で」

 人間ばかりの中で違和感なく働かせるためにはそれなりの者である必要がある。

 「そうだな、給仕はエンとタリ、ユイで良いだろう。執務は俺の代わりになるような者が必要だな、リスマを寄越してくれ」

 エン、タリ、ユイはオサム専属のメイドであり下位魔人族。その力はナイトのレベル50、レベル90のプロミネントオブスペルマスターに設定されている。リスマは上位魔人族でグラガンレベル80とナイトレベル90程度の強さを持っている。

 

 深夜に4人は飛んできた。一旦人気のない裏道へ降りてから徒歩でオサムの建物まで辿り着いた。

 リスマがコンコンとドアを叩くと「思ってたとおりの時間に来たな、ご苦労」建物に入れようとしたが4人は「はっ!」と片膝を付いて動こうとしない

 「あのなあ、俺は目立ちたくないんだからそんな王に対するような敬礼はやめて早く入ってくれ。貴族の使用人という立場で頼むぞ」

 いつものことだがオサムの姿を見ると敬礼の姿勢を取ってしまうようだ。

 「当分此処で暮らすことになるからな、必要なものはこれで買っておいてくれ」

 銀貨1000万枚入ったマジックポーチを4人が囲むテーブルの上に置いた。

 「それで皇大御神様、我々は何をすればよろしいのでしょうか?」

 リスマは何も聞かされずに来たらしい。

 「まず、俺のことはダッシュと呼んでくれ、アズ・ダッシュな。それが嫌なら自分たちで考えれば良い。それでリスマ、お前の仕事は俺が必要なものの手配とエン達が出来ない雑務全般、それにこの建物と隣のギルド会館の安全を守ることだな。エン、タリ、ユイはいつものように俺の世話をしてくれれば良い」

 一応の説明は済ませたが

 「お前達は街にほとんど来ないだろう?折角だからこの世界を楽しめ。あと、絶対に普通の人間に危害を加えるなよ?ステータスがダークグレーやブラックなら即殺しても構わんが、グリーン以上の者とのトラブルは避けるように。今のところはそれくらいだ」

 オサムが説明してその夜は終わった。

 

 ◇

 

 「んー・・・なんかいい匂いがするな」

 オサムが自分の部屋から出て1階に降りると、食事の用意がされていた。

 

 「おはようございます御主人様。朝食の準備が出来ております」

 エンとタリ、ユイが朝市で買い物を済ませて食事を作ったようだ。

 「御主人様か、その呼び方が一番良いな。リスマにもそう呼ぶように言っておいてくれ、ところで奴は何をしている?」

 見たところ1階には居ないようだ。

 

 「買い物に出かけられております。執務や御主人様に必要なものを揃えるのだとかおっしゃられていました」

 最小限の荷物しか無いため、しっかりとした家具などを揃えるのだろうと予測した。

 「そういえばこの建物は部屋数はそこそこあるけどベッドがなかったな?お前達どうやって眠ったんだ?」

 床にそのまま寝たとしか考えられない。あの時間で開いている店など酒場位のものだろう。

 

 「眠っておりません。我々魔人族は3~4日程度眠らずとも問題ありませんので。あ、こらユイ!マンドラゴラなんか料理に入れないの!どこから出してきたのよ」

 3人は姉妹としてオサムに創造された。エンはしっかり者の長女でタリは知的な次女、ユイは奔放な末妹と性格を変えている。当然オサム好みの外見で皆がそれぞれ可憐だ。

 対してリスマは優秀で魔人族特有の知性と美貌を兼ね備えた執事であり、ロウ・ウェンを参考に外見を作った。天上の王宮では第5席の上級執事でもある。

 そうこうしている内にリスマが帰ってきた。

 

 「おはようございます、無断で留守にして申し訳ありません。4人分の家具や食器、その他諸々の発注を済ませてまいりました。宮殿にふさわしい物ではなく一般的な物を揃えたのですが問題無いでしょうか?」

 上位の執事だけあって仕事が早い。先回りして動いているようだ。

 「そうか、建物を買ったばかりで家具も何も無かったもんな、問題ないよ、ありがとうリスマ」

 オサムの言葉に

 「とんでもございません、皇大御神様。我々はお仕えするために創造されたのですから、お役に立つ事こそが至上の喜びなのであります」

 クイード達もだったがコイツらはそれ以上だな。と考えつつ

 「俺を呼ぶ時は御主人様と呼んでくれ、それで違和感がなくなるから」

 オサムが言うと

 「はっ!」と膝を付き敬礼をした。

 「あ~その敬礼も無しで頼む、お辞儀ってわかるよな?それだけでいいから」

 困ったぞ、と思いつつもこの4人が居れば何かと助かるだろう、と考え直した。

 しかしリスマが購入した食器は全てが金やプラチナで出来ている王族の使うようなものだったので書い直しが必要だった。

 

 ◇

 

 オサムがそうやっていろいろと教えている頃、隣の黒き剣ギルドでは宴が始まっていた。

 自分達だけでデグレ平原のダンジョン3階層まで朝から3時間でクリアしたちょっとした祝いである。

 装備が変わったのが一番大きいが、メンバーのレベルアップによる底上げにより今まで2階層がギリギリだったものが一気に3階層を危険無くクリアできたからだった。

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