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MagicKnight of Kingdoms  作者: 朝倉新五郎
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#1 冒険の始まり

 「おい!陣形を乱すなよ!出過ぎだワルツ!ドバリスは距離を詰められないように牽制!」

 4人パーティーのリーダー役でスペルマスターであるティアが叫んだ。

 最前衛、盾役でもあるワルツは戦闘中にいきなり現れたオークナイトと元々の相手であるレッサーオーガに挟み撃ちにされた。どちらも低階層ならフロアボスである。

 小規模ダンジョンの一つであるルッサの森ダンジョンでも7階層は白き森の荒れ野と呼ばれ、広大なフロアである。それに6階層以下はそれなりの強敵が待ち受けている。

 「ナイトって言っても俺は転職したてのレベル5なんですよ、まあこのくらいの敵なら!」

 ワルツはレッサーオーガをスパイラルソードで突き倒し、ティアは火炎呪文レニアスファイアでオークナイトを1撃で屠った。どちらもLv5のスキルやスペルだ。

 「攻撃特化の魔法職はやっぱり強いな」もう一人のマジックユーザーで補助呪文を得意とするワイザーのランデックはワルツをライトヒールで癒やした。


 「なんだよ、中衛の俺は結局ほとんどやることなかったじゃん。ここで引き返すんだろ?かなり稼げたしな。この下になるとオーガ系がわんさか出てくるし、4人じゃちっと厄介だ」

 アーチャーでシーフのドバリスは近くの岩に座った。



 この100年余りで世界は変った。

 全世界の皇帝であり、神々の一人でもあるランドーク星帝、アキバ・オサム・グレイス・ランドーク、自身での諱はハツクニシラススメラミコトの力によって。


 まず、ダンジョンと呼べる程度の物はグレイス王国、世界の民からは聖王国と呼ばれる国の領内にしか存在しなくなった。他の全てのダンジョンはランドーク星帝の力で破壊もしくは封印や移動され世界から危険が取り除かれたことになる。

 しかし5つの巨大な塔と10もの大規模ダンジョン、それとそれより多くの中規模、小規模なダンジョンがグレイス王国内に集められた。

 そして、剣士や騎士、魔法士や魔導士しか無かった冒険者の職が増やされ再構築された。

 これによって才能が無く剣士や魔法士に成れない者達も冒険者となることが出来る。

 名称も変更され、剣士はソードマン、騎士はナイト及びパラディン、魔法士はマジシャン、魔導士はスペルマスターと呼ばれることになった。

 元からあったジャッジマスターは国王や貴族、王国各騎士団長や団員と騎士階級の必須クラスとなり清廉潔白さが要求される。

 他にもオサムの趣味でRPGのようにレンジャー、シーフやアーチャー、モンク、サマナーやテイマー、アルケミストにプリースト、ドルイド等が作られた。

 またその他にもワイザー、マジックナイト、クルセイダー等の複合職も出来た。

 そしてフェンサー、ランサー、ハンター、ソルジャー、バード、ガーディアンのような一般的ではない職も増やされ、これにより誰もが冒険者になることが出来るようになった。



 「ふわ~・・・ここが王都か。世界の中心グレイシア、神様が最初に作った街。とんでもなく大きいなあ」

 リューン村からやってきた少年ワルツ・ランシットはその大きさと美しさにしばらく動けなくなった。

 目指すのはグレイス王国を中心とした世界50王国の頂点である7大騎士団か3大法術士団。そのためにダンジョンの有るグレイス王国まで遠くウィンディア王国から旅をしてきたのである。


 「噂には聞いてたけどあんなに大きな島が浮いてるなんて」

 グレイス王国の国王でありグレイス帝国皇帝そして星帝と呼ばれるアキバ・オサム・グレイス・ランドーク、世界の人々からは星の支配者とされるこの世界の神がグレイシア女神、リムルノミコトと共に世界を見つめていると言われる浮島を見上げた。

 「っと、そんな場合じゃないな、まずは宿屋を見つけないと」

 ワルツは広大なグレイス王都を歩き出した。


 グレイス王国に存在するダンジョンの中でも初級冒険者が入れるのは各城塞都市からそう遠くないディメンショナル系ダンジョンである。

 この種類のダンジョンはモンスターが這い出して来ない様に簡易封印が施され、入り口を通るには専用の魔法石を身に着けている必要がある。

 塔や大規模、中規模ダンジョンはさらに強力な封印が為されているため、そこに入るためには魔法石のレベルアップが必要であり、それを入手するにはかなりの歳月を戦闘に費やさねばならない。

 例を上げるならば7大騎士団の内、最強と呼ばれる黒狼騎士団員は全員がレベル3以上の封印魔法石を所持している。この騎士団員は最低でもナイトレベル70とその地位に見合った性格が要求される。

 エリートで構成される王立騎士団以外は定員は設定されていないが、入団審査が一番緩いとされている白鷹騎士団でさえ団員になるにはかなり困難と言われていた。


 最初は門からそう遠くない一番簡易と言われているデグレ平原のダンジョンに挑戦しようと考えていた。このダンジョンの1階層にはゴブリンか稀にホブゴブリンしか出現しないのでかなり安全だ。

 そのため王都外縁部の東門付近の宿を探さねばならない。

 王都には宿屋が無数に有り、外周部は冒険者用の宿が多いため中心付近の宿屋やアパートより安く宿泊が可能である。


 「さすが大陸で一番大きい街だなぁ、歩くだけでも疲れるよほんと。魔法車に乗るのももったいないし、街も見たいから歩くしか無いか」

 てくてくと歩きながらワルツは町並みを見ていた。

 「あ、ここって商店街か、なんでも売ってる、すごいな。えーと武器屋か防具屋は」

 広い道の両側をキョロキョロと眺めていたがお目当ての武器防具屋が見つかった。


 ワルツが中へ入ると「いらっしゃい!」と威勢の良い声が聞こえた。

 「何かお探しですか?格好からすると旅人か初級冒険者ですね。シーフですか?」

 店主らしき者の声だ。自分の格好を見ればすぐに分かる、革で作った自家製の軽装防具と生活用兼護身用の少し大き目なナイフだけだ。


 彼の祖父の祖父の時代には大陸中にモンスターが溢れていたと聞いていたが、今では荒野や深い森の中でゴブリンやオーク等が少数居る程度で少し剣の腕があれば危険は無くなっている。

 そして大部分は人間の土地なのだが一部地域に亜人であるエルフやドワーフ、ホビットやフェアリー、ピクシーも住んでいると聞く。

 これらは人間に敵対せず暮らしており知能も高く、ランドーク星帝がモンスターではないとして保護した者達である。


 極めて稀にバジリスクやゴーレムなどの強力なモンスターやユニコーン、ダイアウルフ等の獣が見かけられるらしいが、噂に出てくる程度で実際に見た人間には今までに会ったことはない。

 星帝が直接統治していない国家の各地のダンジョンを封印し、城壁を持たない村や町への危険要素であるモンスターを取り除いたからである。

 これによって”冒険者”と呼ばれる者達は全てがグレイス王国に集まる。


 一通り剣や防具を見たが、手持ちの銀貨や青銅貨ではとても買えない。

 「やっぱり少しダンジョンで稼いでこないと村の仕事で貯めたお金だけじゃ無理だな。でもこんな装備で勝てるのかな?今持ってるのは・・・」

 ワルツはバッグから革袋を取り出し中を見た。


 「宿の前に冒険者登録を済ませておくか」

 まずは王都内各所にある登録所兼換金所で冒険者として登録することが必要だった。

 ワルツは村からそう遠くない城塞都市で元々有った換金所と呼ばれる建物に入ったが、そこではもう冒険者は扱っていなかったのである。

 この世界で冒険者になろうと思えばグレイス国王都か他に十数箇所ある国内の城塞都市に行くしか無かった。

 ソードマンやマジシャン以外にアーチャーやシーフ、サマナー等他の新しく作られたクラスも同じく登録所での冒険者登録が必要である。ダンジョンに入る許可を貰うようなものだ。


 ◇


 「暇だよぉ~リムル~」

 オサムは天空に浮かぶ宮殿の一室でゴロゴロしていた。

 「よろしいではありませんか、皇大御神様。地上の民達は幸せそうにしておりますよ」

 他の者達からはグレイシア女神、グレイシアノミコト、命様と呼ばれているリムルはいつものように微笑んでその様子を見ていた。

 「俺ちょっと遊びに行ってくる!」

 オサムはそう言い残して数年ぶりに地上へと公務以外で出向くことにした。公務と言っても以前のように極力自分は関与せず誰か信頼できる者に丸投げしているため、ほとんどの時間を天上王宮で書物に囲まれ過ごしている。

 時々グランパープルへ行くか、ダンジョンへ出かける程度だ。

 「心配しないでねーリムルが寂しがる前に時々帰ってくるから」

 カチャカチャと鎧を着込み、ベルトにいくつものバッグやポーチを取り付け準備を整えた。

 「じゃ行ってくるね~エアフライト!」

 昔のような漆黒の鎧ではなく見た目は平凡だがレアアイテムを複合して作られた、フルプレートアーマーを軽く凌駕する世界最強の軽装革鎧で身を固めオサムは浮遊島から飛んでいった。

 目指すのはまずメラススの塔。通常の冒険者がほぼ来ることのないボスクラスのみが潜む最強ダンジョンの一つでオサムの遊び場でもある。

 ただ今回は初心に帰って低級ダンジョンにも確認がてら行こうと決めていた。


 天空宮殿は魔法防御が施され10万人を超える者達が働いている。外縁部や外宮は比較的緩い警備だが内宮はその者達の中でもインペリアルリングを持つ者しか自由に出入りできない。

 そして禁裏と呼ばれる中心部はオサムが神の力によって創造した竜人族や魔人族、ハイヒューマンなどのオサム達に絶対の忠誠を誓う者達で構成される近侍や侍従、執事や女中により守られている。

 彼等はオサムかリムルの命令にしか従わないが、ロードナイトやドラグーン、一部はインペリアルセイヴァーに匹敵する力を持つ最強の者達である。

 地上の城や王宮はよほど重要なことが無い限り使われることはないが、年に数回星帝はこれらの従者と共に降りてくる。


 世界の民達は副次的に手に入れたものがある、それは安定した社会。不滅の支配者が統べる国境紛争や継承戦争が起こらない世界である。

 グレイス帝国が解体され再形成された全ての王国はグレイス王国の国王、そして世界全体を支配する星帝により各国王が任命される。

 王族や貴族の中からジャッジマスターのレベルが50以上で、その時点の最も清廉な者が選ばれ各国前国王の意思は考慮されない。そのため世襲は少ない。

 もし一族の中にグリーン以上のジャッジマスターが居なければその家は取り潰しとなるため悪行を企てる権力者は世界から排除されることとなる。

 これらは世界の安定を完全なものとするため熟慮された制度の結果であり、オサムの世界の歴史上の事実を踏まえた安全装置だった。

 事実として世界全てをグレイス帝国として統一してから100年後にはそれが当たり前として機能するようになっている。

 人々はオサムの作った世界のシステムと星帝自身の全てを常識として受け入れていた。


 ◇


 「聖王国の街は清潔って聞いてたけど、どこからこれだけの水が流れてくるんだろう?それに公衆浴場がやたら多いな、後で行ってみよう」

 ワルツは半日掛けて西門から東門までやってきた。

 門から少し離れた場所で宿屋を見つけ、1ヶ月分の青銅貨を支払い2階の一室を借りた。

 グレイス王国の国民ではないので部屋や家を入手することは出来ないが、無理な場所を選ばなければ宿屋の部屋は家賃も安価なため住み着くことも出来る。

 「さて、明日からモンスターを狩って狩って狩りまくって早く良い装備を手に入れないとな。まずは剣か」

 バッグをクローゼットに仕舞い、腰のナイフをベッドの横のテーブルにコトリと置きそのまま椅子に座った。


 「最弱」ワルツは村でそう呼ばれて育った。

 弓の腕は年下の子供にも劣り、剣や魔法などは全く使えない。狩猟用のナイフだけがワルツの扱える道具だった。

 当然何の期待もされず、学業の合間に農夫として国の土地を耕し作物を作って育った。

 同い年の少年達は成人とされる15歳になれば半分がウィンディア王都や他の城塞都市に行き、兵士や技術者、商人等になっていったのだが彼は一念発起し騎士か法術士になることに決めた。

 しかし誰もが無理だと決めつけていた少年の夢は或る人物との出会いにより叶うことになる。アズ・ダッシュと名乗る正体不明の冒険者によって。

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