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しがみつく男たち おまわりさん、こいつです !

 アンシアちゃんを探すのに私が選んだイメージはあれ。

 初めてその名前を知ったのは図書館にあったオカルト雑誌。

 空飛ぶ円盤の一種と紹介されていた。

 その次は海外のSFドラマ。 

 一人はみんなの為にの宇宙人。

 そして現在よく知られているあれだ。

 あれなら下草の生い茂った森の中でも行けるはず。

 世界遺産のお寺の中を縦横無尽に飛び回って撮った映像を見たことがある。


 あれと同じだ。

 飛ばして、その映像を手元で見る。

 まずは外に出さなくちゃ。

 電源をオンにする。

 浮き上がらせる。

 映像を見る。

 うん、いける。

 さあ、外に出すんだ。

 


「ルー、どうしたの。気分でも悪いの・・・うわあっ !」

「アル、どうした」

「すごい、なんだ、これ」


 急に固まったルーの肩に触れたアルが、ルー同様固まる。


「これ、街の広場 ? なんでこんな・・・」

「何言ってるんだ、アル」

「兄さんたちもルーに触ってみてください。そうしたらわかります」


 アルに促され次々にルーの肩や髪、腕にふれる男たち。


「うっ !」

「はああっ ?!」

「一体これは ?!」


 男たちの目の前にはヒルデブランドの街の教会があった。

 地面すれすれのところにいるのか、人々の足しか見えない。

 バタバタと警備兵や冒険者が西の方へ走っていく。

 蹄の音とともに青い制服の常駐騎士団が通り過ぎていく。

 するといきなりそれらがはるか下になる。

 あっと言う間に教会の塔の上に出た。

 場所を確認するように視線が右に左に動く。


「そうか。これはルーが見ている風景なんだ。これでアンシアがいる場所を探そうというのか」

「なんて魔法だ。これがあれば索敵も斥候もし放題じゃないか、うっ !」


 風景が西の門に固定される。百人以上の男たちが地図を見ながら話し合っているのが見える。

 冒険者たちはあちこちに固まって。騎士団は整列し微動だにしない。

 それを確認すると、視線は一気に下降し、地面すれすれにものすごい速さで移動していく。

 人々の足元をすり抜け西の門に向かう。

 

「こ、こんなっ !」

「おい、ルー、上に行け、上に ! その方が早く移動できる !」


 その声に応えるかのように、西の門をくぐると今度は急上昇して森の上で止まる。

 男たちはフウッと一息ついた。

 が次の瞬間、急角度で森の中に突っ込む。

「うわあぁぁぁぁっ !」「死ぬっ ! 絶対死ぬっ !」「止めろおおぉぉぉぉっ !」


 絶叫しながらもルーから手を離さなかったのは、さすがと言っていいだろう。



 兄様たち、うるさい。

 街からそれほど離れていないところ。

 西の森の歩いて1時間ほどのところをアンシアちゃんはグルグルと回っていた。

 その気配目指してガンガン飛ばしていく。

 アンシアちゃんの痕跡を求めて、少しずつ場所を特定していく。

 そして道の続いたあたり、アンシアちゃんが休んでいるのを見つける。


「いたあっ ! ここっ !」


 私は地図の一点を指さして、目をあけた。

 そして気が付く。

 計6人の殿方が私の体にしがみついているのを。


「おまわりさあぁぁんっ ! 変態でえぇぇすっ !」


 その中におまわりさんのトップがいるんですが。



 グルグルまわっているうちに、道に出た。

 よかった。

 この道から外れなければどっかにつけそう。

 思えばヒルデブランドの街にたどり着けたのは奇跡だと思う。途中の街まで一緒だったおじさんが、宿とか集合場所とか、いろいろ手配してくれたんだっけ。

 方向音痴のあたしが無事に目的地につけたのはあのおじさんのおかげだな。

 腰につけた水筒を外して一口飲む。

 下宿のおばさんがくれた甘くて酸っぱくてしょっぱい飲み物。

 疲れた時は甘いものもしょっぱいものも必要なんだよ。酸っぱいものも元気にしてくれるヒルデブランドの冒険者ギルド特製の飲み物なんだって。

 対番のルーにもらったのと似てる。

 あれもさっぱりしておいしかったな。

 ・・・・・・。

 初めて会ったとき、なんてきれいな子なんだろうって思った。

 王立魔法学園にもきれいな子はいたし、貴族が通う精花女学院との合同訓練でもいかにもお嬢様って子を見たことがある。

 でもあの子はそういうのとは違った。

 美形3人に守られた生粋のお姫様。

 悪口とか嫌がらせとかされたことがないような純粋培養のお嬢様。

 魔法学園でのいろいろを思い出して、一気に嫌いになった。

 そいつが最短記録達成者で、あたしの対番になるってわかって、絶対こいつの手だけは借りるもんかって思った。

 なのに、あいつってば、あたしが失敗しても怒らないし、いつまでも迷っててもじっと待ってるし、ラスさんちに間に合わなかった時は一緒に落ち込むし、二日酔いの時は飲み物とかスープとか差し入れるてくるし。

 それに、あの魔法 ! 

 水の生活魔法って水を出すしかないし、攻撃するときは詠唱するしかないのに、なに、洗濯機魔法って。

 それと浮遊魔法と手仕事倍倍魔法。

 おかしいでしょ。

 つか、魔法の無駄遣いじゃん。

 なのに本人は魔力の流れがわからないとか言ってるし。

 神様は不公平だ。

 きれいな顔と、魔法の才能と、信頼できる仲間に沢山の人に愛される才能と、それと、それと・・・優しい性格と。

 あたしがほしかったものばかりだ。

 ・・・・・・。

 ない物ねだりしたってしょうがない。

 ルーはルーだし、あたしはあたしだ。

 あたしはあたしのするべきことをするんだ。

 りっぱな冒険者になって、王都に帰るんだ。

 あたしは水筒を腰のベルトに付けなおすと、多分こっちだろうと思う方向に足を向けた。

 てもその時何かがあたしの後をついてきていたんだ。

 あたしがそれに気が付くのはもう少し後のことだった。

お読みいただきありがとうございます。

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