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はじまりはいつも波乱万丈

 私は(へい)になった。

 飛び級というやつだ。

 (てい)(へい)への昇格条件は、生活以外の魔法を最低3種類使えること、魔物の討伐30匹、一か月に受け取る報奨金が30万円。それと合わせて対番と案内係の推薦だ。

 鑑定、土壁、電撃、そして韋駄天(いだてん)と4種類の魔法を使えるようになった。

 名前をつけにくい魔法なら他にもいくつか使える。

 ご老公様との専属契約は1年間で400万円。月にして約30万ちょっと。

 そして先日のピンク一角ウサギだが、あの後ちゃんと数えてみたら178羽いた。

 (おつ)への昇格条件が100匹だから、残りの条件さえクリアすればまた上のクラスに行くことが出来る。

 

「条件はそれほど厳しいものではないが、それが結構難しいんだ。魔法の数は魔法学校に通っていればなんとかなるが、問題は報奨金と討伐の数だな。低クラスの狩れる魔物はそれほど高くないし、街の近くは狩られつくされている。野営でもして遠くに行かないとたくさんは狩れない。だから討伐以外の依頼をこなして、討伐相当のポイントを稼ぐしかない」

「でもそれだといつまでたっても討伐出来るだけの実力は付かないから、クラスは上がっても街から出られないって人たちも多いのよ」

 

 昇格手続きをしてくれるのは案内係のビーさんだ。

 ベナンダンティになってからずっと色々と親切にしてくれている。

 このギルドでは専従案内係という制度はないけれど、同じ人が担当することが多いそうだ。

 長く付き合っているうちに、その人にあった依頼や装備などがわかってくるとか。


「討伐にでない冒険者を街専(まちせん)と言ってバカにする地域もあるけれど、この街ではそんなことはないわ。街の中だけでもしっかり活動してもらってるしね。それよりクラスだけあげて仕事のレベルをあげないようなのはお断り。さあ、できたわ」


 ビーさんは新しく情報を記録したペンダントトップを渡してくれた。


(へい)に昇格おめでとう。これからも頑張ってね。疾風のルーちゃん」

「はい。まだまだ知らないことが多いので、もっともっと勉強します」


 付き添ってくれたエイヴァン兄様が胸の鎖に冒険者の証の透明な石をはめてくれる。

 部屋にいた他の冒険者たちが大きく拍手をしてくれた。

 私は振り返って皆さんに頭をさげてルべランス、礼をした。

 カーテシーとは違うバレエの礼は、今では私のオリジナルの所作として受け入れられている。

 ご老公様の前でしたときに、これからはそれを定番にするように言われたからだ。

 ヒルデガルド出身の冒険者としての特別感が欲しいんだって。


「冒険者ギルドはここかしら」


 バンと乱暴に扉が開けられた。

 みんなの視線が入り口に集中する。

 入ってきたのは私と同じ年頃の女の子だった。

 きれいな栗色の長い髪をポニーテールにしている。

 

「冒険者登録がしたいの。案内してちょうだい」


 カツカツと足音高くこちらにくる。なんだか態度が偉そうだ。

 ビーさんが近くの案内係に目で合図すると、すかさず隣のブースが開けられる。


「登録希望の方ですね。まずはギルマス面接をしていただきますので、しばらくお待ちください。ギルドマスターに連絡を・・・」

「なにそれ。私は登録にきたのよ。さっさと手続きをしなさい」


 は ?

 部屋の空気にヒビが入ったようになった。

 エイヴァン兄様が静かに諭す。


「お嬢さん、登録するにはギルマス面接が必須だ。ギルマスの許可がなければ登録は出来ない。それはどこのギルドでも同じだ」

「私の生まれた街ではそんなものなかったわ。そんな古臭い制度がまだ残ってるなんて、さすが田舎街だけあるわね」

「ギルマス面接がない ? どこの街だ。大問題だぞ」


 冒険者たちがザワザワと騒ぎ出す。

 少女はフンっと言って案内係に詰め寄る。


「あなたは黙って登録すればいいのよ。それでおしまい」

「残念ながら規則ですのでできません。面接なしで登録したいのでしたら、どうぞあなたの故郷で登録してください。この街では無理です」

「この街でなきゃだめなのよ !」


 バンっと机を叩いて、少女は案内係を睨みつけた。


「王都で聞いたわ。昇格記録を破りまくっている新人がいるって。疾風のナントカってバカ女」

「バカ女って・・・私 ?」

「記録を破るのは私のはずだったのよ。なのにこんなド田舎のぽっと出に先を越されるなんて我慢できない。田舎ならではの甘い採点に違いないわ。だから、ここでもう一度記録を破って私こそが本物の新人王になるのよ」


 何言ってんだ、この女。

 つか、あなた、誰 ?


お読みいただきありがとうございます。

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