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ルーの討伐修行 その4 ルー、一生懸命かんがえる

 街は穏やかだった。

 桃色砂嵐(ピンクタイフーン)の訪れは警備兵と正門近くの人々以外気付かなかった。

 それでいい、と、警備隊長は思っていた。

 なにも知らず穏やかに過ごせるのが一番だと、歴代の隊長からの申し次ぎがあったからだ。

 その静かな生活を守るこそが我らの務め。

 その為に市警、冒険者ギルトとの連携を強めてきた。

 が、いざ現場にたどり着いてみれば、新人の冒険者、それも成人したばかりの少女がたった一人で魔物の集団と向き合っている。

 しかも、彼女は西の門で門前払いをされてここまで逃げてきたという。


「どうした。なぜ誰も助けない」

「待ってください、隊長殿」


 誰も動かないなら自分がと前に出ようとしたとき、冒険者の一人に止められた。

 兄様ズと呼ばれる二人組の一人だ。

 この街の冒険者の中でもとびきりの強者で、近頃急に身綺麗になって娘たちの噂になっている。

 たしかエイヴァンとかいったか。


「なぜ止める。早く彼女を街の中に入れなければ」

「わかります。ですが、少しお待ちください」


 冒険者は少女を指さす。


「見てください。彼女は今戦っています。戦いを始めるきっかけを探っているのです。しばし手出しは無用でお願いします」

「無理だ。いくら期待の新人とは言え、まだ()になったばかりだぞ。あれだけの量の魔物に一人で立ち向かえるのか」


 できますよ。立ち向かうだけならね、と冒険者は笑う。


「ご存知の通り、私の対番の係累は全員が無詠唱の魔法使いです。詠唱が必要な冒険者とは違う。今、彼女の中では必要な魔法を構築しているところなのです。私は彼女が確実に倒すことが出来ると確信しています。なぜなら、彼女は気迫で魔物に負けてはいない」


 確かに。少女と魔物の間には誰も入ることが出来ない、凄まじい気が渦巻いている。

 とても正式な冒険者になったばかりとは思えない気迫だ。

 頷くしかなかった。


「・・・わかった。だが、いつでも救出できるよう・・・」

「すでに冒険者たちが待機済みです。数が足らなければその時は助力をお願いします」


 門の内側と外側、そして門の上。

 ズラリと冒険者が待機している。

 手には獲物を持ち、戦いの始まる瞬間を待っている。

 警備隊長は自分も腰の刀を抜き、その集団に加わる。

 少女と魔物のにらみ合いは続く。

 そして、その瞬間が来た。



 俺は川沿いに西門を目指した。

 が、門は閉められ橋は上げられている。

 これでは街に入れない。

 ルーを追っていったはずのピンクの一角ウサギの姿が見えない。

 これは一体どういうことだ ?

 スピードを上げて正門に向かう。

 と、はるか向こうにピンクのモヤモヤが見えた。

 あれは正門の近く。

 さらに近づく。

 門の前に誰かが立っている。

 ルーだ。

 そして城壁の上に並ぶギルドの仲間たち。

 俺はギリギリ魔法が届くところで止まる。

 ルーは魔物と対峙している。

 何をしているんだ。

 だが、これだけ離れていても、彼女と魔物の間のピリピリとした空気が伝わってくる。

 どうしようというんだ。

 あいつはまだ剣は上手く使えない。

 あれだけの数の魔物を相手に出来るだけの魔法も覚えていないはずだ。

 すぐに手助けできるよう、少しづつ近づく。

 いくか ?

 どちらが動く ?

 その時ルーがニッと笑った。



 一角ウサギの集団。

 これに一度に襲い掛かられたら、さすがに生きてはいられない。

 剣 ? 正直うまくない。

 なら魔法 ? 火の魔法なら多分いけると思う。

 でも、それだと黒焦げの死体が積みあがるだけだ。

 やっぱりあのピンクの毛皮は貴重だと思うのよ。

 無駄にすることはないよね。

 お肉もちゃんと食べたいし、あ、変色したウサギって食べられるのかな。

 そうそう、あの角もたしか何かの材料になるのよね。

 お薬だったかな。

 変色後だから、いつもと違う効力があるんじゃないかしら。

 全部大切に使ってあげなくちゃ。

 さて、それでは具体的にどんな魔法を使ったらいいだろう。

 まず突撃してくる角対策。

 その後は毛皮を傷つけることなく殲滅と捕獲。

 一羽一羽を相手にしていられない。

 全部まとめて叩く方法。


 ルーちゃん、いいこと考えた ♪ 。


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