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末姫さまの思い出語り・その25

 今週も無事に三話更新できました。

 また月曜日ににお会いしましょう。

「ごめんよ、気が付かなくて。疲れてるみたいだとは思っていたけれど、まさかこんなに酷い状態だなんて」


 皇帝執務室勤務の父が謝ってきた。

 様子を見に来ようとはしたらしいのだけれど、宰相府と皇帝執務室はかなり離れている。

 上皇陛下の頃は隣り合っていたそうだが、宰相殿下が皇帝執務室に入り浸って仕事にならないと距離を取ったのだそうだ。

 そして両親は一年の大半は仕事で世界中を回っている。

 久しぶりで戻って来た母は、家令のセバスに話を聞いて王城に乗り込んできたわけだ。


「さすがに今回はこの状況に気が付かず放置していた宰相殿下に問題があるとのことで、これから少しずつ仕事を減らしていただき、最終的には宰相の座を降りて頂くことになると思う。末姫(すえひめ)が働きやすい環境を急いで整えるから、もう少しだけ我慢してくれるかな」


 父のおかげで随分と体が楽になった。

 自分では気がつかなかったけど、めちゃくちゃ疲れていたんだなあ。


「悪いところは治しておいたから、後はたくさん食べてたくさん寝て、『成人の儀』に備えて磨いてもらいなさい」


 しっかり休むんだよと言って父は出て行った。

 私は久しぶりで四時間以上寝た。



 それから二週間。

 私は滋養のある食事をし、昼寝をし、ぐっすり休み。

 そして毎日磨き上げられた。

 久しぶりに帰った屋敷には随分と使用人が増えていた。

 例の女学院出身の出来損ない侍女を一斉解雇したせいで、人手不足になった王城に我が家から貸し出されていたそうだ。

 私の正体も知っていて、色々と陰で手助けをしてくれていたらしい。

 ありがたい、ありがたい。

 そして宰相府での私の扱いに切れた母が全員連れ戻したのだとか。

 ・・・大丈夫だろうか、『成人の儀』と『春の大夜会』。

 今頃あちこちの部署が真っ青になってるだろうなあ。


 ちなみに宰相府で私に仕事を押し付けていた職員の皆さんは、全員減棒三か月を選んだそうだ。

 左遷も犯罪者になるのも嫌だろうから、そう来るだろうとは思っていた。

 中には今年の『成人の儀』に参加するお嬢さんを持つ人もいたから、めちゃくちゃ反省しているらしい。

 知らなかったとは言え、自分の娘には美容に時間とお金をかけたのに、同い年の私には面倒な書類仕事を丸投げにしていたこと。

 そして私がどんどん痩せて顔色が悪くなっていたことを知りながら見ないふりをしていたこと。

 宰相府からの移動を申し出たけれど、人望も実力もある人なので彼が辞めるなら自分たちもという職員が多かったそうだ。

 さすがにそれは困るということで残留が決定。

 人員は現状維持で春から五名の見習いが配属されるそうだ。

 ただ私の立ち位置は春の除目(じもく)では公表されていない。

 みんなの驚く顔が楽しみだ。

 にしても宰相殿下、甘いな。

 辞めたいなら辞めさせてあげればいいのに。



 たった二週間ですっかり隈も消えて健康体になった私に、母は「まあ、若いってすばらしいわ ! 」と大喜びだった。

 父によると栄養と睡眠不足と疲労で色々と危ないところがあったらしい。

 父の治癒魔法はそんな私を一気に回復してくれたけど、慢性的な不摂生は二度としないようにと釘を刺された。

 食生活とか酷いものだったしね。

 一日お昼の軽食だけとかいう週もあったっけ。


「一人前にお仕事を始めたあなたに、色々言うのは親としてどうかと思ったの」


 それがいけなかったのね。

 母は私を縛り付けてはいけないと考えていたそうだ。

 押し付けられたとは言え、最終的に自分で選んだ道ならば受け入れなけれはいけないと。

 

「この国はとても豊かだけど、他の国はまだまだ手助けが必要なの。でも優先すべきは家族なのよね。私たちは周りを見るばかりで、あなたの幸せを見誤ったわ」


 辛い思いをさせてごめんなさい。

 

 母は私に謝り続けていた。

 仕事をさせられるだろうことは理解していたけれど、それは『成人の儀』を終えてからだと思っていたそうだ。

 まさかショウソツで任官するのは想定外で、当然子供なのだからちゃんと気をつかってくれていると思っていた。

 そして見習いの半年以降は執務室内だけでの勤務の約束は周知されているはずだった。

 なのにこんなことになって。

 もっと自分が目を光らせていれば。


 けれどそれは無理な話で、私が出仕した年は両親は西の大陸に出かけていた。

 帰国した後は領地経営はもちろん、大陸中を回って治癒と土魔法で各国を援助していた。

 両親の魔法は規格外で、国内外で切望されているのだ。

 昨年は北の大陸から招かれて渡航している。

 色々あってその年の最終便に乗ることが出来ず、海が落ち着いた春になってやっと帰国することが出来た。

 急いで『成人の儀』の支度をと思ったら、問題の娘は王城に詰めていて帰宅しない。

 痺れを切らして職場に出向いてみれば、年頃の令嬢とは思えない姿で体調不良の娘が酷使されている。


「とんだブラック企業だわ ! 」


 けれど、それは私にも責任がある。

 相談すれば良かったのだ。

 祖父母に、エリアデルのおじ様に、スケルシュのおば様に。

 マールは両親について行ったので無理だったけれど。

 まだ出来る。

 私なら大丈夫。 

 そんな驕った気持ちがあの結果だったのだと思う。


 これからは定時出仕の定時帰宅を約束させられたし、必ずマールが職場まで送り迎えをしてくれるらしい。

 週休二日制も採用するそうだ。

 でも次の配置であれば、今までのようなことにはならないと思う。

 まずは使える手を全て使って、働き方改革だ。

 腕がなりまくっている。


 両親はしばらくは一切依頼は受けずに家で過ごすことを決めた。

 父は今年度、つまり『成人の儀』の前日で仕事を辞めると言う。


「僕の時間ももう終わるんだ。残りは家族と一緒に過ごしたいよ」

 

 何を言っているのかわからないけど、久しぶりで両親と過ごせるのは本当に嬉しい。

 いよいよ次回『成人の儀』です。

 四月が半分終わっちゃいました。

 本当に終わるかどうか不安・・・。


 お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 快方へ向かうどころか あっというまに快気とか 魔法がすごいのか 若さがすごいのか そうだ 両方すごいんだ! 気がつく前に読み終わった。 そのくらいすごいんだ!
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