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末姫さまの思い出語り・その20

 陽性反応と自宅療養から戻ってまいりました。

 まだまだ本調子ではありませんが、なんとか書く気力だけは取り戻しましたので、また週三の更新がんばります。

 お待ちいただきありがとうございます。

 隣国がおかしくなったのは四年前。

 私が女学院に入学した年だ。


「エイヴァンは過去の歴史とアレとの関連性を調べていた。それと並行して女学院出身者の質の低下と低位貴族令嬢の問題行動について宗秩(そうちつ)省と合同で調査した。また十年以上かけて育成した末姫(すえひめ)が入学してからの隣国の変化。そして、それは先日唐突に終わっている」

「終わっているとは、どういうことだ、英雄マルウィン」

「ある日突然、あの『ようこそ、ナントカの街へ』をしなくなったのですよ、陛下。本当に何もなかったかのように、です。時期的に女学院の廃校が決まった頃です」


 それはつまり強制力の終了ではないかとギルおじ様は言う。

 でも私には皆さんの話の半分もわからない。

 だって大本になる『何か』がわかっている前提での説明だもの。

 そしてその『何か』を私に説明されることはないのだろう。


「もしこれで強制力について信じて頂けないなら、陛下方にはこう質問して欲しいとエイヴァンから言付かっています」


 隣国の国名を、知っていますか。


「隣国の国名 ? それは、ほら、あれだろう ? 」

「確か、ええっと、ナニ王国だったかしら」


 隣国は高い山脈の向こう。

 国交はあるけれど、民間での交流はないと聞いている。

 海に面しているので海塩が作られているが、上質のものが帝国の東側でも生産されているので、わざわざ輸入することもない。

 領土が海に面している国でもそこそこの物が作られている。

 農産物も同じく。

 文化についても特に目を引くものはなく、学術にしても何か突出したものがあるわけではない。

 また隣国には帝国への道が一本あるだけで、それも片道で十日かかる。

 途中にあるのは小さな宿と関所だけ。

 外とのつながりは帝国だけだからという理由でこちら側に大使館はあるが、隣国には帝国の大使はいない。

 それどころか各国どこの国の公的事務所すらないのだ。

 そんな隣国の国名。

 ・・・なんだったっけ。


「みんな、気が付いたね。あの国は国名がない。『隣国』とだけ認識されているんだ。あの国の国王も国民もそれを疑問に思っていない。エイヴァンはこれこそアレの強制力。隣国は二つのイベントのためだけに存在していると考えていた。陸の孤島とも言える国の場所も、アレ以外で外の世界と関わらないためではないかとね」


 イベントが終わった今、もう関わっては来ないはずとギルおじ様は言うけれど、本当にこれで終わったのかな。


「これが強制力というものか。なんと恐ろしい。しかし、女神の手から逃れたと言うのに、我々はまだアレに支配されているのか ? 目覚められた神々は一体何をされているのか」


 上皇陛下がイライラした様子で椅子のひじ掛けを指で叩く。

 その向こうで何故か両親が頭を下げている。


「まあまあ、陛下。神々が目覚められたからと言って、突然全てが上手くいくとは限りません。神々はまだそのお力を十分に取り戻してはおられないはず。そこに女神の残照が入り込んだだけです。全ては終わりました。後は残った関係者をどうにかするだけです」

「・・・女学院に巣食っていた隣国の者たちか」

「陛下、すでに隣国の大使には国王宛ての書状を持たせて帰国させました。残った家族もすぐに後を追う予定です」


 スケルシュのおば様が追い出しの準備は整っていると説明する。

 大使館と言っても大使とその家族だけで回している、住居も兼ねているとても小さな屋敷だ。

 撤収作業も数日ですむだろう。

 

「となると残りは国外追放組の行く先だな。どこか目星はついているのか ? 」

「そこが今考えあぐねているところではあります。下手に放り出して戻って来られても困りますし」


『夜の女王のアリア事件』のように、数十年たってから暗躍されても迷惑ですしねとディーおじ様。

 本来こういうことは法務省や外務省で扱う案件なのだけど、今回は秘匿することも多いので、宰相府と宗秩(そうちつ)省が仕切っている。

 そしてスケルシュのおば様は前宰相でいらしたおじ様亡き後、宰相府相談(がかり)として宰相殿下のお手伝いをなさっているとか。

 知らなかった。


「宰相殿下は女帝陛下より目立とうとなさらないから、少し押し出しが弱いところがおありなのよ。だから色々な側面で軽く扱われることも多くてね。そこでエイヴァンの嫁の私が出張ってるの。()()『燃やせますよ』って言えば、大抵の省庁は言うこと聞いてくれるわね」


 ああ、思い出した。

『魔王による人間ロウソク事件』。

 これをきっかけにスケルシュのおじ様が王城内で不動の地位を手に入れたらしい、と聞いている。

 実際何があったかは伝わっていないけれど、それは当事者とその周辺が口を閉ざして一切表に出さなかったからだとか。


「単に燃やしただけなのよ。ただ範囲指定とか火力とかの調節は難しいから、人によっては物凄い魔法を使ったように感じたでしょうね」


 燃やすくらい誰でも出来るのにねとおば様は朗らかに笑う。

 確かに火をつけるのは生活魔法で、得手不得手はあっても誰でも使えるもの。

 温度の管理が上手だと、厨房や鍛冶場、陶磁器の窯場で重宝されるらしい。

 

「燃やすだけならルーちゃんに敵う人はいないわよ。素晴らしかったわ、例のあれ」

「・・・忘れてください、ナラさん。考え知らずだった若気の至りです」


 母もまた知られたくない過去を持っているようだ。


「それでですね、彼らの行先なんですけど」


 クロレキシとやらを話題にされないうちにと、母は地図を一枚テーブルに出した。


「ここはやっぱり諸悪の根源にお引き取りいただくのはいかがでしょうか」 

 突然の陽性反応で年度末完結が夢に終わりました。

「その前から無理だって言ってたじゃないか」とか「そのセリフは聞き飽きた」とか思われましたら、広告の下から『いいね!と応援のお星さまポチっとなをよろしくお願いいたします。

 お読みいただきありがとうございました。

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