末姫さまの思い出語り・その11
本来であれば平民と騎士爵以上では学ぶ教科が違う。
にもかかわらず一部の生徒が平民と同じ教育を受けされられた。
「調べてみると二階組は新興の家が多い。逆に騎士爵位でも古い家系は一階にいる。つまり洗脳し難い娘は排除されていたと言うことだ」
二階組は学院での授業内容は家で話さないよう指導されていたようで、ホウレンソウだの五分前精神だの叩き込まれた古参の家は邪魔だったのだろう。
とは言えおじ様は私の質問に答えてくれていない。
「ですから、私が知りたいのは何故ということなのですが、先程から全然違うお話をしてらっしゃいますよね ? 」
「・・・詳しいことはまだ言えない。はっきりしたら改めて場を設けるから、それまで大人しく待っていなさい。今は次の学びの場所をどこにするか決めるので忙しくてね」
王立魔法学園も騎士養成学校も手狭でねとおじ様はため息をつく。
学校一つ潰したので後始末が大変そうだ。
「ディードリッヒ兄様、場所なら女学院跡地があるじゃありませんか」
「いや、以前と同じ教室では元の教育を思い出すかもしれない。できるだけ記憶に引きずられないような場所が・・・って、ルー、跡地と言ったか ? 」
「はい、言いましたよ ? 」
母は冷茶を一口飲んでニッコリと微笑む。
おじ様の顔が段々と険しくなる。
「まさかと思うが、更地にしたのか ? 」
「はい、昨夜のうちに」
「サラッと言うな ! 」
「更地なだけにサラッとですな」
マールが変なツッコミを入れる。
「相変わらずメチャクチャな魔法を使うな。何かするなら先に言っておいてくれ。あんな建物でも使い道はあるんだ」
「ディードリッヒ兄様。私だってもう昔の子供ではありません。それを証拠に建物はきっちり解体して、建材や調度品などはちゃんと分けて並べておきました。全部修理済ですから、次に建設するときに使えます。本もきれいにしてテントの下に入れておきました」
門扉と壁はそのままなので、盗みに入るのは難しい。
ウチの番犬のフェンリルのシロも中に入れてあるので問題はないはずだ。
そう言って笑う母。
おじ様はと言うとかなり渋い顔をしている。
「お前なあ、兄さんが聞いたら何て言うか」
「お伺いは立てましたけど、末姫ちゃんの事をご存じなのか、心行くまでやっちまえと言われました」
「・・・兄さんも甘くなったな。いや、後始末するのが自分じゃないからか ? 」
兄さんって誰だろう。
おじ様には双子のご兄弟がいるとは聞いているけれど、今は生まれ故郷の東の諸島群に帰国しているはずだ。
スケルシュのおじ様を兄さんと呼んではいたけれど、あの方はもう二年も前に亡くなっている。
「それと、桜並木の前に新しい門が出来ていたが、あれもお前か ? 」
「はい。ここ数日でお門の前をウロウロする不審者が増えたんです。門衛にメモを片手に話しかけたりして、どうやら瓦版工房に記事を売りつけようとする輩と思われます。鬱陶しいので建材から金属製品だけいただいて、俄作りではありますけれど牽制のために建てました」
どこの瓦版工房も正社員の記者が書いた記事しか掲載しませんのにね。
悪質な記者擬きの取り締まりをよろしく。
「学舎の建設が決まりましたら土台作りとかお手伝いしますから、設計図が出来たらご連絡下さいね」
「ああ、その時はこき使うから覚悟しろ」
望むところですと言う母は、そう言えば土の魔法が得意だと聞いている。
けれど更地にするとか解体するとか、そんな魔法はあっただろうか。
「言いたいことは多々あるが、門扉をつけたのはよかった。多分今頃は門衛が大忙しだと思うぞ」
「あら、なんででしょう ? 」
「瓦版で末姫の正体がバレて、謝罪やら減刑の嘆願やらで色々と押しかけてくるんじゃないか ? 後は瓦版の記者たちだな」
未成年の貴族令嬢に直接取材は無理だろう。
かと言って両親が代わりに応じるとも思えない。
「そちらは宗秩省を通すように通達するつもりだ。返答は文書のみで、全ての瓦版工房に送る。内容はこちらで適当に考えるから心配しなくてもいい」
「・・・今日のこれみたいにおかしな記事にはしないでくださいね、おじ様」
「書くのは記者だから、それは約束できないな」
後日、私が心配したとおり『母君譲りの慈愛の姫』とか『級友を守り切れなかった己の不甲斐なさを恥じている』とか『一日も早く貴族社会に戻れるよう一層の支援を嘆願した』とか、またまた嘘八百が紙面を賑わすことになったのは言うまでもない。
「瓦版の記者さんたち、ちゃんと回答書を読んでるんでしょうか。こんなこと一言も書いてないではありませんか」
「彼らは心の翼を思うままに広げるからなあ。文字と文字の間を汲み取ったんじゃないか」
「そんな想像力いらないっ ! 」
家族のテレワーク続行がけっていしたたちばなわかこです。
そして末姫ちゃんの話が予定より膨らんでる。
誰のせいだ !
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お読みいただきありがとうございました。




