プロローグ
小説書き初心者です。
宜しければ読んでやってください。
今でも時々、あの時の事を思い出す。
なぜ、キミにあの場所に来てくれなかったのだろうか?
中学3年生の春、逢沢ハルは好きだった幼馴染に告白しようと彼女が好きだと言っていたショートケーキを徹夜で自作し校舎裏に手紙で呼び出しはドキドキしながら彼女が現れるのをは待っていた。
結局、彼女はいつまで経っても校舎裏には現れず告白できないまま家に帰り、彼女の為だけに作ったケーキをゴミ箱に捨て僕は泣きながらその日を終えた。
その次の日、親の離婚が決まり母親の実家について行くことになり、なぜ来てくれなかったのかと問いただせないまま転校することになる。
それ以来、彼女には会っていない。
冬も終わりを告げ少しずつ春の訪れが感じられるこの季節。
都心から少し離れた車通りの少ない小さな街の小さなカフェの前でハルは腕を組みながら呟いていた。
「やっと、ここまで来たんだ。」
小さい頃からある人言葉がきっかけでお菓子作りが趣味になりある夢ができたハルはその夢に向け高校卒業後、パティシエの専門学校へ入学し専門知識を学び、卒業と同時に本場パリで4年間修行をして現在、24歳で夢だった自分の店を開くという目標を達成していた。
そして今日この日がこの店、café petit bonheurの開店日だ。
petit bonheurはフランス語で、(ささいな幸せ)という意味で小さい頃、お菓子作りを教わっていた師が口癖の様に言っていた言葉から貰った名前だ。
アンティーク風の木造で建てられた二階建てのこのcaféは今時のオシャレな雰囲気を醸し出していて、この町の雰囲気にぴったりな仕様になっている。
わざわざ通勤しなくてもいいよう二階は自宅という形で造ってもらった。
「ハルー!中の掃除は終わったけど次、何すればいい?」
「OK、ありがとう拓海。もぅあとは開店だけだよ。」
店の中から箒とちりとりを持った男が窓から顔を覗かせながらこちらを見てニコッと笑った。
この無駄に顔立ちの良い誰にでも好かれそう性格をした青年は僕の高校からの数少ない友達である安藤拓海だ。
長身で人当たりがよく拓海はとにかくいい奴で僕が唯一気を許せる友達と言っても過言ではない。
今日は開店日という事でせっかくの休日だというのに店の準備を手伝ってもらっていた。
拓海が店から外に出てきて僕の隣に並んでさぞ自分の事かのように嬉しそうな顔をして呟いた。
「やっとお前の夢が一つ叶ったな。」
「うん、本当にありがとう。また落ち着いたら一緒に飲みに行こうな、話したいこともたくさんあるし。」
「おぅ!これから大変だろうけど頑張れよ。たまに店手伝いに来るからいつでも連絡くれな!それじゃ、おれこれから用事あるからもう行くな。」
「ありがとう!また連絡する。拓海も仕事頑張れよ!それじゃ、またな!」
拓海はニコッと笑って腕をブンブン振りながら帰っていった。
僕も店に入り、店の雰囲気に合ったアンティーク風の時計を確認する。
時刻は8時半過ぎ。
開店は9時からだからまだ時間はある。
最終チェックを終えたハルは店の中をぐるりと見渡し自分の夢が叶ったことでの高揚感と現実感に浸っていた。
ニヤニヤしながら時計を見る。
時刻は8時55分。
「よし!がんばろう!」
自分に気合いを入れるように呟きハルは夢への第一歩を踏み出した。
更新は土日予定です。