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これからの指針

いきなりファンタジー要素強くなります。

 王様の執務室を出た私は、せめて今までこの世界についての勉強を教えてくれていた教師陣達にはお世話になったお礼を言おうと、いつも通りのスケジュールをこなし、各授業の終わりに教師を呼び止め挨拶をした。

 その私の挨拶を聞いていた三人の少女達はなんだか複雑そうな顔をしてこちらを見つめていたけれど、午後の最後の授業のあと、部屋へと戻ろうとした私に声をかけ、『どうか元気で、そして幸せに』と、短い挨拶をしてくれた。

 どうやら彼女達は同じ境遇なのに一人冷遇されてた私を、彼女達なりに気にしてくれていたらしい。

 それでも、だからといって自分の所に来る王子様を譲るつもりはなかったようだけれど。

 まあ、それはそうだろう。

 そんな事をしたら今度は自分が私の立場になってしまうかもしれないのだから。

 誰だって自分が大事だ、仕方ない。

 まして、ここは慣れ親しんだ、生まれ育った世界ではないのだから、余計に目の前にある幸せへの道を守ろうとするだろう。

 好き好んで苦労する道を選ぶ筈もない。

 私だって彼女達の立ち位置にいたら同じ行動を取っただろう。

 だから私は苦笑しながらも、『貴女達も元気で。幸せにね』とだけ告げて、部屋へと戻ったのだった。


「さて、と……これからどうするかを、考えなくっちゃね。……とりあえず……ステータス!」


 そう唱えると、目の前に長方形の透明な光の板が現れた。

 これは自分の名前や年齢、能力などが数値化されて表示される、ステータスと呼ばれるものだ。

 授業で習った時はいかにもファンタジー世界にありがちなものだなぁと感心した。

 これは基本自分にしか見えないらしいが、他人にも任意で見せる事は可能らしい。

 けれど教師陣から、これは絶対的に信頼できる人にしか見せてはいけないと、きつく言われた。

 その為私は、いや、恐らく彼女達も、まだ誰にも見せてはいないと思う。

 自身の為に王子様の花嫁となる事を受け入れてはいても、絶対的にと言えるまでの気持ちを抱いているかといえば、きっと首を傾げるだろうから。

 まだ、今は。

 だから王子様方、頑張れ。

 棒読みでの応援を送って差し上げよう。

 おっと、そんな事よりも今は自分の能力の再確認をしなくちゃだった。


「ええと……?」


 真名 牧野千草

 性別 女

 年齢 19


 力   19

 魔力  25

 知力  25

 素早さ 20

 運   23


 固有スキル

  究極の癒し手


 習得スキル

  料理 レベル2

  清掃 レベル4

  洗濯 レベル2

  園芸 レベル1

  癒し レベル∞


 習得魔法

  回復魔法 レベル∞


「……うん、授業で教えられて最初に見た時と何も変わってないね」


 力などの数値については、たぶんこれが十九歳一般女性の普通なのだろうと思う、たぶん。

 習得スキルの料理、清掃、洗濯、園芸については、生まれてから今までやってきた経験がレベルに反映されているんだと思う。

 園芸は少し前に始めた、プランターでのプチ家庭菜園で得たスキルだろうし。

 あ、この世界にきた今となっては、少し前に終わった、になるのか。

 ……私が育ててた野菜達、どうなったんだろう……はあ。

 って、いけないいけない、思い出して感傷に浸ってる場合じゃない。

 重要なのは、固有スキルと、それに付随しているんであろう癒しスキルと回復魔法だ。

 私の固有スキル、究極の癒し手。

 これの表示部分に意識を集中させ、表示した詳しい説明文によると、これは身体的・精神的を問わず、回復に関するものになら凄まじい効果をもたらすらしい。

 この凄まじい効果とは、果たしてどの程度か。

 それについては未確認だけれど、つい先日、勉強に集中したあまり凝った肩を揉みほぐそうとしたら、たったの二・三回揉んだだけで凝りが綺麗さっぱり消えた事から察するに、物凄い効力があると思われる。

 となればやはり、冒険者ギルドに登録して、回復役として活躍するのが一番良いのだろうとは思う。

 だけど私は、冒険するよりも、安全で穏やかな生活を送りたい。

 できれば、小さくてもいいから何処かに何かのお店を開きたいんだけど……。


「……まあ、それは資金さえあれば何とかなるだろうから追々考えるとして。まずは定住地だよね」


 この国からは出ないと、王様と約束した。

 これは守るつもりでいる。

 他国へ出て、もし私の出自が知れたら面倒な事になりそうだし。

 だからこの国の何処かに定住地を見つける事になるんだけど……見つかるまでは、しばらく旅生活かな。

 あ、面倒と言えば、名前。

 本名は真名になるから易々とは名乗れないし、仮の名前を考えなくちゃ。

 う~ん、仮の名前とはいえ、本名のチグサ・マキノからそう遠くない名前がいいよね。

 それでいて、この世界にあるっぽい名前…………う~ん。

 チグサ・マキノ、チグサ・マキノ、チグサ・マキノ………………。

 …………ティズーシャ……ティズーシャ・マッキーノン、とか……いいかも?

 うんうん、いいかも!

 よし。

 私は明日から、ティズーシャ・マッキーノン!

 新天地を求めてさすらう旅人、ティズーシャ・マッキーノンよ!!

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