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お仕事しましょう! 2

 依頼を受けてロベル達と別れ、私とシギとメルは闘技場へと向かった。

 ロベル達の依頼は数日かかるものだから、私達も数日この仕事をするつもりだ。

 依頼主たる闘技場の経営者に会い、治療室へ案内される。

 その際に交渉した結果、メルの分の報酬に関しては、私やシギの報酬額の半額という事になった。

 さて、仕事だ。

 闘技場は広い。

 試合で怪我をした選手は勿論、観覧をしていて興奮し過ぎたお客さんが失神して倒れたり、血気盛んな人達が些細な事から喧嘩になって怪我したり、子供が選手の真似をして子供同士で戦って怪我をしたりと、様々な人達が訪れ、運ばれてくる。

 中には血を見て気持ちが悪くなって吐いたなんて人もいて、この人は何で闘技場に観覧になんて来たのかと不思議に思ったりもした。

 そんなわけで、ここへ来る前は怪我をした選手の人だけを治療すればいいと思っていたけど、なかなか忙しい。

 まあそれでも治療に訪れる人の足が途切れる事はままあるので、そういう時間は休憩やメルの回復魔法習得の為の指導の時間に当てているのだけれどね。

 そうして働いて三日目、私の前に獣人の女の子が運ばれて来た。

 意識のないその女の子はやせっぽちで、身体中に痣があり、見るからにボロボロの状態だった。

 運んできた闘技場の人によると、この女の子は出場した選手らしい。


「こんな小さな女の子が選手だなんて……どうしてそんな……」


 女の子の状態の酷さに、回復魔法を唱えながら、私は思わずそう呟いてしまう。

 すると、治療室に留まって女の子を気遣わしげに見ていた闘技場の人が痛ましげに表情を歪め、口を開いた。


「……妹さんの、為らしいんです。この子の家族はもう妹さんだけらしいのですが、その妹さんが病に倒れ、それが難しい病で、完治させる為にはかなり強力な回復魔法かとてつもなく高価な薬が必要らしく……それを手にする為に、勝者の賞金目当てに出場をしているんです。……けれど、獣人とはいえまだ子供だから、今日のように負ける事も多々あり……。……痛ましく思ってはいるのですがね。私ではどうしようもしてあげられなくて……」

「妹さんの為……。……そうですか。……かなり強力な、回復魔法……」


 ……それなら、私の魔法でどうにかできないかな。

 なんたって私は"究極の癒し手"というスキル持ちで、回復魔法∞を習得しているわけだし。

 助けてあげる事が、できるかもしれない。


「……ねえ、シギ、メル。私、今日の仕事が終わったら、この子と一緒にその妹さんの所に行こうと思うんだけど、いいかな?」

「はい、ティズ様。勿論です」

「助けてあげて下さい、ティズ様!」

「え? ……"助けて"って……治せるんですか? 貴女が? それほどの回復魔法の使い手だと……?」

「あ……いえ、えっと、その。……確実に治せるかは、わかりませんけど……でも、試してみようと思います」

「いいえ! ティズ様なら大丈夫です! 死を待つばかりだった私達を治して下さったんですから!」

「俺も、ティズ様ならできると思います。……あの時のロベルは、本当に酷い状態だったんです。ティズ様はそれを治したんですから」

「……死を、待つばかりの……? ……酷い状態を治した……。……な、なら……お願いします、この子と妹さんを、助けてあげて下さい……! 病から、こんな生活から、どうか……!!」

「……はい。全力を尽くします」


 深々と頭を下げる闘技場の人は、私がそう言うと、更に深く頭を下げ、もう一度『お願いします!』と繰り返した。

 そうして、私達はその日の仕事が終わった後、半信半疑な様子の女の子の案内で、妹さんが入院しているらしい病院へと向かった。

 そこで妹さんに会うやいなや、私が早速回復魔法を唱えると、妹さんは途端に元気を取り戻し、それを見たお医者様が慌てて診察すると、無事に完治したとの診断結果が出る。

 泣きながら抱き合って喜びを分かち合う姉妹に、微笑ましい気持ちと安堵を抱きながら、お医者様にだけそっと頭を下げ暇を示すと、私達は静かにその場を後にした。

 難しい病と言われただけあって、私は仕事後だった事もあってかなりの魔力を消費したらしく、また魔力の枯渇を起こし、病室を出た所で気を失い、宿までシギに抱き上げて運んで貰ったのだとメルに教えて貰って、羞恥に顔を赤くしながらシギにお礼を言ったのは、その翌朝の事だった。

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