宿にて
すっかり陽が落ちて、私達は宿に帰って来た。
部屋割りは、私が一人部屋、リゼとメルが同室、シギとロベルとシードが同室だ。
宿の人は、シギ達五人を奴隷と認識すると、奴隷部屋で五人一緒くたに押し込める事を提案してきたけれど、私が頑として断ってこの部屋割りとなった。
一人になった部屋で、私はベッドの上に腰掛け、ふぅと息を吐く。
しん、と静まり返った部屋は、どこか落ち着く。
あの宿営地で目が覚めてからというもの、あの五人が、特にシギとロベルが、すぐ側でわいわいと話していたからか、この静かな空間は何だか貴重に感じる。
まあ、あの賑わいも、決して嫌ではないし、むしろ好ましいんだけどね。
何しろ私は、この世界に来てから今まで、自分から必死に動かなければ、誰からも話しかけては貰えなかったんだから。
あの王子様達に向けられてた表情と、五人が向けてくる表情は、まるで違う。
五人は私が買った奴隷で、主人と奴隷という関係だけれど、彼らが浮かべる表情からは嫌悪も不信も欠片も見当たらない。
むしろ……何でか、好かれてる、と、思う。
私はようやく、この世界で、好意を持って側にいてくれる人達を得られたのかもしれない。
「最初は物凄く躊躇したけど……奴隷商館、行って良かった」
彼らを、買って良かった。
私はぽふんと音を立てながらベッドに横になり、そのまますやすやと眠りに落ちた。
それはこの世界に来て初めての、安らぎと安堵に満ちた眠りだった。
……あれ、思っていたより短くなった……何故だろう(;゜∀゜)




