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衝撃の真実

 イノシーのお肉は、それなりに美味しかったけど、ちょっと固かった。

 食べた結果、私はやはりニワニリーのお肉のほうが好きだという結論になった。

 お肉を口にする度にこっちをじっと見つめてくるシギとロベルに苦笑しながらそれを告げると、ロベルは勝ち誇った笑みをシギに向け、シギは悔しそうに俯く。

 けれどすぐに顔を上げて、『次は必ずティズ様のお気に召す獲物を獲ってきます』と言った。

 ……お気に召すって……美味しいって言ったのにな?

 というか、イノシー派とニワニリー派とで対立してたんじゃなかったの?

 よくわからない。

 そして案の定、六人では食べきれずに余ってしまったそれらのお肉達は、この夜営地への到着が遅くなり、食材の現地調達ができなかったキャラバンの人が買ってくれた。

 念の為の保存食は持っているが、それは本当に困った時の為のもので、なるべく現地調達した食材で食事をしているのだそうだ。

 旅生活では何があるかわからない。

 私はキャラバンの人達から旅の心得を聞き、そしてシギ達六人の服を数着とそれぞれの鞄を購入した。

 旅人の持つ鞄は容量が大きいほうがいいとの事で、小さな見た目なのにたくさん入るマジックバッグだ。

 どうやら私のもそうらしい。

 マジックバッグは便利だから、それぞれに持たせる事に異論はないけど、ちょっと……やっぱり、いいお値段がした事が痛い。

 また、ロベル達四人から、次の街か村に着いたら武器を購入したいと言われた。

 ロベルとシードが今持っている武器は刃こぼれがあって切れ味が非常に悪いらしい。

 メルとリゼも、ただの木の杖ではなく、小さくても魔石のついたものが欲しいらしい。

 魔石は魔法の威力を上げてくれるものだから、魔法を使う二人には当然の主張だろう。

 ……稼がなければ。

 私は強い決意を持って、翌朝皆と共に、最寄りの街を目指して歩き出した。


☆  ★  ☆  ★  ☆


「ティズ様、見えてきました! 街です!」

「完全に陽が落ちる前に着きますね、良かった」

「そうだね。……ねぇ、皆。今日はもう暗くなるから無理だけど、明日は私、一日何か仕事をして、旅の資金を稼ごうと思うんだ」

「えっ……? 仕事を?」

「旅の資金……? の、残り少ないのですか? ティズ様?」

「も、もしかして、俺達を買ったから……」

「……服とか鞄も、買ったしね……」

「あ、あの、ティズ様! 私やっぱり、杖はいいです……! この木の杖、使います!」

「えっ? あ、いや、大丈夫だよメル? それに皆も! お金はね、十分にあるの! ただ、ただね、私、東の土地に着いたら、何か商売を始めようと思うんだ。その為には、開店資金とか色々、必要でしょう? だから使って減った分は少しでも稼いで戻しておきたいんだ。それだけなの。だから気にしないで?」


 街が見えると、私は皆に、その街で仕事をする事を告げた。

 すると皆は途端に動揺し出して、落ち込んでいく。

 メルに至っては杖を新調するのを諦める始末だ。

 私は慌てて誤解を解く為に口を開いて働く理由を述べた。


「商売を……。……そうでしたか。……では、俺が働きます。ティズ様は俺の主なのですから、どうか俺に命じて下さい。ご自身が動かれる必要はございません」

「え? ……ええっ!?」

「……『俺の主』……か。……そう、だな。けどシギ、そこは、俺達の、だ。ティズ様、俺達が働きます。貴族であるティズ様が市勢で働くのは大変でございましょうし」

「へっ!? き、貴族……!?」

「ああ……そうだな。それに何よりティズ様は、年下だし。年下のご主人様を働かせられないよな。よし、俺も働きます、ティズ様!」

「えっ? と、年下!?」

「そうね。私も働きますね、ティズ様!」

「わ、私も! 頑張ります!」

「え、えっ? ちょ……ちょっと待って皆!? 貴族って何? それに年下って……!?」


 ど、どういう事??

 私は貴族なんかじゃないし、それに、皆より年上のはずだ。

 五人の中でも年長だろうシギやロベルだって、私のひとつ下の十八歳くらいだろうし……。

 ……十八歳くらい……なんだよね?


「えっと……そもそも、皆って何歳なの?」

「え、はい。俺は、十六ですが」

「俺もです」

「えっ!? シ、シギとロベル、十六歳なの……!?」

「俺は十五です」

「あ、私もそうです」

「私は、十四歳です……ティズ様も、そうでしょう?」

「えっ!?」


 シ、シードとリゼが十五!?

 メルが十四!?

 三人とも十七歳か十六歳だと思ってた……!!

 …………て、いうか。


「メ、メル……私は、十九歳だよ? 十四って、そんな。お世辞でも若く言い過ぎだよ……」

「えっ!?」

「ティッ、ティズ様、十九歳なんですか……!? 年上っ!?」

「お、俺もメルと同じで、十四くらいだと思ってました……」

「お、俺も……」

「……私も。だって、その外見……」

「へっ……!?」


 メルに向かって訂正すると、メルは大きく目を見開き、他の四人も驚く。

 中でもリゼは愕然とした様子で視線を動かし、ある一点を見つめた。

 その先にあるものは…………。


「なっ……! 何よリゼ!? 言っておくけど、私は普通、平凡よ!? 貧乳なんかじゃないんだから!! 普通なんだからねっ!?」

「えっ……あ、は、はい……そうですね、ティズ様」

「うっ!! そ、その憐れみの視線はやめて……!!」

「…………あ~……ええと。すみません、ティズ様。ティズ様は、年下だと思っていました……」

「え。あ、ああ……まあ、いいけど。私もどうやら思い違いしてたみたいだし。でも、誤解が解けたなら、いいでしょう? 皆が働いてくれるならそれはそれで助かるけど、私も働くからね」

「え。いえ、しかし。年上でも、ティズ様が俺の、いえ、俺達の主である事に変わりはございませんし」

「だな。それに先ほども言いましたが、貴族であるティズ様が働くのは、大変でございましょう?」

「あっ、そうだ、それ! 私は貴族なんかじゃないよ? どうしてそう思ったの?」

「はい? どうしてって……ティズ様は姓を名乗られたではありませんか?」

「そうよね。なら、ティズ様は貴族って事でしょう?」

「平民には、姓はないですからね……」

「えっ!? な、何それ、そうなの!?」

「え……ご存知、なかったんですか?」


 ……うん、知らなかったよ……。

 だって、お城では、名前と姓を考えるように、言われただけだったし……。

 ……も、もしかして、私が知らない常識って、まだ多い?

 あれだけ、学んだのに?

リアル事情により、今回を最後に毎日更新は終了となり、次回から更新速度が下がります。

日数が経ったら、状況によってはまた毎日更新ができるかもしれませんが、期待せずにお待ち下さいませ。

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