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第85話 それぞれの観光

後半深夜テンション注意

やっぱり文がお粗末です、磨かれた文を読みたい方には向きません。

第3者視点


「なぁ……お前本当にずっと見ている気か?」


「従者たる者、常に主人の身を案じて仕えなければいけないのです」


公都で分かれたメンバーは大体カップル、若しくはペアになっている。


恋仲のグライムズとアイリーン、ブラックバーンとクレイはペアになるが、第1分隊で唯一恋仲では無いペアが居る。


ヒューバート・ハドックと、エイミー・ハングだ。


ヒューバートはヒロトが人員召喚で初めて召喚した人物で、召喚前______所謂"前世"では、米陸軍特殊部隊"グリーン・ベレー"だった隊員だ。


エイミーはエリス派の筆頭、屋敷ではクロイス騎士団の副長とメイド長を兼ねていた人物だ。

短い金髪で、今は側頭部辺りを編み込んでいる。


「お前もゆっくり楽しめないだろ?」


「良いんですよ、私は私で楽しんでるんですから」


場所はヒロトとエリスが食事を摂っていたレストランの道を挟んで向かい側にあるカフェだ、ヒューバートは半ば強制的にエイミーに連れ出され、何事かと思えば「エリス様達を影から護衛しましょう」と言われ溜息をつく。

視線の正体は、彼女らだった。


「ここで本当に時間潰してるつもりか?……まぁ構わんが」


「そんな訳無いじゃないですか、エリス様の移動に合わせて移動しますよ」


そう言うエイミーは果実水……要はジュースを注文して飲みながらヒロトとエリスが入っていたレストランを眺めていた。


ヒューバートはコーヒーを飲みながら同じ方向を眺めている。

やはりコーヒーはグライムズが淹れた物が一番美味いのか、飲みながら僅かにだが眉根を寄せる。


暫くそんな張り込みの様な事が続いていたが、エイミーが動いた。


「あ、出て来た」


「どっか行くのかな」


「行くのかな?じゃないですよ、私達も行きますよ!」


エイミーは果実水をぐいっと飲み干す。

えぇ……と不満を訴える様に声を漏らすヒューバートもコーヒーを飲み切って連れ出し、手早く支払いを済ませてカフェを出てヒロトとエリスを追い始めた。


===========================


暫く尾行を続けていたが、ヒューバートはエイミーの尾行を見て思う所があった。


「……お前、尾行下手くそだな」


「えっ!?嘘っ!?」


エイミーの尾行は下手な探偵のそれだ。

建物の影やゴミ箱の影に隠れてそっと様子を伺い、見つかりそうになったらさっと隠れる。


これじゃ怪しさ満点だ……

エイミーはメイドとしてはかなり優秀なので尾行も上手いと期待していたが、どうやら勝手な期待だったらしい。

それにしてもアニメの様な尾行に軽く頭を抱える、どうやら尾行は苦手の様だ。

……この世界自体がファンタジーアニメみたいだが……


「良いか?尾行のやり方を教えてやる」


グリーンベレーにいた時代、CIAに雇われて尾行を行なった事があった。


"人に溶け込む事"が最も重要だ、ナツやローナなどのこれは情報部の隊員にも教えている。


対象と目を合わせない事、不自然な行動はしない事、距離を保つ事、人の流れに溶け込む事。他にも大切な事はあるが、これは基本的な事である。


「銃持ってるし制服の時点でもうダメなきがするが……こんなところか……」


「なるほどですね……」


「まぁ付いて来い、ヒロトさん達を付けるんだろ?」


「はい、お願いします」


エイミーは素直に聞き入れる、2人は出来るだけヒロトとエリスを尾行し、様子を伺った。


===========================


グライムズ&アイリーンの場合


グライムズ視点


帰りのヘリの時間まで自由行動が許された。

ヒロトさんが召喚したオスプレイと言うヘリ……じゃなかった、ティルトローター機?は、ヘリより早く飛べる。


けどそれでも公爵と面会の間ずっと待っている訳にもいかず、一度帰ってからまた来る。


その間の自由行動となる、大体4時間ほどだろうか?


まぁ、それまで楽しむか、久々の休暇だし。

俺の隣には、赤毛の可愛い恋人がいる、要人護衛の対象がヒロトさんから彼女に移った感じだ。


アイリーンと共に昼食を済ませ、暫く街を歩く。


「アイリーン、何処か行きたいところあるか?」


「んー……公都なんて初めて歩くし……"公都がどんなところ"って歩きながら分かればいいかな」


なるほど……最初は雰囲気を掴みたいって感じか。


「じゃあ、適当に歩きながら色んなところ見つけようか。公都に来る機会は今後もあるだろうし」


「賛成」


アイリーンは微笑みながらそう返す。

今いるここは商店街の様な場所で、軽い食事を取れるカフェの様な店や雑貨屋、武器屋もある。


武器屋は冒険者や傭兵と思しき人物が出入りし、カフェも今の時間はほぼ満席で、街は活気に溢れている。


「うーん……どこみようかなぁ……」


そんな事を言いながら隣を歩くアイリーン、可愛い。

少し癖のある赤毛が所々跳ねていて、吸い込まれそうな緑色の大きな目をしていて、何だかよくわからないが甘い匂いがするが、アイリーンは化粧をしたり香水をつける様な人じゃない。


しかし、まじまじと見ているとアイリーンは視線に気付き、こちらを向いて首を傾げる。

俺は「何でもない」と言う風に微笑みを返し、辺りに視線を巡らせる。


すると、すれ違いざまに人と肩が軽くぶつかった。


アイリーンもそれに気付き、こちらを振り向いている。

ぶつかった人に謝ろうと思い後ろを振り返ると、あちらも気付いたのか、こちらを振り返っていた。


見るからに柄の悪そうな筋肉質で色黒の、目つきの鋭い男だ。それも数人。


「すみません」


「あ?テメェどこ見て歩いてんだ?」


男の1人が思い切り凄む。男の背中には両手剣が背負われており、戦闘ギルドに所属しているか、仲間内で傭兵か冒険者を生業としている事が窺える。


「肩がぶつかってしまい、すみませんでした」


ここは素直に謝る他無い、ぶつかってしまった以上、どちらかに非はある。

……そして、あの手の連中は、折れる事が無いと言うのも、経験上知っている。


「何でもすみませんでしたで済んだら騎士団は要らねえんだよ!」


「俺らはなぁ、最近他の傭兵や冒険者共に獲物を横取りされてイラついてんだよ。なぁ、お前らぶつかって来たんなら、発散させてくれや」


あぁ……面倒臭ぇ……


アイリーンに目配せ、彼女は無言で頷き、僅かに腰を落とす。


「お?おい、女が居るぞ」


「本当だ、しかもメチャクチャ可愛いじゃねぇか。お前ら恋人同士か?」


「ねぇカノジョ!俺らと連れ込み宿行かない?カレシよりずっと上手だから!」


ギャハハハと下卑た声で笑う男達、ギャラリーは遠巻きに見て居るか、そそくさと立ち去るかどちらかだ。


まぁ、自分から面倒事に首を突っ込みたく無いわな……


そんな事を思っていると、1人がアイリーンに手を伸ばす。

あぁ……またこのパターンか……

リンカーの街で、同じ様な感じで絡まれた、あの時は何も出来ず、下手をすれば俺は殺されてアイリーンは犯されていたに違いない。

だが、今の俺達は違う、ガーディアンとして訓練を受け、戦士になった俺達は。


「彼女に触るな」


俺はその手を払い除けた、当然だが、男達は激昂する。


「あぁん!?テメェ喧嘩売ってんのか!?」


俺は胸倉を掴まれる、もう1人はアイリーンの肩を掴む。


次の瞬間、アイリーンの肩を掴んだ男は一瞬宙を舞い、背中から思い切り地面に叩きつけられた。


俺も胸倉を掴んで来た奴の手首を捻り、背負い投げの要領で男を投げる。

投げられた男の着地点には、アイリーンが地面に叩きつけた男がいる。


「ぐふぇ……!」「ゔっ……」


カエルが潰れた様な悲鳴が2人分、入隊訓練で行なった"徒手格闘術"の中の一つだ。

アイリーンは倒れた男にP90を向ける、抜かりはない。


「テメェ!」

「ふざけやがって!」


残りの男達は背中から剣を抜く、が、その剣が振るわれる前に胸ポケットから手帳を取り出し、ガーディアンのエンブレムを見せる。


盾をモチーフに3本の線が中心で交差し、その中心には1発の弾丸。

下には"Guardian"の文字。


「ガーディアンだ、武器を捨てろ」


「が、ガーディアン……?」


「ガーディアンって……あの……麻薬カルテルを文字通り殲滅した……?」


「知ってるなら話が早い、武器を捨てろ。捨てなければ非常に痛い目に遭うぞ」


ヒイッ、とさっきの威勢と一変、怯えた悲鳴を挙げて武器を捨てる。


「……よろしい、今回は見逃してやる。こいつらを連れてとっとと失せろ」


俺は出来るだけ冷たい目で見下ろしてそう言うと、彼らは未だ地面に伸びて咳き込んでいる男を引きずる様に立ち去った。


「……ふぅ」


大きく溜息を吐く、アイリーンは一仕事終えたかの様にP90に安全装置を掛けてこちらを向いた。


「ありがとうグライムズ」


「いや、いいんだ。前みたいになるより遥かにマシだ」


「ふふっ、そうね」


何事も無かった事に安心し、彼女は微笑みながら手を繋いできた。

俺は応える様に指を絡ませ、街の観光を続けた。


===========================


ブラックバーン&クレイの場合


クレイ視点


公都に来ています。

とは言っても、遊びに来ている訳では無く、ドラゴン討伐の完了報告を公爵閣下にしに来たのです。

公爵閣下にドラゴン討伐完了の報告をすると、公爵閣下はヒロトさんに報酬を渡しました。

何と金貨2000枚です、普通の人なら一生遊んで暮らせます。


これでも凄いのですが……ギルド組合からもっとお金が貰えると言うのです。


「ヒロトさん凄いねぇ……」


「ああ、流石は我らが隊長だ」


隣を歩くブラックバーン、何故ヒロトさんの仕事で2人で歩いているかと言えば、帰るヘリが来るまでに時間があるからです。


ヘリ?じゃ無かった……オスプレイはティルトローターと言うんでしたっけ。


時間があるので、町の観光の為に自由行動の時間を取ったのです。


私はブラックバーンに誘われました。何故って……その……恋人ですから。


「どうしたクレイ?顔赤いぞ?」


「な、何でもない……大丈夫」


「……具合悪かったら、いつでも言えよ?」


気配りしてくれるブラックバーン……優しいな……

思わず彼の横顔に見惚れてしまいます。


「……そのマフラー、暑くないのか?」


「ん、平気。魔法で勝手に調節されるの」


私は春真っ只中であるにも関わらず、真っ赤なマフラーを巻いています。

時折「暑くないのか?」と訊かれますが、暑くはありません。やはり魔術のせいでしょうか……


「どこ行こうか……カフェでダラダラと時間を潰すのも良いけど……」


私の為に色々考えてくれるブラック、私はブラックと一緒に居られればそれで良いんだけど……


と、私はふと、ある建物が目に入り、立ち止まります。


「ん?どした?」


ブラックバーンがそれに気付き、こちらを振り向き、私と同じ方へ視線を向けます。


私が目に止めたのは、教会でした。


宗教に信仰深い信徒なら1週間に一度お祈りを捧げ、男女が生涯の縁を誓い合う施設。


私にとっては……それと同時に、親友であるノエルちゃんが惨殺された、因縁のある施設。


今日はお祈りが終わったのか、中に入る人より出る人の方が多いようです。


「……中、見るか?」


ブラックバーンがノエルちゃんの事件を思い出し、気を使ってか控えめに誘います。


私は静かに頷きました。

両開きの大きな扉を潜ると、中はベンチがいくつも並べられていて、ベンチにはお祈りを捧げる信仰深い信徒が座っています。


真ん中は赤いカーペットが敷かれ、宣教師や牧師の立つ台。その上にはステンドグラスがあります。


私は辺りを見回します、私が……私達が連れ込まれたのは、脇の通路に入った場所。


教会の作りは、どこも似通っています。当然ながら、私達が監禁された部屋と同じ部屋も……


「辛いなら……思い出さなくてもいい」


「平気……私は現実を……受け止めなきゃダメだから……」


そう言って、教会の中を少し見て回ります。

やはり、ベルム街やイサイアの教会と、ほぼ作りは同じでした。


ここでノエルちゃんは……そう思いもしましたが、思った所でノエルちゃんが帰って来る訳ではありません。

それに、ここは公都バルランス、ベルム街の教会とは違うのです。


悔やんだりするなら、この教会じゃない。


そう思い、その場所を後にします。


「……式は……教会じゃない方が良いか?」


隣を歩くブラックバーンが、呟くようにそう言いました。

式……と言われて、一瞬思考が止まりました。

もちろん結婚式の事です。


「なっ……!?」


「クレイが教会に辛い思いを持ってるなら……掘り返す様で申し訳ないから……」


「な……なななな何言ってるの!?!?きききききっ、き、気が早いよっ!?」


きっと私の顔は、リンゴの様に真っ赤になっているに違いありません。

だってこんなに顔が熱いんですもん。


「そうか?俺達はもう十分結婚出来る年だぞ?」


「ま、まぁそりゃ、私達好き合ってるし……その……部屋も一緒にしたし……き、キスもしたし……」


多分、後半の言葉はブラックバーンの耳には届いていないでしょう。声が小さくなってしまいましたから。


「で、でも。結婚するなら……やっぱり教会がいいな……ノエルちゃんも、見てくれてそうだし……」


「じゃ、そうしようか」


「う、うん」


真っ赤になったと思う顔を見られない様に俯け、そう言いました。

私とブラックバーンが……結婚……


やっぱりドレスは白がいいな……皆の前で誓いの……き、キスとか……するのかな……

エリス様も祝福してくれるだろうか……優しい人だから、自分の事の様に喜んでくれそうだな……嬉しい……


そんな思いが後から後から溢れて来ます。


結婚した後は……その……子供も欲しいな……2人くらいかな……?

でも……子供を生むためには……s


「クレイ、大丈夫か?」


「わひゃっ!?だ、だだ大丈夫だよ……!」


「そうか、何か顔を真っ赤にしてたから、具合でも悪いのかと……」


「う、うん、大丈夫。元気元気!」


危険な思考に陥りかけた私をブラックバーンの声が目醒めさせます。

ふう、危ない危ない。


「じゃ、また色々探そうか」


「うんっ」


私が込み上げてくる嬉しさを抑えきれずにこりと笑うと、ブラックバーンも微笑み返してくれます。


私達も私達の方法で、公都の観光を楽しみました。


===========================


ヒロト視点


見たいと言っていた小物屋でのエリスは、年相応の少女のものだった。

普段は凛々しく、元騎士団で現ガーディアンを纏める皆の姉の様な存在だが、やはり17歳、年頃の女の子だ。


髪飾りをつけて「似合う……かな?」と少し微笑みながら振り向くエリスは吐血しそうな程可愛かった、いやマジで、何ですか俺を萌え殺す気ですかエリスさん。

これが凛々デレの破壊力……恐るべし。


エリスは余り派手な装飾を好まない、なのでエリスが手に取った髪飾りも、装飾の少な目でシンプルなデザインのものが多かった。正直言葉が出ない程似合っている。


エリスが選んだ髪飾りは、プレゼントとして俺が買ってあげた。

レストランでも出して貰ったし悪いと断られたが、このくらいカッコ付けさせろと言って押し切った。


「そんな事しなくてもカッコいいのに……」とも言われたが……


幸せそうな笑顔を浮かべたままその髪飾りをつけて俺の隣を歩くエリスを見て、俺まで癒されて幸せになってくる。


「公都は楽しめたか?」


「ああ、とても有意義な時間を過ごせたよ。ありがとうヒロト、良い息抜きになった」


「それは何よりだ、また機会があったら来よう。今度は仕事抜きでな」


「ふふっ、楽しみにしてる」


エリスはそう言うとニコリと笑う。ああ、守りたい、この笑顔。

……やばいな、思考が変態的になって来た……


『こちらジュピター02、現在公都より30km地点を飛行中、北門付近へ着陸予定、到着予定時刻(ETA)06』


どうやら帰りのオスプレイも近付いているらしい、皆は恐らく既に城門を出ただろう。


俺もエリスと共に公都の城門を出る。既にギルド組合に預けていた金貨の入った木箱は回収済みで、俺の両手の中で存在感を示している。かなり重い。

門の衛兵に羨ましがる様な視線を向けられたが、頑張って恋人を作れとしか言えないので頑張れと視線で返す。


「あ、ヒロトさん、こっちです」


ブラックバーンが手を振る、やはり既に俺以外は集合していた。


「待たせた、どうだった公都は?」


「何事も無く過ごせました」


「楽しかったです」


俺の質問に各々が答える、良い息抜きになった様で何よりだ。

遠方からローター音が聞こえてくる、帰りのMV-22Bオスプレイの音だ。


俺達はその音を聞いて、茜色に染まり始めた空を見上げた。

さぁ、戻ったらまた仕事だ、頑張ろう。

そう思いを胸に仕舞い、帰ってからの予定を頭の中で立て始めた。

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