第67話 狙撃小隊再編成
少し短いかな……?と思いますが、狙撃小隊の話です、楽しんでいってくださいませ。
地下射撃場
ここには今、狙撃小隊を編成するガーディアンの優秀なマークスマンが集められている。
そして、射撃レーンのテーブルの上に並べられているのは3挺のマークスマンライフル。
ナイツ・アーマメント社のSR-25狙撃銃。
ドイツ、H&K社のG3 SG/1の携行性とPSG-1の精度を持ち合わせたMSG-90A2。
ベトナム戦争時から活躍し、最近では7.62×51mmNATO弾のパワーの見直しもあってU.S.SOCOMの要請によりスプリングフィールド造兵廠がM14ライフルを改修したM14SEクレイジーホース。
この3挺の中から、今までバラバラだったマークスマンライフルを統一する。
尚、バズ・フルートとエル・リークスはMk12 SPRを使う事で全員が同意している。
バズはカーンズの副官として12.7×99mmNATO弾を持ち歩かなければならないし、エルは試射させた結果、Mk262弾を使った方が成績が良かった。
今回の選定の結果が、今後のガーディアンで正式採用されるマークスマンライフルとして採用される。
7.62×51mmNATO弾を使うマークスマンライフルをそれぞれ構える3人。
地下の射撃場に、鋭い銃声が響き渡った。
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そして射撃試験と耐久試験を経て、最も使いやすいと判断されたのは、ナイツSR-25だ。
クリスタ、ローレル、シェリーの3人の射撃の結果を鑑みて、最も成績が良く、また3人からの評価も高かった為である。
銃身を機関部のみで支え、ハンドガードに触れないフローティングバレルで高い精度を叩き出すSR-25は、マークスマンライフルとしてとても優秀だ。
作動方式は従来のM4A1と同じくガス利用方式、所謂"リュングマン方式"だが、俺達が装備するM4A1と同じくキットを組み込む事により、ショートストロークガスピストン方式に変更し、信頼性の向上を図っている。
命中精度に少々影響は出るが、ウチの狙撃手にとって大した問題では無い。
SR-25を扱う事になる本人達もそう言っている。
実際にキットを組み込んだSR-25の射撃テストを行った所、命中精度が落ちると言う事はほぼ無かった。
そしてSR-25は、ベースになったM16が5.56mm対応の為、7.62×51mmNATO弾を発射するには剛性が不足していると言う欠点も抱えている。
そこでそれを改良する為に、健吾の2つ目の"能力"を使った。
健吾の能力は"完全治癒能力"、そしてもう1つが"工作・加工能力"だ。
この能力を使えば、重量・サイズを全く変えず、剛性を高める事が可能だ。
搭載するスコープは個々人の自由だが、クリスタはLeupold Vari-Ⅹ MIL DOTスコープを搭載する様だ。
それから、再編成の為、1度狙撃小隊は"解散"となり、それまで各狙撃兵は分隊の直接指揮下に入る。
あくまで"狙撃小隊再編成までの間"の解散である為、"狙撃手"と言う職種が無くなる訳では無い。
慢性的な人員不足に陥っている今、人員に関しても"召喚"に頼らざるを得ない様だ。
マークスマンライフルの選定が終わり、執務室に戻るとエリスが居た。
「マークスマンライフルは決まったか?」
「あぁ、全員SR-25を使う事で合意、後は狙撃小隊の編成だな……どうするか……」
俺はいつもの執務机に座り、パソコンを点ける。
エクセルで表を作り、現状のメンバーを埋めていく。
小隊長のカーンズ・マクエルト。階級は少尉。
その副官のバズ・フルート。階級は軍曹。
天才狙撃手ランディ・ヘイガート。階級は曹長。
その妹クリスタ・ヘイガート。階級は軍曹。
ボルトアクションの使い手アンナ・ドミニオン。階級は曹長。
補佐につくエル・リークス。階級は軍曹。
そして2人のマークスマン、ローレル・ラフィルズ軍曹と、シェリー・ガブリエル軍曹。
表を眺めつつ「アンバランスだなぁ」と呟く。
横から眺めていたエリスも腕を組んで考え込む。
暫く考えていたエリスが画面を指差したのは40秒程後だった。
「……ローレルの分隊をアンナの分隊に統合したらどうだ?」
「それだとローレル達はマークスマンを辞めることになるんじゃないか?」
現在のところ、狙撃分隊の構成は。
分隊長兼狙撃手
マークスマン
擲弾手
ライフルマン
の4人で構成する事になっている。
人手が足りない上に、HMMWVやランドローバーSOV、MH-6Mリトルバードが基本4人乗りだからだ。
「あぁ、だからマークスマンはエルで銃は今まで通りMk12 SPRでライフルマンをやって貰うと言うのはどうだ?M4でもローレルやシェリーなら力を発揮出来るだろうし、狙撃手としての仲も良好だから、それなら大丈夫だと思う」
俺はエリスが画面を指差しながら表を指差して説明する。
俺は思わず唸ってしまった。成る程、その手があったか……
「あ、でもそれだと分隊が2つになってしまうな……」
「大丈夫、それなら多少の修正がコッチで出来る」
エリスはしまったと言った風に言うが、俺の考えていた案に少し修正を加えれば済む話だ。
「そうか、良かった。……これで狙撃小隊が再編成出来るな」
そう言ってエリスはニコリと笑う。
俺はエリスに微笑み返すと、スマホを手に席を立つ。
そして執務机の前に立つと、スマホを操作して"召喚"をタップ。
決めた人数の人員を召喚する。
目の前の空間が光に包まれ、光の塊になっていく。
10個の光の塊が実体化、光の中から人間が姿を現した。
「ようこそガーディアンへ、俺は隊長の高岡ヒロト。君達を歓迎する、一緒に戦えて光栄だ」
「ハンス・ジッキンゲン軍曹です!こっちは弟のグリム・ジッキンゲン軍曹。ヒロト殿、これからよろしくお願い致します!」
ハンス、と名乗ったマルチカムのフィールドシャツに身を包む兵士が敬礼する。
その後パソコンを使い全員の名簿を作った。
ハンス・ジッキンゲン軍曹
グリム・ジッキンゲン軍曹
オリバー・マーフィー伍長
オードリー・フレストン伍長
レイクス・ステイギス軍曹
アルマー・ソリスタル伍長
ニール・ヘンダーソン伍長
チェルシー・ネルソン兵長
マーカス・アクセルソン伍長
カイリー・ホーネット軍曹
以上10名が新たにガーディアン狙撃小隊配属となる。
その後、全隊員を食堂に集め、新たに仲間になる狙撃兵の紹介を行った。
皆からの反応も悪くは無く、新たに配属された隊員達も、現在のメンバーに対する印象は良好だった。
そして、その場でアンナ達の編成も発表する。
「アンナ、第2狙撃分隊の分隊長をやってくれ。エルはその補佐に。ローレルとシェリー、マークスマンライフルを決めたばかりで申し訳ないが、擲弾手とライフルマンをやって欲しい。頼めるか?」
「ヒロトさんの頼みなら、喜んで」
「問題ありません、良いですよ」
ローレルとシェリーの2人は微笑みながらそう言ってくれる。
これで一応、第2狙撃分隊は纏まった。
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次の日、再び地下射撃場。
この日は新たに俺が召喚したメンバーの適正や狙撃の成績を見る為に地下射撃場にいた。
元々ハンスは一般部隊の狙撃兵らしく、他に狙撃兵は居なかった。
M4を使ったテストで最も射撃の精度が高かったのも彼である。
彼にはガーディアンの正式採用スナイパーライフルであるM24A2 SWSを渡した。
M24A2は.308Win Mag______いわゆる7.62×51mmNATO弾を使うスナイパーライフルだが、インナーボックスマガジンでは無く、脱着式のデタッチャブルボックスマガジンを使用しているのが特徴だ。
そして、それぞれの配属場所を発表する。
レイクス・ステイギス軍曹は、カーンズ指揮下の狙撃小隊本部で観測手を。
アルマー・ソリスタル伍長は同じく小隊本部にて通信手。
ニール・ヘンダーソン伍長は小隊本部で分隊支援火器による火力支援を。
チェルシー・ネルソン兵長はグレネードランチャーをM4A1に取り付けた擲弾手を務めることに。
続いてランディ指揮下の第1狙撃分隊に配属されるのは2人。
マーカス・アクセルソン伍長は擲弾手を、カイリー・ホーネット軍曹はM4A1を持つライフルマンを担当する。
新設した第3狙撃分隊はハンス・ジッキンゲン軍曹が狙撃手を務め、弟のグリム・ジッキンゲン軍曹がマークスマンを。
オリバー・マーフィー伍長が擲弾手をやる事になり、オードリー・フレストン伍長がライフルマンをやる事になった。
狙撃小隊の再編成は完結、これで再び狙撃小隊は本格的に再始動する事が出来る。
それから、ガーディアンの慢性的な資金不足の対策としての活動資金の確保だが____________それについての会議を、今日この後行う予定だ。