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第59話 立入検査

後半、胸糞注意です。

クリスタ視点


『小隊本部より基地航空隊、航空機及び狙撃班出撃せよ』


『了解、スター41(フォー・ワン)、出撃する』


『了解、ダーター51(ファイブ・ワン)、発進する』


先行した車輌部隊から出撃命令が出た。

ヘリに乗って待機していた私達狙撃隊も、気を引き締める。


狙撃隊はこのナイトストーカーズのヘリ、MH-6Mリトルバードに乗って飛び、目標建物を監視できる建物屋上を占有し、封鎖する。

前に教会を封鎖した手順と同じだ。


いつも通り、落ち着いてやれば良い。


兄のランディは、反対側のベンチシートに座っている。

チラリと目をやると、兄さんが小さく拳を挙げるのが見えた。

私もそれに応え、拳を小さく挙げる。


管制塔の指示を受け、リトルバードが浮き上がる。


4機のリトルバードに続き、リトルバードに良く似たヘリコプターがもう2機離陸する。

新しい攻撃ヘリコプター、AH-6Mキラーエッグと言っていた。

この2機が今回は援護してくれる。


大丈夫、と自分に言い聞かせる。


離陸した6機のヘリは、ローター音を残して闇夜に溶け込んでいった。


===========================


ヒロト視点


『リトルバード確認、第1、第2分隊は降車準備!』


車輌部隊の後方から、6機のヘリが追い抜いていく。

先頭を飛ぶスター41(フォー・ワン)に乗るランディが、レミントンM24SWSを抱えて手を振るのが見えた。


幌張りのトラックの窓越しに、風俗街の明かりが見えてきた。


ヘリは旋回して街へ入り散開、狙撃手を建物を監視出来る屋上へ下ろしていく。


『スター41(フォー・ワン)、屋上にタッチダウン』


『スター42(フォー・ツー)、タッチダウン』


43(フォー・スリー)、タッチダウンする』


『スター44(フォー・フォー)、目標にタッチダウン』


4組の狙撃班が建物を囲むように降ろされ、リトルバードは離脱していく。


降下と同時に車輌部隊は街へ入り、大通りを通って件の店の前へと走る。

突然侵入して来た車輌部隊に街は軽くパニックに陥る、何せこの世界には車と言うものが存在しない、良いとこ馬車がある位だ。


「何だあれは⁉︎」


「荷台が馬無しで走ってるぞ」


「それに馬車より速い!」


そんな声がたまに聞こえて来る。

ナツから情報のあった店の前に到着、車を停車させる。


『1-1と1-2は店へ、1-4は車輌部隊の守備へ付け』


「了解」


『了解』


『了解』


転落防止用のロープを外し、トラックから降りる。

店の前で、客引きが目を白黒させていた。


「ガーディアンだ、この店に違法金銭取引の容疑がかかっている」


「え?なっ、は?何が?」


「レムラス伯爵からの捜査令状も出ている、立入検査を強制執行する。良いな?」


「は?いや、ちょっと困りますよ。明日にしてくd」


「ふっざけんなよ!」


店の入り口の方から怒号が聞こえて来た。

どうやら客である冒険者の怒号らしい。


「この店、足下見てボッタクりやがって!」


「2度と来るか!こんな店!……ん?何だ何だ?」


半地下になっている店から冒険者2人組みがそう罵りながら出て来る。


「……間違いないな、拒否権は無い」


「あ、え、ちょ、ちょーっとお待ち下さい!店長ー!店長ー!」


そう言って金髪のチャラい客引きは店へ入っていく、俺達もそれを追って店へ入った。


ドアを開けると、タバコ、香水、酒……様々な匂いが混ざった空気が押し寄せてくる。

匂いに顔を顰めながら店へ入ると、店長が出てきた。


客引きをゴツくした様な奴で、指輪をはめ、耳にピアスをつけている。


「お引き取りください、ここではそう言った事はありません」


「伯爵から捜査令状が出ている」


「証拠が無い」


「証拠ならある」


俺はポケットからボイスレコーダーを取り出し、再生する。


『お会計、金貨10枚になりまーす』

『テメェ!ビタ一文まけねぇからな!』


恫喝、法外な金銭要求の一部始終が再生され、店長が青ざめる。


「で、デタラメだ!そんな……」


「何なら映像もある、後でタップリ見せてやるから大人しくしとけ」


俺はそれだけ言うと店の奥へと入る。

第2分隊のガレントやユーレク達が続いて入り、店員を拘束していく。

警察でもよく見る様な手錠を後ろ手にかけ、両膝を着かせて並ばせた。


「動かないで下さい、ガーディアンです。この店に違法金銭取引の容疑がかかっていますので一時的に皆様の身柄を預からせて頂きます。特に従業員の方。もし逃げたら光の矢が貴方方を貫く事になりますので、くれぐれもそんな事は考えない様に」


店内が一瞬騒然とするが、すぐに皆が大人しくなる。

ガーディアンが使う銃___「光の矢」「見えない矢」の噂は伝わっているはずだ。


店員を監視している間、手の空いている隊員は店内の捜索にかかる。

ボッタクリの証拠、普通ならありえない額の金銭、すり替える用のメニュー表……叩けば埃が出る始末だ。


「全く……俺はこう言うボッタクリは嫌いなんだ……」


「ヒロトさん!こっち!」


ブラックバーンに呼ばれ、そちらに行く。


「何だ?」


彼が指差す先は、店内の控え室入り口だった。

既に扉は開け放たれ、中には人の気配がする。

中へ入ると、クレイが既に居た。普通の控え室だったが、もう一枚ドアがあった。

取っ手に手をかけてみたが、鍵がかかっている。


「チッ……ダメか、クレイ頼む」


「はい」


クレイが特異魔術を使う。魔力が流れてマフラーが伸び、ドアの蝶番と鍵がの部分を切断する。


呆気なくドアは外れると、中は暗闇と下へ続く階段があった。


CQB-Rを構え、Tangodown(タンゴダウン) バトルフォアグリップBVG-ITIに取り付けられたスイッチを入れ、右側レイルに取り付けられたinsight(インサイト) M3Xの眩い光が暗闇を照らす。


Uの字を描いて曲がっている階段を下りると、2人の兵士が見張りをしていた。

従業員以外が降りてきて驚いたのか、声を上げる。


「誰か貴様⁉︎」


「ここで何している⁉︎」


「ガーディアンだ、立入検査をさせて貰う」


「ここは何人たりとも通してはならん!」


兵の誰何に応えると、彼らは敵認定したのかサーベルを抜く。

俺はサーベルを抜いた瞬間にライフルから手を離し、サーベルを持った手を引いて懐に入る。

手首を叩いて武器を取り落とさせ、素早く後ろを向かせて後ろ手に拘束する。


「き、貴様ァ!」


もう1人の兵が俺の背中を切り裂こうとしたが、赤い鞭によって簀巻きにされる。


「なっ⁉︎」


クレイの特異魔術だ。

完全に動きを封じられた兵達はそのまま手錠で拘束され、放置される。

兵が持っていた鍵を奪い、ドアを開けると、凄まじい異臭と共に、異様な光景が広がっていた。


___端的に言おう、青臭さと生臭さの広がる檻の中で、裸の女が延々と犯されているのだ。

そして、生々しい喘ぎ声がそこら中で響いている。


「……何だこれは……」


ブラックバーンがそれを見て絶句する。

なるほど……ここか。


作戦前に調べた結果、この街の戦力の大半は奴隷の"インキュバス"だという事が判明した。

"インキュバス"は力が強く、成長速度も速い為強力な戦力だ。

しかし、その繁殖力は凄まじく、放っておけば簡単に1国の戦力を凌駕してしまう。

その為、ワーギュランス公領のみならずグライディア王国の法で、インキュバスの戦力としての意図的な繁殖及び奴隷としての売買は禁じられている。


勿論、この国に暮らす"人種"としての権利は認められているが、古来から"兵器"として使役される事が多かった為、この様な措置を取っていると言う。


インキュバスは繁殖する際、近くに対になる"サキュバス"がいない場合、人間の女を苗床として繁殖する。


つまり、ここはボッタクリの現場と同時に、"兵器として"インキュバスを生み出す工場だったという訳だ。

男女混合を謳っていたが店内に女性客が少なかったのは恐らく女性客はここに連れてきてこの様に"使っていた"のだろう。


「店長呼べ、詳しく聴く」


「了解」


ブラックバーンがそう言うと、店長を呼びに階段を登る。

クレイも苦しげに顔を顰めていた。


「あっ、あ"ぁっ!イッ……!」

「ハッハァ!これだけ出せばもう妊娠したかもなぁこの女!」


「嫌っ!ママッ!ママァ!助けてぇ!」

「お前がママになるんだよ!」


「あ……あぁ……あ……」

「チッ……こいつもう反応が鈍くなってきやがった……」


「ゔっ、産まれ……るぅっ!」

「産んだら暫く休ませてまた次だ!」


「酷いな……これは……」


俺は檻を見回しながらそう呟いた。酷すぎて裸の女が居るのにピクリとも来ない。

法的にグレーゾーンな場合もあるが、これは真っ黒だ、釈明の余地はない。


「ヒロトさん、連れてきました」


ブラックバーンが第2分隊員、リチャード・スティングを伴って店長を連れて来る。

店長は青ざめた顔を伏せていた。


「おい、これは何だ?」


顔を上げようとせず、黙秘を貫こうとしている様だ。

俺は店長の顔を掴み、上げさせる。


「もう一度だけ聞く、これは何だ?」


店長は顔を背けた。

俺は舌打ちをしてライフルのセーフティを解除する。

そして店長の足に向かって2発撃った。


地下牢に響く喘ぎ声や悲鳴を2発の銃声が搔き消した。


「ぐっぁぁぁあぁあぉああ!」


「クソッタレが……リチャード、上へ連れて行って衛生兵に治療させろ」


「わかりました」


リチャードは店長を連れて再び上へ戻る。

吐き棄てた俺は牢を振り返る。

インキュバス、"使われていた"女がこちらをじっと見ていた。

さて……と手近な牢屋に近づく。


「はっ、どうした?見ねえ面だが、お前も混ざるか?」


さっきまで女を犯していたインキュバスが俺に話しかけてくる。

犯されていた女は床に伏せ、ビクビクと痙攣していた。


俺は無言でインキュバスに銃口を向け、引き金を引いた。


ダァン!


5.56×45mmNATO弾の弾頭が音速の3倍で飛び出し、角の生えた醜いインキュバスの頭を貫いた。

空薬莢がエジェクションポートから排出され、石畳の床に落ちて澄んだ金属音を上げる。


本来この様なインキュバスの繁殖を見つけた場合、その場で殺処分していい事になっている。


「死にやがれクソが。クレイ、ブラックバーン。殺処分していけ、それから女性は救出だ、頼む」


「「了解」」


俺はそう言うと奥へと進む。

檻の数を確認する為だ。

地下だけで……8基以上の檻があり、その奥がインキュバスの幼体を産ませるスペースだ。


そして___最奥、"予備・備蓄"とプレートの掲げられた檻があった。

そこには、ナンバーの書かれた首輪をつけられた女性達が犯される順番を怯えながら待っていた。


下衆共が……こんな扱いしやがって。


檻の鍵を開け、中を確認する。

こちらには手を出されていない様だった。

奥を照らそうとライフルのライトのスイッチを入れた。

ここでもう1人転生者を出す予定でしたが……転生者の数が多すぎてごちゃごちゃするのを避けるため没に。

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