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第56話 キリング・ハウス

視点変更注意、3度変わります。

エリス視点


「どんな感じだ?」


「14番ビル、15番ビル、17番ビルは陥落しましたが、16番ビルに立て籠もってますね……参ったな……これだと進めない」


私の問いに第2分隊分隊長のガレントが応える。

彼らの手にはいつもと同じカスタムの施されたM4が握られており、そこら中で銃声が響いている。


「状況は判った、私が16番ビルに進入しよう。成功したら合図するから両側から攻め込んで瓦解させよう」


「了解」


「アイリーン、一緒に来て」


「はいっ!」


私ははアイリーンを連れ、既に陥落した14番ビル側から目標建物に接近する。

バリケードに隠れながら無線を入れた。


「狙撃手、バックアップ出来るか?」


『OKです』


よし、と頷き、ビルへと肉薄する。

裏手に周り、植え込みに隠れつつ裏口を探す。

と、銃撃が私達に襲い掛かってきた。

コンクリート製のバリケードにバシバシ音を立てて命中する。


どうやら相手はLMGを持っているようで、断続的な射撃で頭が上げられない。

上手いな……流石だ……


「ぐっ!」


敵射手の短い悲鳴の後、銃撃が止む。

後方にいる狙撃手のバックアップだ。

敵が居ないのを確認し、ビルの角を曲がり裏手へ。


「コンタクト!」


敵は1人、M4をセミオートで発砲する。


バンバンッ!


2発の弾丸は相手に吸い込まれ、相手はその場で倒れる。


ビルを探るが裏口のようなドアはあるが植え込みの向こう側な上、敵が見張っている。

上にキャットウォークに通じる梯子がある。


「……仕方ないか、アイリーン、頼む」


「はい」


アイリーンは梯子の下で手を組んで台を作り、アイリーンの手に足を掛けてジャンプする。

何とか梯子は掴めた、腕力だけで足のかけられるところまで登り、梯子を落とす。

落とした梯子を伝ってアイリーンが昇ってくる。


キャットウォークまで登ると、端で途切れているところに窓が見えた。

窓ガラスは抜けている為、あそこなら侵入出来る筈だ。


キャットウォークの手すりに足をかけると、アイリーンに呼び止められる。


「本当に行くんですか?危ないですよ?」


「大丈夫だ、それにこれ位は訓練でもやっただろ?」


よっ……と!と手すりを踏んでジャンプ。何とか窓にしがみつく。

しがみついた窓から室内を覗くと、何かの倉庫の様だった。


よじ登り、室内に入る。一応室内は安全な様なのでアイリーンに合図を出す。

アイリーンが窓に飛び、窓枠に掴まる。


「ぅ、わ、わ」


「アイリーン!」


アイリーンの手が滑り、窓枠から落ちそうになる。

片手は窓枠に掴まっているが、片手は離れてしまっている。


「手を……」


「あ、はい。すみません」


手を差し伸べ、アイリーンが空いている手を伸ばす。

その時だった、倉庫のドアが微かに開く音がしたのだ。


くそっ!こんな時に!


空いている方の手をホルスターに伸ばす。

新しく支給されたSafariLand(サファリランド) 6395ホルスターのレバーを親指で弾き、P226を抜く。

ドアから現れたのは___ナツだ。


ケンゴやタカミチと共に転生してきたヒロトの仲間が、躊躇いなく持っているM4を向ける。

同時に私も拳銃を抜き、発砲。


タンタンタン!


ナツの戦闘服から赤い液体が跳ねる。

ふと、腹部に熱さを感じると、私のプレートキャリアにも赤い液体がベットリと付いていた。


はは……刺し違えたらしい……


衝撃で疎かになり、アイリーンの手を離してしまう。

アイリーンは掴まっていた手を滑らせ、2階から落下。ドサリと音を立てた。


私は、そこで動かなくなった。



===========================


グライムズ視点


目の前でナツが殺られた。

窓から侵入を図ったエリスさんと刺し違えた状態で俺の目の前に横たわる。


エリスさんは弾丸が命中した場所を赤く染め、壁に寄りかかる様に倒れて動かない。

窓から外を見ると、窓から落ちたアイリーンが居る。

アイリーンはもぞもぞと動き、俺と目が合うとハッとした表情を浮かべて逃げようとする。


彼女を撃つのは躊躇われるが、チームの為だ、仕方ない。

窓からM4を構え、セレクターをフルオートに。

Aimpoint(エイムポイント) COMPコンプ M2のダットをアイリーンの背中に合わせ、引き金を引いた。


アイリーンの背中に幾つも赤い色が浮かび、彼女は倒れて動かなくなった。

味方の狙撃手からの情報だと、ビルに近付こうとする敵はこれで全部だそうだ。


俺はナツからまだ撃っていない弾倉を借り、その部屋を後にした。

ビルのロビー付近に来ると、未だに激しい銃撃戦が続いている。


「ヒロトさん、エリスさん撃破しました、アイリーンもです」


ガーディアンの隊長、転生者のタカオカヒロトさんに撃破を報告する。


「来てたのはエリスか、通りでグリッドとサーラが簡単に殺られる訳だ……強いな。ナツは?」


「エリスさんと刺し違えました。戦死です」


「……そうか、くそっ、了解。左側からの敵の攻撃が激しい、2階から叩けるか?」


「大丈夫です、やってきます」


俺は指示された通り敵を撃破すべく、2階へ上がった。

途中でナイトストーカーズのパイロット、ウォルコットさんと合流する。彼は手にFN P90を持っていた。


「おう、グライムズ。どうだ?」


「左側からの敵の攻撃が激しいらしいですね、叩きます」


「了解、俺はちょっくら偵察に行ってくるわ、身軽だからな」


彼はそう言って自身のP90をアピールする。

そのままウォルコットさんは階段を降りて偵察へ、俺は近場の窓に張り付く。


敵が3……4……5人か……奥にはもっといるな。

あ、ウォルコットさん行った。身軽だからな速く走れて……ありゃ、早速死んでる。


ウォルコットさんがその場で倒れるのを見届けてから、俺は窓から銃を出す。

アンダーバレルに取り付けられたFN Mk13EGLMにグレネードを装填、中指で引き金を引く。


バムッ!


大きな音と共に銃口から煙が立ち上り、命中した数人がその場に倒れる。


ここを後5分も持ちこたえれば、こちらの勝ちだ……

時計の針が時間を刻む。


そして___







『【終了ーー!】』


場内をアナウンスが包む。

それを機に、銃声はピタリと止んだ。


===========================

ヒロト視点


「お疲れー」


俺は施設を囲んでいる細かい網の柵から出ると、ゴーグルを外す。

M249を持つSAW手やM14で戦っていた狙撃手はマガジンを抜き、柵内にある布切れの入ったバケツに空撃ちをする。


「お疲れー……やられたぁ……」


「やられちゃいましたねぇ〜……」


プレートキャリアや背中に赤い被弾痕を付けたエリスとアイリーンがフィールドから出てくる。

因みにアイリーンが2階から落ちても無事だったのは下にクッションがあったからだ。


「俺もかなり食らったな」


そう言いつつナイトストーカーズのパイロット、ウォルコットも出てきた。

彼は相当被弾したらしく、身体の4分の1が赤く染まっている。


説明が遅れたが、俺達がやっていたのはエアソフトガンを使った訓練……所謂"サバイバルゲーム"だ。


前世、日本では"紳士的なスポーツの1つ"としてミリタリーファンの間に浸透している。

この様にゴーグルをかけ、チーム分けをし、レギュレーションチェックを通ったエアソフトガンを持ち、6mmBB弾で撃ち合う"大人の戦争ごっこ"だ。

命中したら「ヒット!」と叫び、フィールドと呼ばれる専用の競技場から出る。

そして、命中してもヒットをコールしない者は"ゾンビ"として扱われ、最悪フィールドに出入り禁止となる。


今回俺達がやっていたのは特別なルールを用いていて、被弾がはっきりとわかる様に赤いペイント弾を使っていた事と、被弾したらその場に倒れて動かない事だ。


「ナツ、やるじゃないか。この私に当てるとは」


「いやいや、俺も必死だったんでね」


そう、ナツは本来指揮官の為、直接戦闘を行う事は少ない。

戦闘員であるエリスに弾を当てられただけ凄いだろう。

エリスは俺に向き直る。


「ヒロト、これ、暑い……」


「ガスだからな、仕方ない」


エリスが本来防弾プレートを入れるポケットから取り出したのは、使い捨てカイロである。

戦闘中、エリスは腹部が暑かったらしい。

使用しているのはガスガンな為、気温が低いとガスが気化しにくい。

その為ポケットにカイロを入れ、マガジン内のガスを気化しやすくしているのだ。

勿論、温度が上がり過ぎてマガジンが壊れないように工夫済みである。

更に、実銃と間違えないようにマガジンと銃本体のグリップ、ストックは青く塗装してある。


今回のゲームは「攻防戦」だ。

攻撃側2:防御側1の比でチーム分けをし、攻撃側は防御側陣地のフラッグを取れば勝ち、防御側は時間終了までフラッグを守りきれば勝ちだ。


今回はフラッグを守り抜いたので、防御側の勝ちである。


「まぁ、そっちには転生者4人、狙撃手2人もいるんだもんなぁ……強いよ」


「攻撃側も中々手強かったぞ、窓から侵入するとは驚いたよ。狙撃手の報告が無かったら挟撃されてた」


こうして束の間の休息をセーフティ・エリアで過ごすガーディアンのメンバー。

この市街地戦闘訓練は、主に対人戦闘に重きを置いている。

今回、この訓練を実施した理由は3つ。


まずは室内や市街地に対応する能力の向上。現在までこれといった市街地戦を経験していないガーディアンは市街地対応能力が低いと言わざるを得ない、よって市街地戦闘に慣れ、市街地戦闘に突入した際に素早く対応出来る様にする訓練だ。


2つ目に射撃能力の向上。事実、エアソフトガンの射撃は、実銃射撃の能力向上に繋がるという結果が出ている。

サバゲーマーである俺や健吾がグアムで実弾射撃をした時、拳銃で使われている9×19mmパラベラム拳銃弾を簡単に当てる事が出来た。

拳銃で20m先のペーパーターゲットを狙うとパスパスと面白い様に命中し、的がズタボロになる位だ。

反動はガスガンに毛が生えた程度だ。

5.56×45mmNATO弾でも、同様の結果が出ている。

全ての銃に当てはまるとは言い難いが、これはやっておいて損は無い。

また、レーザー交戦装置がまだ調整出来なかった為、サバイバルゲームを訓練としてやっているのだ。


そして若干の意見の食い違いを生じさせていた狙撃隊の結束強化である。

クリスタはこれに気付いていて、すれ違った時にウインクしてきた。

効果はあるかな?とランディの方を見てみると……相変わらずカーンズと揉めていたので溜息が出る。


次のゲームはフラッグ戦だ。

フィールドの両方のリスポーンにフラッグを置き、赤チームは黄色のフラッグを、黄色チームは赤のフラッグを取れば勝ちだ。


チームを再編成し、フィールドイン。

それぞれのチームがリスポーン地点に着く。


「赤チーム、準備完了」


『黄色チーム、完了』


『【それではゲームをスタートします、カウントダウン開始、5、4、3、2、1、スタート!】』


戦いの火蓋が、再び切って落とされた。

※上記の2つはあくまで「今回の訓練でのルール」なので、読者の皆様は決して真似してはいけません。フィールドのルールに従いましょう。

※エアソフトガンは正しく使いましょう。むやみやたらに人を撃ってはいけません。最悪の場合、自身が逮捕されるだけでなく、良識あるサバイバルゲーマーの方々に迷惑をかけ、スポーツ自体を肩身の狭いものにしてしまう恐れがあります。充分気をつけましょう。

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