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第54話 ヒロトの決意

皆と議論した結果、ノエルの遺体は火葬する事になった。

土葬がこの世界のスタンダードだが、基地の中に埋葬してやりたいというクレイ始め皆の意思と、単純に基地内に土葬するスペースが無いという事で、火葬する事になった。


この世界では火葬は、多少お金はあるが土葬するスペースが無い者達が行う葬法だ。決して異端では無い。


基地の隅にひっそりと納骨堂を建て、火葬したノエルの骨壷を仕舞い、花を手向ける。

納骨堂に収まるのは、ノエルが最初で最後にしたいものだ。


「仇は討ったぞノエル……安心して眠ると良い……」


仲間を(うしな)うというのは最悪の気分だし、何より仲間にも動揺が伝わる。

戦っていればいつかは死ぬ、とわかっていても、だ。


これは俺の意識の甘さから来るのかもしれない、組織のトップに位置する意識の甘さが、こう言った感情をもたらすのかもしれない。


納骨堂にノエルの遺骨を仕舞い、死者を見送る儀式を終え、俺は執務室に戻って来た。


ノエルが望んだか望まないかはわからんが、仇は討った。

今頃建物の瓦礫と一緒に土砂に混ざっているだろう。

撃破確認もしたし、手足が全部吹っ飛んだブレイム以下アーケロンの遺体の辛うじて"頭部"と呼べる部分にSTANAGマガジンに入る5.56mm弾全てを叩き込んでやったから、生きていると言うのはまず無い。

遺体を数えて、アーケロンの全体員数との数もほぼ一致した。中には木っ端微塵になって腕しか無いとか脚しかないとかの遺体もあったが……

行方不明は6人程で、多分砲撃かヘリのミサイルか機銃掃射で粉々になったのだろう。


復讐は何も生まないと言うが、少なくとも我々には意味はあるだろう。

仲間が殺された相手が目の前にいる、自分には仇を討つ力がある。

転生前、何かの本で読んだ。

復讐は、自らの鎮魂の為に必要な儀式だと。

確かにそうかもしれない。ガーディアンのメンバーは復讐を果たし、次に進もうとしている。


だが、それで本当にノエルは報われただろうか。


俺はそれをずっと考えていた。

復讐を果たしたからと言って、ノエルが戻ってくる訳でも無い。

こうした考えが浮かんで来るのも、まだ俺の意識が甘いから、未熟だからなのだろうか。


唐突にドアがノックされる。

返事をすると、ガチャ、と、執務室のドアが開いた。

そこに居たのは、クレイ、サーラ、レーナ。

誘拐事件の時、ノエルと一緒に居た3人だ。


「あぁ……」


「ヒロトさん……お話があります」


改まって、クレイが口を開く。

ソファーに座るように促し、コーヒーを淹れて出す。


「で、話って?」


「ノエルちゃんの事です」


やっぱりか……俺はノエルを死なせてしまったという捉え方も出来る。

責められるのだろうか……

しかし、彼女らの口から出てきたのは、俺を責める言葉では無かった。


「ノエルちゃんは……後悔してませんよ」

「ノエルちゃん言っていたんです、"もし私がここで死んでも、ガーディアンに入った事は絶対に後悔しない"って。あの言葉は嘘じゃないです、そう確信出来るだけ長く一緒にいましたから」


「……そうか……」


「私達も同じです。私達を助けてくれたヒロトさんには感謝してますし、楽しかったですよ?」


俺に励ましの言葉をくれるのか……

多分、仲間を亡くして辛い感情は俺より強いのに……

俺を恨んで、反旗を翻してもおかしくないというのに……

でも、それを改めて聞いて、物凄く肩の荷が下りた気がする。

これを乗り越え、新たに進まなければならない。

俺も皆も、ガーディアンと言う組織も。


「ありがとう、では、サーラ・アークライト」


「は、はい」


「貴官を本日付で、ガレント指揮下の第2分隊に所属とする。異論はあるか?」


「いえ!」


ノエルが死亡した事により、第2分隊には欠員が出る。

それを補う為だ、サーラならノエルと仲が良かった為、レーナや他の隊員達とも連携が取りやすいだろうという事でだ。


「ノエルの分まで、頑張って戦って、生き抜いてくれ。以上だ」


「はっ!ご期待に応える為、全力を尽くします!」


サーラは敬礼を返し、受け入れてくれる。


「あ……それでお願いがあるんですが……」


「何だ?」


「ノエルちゃんの戦闘服で戦いたいんです……」


遺品を身につけて戦う、という事か。

まぁ、問題ないだろう。


「あぁ、大丈夫だ。ただ、サイズには気をつけてな」


「ありがとうございます!」


その後、話し合いを終え、3人は部屋を出ていく。

出て行った後も、また同じ事が頭の中をループする。同じ事を考える。


ダメだ、考えが纏まらない。頭を振って思考を振り切る。


窓から外を見下ろす。

ランニングをしている隊員が、宿舎と司令部の間の通路を走っていく。

その中にはエリスの姿もあった。


ノエルの血は俺の責任だ。

例え俺が死んだとしても、俺の骨壷に降りかかる血だ。

それでも_____俺はその血を被り続ける。

それで仲間が守れるのならば、安いものだ。

生きてる限り……いや、死んでもその血は被り続けてやる。

そして敵は______殺す。

そう誓い、俺も新たな一歩を踏み出せた気がした。


=================================


【New!:復讐キルを達成した為レベルが上がりました!】


Level36


回転翼機(ヘリコプター):RAH-66がアンロックされました】

【スキル:レンジャーがアンロックされました】

"クレイ編"(?)終了です。

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