第46話 更なる訓練と休日の過ごし方
視点変更注意
マッサージを嘲笑うかの様に翌日には筋肉痛は襲いかかり、それを乗り切った頃、再び追加の訓練を行った。
貰った土地の空いている場所に、この世界の一般住宅や集合住宅、想定される建物を模した訓練施設を召喚。
室内戦のテクニックや速射テクニック等、教えられるありとあらゆる技術を叩き込む。
特に射撃。
拳銃で、6m先を秒速2mで横移動する目標に、12秒以内に15発全弾を撃ちんで再装填、また15発全弾を撃ち込むという訓練。
合計30発を全弾的に命中させられるまで繰り返す。
これと同じ事を自動小銃でも行った。
自動小銃の場合は、備え付けのアイアンサイトで狙い、距離は15m、横への移動速度は秒速4m、セミオートマチックで弾倉の30発を全弾命中させて再装填し、また30発を全弾命中。これを22秒以内に終える。
フルオートマチックだと、これが12秒以内になる。
全弾命中のノルマは変わらない。
更に変則的な射撃を行う。
足元の限られた隙間からの射撃、銃眼からの射撃、車内からの射撃、限られた前方投影面積で銃を横に倒した状態での射撃。
屋外の射撃演習場で800m遠方の標的に向かって射撃し、10発中8発を命中させる訓練。
ロープで逆さまに吊られた状態での射撃訓練。
拳銃の射撃では、隙間からの射撃や片手での射撃。
拳銃を上下逆さまに持ち、小指でトリガーを引いて25m先の目標に10発中7発を命中させるなどの訓練を行った。
戦闘術では、より高度なCQCにCQB。
訓練施設では、一般的な平家の住宅なら4人で8秒以内に制圧する訓練を行った。
勿論、それをする為のより効率的なルーム・クリアリング・テクニックもしっかり教える。
地上を這ったり走ったりするだけでなく、ヘリコプターによる強襲、スピーディなヘリボーン降下、ヘリからの射撃、安全講習なども行った。
13週間の訓練で1人前の兵士となった隊員達を、更に鍛え上げて精強な戦士へと変貌させる。
上記の訓練は、米国陸軍第1特殊作戦部隊デルタ分遣隊、通称"デルタ・フォース"と言われる特殊部隊を参考にした訓練だ。
デルタ・フォースの訓練は非公開な上、合衆国政府ですらデルタ・フォースの存在を公式に認めていないのでどの様な訓練を行われているかは全く不明だが、元デルタ隊員達の話や推測によってある程度どの様な訓練を行っているかは判明している。もっともそれが本当の話かどうかは分からないが。
全員がこの訓練をクリア、本当に良くやったと思う。
訓練続きで明日から休暇だ、エリスとどんな風に過ごそうか……と執務室で考えていた時、ドアがノックされる。
「どーぞ、開いてるよ」
「失礼します!」
ドアを開けて入ってきたのは、この世界に殆どいない黒髪といつもしている赤いマフラーが特徴のクレイ・パルディアだ。
身長は150cm程で、肩にかかる位の長さに切られた髪の毛が可愛らしい。
「おう、クレイか、どうした?」
「休暇の外出許可を貰いに……」
「ああ、いいぞ」
「ありがとうございます!」
隊員達から休暇中に外出したいという要望が多く、俺自身も許可するつもりでいたので、外出許可書に行き先や帰宅時間を適当に書いて俺に報告して認可されれば外出出来るシステムを作った。
ちなみに外出許可はここ執務室だけでなく、正門の守衛室でも受け付けている。
俺は書類をとってクレイに渡すと、クレイはそれを受け取ってさらさらと記入していく。
「この後か?どこに行くんだ?」
「はい、街に買い物に。部屋に必要な物を買いに出掛けます」
「誰とだ?」
「サーラちゃんとレーナちゃん、ノエルちゃんと私です」
サーラ・アークライトは戦闘支援部から小隊本部に入ったケンゴの副官、レーナ・レイムリーとノエル・ブレンジーは第2分隊のライフルマンで、騎士団の頃から4人ともとても仲がいい。
「わかった、じゃ、時間までにな。3人にもサインする様に言っとけ」
書類を受け取ってチェック、記入漏れもサイン漏れも無し。
「わかりました。じゃあ、行ってきますね!」
「気を付けてなー」
そう言って俺はクレイを送り出した。
後から振り返ると、この時ほど、武器を持って行けと言えば良かったと思った事は無かった。
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クレイ視点
3人と合流、皆おしゃれな私服に着替えています。
「許可貰ったよー!」
「おーけー、んじゃ、行こっか!」
「あ!ちょっと3人共外出届け書いた?」
「書いたよー、守衛室に出すつもり」と言って3人は届けを出します。
外出届けを書かないで外出した場合は1週間の掃除と2週間の外出禁止の罰則があります。
3人が書いていて良かった、とホッとしました。
ここから街まで丘を下ったところに街があります。
今日は4人でお買い物、生活に必要な物を買って、皆でお茶しようと思っています。
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街へは基地のすぐ近くの街道に沿って馬車で30分程で到着しました。
服屋さんで私服、雑貨屋さんでは自分達の生活に必要な物を買ったりしました。
お昼を食べる為に街の喫茶店に入り、サンドイッチやピラフを注文して食べます。
「美味しいねぇ」
「ねー、後で皆にも教えてあげなきゃ」
食後のお茶の時間に、いろいろ話をしました。
「そういえば、皆訓練どうだった?」
「厳しかったよねー、やり過ぎな位」
「でも、あれで私達がまた皆と一緒に戦えると思ったら全然辛くなかったよ」
「皆は戦闘部隊だからねぇ、私なんか元々戦闘支援部よ?結構きつかったなぁ……」
「サーラは元々事務系みたいな感じだったし、無理もないねぇ」
「まぁそうかもしれないわね、でもしっかり戦えるんでしょ?」
「当たり前よ!」
久しぶりのトークに花を咲かせます。
今までは訓練などでこうして揃って話せる事が無かったので、嬉しいです。
暫く話し込み、次のお店に向かう為に席を立ち会計、表通りに出ました。
次のお店は裏通りにあるオシャレな雑貨屋さん。
表通りにある雑貨屋さんより少し高いですが、街の皆にはそのデザインで人気があるようです。
裏通りに入ると、建物の影で日光が遮られます。
「あれ?こっちだっけ?」
「うん、こっちなはず」
裏通りを奥へと進んでいきます。
すると突然、目の前に2人の大男が姿を現しました。
「待てよ、嬢ちゃん達」
「はい?何でしょうか?」
ノエルが答えます。
「あんた達、ガーディアンのメンバーだろ?」
⁉︎何でそれを⁉︎
咄嗟に身構えましたが、後ろで魔力の流れを感じました。
後ろにいたレーナが魔術で眠らせられます。
後ろにも人が⁉︎拳銃でも持って来るんだった……!
後悔しても後の祭りです。
私は後ろの奴を殴り倒しました、それに激昂した彼らは、寄ってたかった掛かってきます。
2人、3人、4人、5人目までは沈めましたが、多勢に無勢でした。
鳩尾を殴られ、吐きそうになってうずくまります。
大男達は既にノエルとサーラを押さえつけて居ました。
男は増え、後ろに居る人を合わせて6人にもなっています。
「あんた達には暫く眠ってて貰うよ……」
然るべき機関しか使用する事の禁じられている催眠魔術。
私はそのまま、男達に眠らされました。