第45話 部隊再編成
後半は甘いです、砂糖吐き注意報です。
お手元に濃く出したブラックコーヒー等を準備して、是非飲みながら砂糖を吐いて下さい
人員分配だが、俺よりも作戦指揮能力の高いケンゴには小隊長を務めてもらう事になった。
俺は3人より指揮能力は高くないし、柄じゃない。
ナツには航空指揮を、航空部隊と歩兵隊の纏めた指揮をタカミチに任せる事になった。
戦闘支援部は小隊本部に入ってもらい、ケンゴの直属の隊員になる。
尚、ケンゴがもともと持っていたSCAR-Lは個人所有という事になっており、STANAGマガジンなど共有出来るパーツもある為そのまま使ってもらっている。
分隊の編成も少し変えた。
GPMGガナーと衛生兵は小隊本部に、各分隊直属だった狙撃部隊も、カーンズを小隊長とした狙撃小隊へと纏め、これで1個分隊は8人になった。
後は前と同じ様な分隊だ。
それから訓練が終わって1週間は、全員休暇にした。
皆疲れているだろうし、レベルアップにより体力が上がっているとはいえ、俺も辛い。
徽章授与式を終え、戦闘徽章を手に入れた隊員達は、俺も含め早々に自室に戻り、体力の回復に努めていた。
「あ"あ"〜〜、疲れた……」
自室に戻った俺は、ボフッとベッドに沈み込む。
因みにケンゴ、ナツ、タカミチの3人にも部屋を貸している。
「……取り敢えずシャワー浴びて、休もう」
転生から既に半年。
こちらでは年が明け、外はクソ寒い。
風呂入ったら暖かくしてないと風邪引くな……と考えていると
ピンポーン
玄関のチャイムが鳴る。
ドアを開けると、エリスが立っていた。
「おう、エリス」
「3ヶ月振りだな、ヒロト」
そう、13週間の訓練の間、俺はエリスを1度も部屋に入れていない。
俺が頼んだ事ではなく、エリスが自発的にやった事だ。
やはり本格的な戦闘訓練は皆の意識を変えさせるらしい。
「取り敢えず、入って」
「ありがとう」
俺はエリスを部屋へと招き入れる。
「何か飲むか?」
「ああ、頼む」
俺は電気ケトルでお湯を沸かし、ティーバッグを棚から取り出す、と、エリスが腰かけながらくすくすと笑っている。
俺も笑いながら問いかける。
「なんだよ」
「いや、訓練期間中は厳しかったし、こんな風に話さなかったから、雰囲気違うなと思って」
「まぁ、訓練だから厳しくしないというな。俺がキッチリ指導しないと示しがつかないだろ?」
「確かに」
お湯が沸き、ティーバッグを膨らませて、マグカップに入れてお湯を注ぐ。
充分色と香りが出たので、エリスにマグカップを渡す。
エリスはを受け取って口をつける。
「どうしたんだ?疲れたろ?」
「うん、訓練はとても厳しかったな。あれはヒロトの世界の訓練か?」
「ああ、俺の世界で一番強い国の軍事訓練だ。一般人にもキツいっていう噂だからな」
「なるほどな、通りで厳しい訓練な訳だ。私の騎士団でもあんなに厳しくは無かった。しかしそれだけ鍛えられたな」
エリスは細っそりとした腕や脚を捲る。
訓練であちこちを打ち付けたので所々アザになっているが、しなやかな腕や脚は健在だ。
余り筋肉がついたようには見えないが、確実にパワーアップしている。
「確かに、だけどちょっと疲れたな。風呂入って来るけど、エリスはもう入ったのか?」
俺がそう聞くと、エリスはピクリと反応して首を横に降る。
「んじゃあ、それ飲んだらシンクに置いといて、俺は風呂に……」
そう言って立ち上がろうとしたら、袖口をキュッと掴まれた。
エリスは耳まで真っ赤にし、俯き気味で言う。
「……背中くらい……流す……一緒に入ろう?」
……訓練の時も実戦の時も凛々しいのに、こんな時だけしおらしくなるのが可愛らしい。
ずるい、と声に出さずに呟いた。
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「ヒロトの背中……大きいな……」
「そうか?自覚が無いから分からん……」
石鹸で泡立てたタオルでエリスが背中を擦る。
ゴシゴシと擦られる度に汚れが落ちていくのが分かる。
今度は交替し、俺がエリスの背中をタオルで擦る。
あまり力を入れて肌を傷付けない様に、柔らかく擦る。
「肌綺麗だな」
「ふふふ、ありがとう」
汚れを落としたらシャワーで2人共泡を落とし、湯船に浸かる。
対面ではなく、エリスを後ろから抱き締める感じだ。
湯船に浸かりながら、ちょっとした話をする。
「訓練が厳しかったから脱落者が出るかも、と思ったけど、皆着いて来てくれて良かったよ。誰一人脱落者を出さずに済んだな」
「あぁ、向こうでは訓練の他に、仲間意識や倫理観とか、精神面のサポートもしっかりしていたからな」
「なるほど、通りで助け合い精神が根強いなと思ったよ」
本当に、こういった時間さえとても幸せに感じる。
「ふぅ〜……」
「異世界式の風呂は気に入ったかい?」
「ああ、こっちだとシャワーだけってのが主流だし、私の騎士団でもそうだったから、これは新鮮だ。気持ち良いし」
「良くマッサージしとけよ、脚とか腕とか」
「キャッ、ちょ、ヒロト!」
エリスの細い脚を撫でると、エリスが動いてパシャパシャとお湯が跳ねる。
動きはするが、嫌がった素振りでは無く、本気で抵抗もしない。
勿論本気で嫌がれば止めるが。
お湯に浸かると血行が良くなり、アザの色も薄くなる。
特に脚を集中的にマッサージし、明日の筋肉痛を少しでも和らげようと試みる。
「暴れるな、お湯が溢れる」
脚をバタバタさせるエリスの動きを封じ込めてこちらを向かせ、強引にキスをした。
舌を絡めた濃厚なキス。
時間にして1分程度だったが、それが物凄く長く感じた。
俺とエリスの唇が離れ、伸びきった銀の橋がプツリと切れる。
「……もう、いきなりなんてずるいぞ」
「忙しくてこれ位しか出来ないし、これからも忙しいから、な?」
「ふふふ、困った人だ」
「ほっとけ」
スタイル抜群の恋人に、興奮するなと言う方が無理な話だ。
俺とエリスは、風呂を出るまで唇を重ねあった。
風呂場のタイルが冷たく乾くまで、何度も何度も。
キスしかしてないからノクターン行きにはならない……はず(笑)