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第44話 訓練

今、飛行場には第1から第4の分隊と戦闘支援部の全員が整列している。

ケンゴやナツ、タカミチもだ。

俺は皆の前に立ち、檄を飛ばす。


「これからこの"ガーディアン"を本格的な戦闘ギルドにする為、訓練を受けて貰う!」


目的は、メンバーを今一度鍛え直し、自分を守り、仲間を護る力をつける為だ。

もちろん一遍に訓練をする訳には行かない、なので、分隊毎に分けて訓練を行う。

戦闘支援部は分割して分隊に入れ、15〜16人で分隊を組む。


「今までは皆一緒に戦って来た仲間だ、が、それでも暫定的だ。元騎士団だから?関係無い。この訓練をクリアしない限り俺はガーディアンのリーダーとして戦闘部隊の頭数には入れるつもりは無いし戦力として扱うつもりも無え!」


取り入れた訓練は、アメリカ海兵隊の訓練を参考にしてカリキュラムを組み、13週間で行うのだ。

アメリカ海兵隊の訓練を取り入れるのは、アメリカ海兵隊は紛争地帯に先兵として投入される為、高い戦闘能力と意識を持つ。

その為、仲間同士の結束がとても高く、"全員が精鋭"という機運も高い。

元の人数が少ないガーディアンにはぴったりだ。


一時的に、全員に渡していた装備を回収する。

ライフル、プレートキャリア、ポーチ、BDUに至るまで全てだ。

その代わりに、コンバットシャツ・パンツでは無く、フィールドシャツ・パンツを支給する。

それに、これは皆の訓練ではあるが、俺の訓練でもある。

元民間人の自分を厳しく鍛える。しかも俺がヘタっていたら皆に示しがつかない。


まずは軍隊としての基本的な事を隊員達に叩き込む。

ここにいる皆は騎士団だった為、1人1人の意識はとても高い。

しかし、ガーディアンの兵士として、もう1度最初から鍛え直し、より強力な兵士に育てる。

相手が転生前からの友人であろうと、恋人であろうと関係は無い。

整列行進、体力テストを行う。


「エリス!皆と少しずれているぞ!」


「さ、サーイエッサー!」


「返事が遅い!声が小さい!」


「サーイエッサー!!」


その後、腕立て、腹筋、背筋を行い、制限付きで4.8kmを走らせる、勿論俺も走る。

高校の頃のマラソン大会は11kmあった為、ちょっと物足りなく感じたが、やはり結構キツかった。

遅れている隊員は仲間が励まし合い、無事全員が制限内にゴールした。



教練では軍隊での基本動作、気をつけ、敬礼、回れ右等や、武器兵器以外の装備品の扱い方を教える。

体力作りと基本教練で、最初の1ヶ月を終える。


2ヶ月目の次の訓練に入ると、いよいよ小銃を貸与し、射撃訓練に入る。

この時、同時に銃に関する知識も叩き込んでいく。


「我々が使う自動小銃は、このM4A1である。グライムズ、基本スペックを答えろ」


「口径5.56mm、全長850.9mm、銃身長368.3mm、ライフリング6条右転、使用弾薬5.56×45mmNATO弾、装弾数は弾倉によって20か30発、重量2.68kg、銃弾初速毎秒905m、有効射程は500〜800mです」


「OK、次、沢村、作動方式は?」


「リュングマン方式、回転ボルト閉鎖。しかし、ガスピストンキットの組み込みによってショートストロークガスピストン方式に改良されている」


「よし、引っかからずに答えられたな。更にこのライフルは俺が手を加えて17-4鋼をバレルに使用している事から、耐熱性にも優れている」


この様に、事前に配った教科書を元に知識をつけさせる。

自動小銃だけでなく、拳銃、分隊支援火器、汎用機関銃、重機関銃、対人狙撃銃、対物狙撃銃、マークスマンライフル、迫撃砲、対戦車火器と、装備している火器の全てに関する知識もつけさせる。

基本スペックの知識だけでなく、銃の取り扱いについても勿論教える。


そしていよいよ射撃訓練だ。


地下の射撃場は1度に16人しか入れない、その為1分隊毎に交代で射撃訓練を行う。


俺は直接10発がクリップで止められた弾薬と30発弾倉を手渡す。

ローダーとクリップを使って自分で弾倉に装填させる。

射撃は落ち着いて冷静になって行わねばならない、興奮した状態で誤射や事故があってはならないからだ。


「弾倉を装填しろ!」


全員が装弾口に弾倉を差し込み、マガジンキャッチにロックがかかる。


「チャージングハンドルを引け!安全装置を確認!」


全員が銃床(ストック)の根元にあるチャージングハンドルを引いて離し、ボルトが薬室に初弾を送り込む。

同時に安全装置を掛ける。


「ここからは安全に注意して銃を扱え、一歩間違えれば仲間が死ぬ事になる、いいな⁉︎」


「「「サーイエッサー!」」」


「では、構え!」


全員が銃床(ストック)を肩に当て、頬付け。

カスタムされていないクリーンな状態のM4A1のキャリングハンドルに装備されているリアサイトと、フロントサイト、的が一直線に来るように調整する。


「安全装置解除!セミオートに!」


カチリ、と安全装置を解除した小さい音が聞こえる。

セレクターはセミオートに合わせる。


「撃て!」


ダン!


銃声が重なる。

全員が銃を撃った事がある為、全員命中している。

射撃を続けさせ、マガジンが空になるまで撃たせた。

5.56×45mmNATO弾は口径が小さく反動も軽いので、引き金のガク引き等ミスや弱点を見分けやすい。

6.8×43mmSPC弾や7.62mm弾ではこうはいかない。

早速同じ部隊にいるサーラ・アークライトのミスを見つけ、指導する。


「サーラ、ガク引きしてるな。引き金は思い切り引かないで絞るんだ。それから、的は最後まで見ろ」


「サーイエッサー!」


組み込まれているガスピストンキットにより通常のM4A1とは反動の感触は若干違うが、今までの戦闘で皆慣れている為心配は要らない。

全員が正確に的に当てられるようになるまで射撃は行った。


それから銃の野戦(フィールド)分解(ストリッピング)を教える。


テイクダウン・ピンを抜き、本体を前方にスイングアウトさせてテイクダウン。

チャージングハンドルを引くと、ボルト・キャリアが引っ張り出せる。

この様に整備が行いやすいように各部がユニット化されているのも、M4A1の特徴である。

それからハンドガードリングを押し下げながらハンドガードを上下に割るように分解、ガスピストン・キットを取り外す。


分解清掃は絶対に怠ってはならないもので、これを怠ると最悪銃が爆発する。

これはM4A1だけでなく、G3だろうとSCARだろうと、AKだろうと変わらない。


分解は全員が1人で分解組み立てが出来るまでやらせた。


3ヶ月目に入ると今度は山岳訓練、ヘリボーン訓練、近接格闘(CQC)訓練等、本格的な戦闘訓練を行っていく。

特に山岳訓練では、25kgもの大荷物と小銃・弾薬を背負い、80kmを走破する。

部隊の規模が小さく何から何まで自分達でやらなくてはならないので、室内戦のテクニック……CQBなども盛り込んだ。

その他、ありとあらゆる通信機器、車輌、火器の取り扱い方法、それを使用した訓練も実施した。


ここで適性を見て、指揮官や狙撃手等の職種に振り分けていく。


戦闘能力向上の為の訓練は最後の1ヶ月で無事終了した。


最後の1週間は、自分の体力と精神力を限界まで追い詰め、極限の状態で自分を鍛え上げる。


72時間、不眠不休で走り、這い、止まり、攻撃する。

俺を含めた転生者も、当然ながら参加する。

泥だらけになっても、戦場では風呂にも入れない。

泥に塗れても、走り、這い、止まり、攻撃する。

途中で挫けそうになる隊員もいたが、仲間の助けを借り、クリア。

強力なチームワークで乗り切った。


こうして"ガーディアン"の隊員1人1人は、本物の兵士として育っていく。


=================================


最終日、夕方。


13週間前と同じ飛行場に集めた。

しかし、13週間前にここに集まった時とは明らかに違うオーラを放っている。

脱落した者は居ない。

一人前の、本物の兵士のオーラだ。

元々怪力のグリッドなど明らかに一回り以上身体が大きくなっている。

どんな鍛え方したらああなるんだ……


「今日で全基礎訓練を終了する!しかしこれで終わりではない、これからも、練度向上、技術向上の為の努力を怠ってはならない!何故なら、この13週間で身につけた技術が、必ずや自分や仲間を救うからだ!」


「今日は基礎訓練が終わっただけだ、訓練はまだ続くから気を抜き過ぎるな!」


「今日から皆、一人前の"ガーディアン"の隊員だ!故に、全員が"ガーディアン"の兵士としての自覚を持ち、"ガーディアン"の模範となる行動を取るように!」


「我々は戦い、時には傷付き、あるいは死に至るだろう。俺達は兵士だ!時に死ぬ事も仕事に含まれる事が確かにある。だけど、俺はそう簡単に死ぬつもりは無いし、お前らを死なせるつもりは毛頭無ぇ!全員が生き延びるんだ!分かったか⁉︎」


「そして、例え死んだとしても、我々は永遠に"ガーディアン"の仲間だ!」


「決して仲間を裏切るな!見捨てるな!最後まで信頼しろ!」


「失望するかもしれないが、全てが正しくとはいかない!常に正義の味方である事は出来ない!だが、"ガーディアン"の正義に則って行動する事を誇って欲しい!」


「これからも、"ガーディアン"として共に戦おう!解散!」


敬礼!


ザッ!と、地球の兵士と同じ敬礼をする。

それが終わると、全員が歓声を挙げて帽子を放り投げる。

嬉しさの余りに涙を流したり、互いに抱き合う隊員もいた。

俺はその様子を微笑みながら眺めていた。

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