第42話 3人の合流
「「「痛っ⁉︎」」」
落とし穴が途中で滑り台の様な勾配になっており、そこから転げ出された3人。
「いってぇ……」
「おい誰だ俺の腕踏んでんの」
「あ、俺だ悪い」
尻の埃を落としながら3人は立ち上がる。
で、ここからが本題である。
「……ここ何処よ?」
「わからん、待って調べる」
タカミチが能力を展開、音響を使って周囲をサーチする。
「……周りには木しか無いな」
「それの探知範囲はどれ位だ?」
「全開まで広げてみるか……」
ケンゴに聞かれ、更に出力を大きくするタカミチ。
「……あ、これで大体1.6km位か……」
「何かあるか?」
「とりあえずそっちに川があるから、その川沿いに下流に歩けば森から出られるっぽいな」
「じゃあそっち行こうか」
「おう」
ナツミが先頭を行き、タカミチの案内で先ずは川に向かう。
ケンゴは銃_____SCAR-L Mk16 mod0を構えて周辺の警戒だ。
因みにホルスターにはグロック19が入っている。
銃を装備出来たのはケンゴだけで、タカミチとナツは装備していない。
実際、撃った事の無い彼らに銃を持たせたところで余計な混乱を生むし、最悪同士討ちの可能性もある。
10分程歩くと川に行き当たる、3人はその川の流れる方へと向かって歩き始める。
しかし、数分も歩くと、ナツミが何かを見つけた。
「お……おい、あれ……」
「何……ッ、う、嘘だろ……」
人の死体だ、その数6体。
傷口には既に蛆が湧いており、上空は死肉を漁る鳥が旋回している。
ゲポッ、とナツミが耐え切れずに嘔吐する。
タカミチもケンゴも苦しそうな表情で耐えている。
初めて死体を見たのだから、無理もない。
よく見ると、死体には弾丸で蜂の巣にされた様な跡がある。
「こ、この世界には銃があるのか?」
「いや、あのおっさんは魔物が居るって言ってたから、魔物の仕業じゃ?」
「な、何でもいいから早く行こうぜ……」
3人は死体に手を合わせ、横を通り過ぎる、その時。
「……んっ⁉︎」
タカミチが能力で何かの感を捉えた。
「どうした?」
「後ろから囲まれてる!」
その言葉と同時に、ブブブゥゥゥ……と蜂の羽音な聞こえてくる。
「走れ!」
タカミチがそう言うと、3人は即座に走り出す。
茂みから現れたのは、体長2m位のデカい蜂と、10cm位のデカい蜂だ。
ケンゴが振り向いて発砲するが、蜂は素早くて5.56mmNATO弾は簡単に避けられてしまう。
10cm位の蜂は30匹近くおり、こちらを追ってくる。
タカミチは何かを感じ、殿を務めるケンゴに叫ぶ。
「右に避けろ!」
ケンゴは不思議に思いながらも右に飛ぶ、すると、約20本の針がさっきまでケンゴが走っていた地面に刺さる。
10cmの蜂は尻の毒針を飛ばす事が出来るらしく、それを使って攻撃してくる。
「ナツ!左!」
ナツミも川に落ちない様に左に避けると、10本近くが地面に刺さる。
「ケン!飛べ!」
「ナツ!右に!」
続けてタカミチからの指示が飛ぶ、もう理解したナツミとケンゴはタカミチの指示通りに避け続ける。
「あいつ!ファン○ルか何かかよ⁉︎」
「ファ○ネルよりタチ悪いぞ!」
「2人共そのまま!」
ナツミとケンゴが毒づく。
裏をかいて避ける方向に針を撃ってきた蜂を躱し、タカミチは振り向いた。
やり方はわからんが、こんな感じ……か?
口を少しだけ開き、広がる様に低く声を出す。
ヴン!
音の壁が出現、蜂共の足止めをする。
しかし初めて使った魔法だ、何処までの効果があるかはわからん。
「あ、おいなんだあれ!」
先頭を走るナツミが、こちらに向かって来る何かを発見。
「……車だ!」
「はぁ⁉︎」
「剣と魔法のファンタジーな異世界じゃねぇのかよ⁉︎」
車は複数台居るらしく、こちらにドンドン近づいてくる。
「止まってくれ!」
近くまで来た車に手を振り、車列を止めて助けを求める。
「た、助けて……」
「ナツ⁉︎」
「ぁ……た、高岡!」
「タカちゃん⁉︎」
「ケンゴに孝道⁉︎どうしたんだ、こんな所で⁉︎」
先頭の車を運転していたのは、高岡大翔、神の部屋で思い出した友人だった。
「お前こそどうしたんだ⁉︎これRSOV……後ろはHMMWVだろ⁉︎」
「沢村、後だ。高岡、乗せてくれるか?」
細野がヒロトに聞く、勿論ヒロトは頷いた。
「悪いがSOVには乗れない、2台目に乗ってくれ」
「わかった」「おう」
「セレナ!後ろ開けてくれ!」
『了解』
2台目の幌張りの車の荷台ハッチが開いた瞬間、パリンという音と共に。タカミチの張った音の壁が割れる。
「……来た!」
「撤収!」
3人はすぐ様荷台に飛び乗り、ハッチを閉める。
「捕まってて下さい!」
後部座席の金髪ショートのエルフがそう言った瞬間、車が思いっきり切り返す。
「うぉっ!」
「あっぶな!」
3台は切り返し、ヒロトが乗る車が最後尾へ回る形になった。
そして急発進。
またしても飛ばされそうになる。
蜂共はギリギリで逃れたが、2m近い親鉢が追いつき更に指示した事によって子蜂が加速、車に追い縋ってくる。
ヒロト達の車に乗っている人達が機関銃を撃つが、的が小さく当たる気配はない。
ケンゴは武器は無いかごそごそと漁りだす。
「おい、ショットガンは無いか⁉︎」
「ある!」
金髪ショートのエルフに聞くと、足元からショットガンと弾薬を取り出した。
レミントンM870MSC、モジュラー式のショットガンだ。
「これは⁉︎」
「散弾!200発入り!」
つまり、米粒の様な小さな弾丸が200発装填されているショットシェルらしい。
これならピッタリだ。
「ケンゴ⁉︎何する⁉︎」
「殺るんだよ!銃座を借りるぜ!」
「あ、ちょっと!」
ケンゴは5発、シェルを装填しながら銃座に着く。
進行方向とは逆向きに立つと、左側面から襲いかかる子蜂1匹。
実銃ならグアムで散々撃った。
突き出す様に構えて、引き金を引く。
ダァン!
銃口からは散弾が飛び出し、少しずつ拡散。
蜂の頭部と胸部がごっそり無くなり、体液が飛び散る。
ポンプアクション、フォアエンドをスライドさせて次弾装填。
上空から急降下してくる蜂に照準、引き金を引く。
ダァン!
散弾は命中、蜂を消し飛ばす。
2匹を落とした事によって警戒したのか、残りの蜂は動きが止まり、その隙に離脱する。
「……ふぅ〜……抜けたか」
ケンゴは溜息を吐き、銃座を降りる。
「ありがとうございます、散弾があって助かった」
「い、いえ、お気になさらず……」
ケンゴは金髪ショートのエルフにショットガンを返す。
3人とも考えている事は一緒だった。
「「「(((良くこんなあっさり合流出来たな……)))」」」