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第39話 攻撃ヘリコプター

AH-64D アパッチ・ロングボウというヘリコプターをご存知だろうか?


西側最強の攻撃ヘリコプターと言われており、自衛隊も採用している。

武装はハイドラ70ロケット弾 M261ランチャーにAGM-114ヘルファイア対戦車ミサイルなどに加え、固定武装にM230 30mmチェーンガンが装備されている。


そもそもAH-64アパッチは冷戦期に開発され、予想されるヨーロッパでの戦闘において旧ソ連の機甲部隊を叩き潰す為に開発された。

しかし1991年に勃発した湾岸戦争では、砂塵による故障と友軍誤射フレンドリー・ファイアが相次ぎ、特に友軍誤射フレンドリー・ファイアを防ぐ事と目標を正確に捉える目的でAN/APG-78ロングボウ火器(F)管制(C)レーダー(R)、ミリ波レーダーを搭載したものがAH-64Dである。


更に装甲も厚い。

操縦席はボロン・カーバイド製の装甲板が装着され、強化構造のフレームが乗員を防護する構造になっている。

その証拠にAH-64が墜落し横転している写真があるが、機体は原型を留めている。

全席と後席の間にも装甲板があり、被弾によって2名のパイロットが1度に負傷する事を防いでいる。

操縦系統は被弾を考慮し、油圧式と電気式の両方を備えている。

またメインローターはステンレス鋼を使用し、23mm機関砲弾が直撃しても飛行可能、メイントランスミッションは被弾して潤滑油が全て喪失しても30分は飛行出来る。


高い攻撃力・防御力・機動力を兼ね備えている為、"空飛ぶ戦車"とも言われている。


そんな空飛ぶ戦車が2機、初めて異世界の空を飛んだ。


副操縦士兼射撃手の前席に座るモーガン・ディーレイ中尉は、H(ヘルメット)M(マウント)D(ディスプレイ)で照準を合わせ、機銃のトリガーを引く。


ドドドドドドドドドッ!


床下で機関砲が唸り、30mmの砲弾が飯喰い(コーマ)達を薙ぎ払っていく。


『こちら第1分隊、散開している飯喰い(コーマ)達を攻撃してくれ。位置はスモークで指示する!』


「了解隊長!」


10秒ほどして、散開している飯喰い(コーマ)のほぼ中心で白煙が上がる。

恐らく第1分隊の擲弾手がグレネードランチャーで撃った発煙弾だろう。


そこに向かって、M261ランチャーから6発のハイドラ70ロケット弾が発射された。

タロン22(ツー・ツー)も横に並び、ロケット弾を発射。

12発のロケット弾が群れに向かって襲い掛かる。


シャシャシャシャシャシャ!


ドドドドドドォン!


ロケット弾は命中精度こそ低く"点"の攻撃には向かないが、こういった"面"の攻撃に威力を発揮する。


現在AH-64Dのスタブ・ウィング(武装を取り付ける為の小翼)には、M261ランチャーが計4つ取り付けられている。

ゴーレムなどの様な硬い装甲を持った敵がいないからだ。


更に複数のロケット弾が空を裂き、着弾。


AH-64D投入から5分で、残りの飯喰い(コーマ)は降伏か死かの選択を迫られていた。


===========================


「圧倒的だな、俺達」


「あぁ……あれもヒロトの世界の兵器か……凄まじいな」


大火力で飯喰い(コーマ)達を蹂躙していくAH-64D(アパッチ)を見て、皆唖然としていた。


破片が近くまで飛んで砂埃を上げ、ロケット弾の爆風が頬を叩く。

MH-60M(ブラックホーク)のミニガンやGAU-19の火力支援がまるで小さな爆竹の様だ。


「よし、皆行くぞ。HMMWV(ハンヴィー)に乗れ」


「?どうしてだ?」


エリスが皆にHMMWV(ハンヴィー)に乗るように指示、俺は不思議に思い、エリスに尋ねた。


飯喰い(コーマ)達の死体を焼きに行く。このままここで腐ると異臭がするし、これを餌にまた魔物が集まるんじゃないか?」


「あ、そうか」


なるほど、確かにそうかもしれない。


「第3分隊、迫撃砲を撤収しろ。撤収作業後、死体の焼却に入る」


『了解』


「あ、あぁ、あんた達」


知らない声がした。振り向くと、街人が近づいて来ている。


「はい?何でしょう?」


「あ、あれは……何なんだ?」


俺は少し間を空け、答える。


「我々の兵器です」


街人は怯えた表情を浮かべる。


「大丈夫です、余程の事が無い限り、あなた方街の住民にこの力が向く事はありません」


「そ、そうか……あ、あと1つ頼みがある」


「何でしょう」


飯喰い(コーマ)達の死体だが……我々に幾つかくれないか?」


てっきり銃や武器を売ってくれと若干身構えていたが、どうやらそういう訳では無いらしい。


「……まぁ、山程ありますし、これから焼却するつもりでしたが、何故です?」


飯喰い(コーマ)の角は魔術薬になる、こいつらは動きが素早くて捕獲し難いから、何体か譲ってくれ」


それなら、という事で死体を幾つか譲る事になった。

とは言っても、死体の大半は30mm機関砲とハイドラ70ロケット弾の攻撃で粉々に吹き飛んでおり、原型を留めている死体は多くは無かった。


確認出来た死体は382体、残りの死体は原型を留めないほど吹っ飛んでいるのだろう。

穴を掘って死体を放り込み、60体程の死体を街人に譲って穴に火を放って焼却した。

生き残ったのは41体だ。

生き残りの処遇については、飯喰い(コーマ)の親分に一任される。


引越し後初めての戦闘は、ようやく終了した。


===========================


飯喰い(コーマ)達との戦闘から数日後、俺達は伯爵の屋敷に招待された。


「まず、飯喰い(コーマ)達との仲介を取り持ち、被害を抑え、更には飯喰い(コーマ)達の反乱からこの街を救ってくれた"ガーディアン"に深く感謝しよう。この功績はとても大きい」


『我々からも、一族の繁栄と存続に貢献し、共存を決めた人達と我が同胞を助けてくれた君達に感謝する。君達が貢献してくれた事は忘れない』


レムラス伯爵と飯喰い(コーマ)の長に感謝の言葉を貰った。

1000以上の飯喰い(コーマ)達を殺してしまう結果になったが、親分の話によれば飯喰い(コーマ)の生息数は減少傾向にあるとはいえ、まだまだ居るらしい。

ベルム街周辺の4つの山に4000頭近くが分散している様で、今回の戦闘でもしかしたらほぼ絶滅してしまうのでは無いかと不安になったが、そんな事は無いみたいだ。


「では、我々から褒賞金として、大金貨300枚と_____」


『我々から、丘の上の土地を進呈しよう』


おぉっ、とガーディアンの面子が小さくどよめく。


この世界では、金貨20枚で小さな家が建つ。

感覚としては……だいたい600万円位だろうか。

という事は、その15倍、9000万円位という事、大金である。


それから土地、最も欲しかった物だ。

ここにベースを作る事が出来る。

場所は街からだいたい3km程の丘の上だ。

そこにはかなり広い土地があり、ベース作りには最適の場所だ。


屋敷で一通り感謝と御礼の言葉を貰い、伯爵や飯喰い(コーマ)達との協定を結んで、我々は屋敷を後にした。

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