第32話 エリスと朝まで
イチャイチャ回なので、注意して砂糖を吐いて下さい。
デブリーフィングを終え、個人テントに戻ってきた。
取り敢えず皆には、今後ケインがここを攻めてくる可能性が有る事から、今日の所はゆっくり休む様に言っておいた。
メンバーはぞろぞろと風呂に入る。
俺も風呂を済ませ、テントの中の簡易ベッドに座ると、ブーツを脱いで脚をマッサージをし始めた。
現場ではそこまで感じなかったが、筋肉が緊張して明日から筋肉痛になる恐れがあるからだ。
現場ではこういった痛みは、脳からアドレナリンが出ているため感じない、しかし感じないだけで、間違いなく負担は肉体を襲う。
サバゲーやハートロックでは身をもって痛感した事だ。
一応風呂の中で脚は良く解しておいたが、念の為もう一度。
と、エリスが俺のテントに入ってきた。
「おっ、どうした?エリス」
「え……っと、ま、マッサージしようと思って……」
エリスは既に寝間着代わりの作業服に着替えているので、エリスも寝る所だったのだろう。
「え、良いの?」
「あ、あぁ。任せてくれ」
「じゃあお願い」
俺は簡易ベッドにうつ伏せになると、エリスは上に乗り、背中を押してほぐし始めた
「あ"あ"あ"〜〜………良いね、気持ち良い」
「ふふっ、そうか。喜んで貰えて良かった」
ぐいぐいと緊張した筋肉をほぐしてくれて気持ち良い。
「そういえば、ケインって翼竜持ってたっけ?」
今日の戦闘中に不思議に思った事を聞いてみる、何か有力な情報が聞けるかもしれない。
「あぁ、ケインの両親が、ケインが爵位取った時にお祝いで4頭くれたらしい」
「へー、翼竜って結構使われてるんだな」
「いや、翼竜は確かに戦闘能力は高いが、調教や餌代で多額の費用が掛かるんだ。これもケインが貴族だから出来るんだが、翼竜の…竜騎兵部隊を持っているのは一部の金持ち貴族と大国だけだ」
「なるほどね……」
流石は異世界、竜騎兵の部隊がいるのか……
脳内には一瞬だけ、戦闘機と空中戦を繰り広げる翼竜の光景が広がった。
いつか見てみたいな……
「ヒロト、終わったよ……ヒロト?」
「………んっ⁉︎んぁあ……すまん」
「フフフ、そんなに良かったか?」
い、いかん。エリスのマッサージが気持ち良くて寝るところだった……
「んじゃ、交代な」
「ん……」
今度はエリスが簡易ベッドにうつ伏せになる。
腰の辺りから肩付近まで背骨に沿う様に押していく。
「んっ……んぅ……ん……」
……声が艶かしい……
そのせいか、少しドキドキする。
エリスはかなりスタイルがいい、身長も高く、脚も長い。
肩を解しながらエリスの綺麗な金髪を触る。
ベースには野外入浴セットがあり、女性陣もしっかりと肌や髪の手入れが出来る様にしてあるが、エリスの綺麗な髪は丁寧な手入れのお陰だろう。
マッサージの手を背骨に沿って下げ、腰の辺りを押す。
そして手をエリスの長い脚へと持っていく。
すると、エリスがピクンと小さく跳ねた。
「ん?」
構わず解し続けると……
「ん、んっ……んふふっ、にゃはははっ!くすぐったい!」
……どうやらくすぐったかった様だ。
「いやいや、俺にもやってくれたじゃん」
「で、でも、こんなにくすぐったいとは……!」
「良いから、明日辛くなるぞ?」
エリスがくすぐったがるお陰でピョンピョン脚が跳ねてやり辛い。
太ももと脹脛を入念にマッサージした後、足の裏の土踏まず辺りを押す。
「ふぅ〜……」
「どうだった?」
「最高に気持ち良かったよ」
「そりゃ良かった」
仰向けになったエリスの唇に唇を重ね、俺もベッドに横になってエリスをギュッと抱き締めた。
「ねぇ……このまま……」
エリスが何を言おうとしているか分かった。
心臓がどきりと強く跳ねる。
が、俺もエリスも何かに気付いた。
隣のテントからベッドが軋む音と微かな喘ぎ声が聞こえたのだ。
「………今日はよそうか」
「ふふっ、ああ、そうだな」
俺とエリスは同じスリーピング・バッグに入って、昼まで眠りについた。
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翌日
チュンチュンと鳥の鳴き声がする。
目を開けると、狭い簡易ベッドでエリスと並んで寝ていた。
綺麗な寝顔だ……
俺は思わずエリスの寝顔に手を伸ばし、頬に触れる。
「ん……ヒロト?」
「おはよ、エリス」
どうやら起こしてしまったらしい。
が、あまり遅くまで寝ているのも良くない。
「んん〜っ……はぁ……今何時?」
エリスは伸びをし、枕元の腕時計を手探りで探す。
「10時半……ちょっと寝過ぎたかな?俺たち」
「昨日遅かったんだし、大丈夫でしょ?」
俺が起き上がろうとすると、手を引かれ、首にエリスの腕が絡みつく。
「もう……ちょっとだけ……」
「………ーーッ!」
可愛いなぁ!こいつ!
俺たちはもう10分程、テントの中でくっついていた。
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いつもの作業服に着替えてテントを出る。
「おはようございます、って言ってももうこんな時間ですけど」
「おはようユーレク、昨日はお疲れ様」
「おはようございますヒロトさん、コーヒー飲みます?」
「おう、有難く頂くよ」
グライムズが俺の分のコーヒーを淹れ始める。
「皆はどうしてる?」
「教練が終わった者は、今朝言われた陣地構築に、第2分隊は教導と訓練をしてます」
「仕事が早いな」
「ありがとうございます」
見ると、ストルッカが先頭になって複数の隊員が陣地の周りを走っている。
「じゃ、俺も行ってきます」
「いってらっしゃい」
「どうぞ」
「ありがとう」
ユーレクが教導に向かい、グライムズが淹れたてのコーヒーを俺に渡す。
今日も上手く淹れられたらしい。
本部タープには今は俺とグライムズしか居ない。
「ところでグライムズ」
「はい?」
「昨夜はお楽しみだった様で」
「ブッ⁉︎」
俺が投げた爆弾にグライムズがコーヒーを吹く。
おい鼻からコーヒー出てんぞ拭けよ。
グライムズにポケットティッシュを渡す。
「な……なぜ」
「テント、壁が薄いってレベルじゃないからな。……ちゃんと避けてるか?」
「え、えぇ、それは当たり前です」
この世界にはコンドームの様な物は無いが、専用の薬品_____魔術薬があるので、女性側がそれを飲む避妊法が主流らしい。
「ヤるなとは言わないし、戦闘で気持ちが昂ぶるのは良いが、程々にな?アイリーンにも気を遣ってやれ」
「わ、わかってます」
「なら良い」
丁度そのタイミングでエリスとアイリーンが本部タープに入ってきたので、この話は終わりになった。
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イサイア とある居酒屋
「くそッ!くそッ!くそぉォォッ!」
ダンッ!とケインは酒の入ったグラスをカウンターに叩きつける。
他の客は、この街を治める貴族だからか、はたまた酔っ払いが危険だからか、不審者を見る目で遠巻きにケインを見ていた。
「そもそも彼奴が居なければ、今頃エリスと結婚して、幸せな家庭を築けたのに……」
ケインはだいぶ酔っ払っていて、既に泣きが入っている状態だ。
「あの時も……邪魔者が入らなければ、エリスを取り戻せた……ッ!」
「お困りですかな?お兄さん」
と、隣から声がかけられる。
隣に立っていたのは、肩に傷のある筋肉野郎だ。
「失礼ながら、あなたは"クロスボウの様な武器"を持った者達にやられたので?」
「そうだが……貴様は何者だ?」
筋肉野郎はニヤリと笑い、ケインに話を持ちかける。
「その者なら私は知っています、是非とも協力させて頂きたい……」
それは、そこはかとなく危険な香りのする取引だった。