第27話 汎用ヘリコプター
村での戦闘から1ヶ月後、ガーディアンにも人が増え、ベースキャンプのテントもかなりの数になってきた。
エリス派の加入も進み、残すところ10数人となった。
現在は第2分隊の訓練が終了し、第3分隊が訓練中、第4分隊と戦闘支援部の隊員を編成中だ。
そしてランディ達狙撃手の教導も終え、ランディは狙撃手、クリスタは選抜狙撃手として第1分隊の指揮下に入った。
ランディに渡したライフルは、レミントンM24SWS。
しかしこれはただのM24では無い。
まずは薬室を改良し、8.58×71mm
.338Lapua Mag弾という狙撃銃専用弾を使用出来る様にした。これで超長射程の狙撃が可能になる。
更にインナーボックスマガジンからA2の様な脱着式のデタッチャブルボックスマガジンに改良、これにより8発という装弾数を実現し、何より再装填の速度が向上した。
スコープはLeupold社のULTRA M3を搭載している。
ロングボウで遠くの獲物を1発で仕留める腕があるランディにこれ以上適したライフルは無いと言っていい。
クリスタには同じレミントン社のR11 RSASSを渡した。
7.62×51mmNATO弾を使用するこのマークスマンライフルは、トリガープルが軽く、速射に適している。
スコープには兄のランディと同じく、Leupold社 のMark4 LR/T M1 8.5-25x50mmスコープを搭載している。
重量は軽く、クロスボウで狙撃していたクリスタにぴったりのライフルだろう。
2人共スコープに反射する光を嫌い、スコープは載せないと言っていたが、2人には少しでも精確な狙撃をして欲しい為、スマホの画面反射防止用のシールを貼ると反射しないと言ったら納得し、スコープを載せる様にしてくれた。
一応キルフラッシュもあると言ったが、ハニカム構造の網目が逆に見辛いと言って却下された。
そろそろ引越しが近づいて来たかもしれない。
リンカーの街はイサイアからは50kmと近過ぎ、本格的な拠点として活動するには近過ぎる。
引越しには全ての隊員が賛成、支持しており、屋敷に残っている残存組も賛成している。
家族がいる隊員や付き添いがいる隊員もいるだろうから、強制はしない、と言ったが、エリス派は身寄りの無い10〜20代の孤児で構成されているらしく、後腐れは無く。皆例外無く俺とエリスについて来てくれるという。
皆エリスの事を本当に慕っているんだな……と、エリスの人徳を感じた一幕でもあった。
「私について来てくれる人が居る、私の背中を見ている人がいる。それはとてもありがたいし、嬉しい事だ。だがなヒロト、私の背中を見ている人は、例外無くお前の背中も見ているんだ」
「ん?そりゃどういう?」
「決まっているだろう、私とケインの結婚に反対していた一派なんだ。無理矢理結婚させられそうになっていた時に助けに来てくれたのはお前だ。私も感謝してるし、皆も感謝してるよ。もちろんヒロトだけで無く、一緒に助けに来てくれたエイミー、ガレント、ユーレク、ブラックバーンにクレイ、セレナ、スニッドにも、だ」
「……ありがとう」
背中からそっとエリスを抱き締めた。
エリスってたまにこう、深い事を言うから泣きそうになる。
さて、俺も背中を見てくれている仲間に良いところ見せなきゃな。
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突然だが、ベースキャンプの東側にはかなり広い空き地がある。
どれ位広いか、というと。千葉県にあるのに首都の名前がついている某ネズミ遊園地位だ、陸の方ね。
ここは所有者が居ない為、ギルド組合に申請して間借りさせて貰っている。
近々ここから撤退する旨を伝えたら、次の入居者(?)が来るまで無料で使ってくれて良いとの事だ。かなりお得だ。
俺はその空き地でスマホをポケットから取り出す。
現在のレベルは以下の通り。
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レベル:Lv16
服:CRYE PRECISION G3コンバットシャツ(マルチカム)
・"ガーディアン"ワッペン
CRYE PRECISION G3コンバットパンツ(マルチカム)
靴:MERRELL MOAB-MID GORE-TEX XCRブーツ DARK TAN
装備:CRYE PRECISION ロープロファイルベルト
・BLACKHAWK!レッグホルスター
・フラッグポーチ×4
・ダンプポーチ
・6×6×3ポーチ
CRYE PRECISION JPC
・CRYE PRECISION 5.56/7.62/MBITRポーチ×2
・ハンドガン・マグポーチ
・サイリュウム×2
・無線機
OPS-CORE MICH-2001ハイカットヘルメット
COMTAC M3 ヘッドセット
・咽頭マイク
・骨伝導スピーカー
武器:M4A1カービン
・ショートストロークガスピストンキット
・Torijicon ACOG TA31ECOS RMR
・TangoDown BGV-ITIバトルグリップ
・insight M3Xフラッシュライト
SIG P226
MK3A2 攻撃手榴弾×2
M67破砕手榴弾×2
・はその装備についているアタッチメントパーツ類
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メンバーも似たような装備だが、かなり充実している。
「レベルがだいぶ上がったなぁ、確かにかなり魔物倒したし……ん?」
更に下に画面をスクロールして行くと。
【車輛:トラックがアンロックされました】
【航空機が一部アンロックされました】
「おっ!マジか‼︎」
早速"召喚"アプリから航空機をタップするが……
「固定翼はまだなんだなぁ」
光っているアイコンは"回転翼機"New!と表示がある。
最も、固定翼機はまだ俺達で運用し、使いこなせるレベルに達して居ない。
固定翼機の運用には、プロペラ機なら1000m級、ジェット機なら最低でも2000m級の滑走路、格納庫や管制塔、整備員などが必要になる。
恐らく固定翼機は当分先だろう。
しかし、回転翼機……ヘリコプターが運用できる様になったという事は、それだけ戦術の幅が広がるという事だ。
今までは車輌を使って地上から進入する事しか出来なかったが、ヘリコプターを使う事で垂直機動が取れ、空から強襲をかける事が出来る。
俺は回転翼機のアイコンをタップし、ページを開く。
最初の方はMD500やMH-6Mリトルバード、OH-6など軽ヘリコプターが多かったが、ページを捲ると……
「うおぉー!あった!よっしゃあ!」
側から見るとスマホを見て1人で盛り上がっている身長175cmのただの変態だが、確かにそのページにはあった。
UH-60ブラックホーク
他にも民生用S-70やMi-8、リンクスなどの中型ヘリコプターが並んでいたが、俺は迷わずUH-60ブラックホークを選んだ。
UH-60は幾つかのバリエーションがある。
まずは基本型の多用途型UH-60、様々な国が運用しており、陸上自衛隊のUH-60JAなどもこれだ。
アメリカ海軍におけるLAMPSヘリコプター、水上戦闘艦用対潜ヘリコプターのSH-60FやMH-60R。
艦載型多用途ヘリコプターMH-60S。
コロンビア陸軍が攻撃ヘリとして使用しているAH-60L。
そして、アメリカ陸軍第160特殊作戦航空連隊が運用している特殊作戦仕様のMH-60L/K/M等だ。
俺は戦闘部隊からパイロットと副パイロット、整備士をどれだけ割く事が出来るか悩みながら、そのブラックホークファミリーからMH-60Mを選択、したが……
画面が突然フリーズ、そして。
「♪〜〜〜〜♪」
静かだが力強いイントロと共に、バイブでスマホが震えだす。表示は非通知だ。
こ、この曲は……
また歌詞が流れ出す前に通話をタップする。
「はい、もしもし」
『もしもし、レベルアップおめでとう』
神からだ、これで2度目かよ……。
しかも毎回着信の曲が……
「ありがとうございます、それで、今回はどういったご用件で?」
『あー、うん。ヘリの運用についてだけどね……』
ヘリねぇ、今出そうとしてたんですよね。
『まず1つ、オプションで、パイロットと整備士が同時に召喚出来ます。人員については前と同じだね』
『2つ目、墜落したり、破壊された場合は、人員が死亡した場合は同じものは召喚出来ないけど、機体だけなら同じものが召喚出来ます』
『その3、墜落した場合、この世界にテクノロジーの流出をさせない為に出来るだけ対処して下さい。例えば爆破するとか溶かすとか』
『何か質問は?』
「整備士やパイロットの数はこちらが調整出来るんですか?」
『うん、欲しいヘリをタップしたら人員を召喚する/しない、その数も自分で選べます、他は?』
「いえ……」
『ん、じゃあ頑張ってねー』
ブツッ……プー、プー、プー
……嵐みたいな神だな……
とにかく、戦闘部隊から人員を割いて戦闘能力が低下する事が防げるのはとてもありがたい。
早速MH-60Mを5機、上限一杯。
パイロットと副パイロットが1人ずつ、整備士が3人ずつ。
それからMH-6M軽強襲ヘリコプターを3機、人員はブラックホークと同じく。
「さて、召喚っと」
纏めて召喚アイコンをタップする。
すると目の前が光り……それぞれの形に変わっていく。
8つの大きな光球と、それに付随する様に1つにつき5つの小さな光球になり、実体化する。
目の前には、本物のMH-6MとMH-60Mが現れた。
機体は黒く塗装されており、召喚したパイロットからはただならぬ雰囲気が感じられる。
MH-60Mのパイロットが俺に敬礼する。
「初めまして、私はウォルコット・クリストフ少尉です」
俺も高揚した気分でウォルコットに敬礼を返して握手する。
「初めまして、高岡ヒロトだ。ヒロトって呼んでくれ」
「イエス・サー」
「幾つか質問があるが、いいか?」
「どうぞ」
「所属部隊は?」
「米陸軍第160特殊作戦航空連隊」
「Night Stalkers?」
「Don't Quit」
"Night Stalkers Don't Quit"、略してNSDQというのは、この部隊の信条だ。
ちょっとこれをやってみたかったので、ウォルコットがノリがわかる人で良かった。
「コールサインは?」
「ブラックホークのコールサインはスーパー6。リトルバードはスター4です」
「ありがとう、ではメンバーの紹介に入って貰おう」
全員のメンバーを紹介された後、パイロット達に向き直る。
「"ガーディアン"へようこそ。栄誉あるナイトストーカーズと共に戦えてとても光栄に思う。皆来てくれ、今度は俺が今のメンバーを紹介しよう」
俺は集められる人員は集め、パイロットと整備士達を紹介する。
皆驚いていたが、驚きよりも紹介したヘリコプターへの好奇心の方が強かった様だ。
「どうやって飛ぶのですか?」
「何人乗れるのか?」
「どのくらい速いの?」
「何処まで飛べるのか?」
と質問攻めに遭いパイロット達もたじろいでいた。
後で試乗序でに魔物退治に行こう。全員乗る事になるので、慣れておいた方が良い。
それからヘリからロープ降下も訓練に加えておこう。
引越しが楽しみになって来たな。
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因みに試乗序での魔物退治は、ヘリの交戦資格のある整備士がガンナーとして乗り込んでくれたので、乗った分隊員はキャビンから外に向かって手榴弾を放り投げるだけの簡単なお仕事だった事をここに記す。
ついにヘリを出せた……いやー出したかったんですよこれ。
※このストーリーは誰が何と言おうとフィクションであり、実在した部隊や人など、仮に名前が同じでも現実世界とは全く関係はありません。