第25話 村での戦闘
翌朝
それぞれ起き出したメンバーは朝食等を済ませ、戦闘装備を整える。
見張り番最後だったクレイとブラックバーンはまだ少し眠そうだ。
ランディとクリスタはまだ眠っている。
今までの疲れが出たのだろう。
安心してゆっくり眠れなかった分、今は寝かせておこうと思い、そっとしておいた。
ただ、移動するので寝床をテントからM998 HMMWVに移しては貰ったが。
「グライムズ、村まではどのくらいだ?」
「ここから大体1時間程ですね」
「よしわかった、各員搭乗、村に接近する」
「了解!」
「イエス・サー」
そこにいた痕跡を残さないよう、分隊は出発し村を目指した。
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約1時間後
村から100m程離れた地点に到達。
周囲を警戒、ここからでも魔物の姿がよく見える。風向きによっては獣臭が漂ってきそうだ。
車のエンジンを止め、俺は車を降りる。
「エリス、運転交代してくれ。俺が撃ったらエンジンスタート、いいか?」
「あぁ、任せろ!」
「アイリーン、助手席へ移動頼む。グライムズは後部座席からグレネードをいつでも撃てる様にしておいてくれ」
「了解です」
「わかりました!」
「各員、装填、安全装置!SOVに続け!」
分隊の全員がそれぞれの火器に初弾装填、車輌に搭載した重機関銃にもだ。
俺はSOVのラックから84mm無反動砲カールグスタフM3を取り、後部の荷台から砲弾を取り出し、SOVの横で攻撃準備を行う。
取り出した砲弾はーーーADM401。
ADM401、又はFFV401はどういった砲弾か?というと、この砲弾の中には1100本もの金属の矢が仕込まれている。
所謂フレッシェット弾、又はフレシェット弾と呼ばれるもので、どちらも意味は同じだ。
面攻撃でこれ程効果の高い砲弾はあまり無い。
一方で、フレッシェットは広範囲に散らばるので、無差別、残酷、非人道的兵器だとも呼ばれている。
しかし、相手は我々の生活を脅かす魔物と山賊だ、遠慮は要らん。
砲弾の空中炸裂信管を調整し、丁度ここから魔物が集まっている上空で炸裂する様に算出し、信管を設定。
カールグスタフM3の砲尾から砲弾を装填、砲尾閉鎖。
盛大にバックブラストを吹く為、後方に人が居ないか安全を確認する。
「行くぞ」
無反動砲を膝撃ちの姿勢で構え、片手で5カウントを取る。
5……4……3……2……1……
バゴンッ!
引き金を引いた瞬間、カールグスタフM3が火を噴き、300m/sで砲弾が飛翔。
空中で炸裂し、撒き散らされた1100本ものフレッシェットが魔物を刺し貫く。
同時に、エリスがSOVのセルを回し、エンジンをかける。
素早くラックに無反動砲を戻し、銃座に着く。
「出発!」
エリスはアクセルを踏み、偵察隊が動き出す。
俺は重機関銃に据え付けられたブローニングM2重機関銃のコッキングレバーを2度引き、初弾装填。
村へ入った瞬間、まだ息のある魔物が襲いかかってくるが、ブローニングM2重機関銃のハの字の押し金を押し、12.7mmNATO弾を送り込んで始末する。
重い破裂音が響き渡り、魔物達を撃ち砕く。
驚異度の高いクロスボウや弓矢など遠距離武器を持つゴブリンと動きの素速いコボルトは優先的に弾丸の餌食にされた。
後部座席のグライムズと、助手席のアイリーンはM4のアンダーバレルに装着したFN Mk13 EGLMグレネードランチャーを魔物が密集している所に撃ち込み、飛び散る金属片と爆風に魔物達を巻き込んでいく。
SOVの後ろのM998 HMMWVの銃座に着いているグリッドは銃座に装備しているM134Dミニガンに電源を入れ、ジャムに気をつけつつ発砲する。
ヴォォォォォォオォォオォオオオ!
設定した毎分4000発の7.62mmNATO弾の暴風が、魔物の群れを薙ぎ払う。
要するに射程の長いショットガンだ。
図体のデカいオークやトロールも身体中を穴だらけにし、血を噴き出して死亡する。
前2台が撃ち漏らした獲物を、M1044 HMMWVのM2重機関銃が片付けていく。
12.7mmNATO弾の破壊力は凄まじく、魔物の肩を掠めただけで腕が千切れ飛び、直撃を受けた魔物は原型を留めなかった。
村の中の魔物は粗方片付け、ランディとクリスタが「人の気配がする」と言っていた屋敷の前に到着。
屋敷の前にはオークが警備についていたが、助手席のアイリーンがM240E6を発砲して始末する。
ダタタタタタタッ!
悲鳴と共にオーク4体が倒れ、M2で更に細かく砕く。
銃声に気づき塀を乗り越えてきたコボルトにはHMMWV M998のミニガンの弾幕をプレゼント。
「全員降車!屋敷の制圧に掛かる!グライムズ、ヒューバート、ブラックバーン!俺と来い!エリスは車輛を守って俺が戻るまで指揮を執ってくれ!」
「「「了解!」」」
「わかった!」
屋敷の門の前に車を停め、魔物が入らない様にする。
俺、グライムズ、ヒューバート、ブラックバーンはそれぞれの銃器を手に取り車を降り、屋敷の中へ突入する。
屋敷のドアを蹴破ると、濃密な獣臭が溢れてくる。
ヒューバートが前へ出て、廊下の曲がり角を壁ごとMINIMIで掃射、顔を出させない様にしたところにグライムズがアンダーバレルグレネードランチャー、FN Mk13EGLMの引き金を中指で引く。
ポンッ!
低圧ガス発射システムで撃ち出された40mm高性能炸薬弾は曲がった廊下へ着弾し爆発。
廊下の向こうに待機していた複数の魔物の悲鳴が上がる。
俺は先頭に立ち廊下を曲がる。
ただでさえ人間より生命力の強い魔物なので、念には念を、5.56mmNATO弾で魔物の頭にトドメの1発。
「後ろに敵!ゴブリン3体!」
後ろを任せていたブラックバーンが叫び、影から飛び出てきたゴブリンに発砲する。
ブラックバーンはM4の機関部上部に装備されているEOTech553ホロサイトのレティクルの真ん中にゴブリンを捉え、ゴブリンを撃ち倒す。
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更に廊下を幾つか曲がり、室内をクリアリング。
魔物の警備が厳重な奥の部屋へとたどり着いた。
猛スピードで走ってくるコボルトをヒューバートが射殺し、俺はドアを蹴破り、中へと入る。
すると、中は魔物が食い荒らした遺体が散らばり、未だに数匹のコボルトが人間を食っている。
部屋の奥、中心部には山賊の頭と思われるゴリマッチョが、側近や幹部と思われる人と共にこちらを睨んでいる。
「何だテメェら⁉︎この俺様を誰だと思ってやがる!」
「知るかボケェ!」
ゴリマッチョのセリフを遮り、向かってくるコボルトやゴブリンを撃ち倒す。
部屋の中に居たゴブリンとコボルト20匹は10秒で始末させられ、自己紹介が途中だったゴリマッチョ達は驚きで声が出ない様だ。
「な、何だその魔術道具は⁉︎聞いた事ないぞ⁉︎」
「動くな盗賊、拘束する。両手をゆっくり頭の後ろに組め!」
ゴリマッチョに近づき、ユーティリティーポーチから使い捨て手錠を取り出し、拘束の準備をする。
それを見たゴリマッチョは我に返って腰のサーベルを抜くが、俺がM4で狙いをつける方が速かった。
ダンッ!
「ぐあぁっ!」
ゴリマッチョは肩を撃ち抜かれて倒れこむ。
他の幹部や側近は銃の威力に恐れをなしたのか既に両手を後ろに組み、グライムズ達に監視されている。こっちは意外に小者だ。
「大人しくしてろ!」
銃口を頭に向けたまま手錠を両手首に掛けるが、ある事に気が付いた。
此奴の口が動いているのだ。
「……に……して……を救いたまえ!」
「ヒロトさん!離れて!伏せて!」
ブラックバーンが叫ぶ、魔力の流れを察知したのだ。此奴魔術師か⁉︎
恐らく詠唱魔術の一種か、頭を撃ち抜いて止めようと思ったが、魔術の発動の方が早い!
「クソッ!」
俺は机の陰に隠れ、伏せる。
グライムズ、ヒューバート、ブラックバーンも同じ様に伏せた瞬間。
部屋中に轟音が響いた。