第23話 面接&初めての人員召喚
一夜明けて。
エリス立ち会いの下、メンバーの照合と手続きが行われる。
本部タープの下の長机を挟み、俺&エリスと新メンバーが向かい合わせで座っている。
「俺はこのギルド"ガーディアン"の隊長を務めている、高岡ヒロトだ、ヒロトと呼んでくれ」
「初めまして、ストルッカ・スミスです」
ストルッカと握手する。
座る時に、俺はエリスの目を見ると、エリスは小さく頷く。
何故エリスを立ち会わせているか?
それはスパイ防止の為だ。
エリスは、自分の名前が付いた派閥のメンバーを全員、把握している。
なので、名前と顔が一致しなければすぐにわかり、スパイ防止になるからだ。
ガレント達が一応の確認をしたが、念には念を、だ。
エリス曰く、屋敷に肉体変化を使える魔術師は存在しなかった為、偽物はあり得ないという。
エリスの他にも、ブラックバーンやクレイがテントの裏や射撃場近くからACOGスコープでこちらの様子を伺っている。
信用していない訳では無いが、あくまで念の為だ。
「そんなに緊張しなくていいよ、特に何してやろうって訳じゃないから」
俺はストルッカの緊張感が解れる様、にこやかに言う。
「それじゃ、色々聴いていこうか」
「はい、よろしくお願いします」
面接 S T A R T
「希望職種が戦闘員って聞いたけど、屋敷ではどんな仕事をしていたの?」
「はい、私は馬術が得意で--
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「終わった……」
「お疲れ様、ヒロト」
1人平均10〜15分の面接を行った。
面接を終えた者から、クレイやブラックバーンに教導を振り分け、頼んでいる。
ケイン達の屋敷からこちらに鞍替えした理由としては、やはりエリスへの忠誠心が中心だった。
それに、そのエリスを助けた俺の下で働きたい、役に立ちたい等の理由も多くあった。
今回来たのは7人。
男5人、女2人の比率だ。
男はのメンバーは以下の通り。【()は年齢】
馬術の名人ストルッカ・スミス(20)
怪力グリッド・エルストン(18)
騎士団のリチャード・スティング(17)
目が良く、弓の使い手でペアで動いていたというバズ・フルート(18)とカーンズ・マクエルト(18)
女子のメンバーは、騎士団でリチャードとペアを組んでいたハミルトン・アレクス(17)と、エリスの親衛隊だったというレーナ・レイムリー(17)だ。
暫くは教導の下、銃の扱い方や訓練に励んで貰おうと思う。
「すまないな、忙しくて時間が取れなくて」
俺はエリスと2人の時間が取れなくて申し訳なくなり、エリスに声をかけた。
「良いんだ、ヒロトの頑張りは私が一番良く分かってる」
それに、と続けてエリスは座っている俺を後ろから抱き締めて来た。
「私は、頑張っているヒロトが大好きだ」
「……ありがとう、エリス」
暫く抱き締められたあと、仕事に戻る。
エリスもアイリーン達の教導に戻っていった。
週明けにグライムズ達の村を偵察に行くと言ったので、なるべく早めに第1分隊は編成しておきたいところ。
第1分隊は人数がまだ揃っていない。
「……人出すかな……」
そう、このスマホの"召喚"は、人も召喚出来る。
第1分隊で揃っていないのは、SAW手とLMG手が1人ずつだ。
LMG手は新メンバーのグリッドに任せる事が決まっているが、SAW手がいない。
タープを少し離れ、スマホを開く。
"召喚"アプリを開き、"人員"をタップすると……
「あれ?」
一瞬だけスマホがフリーズし、バイブと共に音楽が流れ始めた。
「♪〜〜〜〜〜〜♪」
ラテン語?ドイツ語?綺麗な声のコーラスのイントロが流れ始める。
画面は通話画面で、非表示で電話がかかって来た。
誰だ?
イントロが徐々に躍動感のあるメロディーに変わり始め、歌詞が流れ始める前に俺は通話アイコンをタップした。
「はい、もしもし」
『もしもし?元気でやってる?』
……聞き覚えのある声がして来た。
この声は、あいつだ。俺をこの世界に送った神だ。
「お久しぶりです、お陰様で元気でやってますよ」
何回か死にかけたけどね。
『ほー、そいつぁ結構。ところで、人員召喚しようとしたでしょ?』
あ、バレてら。まぁ誤魔化しても仕方ないな。
「はい、しました。人手が足りてなかったので」
『うんうん、知ってる。そこで1つ話して置く事があってね?』
「はい?まさか今のレベルじゃ、人が出せないとかそういう事ですか?」
『いや、そういう事じゃ無くてね……』
ほっ……良かった。まだ使えないとかじゃ無いのね。
『まず1つ目、君は召喚した人員を自由に使役出来ます。忠誠心は高いから命令は聞くし、いい部下になるよ』
『2つ目、レベルによって召喚出来る人員が増えていきます。今のレベルだと4人だね』
『3つ目、召喚した人は只の人です。魔法使いじゃ無いから普通に死にます。同じ人を召喚する事は出来ません』
なるほどね……
『以上の事を踏まえて、注意して扱って下さいね?』
「了解しました」
『じゃあ、またねー』
ブツッ……プー、プー、プー。
通話が切れ、召喚の画面に戻る。
「…………」
神って部屋から電話かけて来れたんだ……
しかも何で着信があの曲なんだ……
画面を見つめながら暫く硬直してしまう。
おっと、そうだった。
気を取り直し、人員召喚をタップ。
すると、目の前が光り、人の形になっていく。
暫くして光が消えると、目の前に男が1人現れた。
顔立ちは、ハンサムと言っていい。
彼は前世の陸軍式の敬礼をビシッと決める。
「初めまして、マスター。私はヒューバート・ハドック上等兵です」
「初めまして、高岡ヒロトだ。ヒロトと呼んでくれ」
「イエス・サー」
ヒューバート、と名乗った男と握手する。
「早速で失礼ですが、私は何をすれば良いでしょうか?」
おおぉ……やる気満々だなぁ。
「ありがとう。じゃあ早速で悪いが、自分の個人用テントの設営に入ってくれ。その後でメンバーに紹介する」
「メンバー……ですか?」
「ああ、"この世界"の仲間だ。俺たちと一緒に戦っていく仲間だから、なるべく打ち解けてくれ」
「イエス・サー」
ヒューバートはすぐさま個人用テントの設営に入った。
「……」
内心、馴染めるかどうかヒヤヒヤである。
大丈夫かなぁ……?
心配を抱きつつ、俺は新メンバーの教導に入った。
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「お?」
皆にヒューバートを紹介した時は、俺の友人という事で紹介した。
後で全部話すつもりでいるが、今は余計な混乱を生みたくない。
ヒューバートがメンバーに馴染めるか凄く心配だったが……
「ここを肩に当てて、脇を締めて引き金を絞る感じで撃つと良く当たりますよ」
「どれどれ……おぉ、本当だ!」
「弾が切れたら、ここを押してマガジンを抜きます。そして新たなマガジンを装填し、ここを押すと内部でボルトが前進し……」
教導を積極的に引き受け、結構馴染んでいる。
「なぁ、ヒューバートの事、どう思う?」
「はい?何です?藪から棒に」
「その……印象とか……」
俺が教導を担当しているリチャードとハミルトンにヒューバートについて聞いてみた。
「特に悪い印象は無いですね……教え方も丁寧ですし、ヒロトさんのご友人じゃないですか」
「そうですね、これから仲間として一緒に戦っていくので、信頼出来る人だと私は思いますよ」
2人とも好印象だった。
「そうか、ありがとう」
「いえいえ」
皆受け入れてくれたみたいで良かった……
心配事が1つ消えた俺は、2人の教導に意識を戻した。