MUSIC
彼らの課題がはっきりした翌日以降、同じように実戦を想定した訓練が繰り返される。
『ぉぉおおお!』
『はい、キル!滑走路往復だ』
『クソ!』
ドッグファイトでは身体を押しつぶすGに耐えつつ格闘戦を挑み、幾度となくチャンスを掴もうとしてそれを逃し敗北。
撃墜された者は長さ3000mの滑走路脇にある整備用通路を1.5往復、9㎞を走る事になった。
『Leaf2-3 FOX3, BULLLSEYE170/28 22000. CLANK Left……2-3 SPIKE, Defending North!』
中距離ミサイルの撃ち合いでは間合いを測り、撃たれた時の対処と回避も学ぶ。
『Leaf1-2,Bombs away!』
空戦だけではない、JDAMや通常爆弾の投下も多用途戦闘機たるF-16の重要な役割である。
『CLEARED HOT!』
『Leaf2-1 PAVEWAY.』
ガーディアンの任務の中でも、近接航空支援というのはこなす回数が多いと考えられる。JTACのレーザーの誘導で近接航空支援を想定し、実際にレーザー誘導爆弾を投下する訓練も行った。
『Leaf1-1 MAGNUM, SA-6 BULLLSEYE030/7.』
そしてまた別の日には、F-16の得意分野である防空網制圧の訓練も行った。敵のレーダーや地対空ミサイル等の防空網を対レーダーミサイルで制圧するこの任務は、F-16にとって重要な任務の1つだ。
『Leaf2-2 Rifle, SA-6 BULLSEYE030/7.』
AGM-65マベリック対地ミサイルを搭載した僚機と連携して、SAM陣地を制圧、レーダーや発射機を破壊する防空網破壊の訓練も合わせて行った。
「低空で飛行する時、注意しなければならないのは地形の把握とバードストライクだ。特にこの世界では翼竜も生息している事から取りだけでなく翼竜との衝突も___」
実地での操縦訓練だけではない、航空物理学や航空生理学、航空気象、航法についての座学。実戦部隊に就いたら士官としての任命となる為、士官学校に準じた士官、幹部としての教育も受ける。
「では実際にサバイバルキットから銃を取り出し、射撃出来る状態に」
脱出した際のサバイバルキットの講習にも多くの時間を割いた、様々な生存装備の中、自衛用の火器の射撃訓練も欠かさない。
ガーディアンでは搭乗員用自衛火器として、主力の自動小銃と同系統のGAU-5/A ASDWを採用している。
クイックコネクタで銃身を機関部に接続し、折り畳まれているグリップを展開。教官の指示で弾薬の詰まったマガジンを叩き込んでチャージングハンドルを引き、安全の為にプレスチェックをするという一連の流れは、地上戦闘員なら慣れているが航空機搭乗員たる彼らには不慣れで、その手付きはぎこちないながらもなんとか習得した。
実機の操縦とシミュレータ、そして座学を何度も何度も繰り返し、彼らは日に日に腕を上げて行く。
昨日まで出来なかった事が今日出来る事に彼らは喜び、今日出来なかった事は明日出来るようになると希望を持つ。
相手が教官でも、全滅までに1機や2機は食えるようになって来た。滑走路往復の回数も徐々に減って来ていた。
だが、それでも勝てなかった相手がいる。
『Leaf1-2 VANISHED』
『あぁぁ!畜生!またか!』
実戦部隊のF-14が訓練に参加した際には、ドッグファイトに入る間も、訓練生達がBVRAAMを撃つ間も無く、一方的にAIM-54フェニックスを撃ち込まれて敗北していた。
何しろ訓練生達が装備するAIM-120Cが射程100㎞そこそこなのに対し、実戦部隊のF-14が搭載するAIM-54Cは150㎞も飛ぶ。
勿論ミサイルの射程は飛行する速度や高度によって大きく変動する為、射程距離の数字はあてにならない事も多いが、それでもこの長射程、そしてAPFSDSと同じ速度で飛んでくるミサイルというのは非常に回避しにくく、大きな脅威であった。
それにレーダーの探知距離も段違いだ、F-16の搭載するAN/APG-68(V)9が最大で296㎞なのに対し、F-14のAN/APG-71は370㎞、F-16がF-14を探知する前には、F-14は既にF-16を捕捉しているのだ。
先手を取ろうと高高度を高速で飛んでも、AIM-54の圧倒的長射程でF-14に先に撃たれる事で低空へと引きずり下ろされ、ミサイル発射の機会を失う。
「まだ勝てないか……」
カナリスはそう言いながら自身の額に手を当てる。
デブリーフィングの後、教室に残って空戦記録を見ながら訓練生達は次への対策を練っていた。
ここまで戦って教官も撃墜判定を下した事のあるカナリスも、未だF-14に勝てずにいた。
「えぇ……こちらの射程外から一方的に……まともな空戦が成立しません」
「飛翔速度も速すぎます、普通の回避機動を取っても意味が無い……」
エーリヒや他のパイロットも口々に言う、今回はまだミサイルがシミュレータだからいい、実戦で実弾だったら、464㎏の炸薬がマッハ5超の破片を生み出し、散弾の様に襲い掛かって来るのだ、想像するだけでも恐ろしい。
「我らが回避機動で速度も高度も失ってる中、F-14は保ったまま。あまりにも理不尽極まりなし」
戦闘としては正しい、味方ならこれほど頼もしい存在は無いだろう。だが今の彼らに取ってF-14は“倒すべき目標”であった。
「教官達に実戦部隊の訓練参加の取り止めを交渉しに……」
「ならん!」
そう言って腰を上げた一人の訓練生を、カナリスは静止する。
「それはならん、確かに理不尽な戦いだが、それをいっては訓練にならん。実戦で同じ状況になったら、敵に向かって“理不尽だから止めてくれ”とでもいうのか?」
カナリスがそう言うと、その訓練生は再び椅子に腰を下ろす。
「この理不尽に対する戦い方を学ぶのも今回の訓練の内だ、中止交渉など絶対にならん」
「そうですね……すみません」
「良い。しかし理不尽とはいえ訓練に取り込んでいるのだ、何か策はある筈だ、絶対に」
撃墜する手立ては、必ずある。そう言いながら彼らはディスカッションを続ける。
地形に隠れて低空で接近するのはどうか、いやいや高高度と高速で飛行する相手に対して、上昇したてでエネルギーを失った状態で挑むのは危険だ。
SAMと連携して防空網に誘い込むのはどうか、地上部隊に応援を頼むとなると部隊間での調整が必要だ、それに攻勢対航空作戦では使えない。
旋回率はF-16の方が優れているならドッグファイトに持ち込めないか、問題はAIM-54の攻撃を凌ぎ切って、エネルギーを保持した状態で接近しなければならない。1機辺り最大6発の長射程高速なミサイルの攻撃をどうやり過ごす?
そんな議論が活発に交わされる、そんな中、休日は釣りをするのが趣味だという1人の訓練生が手を挙げた。
「そう言えば、我々ってまだあの装備を使っていなかったですよね」
「あの装備?」
その訓練生はフライトマニュアルと装備一覧を出し、指を指す。
「これ、有効に使ってみませんか」
カナリスはそれを聞き、脳内で天秤をかけ始める。
あくまで戦術で立ち向かうか、それとも装備を駆使して貪欲に勝ちを目指すか。
その天秤は、彼の中で釣り合った。
「……うむ、それで行こう!それと、いくつかの戦術を組み合わせて___」
訓練生達の間で、作戦が組み上がっていく。
あのとんでもない強敵、F-14を相手に、これなら行けるかもしれない。彼らは僅かに差し込んだ光に表情を明るくした。
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教官達の協議の下、シミュレータといくらかの飛行訓練の後、実戦部隊と再戦する時が来た。
基地を離陸し、訓練空域に向かって速度と高度を上げるF-16が8機。今回の任務の想定は、“後続の攻撃隊の為の航空優勢を確保せよ”だった。
戦術統制官“Classroom”への通信接続確認、マスターアームをARM、レーダーを空対空モードへ、戦闘準備の手順を踏んで完了する。
『Leaf1 Flight, SKATE GRIND. 1-2 PUMP Right. Go TRAIL 10nm.』
『1-2 WILCO.』
今回航空優勢を確保する8機のCAPチームに割り当てられ、リーフ1-1のコールサインを振り分けられたエーリヒはチラリと後ろを振り返る。斜め左後方を飛行していたF-16、リーフ1-2が180度旋回、10マイル後方に着く為離脱していく。
戦闘機は2機1組と呼ばれる最小単位で飛行するが、必ずしも僚機が目視出来るところを飛行していたり、密集隊形で居るとは限らない。今回の様なLaunch&Leaveの戦術を取るならなおさらだ。
中距離ミサイルの撃ち合いはもう彼らに沁みついている。離陸後、訓練空域に向けて可能な限り上昇、速度を稼ぐ。上昇するのは位置エネルギーで敵に対し優位を取る為と、発射したミサイルにかかる空気抵抗を減らす為だ。
『Climb up, 38000. IN HEADING 170, OUT HEADING 350』
リーフ1-1とリーフ1-2が縦に10マイルの距離を取り、高度38000ft、方位170度、から攻撃進入、敵機との距離40マイル程度まで接近したら可能な限り高速でAMRAAMを発射。180度反転し、方位350度へ離脱する。
この戦術を行うエレメントを4組作り、F-14を出迎える。
『NAILS 14.』
自機のレーダーより先に、レーダー警報受信機がF-14に補足されている事を伝えて来る。
F-14は凄いな、そんな事を考えると同時に、戦術統制官からの通信が飛んできた。
『Classroom PICTURE;2Groups, Range40.』
縦間隔40マイル、敵機のブルズアイ方位が送られてきたが、敵も同じ戦術を取っていると気付く。長距離のAIM-54でロングスケートなんてされたら、こちらは撃つ前に全滅だ。
だが、こちらには秘策がある。
レーダー警報受信機が警報を鳴らした時、エーリヒは全機に無線を入れた。
『Flight Leaf1-1 SPYKE, MUSIC ON』
電子妨害装置を作動させる、左のMISCパネルのECM作動灯が光を放ち、搭載して来た電子戦ポッドから妨害電波を敵に送信している事を伝えてくれる。
F-14のコクピットでは、AIM-54発射の為に引鉄を引こうとしていたマックスの指が止まった。
『ん?』
レーダー上の敵機の反応がどんどん遠ざかり、60マイル程の距離にいた反応の表示が突然100マイルにまで離れて行き、忽然とレーダーから消える。
『……Rapier1-1 FADED』
『FADED?』
レーダーシステム士官の“テリア”はレーダー画面を見つめながらFADEDをコールする、表示がおかしい事は彼にも分かっていた。消える前の挙動が変だ、HOTな機体が突然後ろ向きに飛んで消えるなんてありえない。
『……いや、捕まえた。RADER HIT, BULLSEYE 010/50/38000
『Rapier1-1 Classroom 4Group WALL Azimuth 20. BRA 012/55/37…… correction38000』
再びレーダーに捉えた時、少しだけ距離が詰まっていた。55マイル、AIM-54なら射程内だが、AIM-120Cはまだ射程外。テリアは今ならまだ先手を取れると判断した。
『Rapier1-1 TARGETED, BULLSEYE 010/50/38000』
再び敵グループを捕捉、レーダーでロックする。“マックス”は操縦桿のレバーでPHXを選択、引鉄に指を掛ける。
『あ?何だ?』
“テリア”の素っ頓狂な声に指がまた止まった。レーダーを見ると、捕捉した敵機の表示が今度はぐんぐん近づき、突然30マイルまで近づき、突然消失した。
『1-1 FADED……クソ、何だよ』
“マックス”は悪態を吐くが、“テリア”には分かっていた。
高度からして墜落ではない、F-16は加速は良いが、数秒で50㎞の距離を詰められる様なものでもなければ、ステルス機でもない。
『ECMだな、訓練生が揃ってECM炊いてる』
電子妨害装置、F-16の胴体下に搭載していたAN/ALQ-184の電子妨害だ、訓練生の機影がレーダー上で出たり消えたり、近づいたり遠ざかったりを繰り返す。
『マズいな』
このままでは距離が詰まる、相手の射程まで入ってしまえばミサイルの射程の優位性は失われる。
『一旦離隔する、OUT HEADING 180』
一度引いて距離を取り、AIM-54で敵の射程外から攻撃する。操縦桿を倒して180度旋回し、距離を取って再び相手向きになる。
『Rapier1-1 TARGETED,BULLSEYE 010/40/38000』
『Rapier1-1 Classroom continue HOT BRA 012/45/38000』
『近づいてるな』
距離45マイル、さっきよりも近づいている、相手のミサイルの射程にも入っている、こうなったらどちらが先手を打てるかだ。
レーダー画面のカーソルを動かし、目標をロックした瞬間、訓練生のECMを受けてロックが外れる。
『チッ……厄介だ』
そう呟いた瞬間、F-14のコクピットに警報が溢れる。
『Rapier1-1 SPIKE!SPIKE!HEAD ON!F-16!』
『こっちはどうだ?』
『まだだ……クソ!』
レーダー警報受信機の警報音がロック警報から発射警報に変化した。
『発射された!ロックは!?』
『もう少し……ロックした!』
『了解!Rapier1-1 FOX3 West group Defending South!』
発射している時間が惜しい、訓練生に先手を取られた以上、回避を優先する為発射にあまり時間をかけられない。
実際にミサイルが飛んで行っている訳では無いが、2発のAIM-54撃って高度を落とし、回避機動に入る。
その時、戦術統制官からの通信が入った。
F-16を操る訓練生達は、機体性能を生かし切る為に、最後は距離を詰めてドッグファイトしかないと考えていた。
カナリスが率いる4機のF-16は、訓練区域の山々に身を潜める様に低空を飛んでいる。
『始まった』
通信を聞きながらカナリスはそう呟く、上を見上げてもミサイルの噴煙は見えないが、双方が曳く飛行機雲は見える。
ECMでレーダーを妨害しつつ視程外戦闘に持ち込み、敵が回避機動の為に高度を下げたところで地形に隠れていたカナリス達が飛び出し、ドッグファイトに持ち込む。
これが彼らが立てた作戦だった、カナリス達は山より低く飛ぶ事でF-14のレーダー探知を掻い潜り接近、隠密性を確保する為に情報は戦術統制官とのデータリンクで受け取り、自機のレーダーを切る徹底ぶりだ。
『回避中の2機が下りて来る、4-3と4-4は後続グループを、4-2は一緒に先頭グループに仕掛ける』
4機を2機づつに分け、低空からF-14に襲い掛かる。
回避に入った先頭グループのF-14の高度が15000ftを切った時、カナリス達も動き出した。
『Leaf4 flight Tank jettison. GO GATE』
スロットルを押し込んでアフターバーナーを点火、身軽になる為、既に空になっていた増槽を投棄した。
速度はぐんぐん上がって行き、750ktを超える。
『Flight, RADER ON Climb up 10000 BREAK&ENGAGE.』
編隊からCopy、と返答。風防の外、自身よりも高い所を山の風景が駆け抜けて行く。
『POP UPまで3、2、1……』
カナリス達は操縦桿を引く、F-16の操縦桿は僅かにしか動かないが、それでも機体は機敏に反応してくれる。速度を高度に変え、一気に上空へと駆け上がる。
『MUSIC ON,RADER ON, BREAK!BREAK!』
電子妨害とレーダーをオンに、戦闘機が目を開けると、その目には2機のF-14がはっきりと見えた。
高度計が狂ったように回転し、先程まで視界を横に流れていた山肌の景色は一瞬で背後に消え去り、雲の層を突き抜ける。
『TALLY 2ship! F-14だ!』
主翼を三角に畳んだF-14Dが2機、急降下してくるのを上昇して待ち受ける。
『MERGEするぞ!』
高速で降って来る鏃の様な機影が一瞬ですれ違うのを、F-16の風防は良く見える。相対速度は間違いなく音速を越えていた。
___切り返して来ない!
カナリスは今度は見逃さなかった、操縦桿を引いて180度ループ、敵の目視を維持しつつ機体をひっくり返す。お互いの尻を追いかけ続けるツーサークル・ファイトだ。
『くっ……ふっ……!』
下腹に力を入れて息を吸い、吐く。脳に血流を送り、Gに押し潰されながら操縦桿を引き続け、なんとかF-14の旋回円の内側へ。
いっそのこと切り替えしてくれれば楽だ、HUDに機体を維持してAIM-9Xを撃てるから。
しかし敵のパイロットもそれを分かっている、F-14の不利とF-16の有利を認識し、F-16との距離を維持し続ける。
『こンのっ……!』
あまり高度を落とすと墜落する、高度を気にしつつ、もつれる様にお互いの背後を追い続ける。
HUD左上のG表示は8.6を指している、主翼が撓み、視界が黒く滲む。身体が軋んで悲鳴を上げているが、それでもカナリスはF-14を追い続ける。
F-14は主翼を広げて切り返し、フラットシザーズからワンサークル・ファイトに持ち込もうとする。だがカナリスはF-14に喰らい付き、隙を伺ってF-14のコントロールゾーンに入り込む。
まだHUDの中にF-14は入っていないが、目的は相手の後ろにつく事ではない、敵機に対し撃墜判定を取る事だ。
スロットルのDOGFIGHTのスイッチを後ろに倒す、レーダーがA-Aモードに切り替わり、HUDに機関砲とミサイルのレティクルが表示される。
操縦桿の右側のボタンを長押し、兵装選択画面はAIM-9XがSLAVEモードで選択済み。
血が下がる頭を懸命に働かせ、操縦をしながらロックオンの準備を整えた。
F-14は振り切ろうと旋回しているが、ついにカナリスのF-16が追いつく。HUDの中にF-14の機影が入ると、AIM-9Xのシーカーが赤外線を探知し、”ガラガラガラ”と唸り声のような音を立てる。
ヨコバイガラガラヘビとはよく言ったものだ、そう思いながらシーカーヘッド位置を表示するミサイルダイヤモンドとF-14の機影を重ねると、その唸り声は一層大きく、強くなった。
スロットルのUNCAGEコントロールスイッチを押して追尾装置を開放、”ガラガラ”音は”キー”と高い音を立ててロックオンが完了した事を知らせて来る。
捕捉からWPN RELスイッチを押すまで1秒もかからなかった、そしてスイッチを押してもミサイルは飛んで行かない。マスターアームがSIMULATEモードに入っている上、搭載しているミサイルは実弾ではなく、シーカーとシミュレータを搭載し重量だけが同じ模擬弾だからだ。
『Leaf4-1 FOX2. FAKER F-14』
ミサイル発射をコール、訓練を監視している戦術統制官の判断は“撃墜”だった。
『Rapier1-2 KILL, RTB』
『よし!4-1、SPLASH ONE!』
実戦部隊に対し、初めて“撃墜”判定を取った、嬉しさが込み上げて来ると同時に無線が飛び込んでくる。
『Leaf4-2!敵機が後方に着いた!振り切れない!』
僚機が危険に晒されている様だ、レーダーに目を落とすと、F-14の反応とF-16の反応が重なっている。
『4-1 Cover 4-2』
操縦桿を倒し、素早く機首を僚機の方に向ける。
F-14は射撃機会を窺っているのか、激しく機動するF-16の後ろでプレッシャーを放っている様に見える。
カナリスはF-14が射撃コース二入る前に、自らのF-16をF-14の後ろに滑り込ませる、多分相手も気付いているだろう、回避に入られる前に片を付けないと。
先程と同じ手順を踏み、AIM-9の追尾装置が耳障りな音を立てる、スロットルのボタンで追尾装置を開放。
WPN RELスイッチに指を掛けた瞬間、F-14の機体が急上昇し、無線が割り込んだ。
『リーフ4-1、鳥だ!』
慌てた声は“マックス”少佐の声に、カナリスは目を見開く。
正面至近に、鳥の群れが迫っていた。
カナリスは操縦桿を慌てて引いたが、反応速度より機体の速度の方が速かった。
群れに突っ込んだ瞬間、エンジンの空気取り入れ口に鳥が吸い込まれ、エンジンのブレードが破損し、機体は悲鳴を上げて振動した。
『Bird Strike!』