高度1万5千ft、マッハ1
『よろしい、じゃあそのまま管制塔と連絡取ってタキシング。滑走路手前まで機体を持って行け』
『了解。あの……英語、ですよね?』
『当たり前だろー』
パイロット候補生の航空管制は例外なく英語が用いられる、管制に使用する英語の学習というのも必須科目だ。
何だってわざわざ……カナリスはそう思うが、酸素マスクを装着して指示通り無線を入れる。
『This is Leaf1-4. Request to remove wheel chocks』
地上作業員に車輪止めを外す様に要請、HUDのALIGN表示が点滅、DEDのINS RDYをもう1度確認し、右コンソールのINSノブをNAVに回す。
補助コンソールからTaxiライトを点灯、操縦桿の右側面のボタンを押すと、HUD右側の指示器に“AR NWS”の文字が点く。Nose-Wheel Steeringの略で、前脚が走行中に舵として機能する様になったサインだ。
『Wheel chocks are now remove.』
地上作業員から車輪止め撤去完了の通信が来る、タキシング前チェックリスト完了、離陸に向けて管制塔への通信に切り替える。
『Fort Flag TWR. This is Leaf1-4 130.0 Comm Check.』
暫くして管制塔からの通信が返って来る。
『Leaf1-4. This is FortFlag TWR. Your raido 5/5』
無線は通じている、感度と了解度も良好だ。
『Fort Flag TWR. This is Leaf1-4, single F-16D currently parking at APRON106. Request taxi to RWY』
当然の事ではあるが、この飛行場を使っているのは教育隊だけではない。管制塔の許可が無ければ離陸する事も、着陸する事も出来ないのは、全ての航空機が安全に飛行する為だ。
『Leaf1-4. This is Fort Flag TWR. Taxi to RWY09 via I,G&B hold short.』
管制官の返答、タキシング許可が下りた。
『Leaf1-4 Roger. I,G&B hold short RWY09.』
管制官の内容を復唱し、スロットルに手をかける。
『それじゃ教官、行きます』
『了解』
スロットルを少しだけ押し出し、機体が徐々に前進し始める。
駐機場に引かれた線に沿って誘導路Iへ、DEDの右下に表示される対地速度を参照し、飛行場内の制限速度を守って滑走路へ向かう。
『F-16は主脚の間隔に対して翼幅が広い、速いまま曲がるとコケるぞ。曲がる時は5kt以下にしろ』
『はい』
速度を上げ過ぎず、遅すぎて止まる事の無い速度を維持。誘導路を走っている最中、ふと浮かんだ疑問を教官に投げかける。
『教官、1つ良いですか』
『何だ?』
『何故航空機の運航は全て英語……異世界の言語で行われるんです?我々の使っている言語の方が、意思伝達がスムーズに行われるのでは?』
『ほう、意外と余裕があるな。……そろそろ滑走路だ、手前で停止して離陸前チェックをしろ。その質問は上空に行ったら答えてやる』
了解、と答えたカナリスは、ペダルのつま先側を踏み込みブレーキをかけ、誘導路から滑走路に入る手前で停止する。
離陸前点検、滑走路進入前の最終点検だ。
まずはANTI-SKIDをオン、パーキングブレーキの状態にする。
左補助コンソールから、SPEED BRAKEがCLOSEDの表示、左コンソールのIFFマスターノブをNORMに切り替える。
PROBE HEATをON、入って来る空気の流速・流量で対気速度を測定するピトー管に水が入って凍結し、速度が測定出来なくなるのを防ぐ為だ。
EJECTION SEATのロックをARM、これで緊急時、脚の間のレバーを引けば射出座席が飛び出る様になる。
ALT FLAPS、NORM。トリムは中央で調整済み、ENG CONTスイッチがPRIで固定。
風防ロック、警報灯も点いていない。
左補助コンソールから、STORES CONFIGスイッチをCATⅢに切り替える。FBWで飛行するF-16はその搭載品によって、FBWの設定を変更しなければならない。
何も搭載していない、又は軽量なAAMのみであればCATⅠで良いのだが、今回は増槽という重量物を主翼下に吊っている為、CATⅢに設定している。
こうする事でFLCSが離陸時のAOAを制限し、失速等を防止して機体の破損を防ぐことが出来る。
燃料が外部燃料タンクから送油されているのを確認、FUEL QTY SELノブをNORM。
操縦桿とペダルを動かし、テイルロンとラダーの作動を確認、油圧計は15から65PSIの間を指している。
全ての警報灯、警告灯が点灯していない事を確認。滑走路へ進入出来る。
『準備完了です、ANTI-SKID入ってるんで留意お願いします。You Have』
『了解、I Have』
カナリスは操縦を教官に渡す。
『Fort Flag TWR Leaf1-4,Holding short of RWY09 at B. Request Takeoff』
『Leaf1-4 Fort Flag TWR Line up and wait RWY09.』
『Line up and wait RWY09.』
カナリスは管制の言葉を聞き漏らさない、1人で離陸出来るようにするには、この聞き慣れない言語の聞き慣れない用語を聞き、理解しながら航空機という精密機器の塊を操らなければならない。
教官がANTI-SKID解除、F-16Dがゆっくりと前進、滑走路へ進入。F-16の良好な視界の前に、コンクリートでできた長さ3000m東向きの滑走路が、バブルキャノピーのお陰でよく見える。滑走路上で機体を一旦停止、管制塔からの指示を仰ぐ。
『Fort Flag TWR RWY Clear』
『Leaf1-4 Fort Flag TWR Cleared for Takeoff. Wind010 at 3. Climb and maintain 3000.』
離陸許可が下りた、さぁ、この戦闘機が大空へ飛び立つ時だ。
『Cleared to Takeoff RWY09, Climb and maintain 3000.……さ、行くぞ』
ゆっくりとスロットルを開き、エンジンの回転数が上がっていく。RPM計が90を超えるとフットブレーキをリリースした。
凄まじい推進力のジェットエンジンが軽量な機体を押し出し、速度が狂ったように上がっていく。70ktを越えた辺りでNWSが切られ、指示器も消える。
速度が上がるにつれかかるGも強くなっていき、座席に押し付けられる様な感覚も増す。
『うお……!』
ルーラー教官がゆっくりと操縦桿を引き、機体が浮き上がると、キャノピーから外を見ていたカナリスは機体から振り落とされる様な感覚に陥り、思わずシートベルトのハーネスを強く掴む。
F-16はコクピットの視界の良さから、機体の姿勢や加速度について錯覚を起こしやすいのだ。
『F-16はこの感じがあるからな、慣れるまでは計器を見てろ。Positive rate, Gear up』
250ktを越えた辺りで着陸脚を上げる、F-16の着陸脚とフラップは同期しており、着陸脚を上げるのが早すぎると揚力不足になって機体を破損し、遅すぎると空気抵抗で着陸脚を破損する恐れがある、大体300ktまでには着陸脚を上げておく必要がある。
油圧によって着陸脚が格納され、揺れと騒音が収まる。左補助コンソールのWheels Down Lightの、着陸脚を示す3つのライトも消える。
『今の離陸、何ノットで機首上げしたか見てたか?』
『えー……200ノット以下な事は確かです。離陸の感覚で確認するのを失念しておりました』
『180ノットだ、機体にどれだけ兵装や燃料を積んだらどの程度で機首上げするってのもよく見て覚えておけ。……Fort Flag TWR Leaf1-4 Airborne』
離陸した事を伝え、更に管制塔からの指示を受ける。
『Leaf1-4 Fort Flag TWR, Turn south, pushing 210 contact traffic. Good Flight.』
『Fort Flag TWR Leaf1-4, Turn south, pushing 210 contact traffic. Thank you see-ya』
左コンソールの無線周波数を切り替え、管制塔から航空交通管制室へと繋ぐ。管制塔は飛行場内、及び離着陸の直前の航空交通を担っているが、ここからは基地の地下にある航空管制室へと引き継がれる。一般の空港では出域/入域管制に当たるところだ。
『じゃ、高度を上げる。訓練空域まで低空をとろとろ飛ぶ訳にはいかんからな』
『了解』
管制室からの許可を得てルーラーはスロットルを開き、操縦桿を引く。シートに座席が押し付けられ、視界がぐるりと真上を向いた。
『うおぉっ!?』
『シミュレーターと実機じゃ違うだろう、明日からは自分で操縦桿を握ってもらうぞ』
加速と上昇の強烈なGの中、教官は平然とした様子で言葉をかける、練習機のM-346とは全く違う……
これが戦闘機か、カナリスは見えない力に押しつぶされながらハーネスを握る手に力を入れた。
高度30000ftで水平飛行へ、訓練空域へ向かって飛行する。
『さっき、何で航空管制が英語で行われているか聞いたな?』
『えぇ、そちら異世界の言葉ではなく、こちらの言葉で航空管制をした方が、意思伝達がスムーズなのでは?』
教育プログラムに組み込まれている以上はカナリスも受けているが、疑問に感じていた事だ。
ルーラーは少し間を置いて口を開く。
『“さぁ、我々の街と塔を作ろう。塔の先が天に届く程の。あらゆる地に散って、消え去る事の無いように、我々の為に名を上げよう”』
『何です?それ』
『俺達の世界の神話だ、創世記って言ってな。その11章1の9節に出て来る“バベルの塔”の話さ』
同じ言葉を話ていた人々は煉瓦を焼き、アスファルトで固めて天まで届く高い塔を作ろうとした。
『解釈では、神と対等になろうとしたとか、その前に洪水を引き起こして人類を滅ぼした神に復讐する為とか言われてるが、それはこの際関係無い、重要なのはその結果だ』
主は人の子らが作ろうとしていた街と塔を見ようとしてお下りになり、そして仰られた。
なるほど彼らは1つの民で、同じ言葉を話している。この業は彼らの行いの始まりだが、おそらくこのこともやり遂げられないこともあるまい。それなら、我々は下って、彼らの言葉を乱してやろう。彼らが互いに相手の言葉を理解できなくなるように。
『その結果、全ての人々の言語はバラバラになり、意思疎通が出来なくなった人々は塔の建設を止め、世界に散らばってしまった。これがバベルの塔の伝説だ』
エンジン音と機体が空気を裂く音が遠くで聞こえる中、マイク越しの軽いノイズ交じりの教官の言葉にカナリスは耳を傾けていた。
『ま、実際は何十万年の時間をかけた人類の大移動の中で少しずつ言語が変化していったってのが科学的な見地なんだが、この世界ではどうやら事情が少々違うらしいな』
『ええ、神は言語を乱さず、人も神の領域に足を踏み入れたり、高い塔を立てたりしていません』
『そう、どの国どの大陸でも同じ言葉、同じ文字が通じる。それはこの世界ではバベルの塔が建設される事は無かったからだ。……外を見てみな』
カナリスはその言葉を聞いて風防の外を見る、雲は遥か足下に位置し、上を見たら太陽と遮るものの無い青空。先程よりも更に高度を上げたらしく、空の上の方は青黒い宇宙の色が混ざろうとしていた。
『恐らく、神話の世界の人間が到達しようとした世界だ』
カナリスは今更高所恐怖症などではない、むしろ高く飛ぶのは好きだった。
だが戦闘機で空を飛ぶというのは、翼竜で空を飛ぶのと全く異なる。早くから彼は気付いていたが、翼竜はどんなに頑張っても4000mを超えるのは難しい。
対して今乗っているF-16、スペック上はその3倍以上、15000mの高高度をマッハ2で飛行する。
『……神の領域……』
そう呟くとカナリスは急に怖くなった、彼自身、この世界の人間らしく、熱心な宗教の信仰は無く、神と対等などという意識は無かった。だがそう思わせる程上空の景色は神秘的で、戦闘機はその領域に辿り着ける兵器である。
もし、今この瞬間、神の気まぐれで言語がバラバラにされたら……
『だから航空管制は英語を使うんだ』
もし世界の異世界言語が崩壊しても、航空管制が英語で統一されている限り、航空機は地上に安全に降りられる。
『こうして話が出来ている以上、この世界の神にその気はないらしいが、その為の保険みたいなもんだ』
『なるほど……』
『ところで今45000ftを飛んでるが、速度どれくらい出てるか見てみろ』
ルーラーに言われ、正面左側のメーターを見る。対気速度は660kt、おおよそマッハ1だ。
『音速!?』
『そうだ、今この戦闘機は音と同じ速さで飛んでいる』
音を置き去りにする世界、未だかつて、この世界ではガーディアン以外の者が辿り着いたことのない領域に居る。
『凄い……』
『だろう?だがまだまだここからだ』
ルーラーが後席で笑う、同時に視界が突然横倒しになる。
『おぉ!?』
右への旋回、機動そのものは単純なものだったが、その鋭さが練習機と段違いだ。
『ぐぅぅぅっ……!』
Gに押さえつけられて頭が下がる、首が上がらない、耐Gスーツが下半身にエアーを送ってパンパンに締め上げ、それだけでなく下腹に力を入れて脳に血を送るように呼吸をしてG-LOCを避ける。意識を失わない様にするのに精いっぱいだ。
『そうだ、身体を起こせ、首を上げろ。頭に血を送るんだ』
急激に狭くなる視界の中、カナリスはルーラーの声に応える様に意識を保ち続ける。
『まだ6Gだぞ、6GまではGじゃない、7GからがGだ』
後席からそんな事を言うルーラーの声は一切乱れが無い、本当に同じ人間かとカナリスは疑いたくなるが、そんな事はお構い無しに機体を機動させる。
『どっちが空か分かるか?』
カナリスはその声にキャノピーを見上げる、頭上には青が広がっていた。
『今、水平飛行では?』
『お前が見てるのは海だ、俺達は今背面で緩降下中、このままだと海へ真っ逆さまに墜落だ』
カナリスは今の一瞬で空間識失調に陥っていた、あれだけの激しい機動の中、天地を見分けなければならないのは戦闘機パイロットの誰もが経験する事だ。
今度こそ機体を水平に戻しながらルーラーは言う。
『いいか、空中では計器を信じ、自分の感覚を疑え。迷ったら計器が正しい。人間の感覚というのは案外簡単に騙されて、そして人間はそれを信じてしまう。まずはそこからだ』
翼竜に乗っていた時、空は危険がありふれていると十分に理解していたが、戦闘機、延いては航空機の危険性というのはその比ではないというのを改めて噛み締める。
その後も空中での講義は続き、ルーラーはカナリスに“戦闘機”を叩き込んだ。
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『Fort Flag traffic Leaf1-4,Inbound from the East, pushing 130 contact TWR.』
90分の飛行を終えてベルム街へと帰投して来た、あの後、ルーラーから操縦桿を回されて自分で操縦したが、ルーラー程鋭い機動は出来なかった。
『Fort Flag TWR Leaf1-4, Inbound from the 8nm East. Request landing for Overhead.』
現在フォート・フラッグ空軍基地にアプローチ中、ルーラーが操縦桿を握り、航空管制とやり取りをしている。
カナリスは上空で激しい機動のGに振り回され疲労困憊だが、管制との会話を聞き漏らさない様に集中する。
『Leaf1-4 Fort Flag TWR, Overhead approved RWY27, Wind Calm. Left turns Report initial』
『Report initial Leaf1-4』
戦闘機の着陸パターンである“オーバーヘッド・アプローチ”で着陸する。
通常の航空機は着陸前、滑走路に向かう途中で徐々に速度を落としていくが、それでは低空で低速を長時間飛ぶ、つまり無防備な状態を長く晒す事になる。
実際には敵に攻撃されるリスクのある戦闘機で、その状態でいる事は致命的だ。
航空機が減速する方法として、エンジン出力を絞る、エアブレーキやスポイラーを使う等の方法があるが、戦闘機というのは機動性の高い航空機である為、“急旋回”という選択肢がとれる。
旋回という機動は運動エネルギーを大きく失う為、エンジン出力をそのままにして旋回すれば、短時間、短距離で大きく速度を落とす事が可能だ。
戦闘速度を保ちながら進入し、滑走路上空で2度の急旋回、速度と高度を一気に落とすことが出来る“戦闘機向き”の着陸がオーバーヘッド・アプローチである。
『Fort Flag TWR Leaf1-4 Initial』
イニシャルポイント、飛行場の5マイルの地点に設定された進入ポイントを通過した事を管制塔に報告する。
『Leaf1-4 Fort Flag TWR, Report Break.』
『Report Break, Leaf1-4』
HUDの向こう、徐々にフォートフラッグ空軍基地の灰色の滑走路が見えて来た。
高度を1500ft、速度を300ktまで落として滑走路上空へ進入、過走帯標識に差し掛かる時、ルーラーは再び無線を入れた。
『Leaf1-4 Break Left.』
操縦桿を倒し左に180度、方位090まで旋回する。高度1500ftを保ちバンク角は70度、3G程度のGをかけて滑走路の逆行方向___ダウンウィンドレグに入る。
『Leaf1-4 on Downwind』
旋回し終え、ダウンウィンドに入った時点で速度は220kt
『Leaf1-4 Fort Flag TWR, RWY27 Cleared to land. Wind calm, check gear down.』
『Cleared to land, RWY27.』
速度は既に250ktを切っているのでギアを下ろしても大丈夫そうだ。左補助コンソールのLGハンドルを操作しギアダウン、電気信号が送られ、油圧で降着装置が降りる。
Wheels Down Light3つが点灯、確認。
『Gear down lock, Check.』
フラップも下げ、低速で失速しないようにしつつダウンウィンドを飛行、適切な距離を保っているので、主翼端と滑走路が重なって見える。
主翼端と滑走路の端に描かれた過走帯標識が重なったタイミングで左旋回、滑走路に向きながら降下していく。
『Leaf1-4 on final RWY27』
ベースターン、迎え角11度を維持しつつ機首下げ角7度を保ち旋回、800ftまで降下する。
180度旋回が終了、速度も200ktまで落ちた、ここまで来たら接地まで速度表示を見る事はほぼ無い。
『若干アンダーシュートしたが、調整出来る誤差だな』
カナリスが正面を見ると、滑走路に対し機体が少しだけ届いていない様な位置で180度旋回を終えていた。通り過ぎるのオーバーシュート、手前過ぎるのをアンダーシュートというが、今回は少々手前だった様だ、すぐに微調整で修正した。
滑走路の過走帯標識と、HUDに表示される迎え角表示、そして現在進行方向を表示しているフライトパスマーカーの横線が重なるように操縦桿で機体を操り、スロットルで速度を調整しながら滑走路へ降りて行く。
『高度の読み上げ、要りますか』
『いや、いい。読み上げは要らないが、高度はしっかりと見ておけ』
『了解』
灰色の滑走路が近づく、高度も3桁から2桁へ。
高度30ftで過走帯を越え、滑走路へ。機首上げ動作、スロットルをアイドル位置に。迎え角表示の中にフライトパスマーカーが入り込む。
滑るように滑走路に接地すると、12度の機首上げを保ちながらエアブレーキを展開し、機体全体で抵抗を受けるエアロダイナミックブレーキで減速する。
徐々に機首が下がってきた、ルーラーは操縦桿を引きながらゆっくりと前輪を接地させる。
ペダルブレーキで減速させ、30ktを切ったところでNWSをオンにした。
『Leaf1-4 Fort Flag TWR, Welcome back. Turn Right on available taxiway.』
カナリスは地上に戻ってきたことに安堵し、マイクに入らない様に大きく息を吐きながら、管制塔とルーラーの会話を聞き続けた。