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ベルム街の傭兵達

ハァ…ハァ…(3ヶ月投稿無しは避けたかった)

「くそったれめ!」


負傷者の応急処置をしながら“クルセイダーズ”のキルアは毒づいた。建物の中や路地を制圧しながら大通りで出くわしたのは、槍兵インキュバスの横陣だった。


突き出された長い槍、リーチはこちらの剣より遥かに長く、密集していれば槍同士の援護によって迂闊に近づく事さえ困難になる。


この横陣を突破しないと先へは進めないぞ……キルアは負傷した団員を後方で待機している医療班に送る団員に引き継がせ、自身は目の前の槍の陣形を睨んだ。


「走れ雷光!敵を貫け!稲妻の矢(サンダー・アロー)!!」


魔術が得意な団員が雷魔術を放つが、敵に届く前に空中で霧散する。敵の足下には魔法陣の様な模様が浮かんでおり、どうやら魔術避けの結界の様に作用する様だ。


無防備に姿を晒しても居られない、建物の上階や屋根にはクロスボウを持った敵や弓を装備したインキュバスもこちらを狙っている。現に先程からの負傷者の殆どはクロスボウや弓から放たれた矢によるものだ。


「本格的な防御拠点じゃないとは言え、こんなに激しいのかよ……!」


ガツンと身を隠している柱に、矢と思しき衝撃が走る。

さっき増援を呼ぶ信号弾を撃ち上げたが、1秒が異様に長く感じる。ガーディアンでもセイバードッグでもいい、この状況を打破出来るなら……


反撃に転じるか増援を待つか、彼の答えはすぐに出た。


彼の横を走りぬけていく人影、鎧は動きやすく最小限に、その手には両手剣が握られていた。


「うぉぉぉお!!」


雄叫びを上げて槍の横陣に向かっていくのは、セイバードッグの傭兵だ。

それも1人ではない、両手剣を手にした傭兵と大盾を構えた傭兵が次々と突撃、屋根上や上階から撃ち込まれる矢に対しては盾持ちが前に出る事で防御に入る連携を見せた。


両手剣の傭兵は盾に守られながら横隊と接触すると、穂先を切り落として隙間を作る。他の傭兵もそれに続き、槍の穂先を次々と退け、切り裂き、穂先が無くなった隙間に大盾を捻じ込んでいく。

両手剣の傭兵が切り込んだ場所は敵味方が密集しており、クロスボウを持つ敵や弓を引くインキュバスは矢を射ることが出来なくなる。


「増援か……!」


だがこの傭兵達は、本隊では無かった。


増援が来た方向、大路の向こうから迫って来るのは地響きのような音。砂埃の向こうから迫って来る何かにキルアは目を凝らした。


姿がはっきりと見えた、セイバードッグの騎兵部隊だ。


突撃―――――(チャーーーージ)!!!」


先頭を切るのはセイバードッグのアクスだ、彼は騎兵を率いて槍の横隊へと向かっていくが、そんな彼らを屋根の上からインキュバス達が弓矢で狙う。


「させるかよ……!」


キルアは屋根の上の弓やクロスボウを放つ敵に無詠唱の攻撃炎魔術を小刻みに放つ、家屋には引火しないが相手に頭を上げさせない加減だ。


「うおぉぉぉ!!」


突撃してくる騎兵を止めようと向かって突き出される槍は中程から切り裂かれ届かず、脅威を断ち切った歩兵の剣士と、その間隙を広げる大盾の歩兵、その隙間に歩兵には持ち得ない速度とパワーを以って騎兵が戦列に雪崩れ込んだ。


騎馬隊、騎兵というのは派手な突撃だが、銃が発達して以降は雑魚扱いされがちな兵科。しかし基本的に“馬はヒトより強い”のだ。


馬に押し負け戦列を崩され、防御の為に取り回し槍の横隊の背後から歩兵が襲い掛かる。騎兵によって風俗街の槍兵は切り裂かれ、地面に突き立てられた槍によって魔術防壁は打ち砕かれる。馬に踏み倒された端から逃げ出し、乱戦の様相を呈したがすぐに壊走へと変わった。


味方が離れたと察した屋根上の弓兵が矢を射る為に構えるが、練度の低い雑兵は警戒を怠った。


セイバードッグの騎兵突撃に気を取られ、キルア達クルセイダーズが屋根へと上がっていたのに気付かず、インキュバス達の首は刎ねられた。


「フレイム・ソード」


回転から繰り出される炎を纏った斬撃が、一度に4体のインキュバスの首が落ちる。

体勢を立て直したキルアは反対の屋根にも2人のインキュバスが居るのを確認すると、剣を持ち替えて腰に下げていた刃物の柄を掴む。


腕を振って刃を展開させると“くの字”型に展開したそれは、風の魔石が仕込まれたブーメランだ。


インクバスが居る方向より90度右へとブーメランを投げる、インキュバス達は見当違いの方向に何かを投げたと足りない頭で嘲笑い弓を引くが、旋回して来たブーメランが2人の腕ごと弓矢を切り落とした。


「がぁぁぁぁ!?」「う、腕がぁ!!」


傷口を押さえようにも両腕を失ったインキュバスはどうする事も出来ず、別の団員が放ったクロスボウに頭を貫かれて屋根から転げ落ちた。


キルアは戻ってきたブーメランの柄を正確にキャッチし、刃を畳んで腰に収めた。

炎魔術をメインで使うが微力ながら風魔術も扱える彼は、戦闘に使える程威力を出せない魔術を道具とトリッキーな戦術でカバーしているのだ。


「下も片付いた様だな、こっちはどうだ?」


「我々4名は怪我はありません、地上は負傷者のみで死者無しです」


「上出来だ」


キルアは屋根の上から地上の戦闘を見下ろす。


既にセイバードッグの騎兵は槍の横隊を蹴散らし壊滅させ、逃げる敵の追撃へと移っていた。


「俺達も続く、援軍に手柄を取られるなよ!」


「はっ!」


屋根伝いにセイバードッグの騎兵を追い、途中屋根の上や上階から地上の歩兵や騎兵を狙う弓兵達を切り伏せながら進んでいく。


我らの前は全て敵、通った後に敵は無し。


騎兵の突撃を見た者はそう言ったが、その足が止まったのは風俗街の中心を東西に貫く大路に出た時だ。セイバードッグの騎兵突撃は速度が落ちて本来持つその衝撃力を失ってまでも完全に停止した。


その場で馬を止めたアクスは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。屋根の上から彼らの騎兵突撃に合わせて移動していたキルアも、その異変に気付いて足を止めた。


「何だ、あれ……?」


大路の向こう、道を塞ぐ様に布陣している横隊。

性懲りもなく防御陣形を取っていると思ったが、どうも今回は違うらしい。横隊の隙間も広く、盾には何かが括り付けられている。


「団長!」


キルアの部下が横隊を指差しながら震える声で叫んだ。


「アイツら、盾に人質を縛り付けてますッ!」


盾に括られてるのは、間違いなく人だった。

隊列前面のインキュバスが持つ大盾には町から脱出を許されなかった非戦闘員、主に女性がその衣服を剥かれた状態で括り付けられていた。


いわゆる“肉の盾”である。


「何と卑劣な……!」


盾持ちのインキュバスも下卑た笑みを浮かべながらじりじりと迫って来る、アクスやキルアが遠距離攻撃を撃てないのを知っているのだ。


この世界の遠距離武器と言えば弓矢にクロスボウ、ジャベリン、スリング、そして魔術。どれも精度が高いとはお世辞にも言えないものだ。

撃てばほぼ確実に人質を巻き込むことになる、懐に飛び込めば敵の有利なリーチで戦う事になる。騎兵突撃ももちろん無理だ。


キルアは自分のブーメランを握りしめたまま歯噛みした。この角度では両側の建物が邪魔をして側面からブーメランを回せない。縦方向であれば攻撃可能だがそのまま地面に刺さるだろう、風魔術で操るブーメランは空中に無いと操れない為、武器を1つ失う事になる。


接近して盾の隙間をクロスボウでどうにか……そう考えていたその時、盾持ちのインキュバスが崩れ落ちる様に倒れ、人質を括り付けた肉の盾がバタリと倒れる。


「なっ……!?」


キルアも、アクスも、敵であるインキュバスやこの街の民兵も、その瞬間は誰も状況を把握出来なかった。

2人目のインキュバスが倒れ、遠くで鞭を打つような音が聞こえたと同時に、地上にいるアクス、続いてキルアが気付いた。


「ガーディアンだ」


姿を見せず、手も届かない遠くから致死の攻撃を贈る死神。アクスはまだ彼らの全力の戦闘を見たことが無かったが、噂は聞いていた。彼らの攻撃は鎧や兜を貫き、魔術探知も不可能、そんな“別の世界から来た”様な攻撃方法を彼らは持っていると。


3人目の盾持ちが倒れた時、インキュバス達はようやく自分達が攻撃されている事に気付いた様だ。

盾の隊形を狭め、全周防御の陣形へと変換する。槍兵を陣形の中へ入れ、盾の間は無くなった。


だが、今度は人質が括り付けられている盾の、脇腹の隙間に.338Lapua(ラプア)の風穴が穿たれ、盾の向こうから悲鳴が上がる。

股の間、腰の横、人質の隙間を狙う曲芸の様な狙撃は、盾の陣形を恐怖に陥れるのには十分すぎた。


その狙撃は、330m先からだった。


ボルトハンドルを引くと、排莢口(イジェクションポート)から薬莢が1つ。


減音器(サウンドサプレッサー)に抑えられた銃声は、距離と方角を惑わせる。


尤もこの銃口の先にいる異世界人に、そんな事は分かるまいが。


ランディはスコープを覗き、クロスヘアの中心に目標を合わせる。肉の盾、脇腹の隙間の向こうはインキュバスだ。人質に当てない様、この狙撃は相当な精密さが要求される。

ゼロインされた距離に対して、現在の目標までの距離の差。風の偏差と弾丸に加わる回転によって発生する偏流、全てを計算に入れた照準。


「すぅぅ……」


息を大きく吸い、自らの鼓動に合わせて自然に止める。


呼吸、鼓動、筋肉の振動、全てが静かになった時、ゆっくりと引鉄を絞った。


鞭を打つような高い音、今度こそ自分の愛銃となったレミントンMSRの銃口から、.338Lapua(ラプア) Mag(マグナム)が撃ち出された。


厚い木の盾だったが人質に傷1つ付ける事無く、6000Jを超える運動エネルギーを持つ弾丸は盾ごとインキュバスを貫いた。


「命中」


隣にいる妹のクリスタがレーザー測距装置付きの観測スコープを覗きながら撃破を報告、それと同時にランディはボルトハンドルを動かし、次弾を薬室に送り込む。


「……刺激が強くないか?」


ランディがスコープを覗きながらクリスタにそう声を掛ける。

今彼らが撃っている“肉の盾”にされている人質は女性ばかり、そしてそのほとんどは衣服を剥かれ、裸の状態だった。


ランディは妹を気遣っての事だったが、クリスタも観測スコープから目を離さず返す。


「平気、それより集中して、兄さん」


「そうだな」


意識をスコープの先へと戻す、さっき撃った“盾”の右隣の目標をクリスタが指示すると、ランディも同じ目標を捉える。


「328m、風は無風」


距離と風速の報告に狙いを補正、引鉄に触れる時には、呼吸と鼓動が同調していなければならない。


銃口から鳴る鞭を打つような音は、弾丸が音速を越えた時の衝撃波(ソニックブーム)。反動は腕の中から身体全体で受ける。

スコープの向こうで盾の隙間に穴が空き、それが倒れて間隙が出来る。


「329m、壁が崩れた。個別に射撃」


「了解」


ボルトハンドルを引いて空薬莢を薬室から引きずり出しながら言う。射撃数を数える限り、これでマガジンが空になる筈だ。


“肉の盾”は全て排除した。自らを守る倫理の盾が無くなり狼狽えるインキュバス達をレンズの向こうに見ながら、ポーチから引っ張り出した.338LapuaMagが詰まったマガジンをMSRに付いている空になったマガジンと交換、ボルトハンドルを押し戻す。外したマガジンは案の定(から)だった。


クリスタも観測スコープから目を離し、傍らに置かれていたSR-25で伏せ撃ち(プローン)の姿勢を取る。

銃口から放たれる6.5㎜Creedmoor(クリードモア)の銃声は減音器(サプレッサー)に吸い上げられ、弾丸は音速を越えた衝撃波を残して飛翔、インキュバスの胸甲をいとも容易く貫いて射殺する。


“肉の盾”を拾おうとするインキュバスにも2発、続いて3発を撃ちこんで黙らせ、後退していく隊列に恐怖を植え付けていく。


地上のセイバードッグの騎兵やクルセイダーズの兵士たちが“肉の盾”の回収を始めた頃、狙撃チームのヘッドセットに通信が入った。


『グレゴリー1-1、グレゴリー1-1、こちらエノク。聞こえるか、どうぞ』


狙撃チームの小隊本部からだ、無線を通じて呼びかけるカーンズの声にPTTスイッチを押して対応する。


「こちらグレゴリー1-1、聞こえる。どうぞ」


『現在交戦中のその隊列にキセノン1が地上から接近中だ、狙撃の援護もある。ブレーク。そろそろ引き上げてデュラハン1-1の支援に復帰せよ。どうぞ』


「了解、現在位置から引き上げます。グレゴリー1-1アウト」


スコープの視線を移すと、M24A2を持った狙撃チームが建物の屋根上を移動しているのが見えた。建物の陰に隠れて見えないが、恐らくあの下には第3小隊のいずれかの部隊が進んでいるのだろう。


勝てない事を悟った隊列が大通りを曲がろうとした時、大小様々な銃声と共に薙ぎ払われる。第3歩兵小隊は軽歩兵であるが、主な移動手段はピラーニャⅢC装甲車とHMMWV(ハンヴィー)だ。哀れな事にピラーニャを含む部隊とカチ合った為、25㎜機関砲で人間もインキュバスも差別なく平等に挽肉にされた。


もう俺達は必要ない、そう思って起き上がる。


「引き上げるぞ」


「分かった」


ランディはMSRのストックを畳んでバックパックに括り付け、傍らに置かれていたMCXを手に取る。

クリスタも観測スコープをバックパックに詰め、三脚を畳んで括り付ける。出発準備は完了の様だ。


「マーカス、カイリー、降りるぞ」


『了解』


2人は部屋を出て階段を降り、建物に入ろうとする侵入者を見張っていたマーカスとカイリーに合流した。


「デュラハンの援護に戻る。移動するぞ」


「了解、先導します」


カイリーが先頭に立ち、ランディとクリスタが続く、マーカスは殿(しんがり)だ。

警戒しながら路地を縫う様に移動を開始、ガーディアンの交戦担当エリアへと向かった。



========================================


ヒロト視点


俺達は居住区と思われるスラムの中を1軒1軒検索して回る、ベッドの下、棚の中、逃げ遅れと人質、隠れた敵を見つけ出す為だ。


俺がベッドを持ち上げ、その下をグライムズが確認する。


「クリア」


「クリア」


棚を開けて中を確認したブラックバーンもクリアの様だ、棚の裏に隠し部屋、家具の下に地下トンネルが無いかまで捜索する。


この区画の民家の数は膨大だ、1軒に掛けられる時間はさほど長くは出来ない。だが俺は出撃停止期間中、こういった訓練を重ねて来た。ゆっくりはスムーズ、スムーズは素早い。


慌てて素早くやる必要は無い、冷静にな思考を保ち、リラックスして臨む。


部屋から出る(カミングアウト)


出ていいぞ(カムアウト)


外を守っていたヒューバートに声を掛けながら路地へと出る、居住区格のある路地は大通り程広くは無い。HMMWV(ハンヴィー)1輌がやっと通れる程度の広さの道が張り巡らされている。


居住区画の住居の殆どは平屋、時折集合住宅があるくらいだ。代わりに店を出している南側に比べ雑然としており、死角も多く壁も薄い。射線には十分な注意を払う必要がある。


路地に出る(カミングアウト)


出られるぞ(カムアウト)


斜向かいの建物、路地をエイミーが警戒していたドアからエリス達が出て来る。

かなり銃声がする南側のエリアとは異なり、こちらはかなり抵抗は少ない。ここまでも1度待ち伏せに遭遇した程度で、それも素早く片付いた。マガジンの残弾も全然減っていない。


先頭に立ち、後続も移動準備が整ったのかタップが返って来る。


「移動する」


M4を構えながら路地を進み始める、URG-Iに換装した事で握りやすくなったハンドガードを握り、視界を確保する為に銃口と照準線は少し下げる。


家屋の隙間も警戒、クリアになったらまた進行方向へと銃口を向け直す。次の建物、集合住宅でこの区画はクリア、クリアにしたらこの区画を土魔術の壁で囲み封鎖する。西部の砂漠の市街地戦でもやった手口だ。


3階建ての集合住宅の前をさしかかろうとした時、俺の後ろから叫び声が聞こえた。


「上!」


上方を警戒していたエイミーが射撃を開始、5.56㎜弾が3階の窓に撃ち込まれる。ちらりと見たところ、クロスボウらしき武器を持った人物を確認した、恐らく敵だろう。


けたたましい銃声と共に俺達は素早く死角へと走る。ドアに取り付くと正面から通る射線にかからない様に気を付けつつ、ドアの様子を見た。


ドアは閉まっていて、ロックの有無は不明、外から中に押して開けるタイプの様で、ノブは無い。軽く押してみると抵抗を感じる、ドアの前に何かを積んでバリケードにしているのだろう。


この建物は周辺のあばら家と違い頑丈に出来ていそうなので、ドアを爆破するのは問題無さそうだ。それにさっき敵の攻撃を受けたところを見ると場所はバレている、この建物の制圧は急務になる。


ブリーチ(爆破する)


俺の今の背面装備はブリーチングチャージ(ドア爆破用爆薬)を始めとした爆破資材、それからフラッシュバン。俺は11.5インチを構えて周囲を警戒している間にヒューバートがドアに爆薬を仕掛ける、ドアごと障害物を吹き飛ばせる量と位置に仕掛け、導爆線(デト・コード)をヒューズ発火装置(イグナイター)から伸びるキャップ付きのショックチューブに繋げる。


「完了」


「了解」


ヒューバートはヒューズ発火装置を手に最後尾に回る、俺が先頭(ポイントマン)だ。


(Fire)(in)するぞ(the Hole)


ヒューバートが安全ピンを捨て、リングを引く瞬間に顔を背ける。


大音響と共にドアが室内に向けて吹き飛び、突入口が開くと同時に俺達は一挙に建物内に雪崩れ込んだ。


舞い上がる粉塵で煙る視界をライフルに取り付けたライトで照らし、爆発とライトの光で怯んだ敵に対して5.56㎜NATO弾のダブルタップを撃ち込んで沈黙させる。


「クリア」


「クリア」


爆破から突入、1階の全制圧完了の合図まで僅かに10秒。出撃停止期間中も訓練を続けていた甲斐があったとひとりごちる。


A(アルファ)は3階に上がる、B(ブラヴォー)は2階を検索だ。ヒューバートはここに残って建物入口を封鎖」


「了解」


「任せろ」


エリスがそう言うとB(ブラヴォー)班を招集、俺はブラックバーンとグライムズの2人を引き連れて素早く階段を駆け上がって3階に向かう。


敵に銃を装備している者は無く、飛び道具も弓矢にクロスボウがせいぜいな事が幸いした。

階段を上がったところに待ち構えていた敵に射撃を喰らわせ、ベランダから下を見張っていた敵も5.56㎜NATO弾が貫いた。


「部屋を」


ドアは抵抗なく開いた、ここからは速度と繊細さが要求される。相手に反撃する時間を与えず、それでいてトラップの有無を確実に見分けて対処しなければならない。


開けたドアからライフルを構え、カッティングパイの要領で部屋の中を確認。それだけで部屋の大部分を視射界に入れる事が出来る。

一歩踏み出して部屋の中へと雪崩込み、壁と障害物に遮られた残りを制圧する。部屋の隅々と収納の中、ベッドの下まで確認する。


「クリア、次だ」


スムーズに、素早く部屋の中を制圧。この部屋に敵は居ない様だ。折ったサイリウムを部屋の床に放り投げ、次の部屋に向かう。


次の部屋の前で残弾を確認、マガジン内の残りは10発程度なので新しいマガジンと交換しておき、同じ要領で部屋を制圧する。


正面からの視射界には敵影無し、部屋の残りを制圧する為に突入した直後、部屋の中からライフルを掴まれた。


「このぉぉ!!」


大柄な男だった、パワーで押し負けて壁に押し付けられる。ブラックバーンとグライムズは援護しようとしたが、男を撃つと俺に当たると判断し、先に室内の制圧にかかった。

射線をずらして掴みかかって来る辺り、敵は“銃”がどういう物か知っている様だ。ガーディアンの情報を良く得ていると思う。


だが俺が持っているのはライフルだけではない。


ライフルから片手を離し、ホルスターからP226を抜く。

ライフルより遥かに軽い音だが、鎧を着た大男でもダメージを入れるのは十分だった。


ライフルが自由になるとP226をホルスターに収めながらライフルを構えなおし、5.56㎜弾を数発お見舞いする。この世界の鎧でも、音速の3倍で飛んでくる2000Jを超える弾丸を防ぐことは出来ない。


「大丈夫ですか?」


「あぁ、大丈夫だ」


閉所での戦い、こんなのばっかりだが、交戦距離が近くなるからある程度白兵線の様な状況になるのも珍しくない。

今回は取り付けていないが、その為にサプレッサーも打突用の切り欠きのあるRC2を使っている。


……あ、ハンドガードに傷ついた。


まぁ、そんな些細な事はいい。この部屋も捜索したが、さっき倒した大男だけの様だ。


そんな事がありながら3階の全部屋を制圧、3階にいた敵は全部で6人。1人は逮捕、残りは射殺した。


エリス達B(ブラヴォー)班も2階で交戦はしたものの、こちらも被害はなく全員無事な様だ。


「建物から出るぞ、区画を封鎖する」


制圧が完了した建物から全員出ると、エリスとエイミーを始め、魔術が使える者が詠唱を始める。


「大地の精よ、神よ、我らの敵を阻む壁を!アース・ウォール!」


地鳴りのような音と共に地面がせり上がり、魔術によって形成された土の壁で区画が封鎖される。


街の制圧はゆっくりだが、確実に進んでいった。



ガーディアンの特殊戦チームの狙撃銃がようやく安定しました。

L115A3からMSRに更新し、バレットMRADの評価が自分の中で固まるまでMSRのままだと思います。

クリスタのSR-25も更新です、銃身長も14.5インチ(標準的なM4の長さ)でサプレッサーを付け、MAGPUL PRSストックにして長く見せています。

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