第20話 スターダストと新たな仲間
本部タープへ戻ったセレナにグライムズの治療を任せ、給湯器でお湯を沸かす。
「グライムズ、アイリーン。コーヒーで良いか?」
「あ、はい。ありがとうございます」
「お願いします」
沸いたお湯でコーヒーを5杯淹れる。
俺、エリスとグライムズ、アイリーン、セレナの分だ。
コーヒーを淹れている間、セレナにグライムズの治療をしてもらう。
淹れ終わる頃にはグライムズの腫れは引き、整った顔はすっかり元通りになっていた。
「お、終わったか」
コーヒーを持って行き、テーブルに置く。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「頂きます」
グライムズとアイリーンがコーヒーに口をつける。
と、グライムズがピクリと反応する。
「これ……"スターダスト"ですか?」
「あ、わかる?」
「高級豆じゃないですか!」
グライムズの話によると、"スターダスト"とは、この異世界の高級ブランドのコーヒー豆らしい。
発祥は遥か南の"ネルティーガ共和国"。
言い伝えによると、流星の落ちた所に出来た豆だとか。
さっき町で面白いと思って見てきたコーヒーショップで店長に勧められたので買って来た。
500g金貨1枚の所、小金貨7枚に値引きして貰った。
「仕事も無くて無一文なのに……こんな高いコーヒーご馳走になるなんて……」
「お、おう……」
「すみません、彼ったらコーヒー大好きなんです」
アイリーンが苦笑いで恐縮する。
「さて、尋問じゃ無いけど、君たちに幾つか質問がある」
「はい」
「彼処で何をしてたんだ?」
「はい、街を歩いていたら、突然あいつらに囲まれて、裏路地へ引き込まれました」
今度はエリスが質問する。
「なぜそんな格好であんな場所に居たんだ?あの辺りは治安が悪い一帯だろう。あの時間にあの場所は襲ってくれって言っている様なものだぞ、しかもカップルなんて格好の的だ」
その治安の悪い場所でその時間にカップルで居たのは俺達も同じなんですが……
そうかあの辺りは治安が悪かったのか……
まぁ、あんな奴らが来ても蹴散らしてやる気でいたけど。
それにしても、グライムズとアイリーンの服は所々擦り切れていて、汚れも目立つ。
「仕事と宿を探してて……街の人にあの辺りに仕事と宿があると言われたので彼処に居ました」
質問は俺に代わる。
「仕事か……さっき言っていたな。何であんな場所で仕事探してた?」
「……実は……」
要約すると、半月程前に自分達の住んでいた町が山賊に襲われて壊滅。
2人で逃げてきたらしい。
辿り着いたこの街で生き延びるべく仕事を探して居たところ、暴漢に襲われたと言う。
「なるほど……生存者は?」
「男は殆ど殺され、女は強姦されました。逃げたのは俺達と何人かだったと……」
「人が揃ったら偵察に行ってみるか。大変だったな、聞かせてくれてありがとう」
「いえいえ、お役に立てるなら……ところで、少し質問があるんですが……」
逆にグライムズが質問して来た。
「無礼をお許し下さい。あなた方は一体何者ですか?」
「あんな強力な魔道具を使うギルド、聞いたこと無いです」
俺は答える。
「俺達は"ガーディアン"、さっき設立したばかりのギルドだ」
「"ガーディアン"……良い名前ですね」
「ありがとうございました、助けて頂いた上に美味しいコーヒーまでご馳走になってしまい……」
グライムズが礼を言う。
「では、我々はこれで。本当にありがとうございました」
2人が席を立とうとしたが、俺はそれを引き止めた。
「あ、待ってくれ」
「はい?」
「その……2人が良ければ……ここで働かないか?"ガーディアン"で」
「えっ?」
「さっき設立したばかりで、人手不足なんだ、生活が安定する保証は無いが……」
2人は顔を見合わせる。
「雇って頂けるんですか?」
「ああ、入ってくれるととても助かる」
「アイリーン、良いか?」
「グライムズが良いなら、私は構わないわ」
「では……何でもします。よろしくお願いします」
グライムズが手を差し出し、俺と握手する。
「ああ、2人には主力部隊に入って貰う」
こうして、グライムズとアイリーンは仲間になった。




