第192話 カンサット公爵
ヘルマン・アルト・カンサット公爵。
曰く、参謀より前線指揮官に向く男、このガラニストの統治者で、国境のこの領地を守っている事から王室からの信頼も厚く、また相応の実力を持っている事が伺える。
「こんな辺境までよく来てくれた、感謝する」
「いえ、お会い出来て光栄です」
「立ち話もなんだ、入ってくれ。護衛の方々も」
カンサット公爵に促されて宮殿の中へと歩みを進める、途中の部屋には開閉可能の見られる銃眼の様な小さな穴があり、ここからクロスボウを射撃したりするのだろう。この宮殿の中も、戦いに備えられた作りをしているのが要所要所で見て取れた。
石造りの壁の廊下を進み、1つの部屋のドアを公爵が開ける。
「こちらへ、君、彼等にお茶を」
「かしこまりました」
公爵がメイドの1人に声を掛けるとそのメイドはどこかへ向かう、恐らく厨房か。エイミーが反射的にそちらに向かおうとしたのが見えたが、ヒューバートが制していた。エイミーのメイド仕草は最早習い性になってるな……
「座ってくれ、ようこそ公都ガラニストへ。改めて歓迎しよう、道中は大変だったろう」
カンサット公爵とテーブルを向かい合わせて対面に座る、窓は小さくそこからの光が少ないのに、部屋の中は魔術ランプのお陰で明るい。
「いえ、空を飛んできましたので大丈夫でした」
「噂の“鉄の翼竜”か、聞いている、ベルム街から国境のバイエライドまであっという間だそうだな……凄いモンだ、あんなものを作ってしまうなんてな」
俺が作った訳ではないのだが、とりあえずはそう言う事にしておく。別の世界から呼び出しました、なんてそう簡単には言えない。
「君達の活躍、ワーギュランス公爵からよく聞いているよ。魔人種族との和解やドラゴンの討伐、麻薬カルテルの族長を捕縛したり、西の国境での要塞と城塞都市の奪還、エルスデンヌの森での王国軍の援護、収容所の解放による多数の捕虜の解放……西部での活躍は特に有名だぞ、王都でも報告が上がってる」
「……そうなのですか?実はまだ設立してから1年しか経っていない故、王都にはまだ行ったことが無く……まさか王都まで名が知られているとは、光栄です」
前にアレクシア王女殿下と会合したり、見学したりしてたからもしかして王都でも話が出るかもしれないとは思ったが、まさかこんなに噂が広がるのが早いとは……
そのタイミングでドアがノックされた、公爵家のメイドがお茶を持って来て、俺と公爵の間のテーブルに置く。
「さあ飲んでくれ、護衛の方も」
湯気の立つ温かい紅茶、すっとしたいい香りがして、寒いこの季節にはありがたい。
「美味しいです、ありがとうございます」
「口に合ったようで良かった、外は寒いからな」
紅茶を飲みながら、少し気になった事がある。
「そう言えば……良かったのですか」
「何が?」
「この部屋に私の護衛の兵士を入れた事です」
この応接室に俺は分隊と共に通された、そしてその分隊は武装したまま、武器は取り上げられていない。
「大丈夫だ、ワーギュランス公爵の推薦のギルドとなれば、いきなり剣を抜き、矢を構えるような真似をする無礼者ではあるまい?」
俺達は公爵閣下にもかなり信頼されている様だ、正直光栄ではあるのだが、俺も武器を持ったままだし、エリス達も武装したまま、何の担保も無しに信頼されるのは不安になる。
「君達の事は信用している、と言われても戸惑うだろう。信用とは不確かな物だ、簡単に覆すことが出来、非常に壊れやすい。それが人と人の絆だけで成り立っていると言うのは、本当に不安定な事だと思う」
「なら、どうして」
余計に分からない、もちろん俺達に公爵を害そうと言う意思は毛頭無いが、もし何かの気が有ったら彼はどうするつもりだったのだろうか……
「君達を通して、ワーギュランス公爵を信頼しているからだ」
彼の言葉で、自然と背筋が伸びる。
言ってみれば俺達は今、ワーギュランス公爵とカンサット公爵の“信頼”という糸の上に居る。ワーギュランス公爵の推している俺達がここで何かしたら、カンサット公爵とワーギュランス公爵の信頼の糸は切れてしまう。
同時に、カンサット公爵の俺達に対する立ち振る舞いがワーギュランス公爵に伝われば、2人の信頼が揺らぐ。
「信頼は不確かな物だ、だが、そんな物が世界を繋いでいるのだよ」
驚いたかね、と紅茶を飲みながらカンサット公爵が微笑む。
「驚いたと言うよりも……意外、ですね。カンサット公爵は武闘派の公爵と聞いていましたから」
「だからこそ、だよ。戦いを重視するからこそ、戦いの為に信頼を作る。援軍を出し合ったり、支援をしたり、強い相手とは戦わない道を模索する。それも信頼が成すことだ」
武闘派と言っても戦い一辺倒ではない、公爵の地位にいるだけはある、という事だろう。
「君もまだ若いな」
「いえ、不勉強でした。良い事を教えていただき、ありがとうございます」
「よい……さて、そろそろ本題に入ろう」
良い事を聞いたが、今日はその事を話しに来たのではない。部隊をこの地域に投入する許可を貰う為だ。
「半年ほど前、西の砂漠で1つの収容所を開放した際に、北の山脈の麓の村の者が居まして、その時はその彼は普通にこちらへと帰らせたのですが、山賊被害が酷いと我々を頼って依頼に来たのです。対処の為に、そちらへ部隊を派遣させて頂きたく、その許可を頂きに参りました」
「……どのあたりだろう」
公爵が立ち上がり、本棚から地図を取り出す。この時代の地図は軍事的に非常に重要な物だ、依頼してきたアレクトの村の場所を確認する為だろう。
俺もポケットから個人用端末を取り出し、アレクトの村の位置と公爵の地図の摺り合わせをする。
「……それは?」
「個人用の汎用デバイス……まぁ、魔術道具の様な物です」
公爵に返事をしながら地形の特徴から場所を特定する、かなり山奥の様で、ここから大体200㎞くらいの場所だ。
「この辺りですね、ここからはかなり距離がありますが……」
「ふむ……山脈の入り口からその奥にかけてのその辺りは、山岳民兵が居る。私の部下という訳では無いが、我々に協力的で友好的な民兵集団だ。公国との軍事衝突の際にも、あの辺りを彼等のみで守り切った精鋭だが……特にこの季節は、我々も雪の険しい山奥まで支援を出すことが出来ない」
この季節、険しい地形と深く積もる雪がこの地の軍事的、経済的な動きを非常に鈍らせる。公爵の兵と言えども、安易に近づいて支援出来る者ではないと言う。
「まずここまで行くのが大変だ、敵は公国でも山賊でも無く、寒さと風、それに雪だからな。馬車も深い雪に埋まり動けなくなる、行軍などもっての外だ……君たちは、本気で此処に行くのかね」
「えぇ、行きます」
確かに、この時代の兵隊、軍隊がここに行こうとするなんてまず自殺行為に近いだろう。行ったら最後、来年の夏に死体が見つかる事になる。
だが俺達はこの時代よりも進んだ技術を持っている、現代技術と兵器が、深い雪の山の中への軍事的支援を可能にする。
「本当に行くつもりか?我々に出来ない支援を届けに行ってくれると言うのは確かにありがたい、非常に魅力的な話ではある。だが正直、無理ではないか……?それに心配だ」
「公爵閣下が信用して頂けるのなら、我々は必ず、その信用にお応えして見せます」
公爵が背もたれに深く腰掛けて腕を組み唸る、彼等を信じて行かせるか、リスクを回避して許可しないか、彼の中で揺れているのだろう。
「危険が伴う任務になる、死傷者が出るかもしれない……だが、助けを求めている人が確かにそこにいる。我々は向かえない……本当に心苦しいのだが、頼むしかなさそうだな」
公爵は、リスクを承知しても俺達に行って貰う事を選んだようだ。
「感謝します、閣下」
「こちらこそ、我々の代わりに行ってくれる事を感謝すると共に、無事の帰還を祈ろう。彼等から報酬の話は出ているかね」
「えぇ」
「私からも報酬を出そう、本来我らの兵士で行う任務を肩代わりしてくれるのだからな」
アレクト達の故郷である山脈の麓への任務は許可が下りた、あとは基地に帰って実行までの訓練計画を見直し、部隊の編制を考えるだけだ。
翌日
「集合したか?」
「全員居る、問題ない」
ブリーフィングルームには第2小隊が集合していた、今回の任務の主役部隊に任務が伝えられる。
「団長直々の命令だ、北方山脈の麓の村を山賊から防衛せよ、だそうだ。訓練期間は3週間、任務期間は1ヶ月、第2小隊は全編成で出撃する」
第2小隊の小隊長、シュバルツ・ラインハルト大尉は招集した自らの小隊に声を張り上げる。
第2小隊は4個小隊に小隊本部、それにIFVが付く機械化歩兵の小隊だ、本来であれば遠隔地へと派遣されたり、山岳部への任務は向かない部隊だ。
「移動はどうするんだ、現地には受け入れ可能な飛行場は無いし、鉄道も敷設されてない、何100キロも先までチンタラ自走していくのか?」
シュバルツに対して言葉を投げたのは、第2小隊第2分隊の分隊長で召喚者のサイモン・ヘイリーだ。第2分隊は召喚者と現地人の混成部隊で、小隊の4割は召喚者である。
「3週間は移動する為の時間じゃない、移動する為の訓練の時間だ」
そう言いながらシュバルツの副官、トラビス・マコニーが資料を配布する。運用訓練幹部が団長であるヒロトの作戦を元に考え、団長とメイル少将の承認を得た訓練プランの資料だ。
「……嘘だろ」
「おいこれって……」
資料に目を通した第2小隊の面々は、その内容に驚きの声を上げた。
3週間後
ガラニスト北西150㎞、上空1639ft(約500m)。
第2小隊と中隊本部から派遣された4名の補給要員を含めた総勢50名は、C-130Jスーパーハーキュリーズに乗って上空に居た。
「何も俺達が空飛ばなくてもな……」
コンバットシャツとコンバットパンツ、ベルトキットとプレートキャリアに身を包んだシュバルツの隣に座る、同じ装備をした彼の副官、青い目をした召喚者のトラビスが彼に話しかける。
「機械化歩兵の使い方として正しくない、ってのは、こっちの住人の俺達でもわかる」
彼等は戦い方、兵器の使い方について勉強した一線級の部隊の兵士だ。機械化歩兵の戦い方は一通り頭に入っているシュバルツがそう漏らす程、今回の任務は機械化歩兵の使い方として正しくない。
本来機械化歩兵は険しい山岳地での運用に向いておらず、この様な空輸を前提とする部隊でもない。
しかし現状ガーディアンは歩兵の頭数が足りておらず、完全編成で出られる部隊は第2小隊のみ、第3小隊は護衛任務に出ているし、第1小隊も他の任務で手が空いていない。彼等が今回の任務に出ているのは、殆ど偶然だった。
「それにこれもどうなんだろうな、命がかかってる任務で装備試験ってのは……」
シュバルツがそう言って目を落としたのは自信のプレートキャリアだ、通常第2小隊はEAGLE industriesのMBAVを使っているが、今日彼らが着ているプレートキャリアはATS TacticalのAEGIS V2と呼ばれるプレートキャリアだ。
第3小隊が身に着ける予定のプレートキャリアで、MBAVと比べて軽量、更に特徴的なのは、プレートキャリア前面のマガジンポーチが“Swiftクリップ”と呼ばれるクリップで取り付けられたプラカードと呼ばれるシステムになっており、ミッション毎に別のプラカードを準備して付け替える事が出来る物である。
「良いじゃないか、いつものよりも軽いし」
先程愚痴を溢していたトラビスは、逆に新装備に対しては好評している。
上手く使えれば良いけど、そう思っていたシュバルツは不意に感じたのは、ごく軽い浮遊感だった。
「降下準備チェック!」
同時に、機内の降下要員を纏めて指示を出すジャンプマスターが叫ぶ。
そう、第2小隊は機械化歩兵でありながら、今回空挺降下によって展開する部隊となったのだ。
「風は治まったのか」
「今連絡があった、23分でDZの風が止む、降下準備とな」
シュバルツは降下準備をしながら任務内容を思い出す。
今回の任務は輸送機から空挺降下して現地に展開、依頼のあったアレクトの村まで向かい、村を山賊から防衛する事だ。
既にDZには空軍の特殊部隊が展開しており、風速、風向、天候等の予報を作成、降下部隊を誘導する任務に当たっている。
今回空軍の特殊部隊は、パラレスキュー、戦闘管制官、特殊作戦気象チームから各2名ずつ、計6名が支援に当たる。
空軍特殊部隊の誘導に従って、空軍のF-14Dトムキャットに護衛されたC-130Jからまずは第2小隊がスタティックライン降下で降下、集結後にC-17ERに搭載された歩兵戦闘車を降下させると言う手筈だ。
空軍は新たにC-17ER戦術輸送機を配備したが、第2小隊のIFVは89式装甲戦闘車のままだ。89式装甲戦闘車は空中投下に対応していないが、新たにIFVを配備すると現場の混乱につながりかねない上、今回の任務の為だけに空中投下可能なIFVを配備するよりも何としても89式装甲戦闘車を投下する方が良いと判断された様だ。
3週間の間にテストが繰り返され、無事に投下可能な事が確認されて作戦使用の承認も下りた、恐らく大丈夫だ。
『レイピア1、降下地点周辺の哨戒に入る』
『2、了解』
AIM-9MサイドワインダーとAIM-7Fスパロー、そしてAN/AAQ-25 LANTIRN40K目標指示ポッド、GBU-16ペイブウェイⅡ 1000lbレーザー誘導爆弾を搭載したF-14D、コールサイン“レイピア1”が、C-130Jを追い越して地上からの対空攻撃に備えて警戒に入る、レイピア2はAIM-54C+フェニックスを4発搭載して、ドラゴンや翼竜に備えてC-130Jを護衛、C-130Jより300m離れ、100ft上空を並走する。
「10 minutes!」
ジャンプマスターが両手を前に差し出して叫ぶ、降下10分前の合図だ。
いよいよ降下が始まる、ジャンプマスターは続けて手を大きく広げて上に持ち上げる様な合図をしながら叫ぶ。
「All personnel, stand-up!」
ジャンプマスターの号令を復唱しながら隊員達が立ち上がり、壁面に据え付けられた椅子を格納、降下の準備が出来るようにする。
「Hook up!」
ジャンプマスターが人差し指でフックの形を作り、3回上げ下げする。自分の背負ったパラシュートから伸びている黄色いナイロンの固い紐、スタティックラインのフックを頭上のアンカーラインケーブルと呼ばれるケーブルに掛ける。このストラップが降下時にパラシュートを自動で引き出してくれるのだ。
「Check staticline!」
ジャンプマスターが両手を前に振るように合図、スタティックラインのフックがアンカーラインケーブルに掛かっているか、スタティックラインに破れ等は無いか。そして自分のスタティックラインがバックパックに繋がっているか、前に立つ兵員のパラシュートとスタティックラインがしっかりと繋がっているかのチェックをする。
「Check Equipment!」
降下装備、ヘルメットやハーネス等、パラシュート以外の装備をジャンプマスターがチェック、これは降下において安全の責任を有する安全担当者の手で行われる。
全ての準備が行われると、最後方の兵員が前に向かって「OK」と肩を叩き、数べ手の最終チェックが終了した事を合図。
「All OK Jumpmaster!!」
これで全ての降下準備が終了、後は降下するだけの番となったシュバルツ、トラビス、クロウやサイモンも、実戦として初めての降下に緊張感が高まる。
「……地上はどうなってんだ」
「雪だ」
呟いたクロウに、クロウの分隊のマークスマン、ヘルメットからミディアムの青い髪がはみ出ているこの分隊で唯一の女性であるナターリエ・マイザウト准尉が、ハーネスの下に手を入れながら言う。
「雪が深く積もってるし、風も強い、部隊が合流するには少し時間がかかる。……両足でまともに着地しようだなんて思うなよ、雪に足が突き刺さって折れるぞ」
彼女はぶっきらぼうな口調でそう言いながら軽くスタティックラインの黄色い紐を掴んだ。
降下地点の気象データは、現地に展開している空軍特殊部隊からリアルタイムで送信されてくる。予報を作成した彼等からのデータとのタイミングを合わせ、風が弱まった瞬間に降下しなければならない。
『トレイン1へ、こちらジュピター。現在方位010より4ノットの風、7ノットの突風あり、留意されたし』
『トレイン1、了解、ドロップゾーン進入を開始』
C-130JがF-14に護衛されつつゆっくりと旋回、降下。機首を北へ向けながら速度を落とし、降下準備に入る。
『コクピットよりロードマスター、降下5分前、ドアオープン』
機長からロードマスターへの通信が飛ぶ、それを聞いたロードマスターがキャビン左右のドアを開け、PIPピンと呼ばれるドアの予期せぬ閉鎖を防ぐピンでドアを開けたままロック、ジャンプマスターに交代してステップを展開し安全確認を行い、機体の外に顔を出して機体後方と下部を確認する。
「障害物無し、降下準備OK!」
ジャンプマスターが安全確認を終了する、最初のジャンパーであるクロウがドアの前に立ち、降下準備はすべて整った。
『ドロップゾーン視認』
前方、森の切れ目に広がる雪原が降下予定地点だ。空軍特殊部隊が投げた誘導用のスモークグレネードの赤い煙が風になびいているのが分かる。
『速度150kt維持、高度650ft、維持』
低速で低高度、風に煽られない様に機体を安定させながら、ドロップゾーンの上空まで飛ぶ。
『コース良し、コース良し、降下開始!降下!』
コクピットからの機長の通信、同時にキャビンの両ドアの警告灯が緑色に点灯した。
「グリーンライト!グリーンライト!Go!Go!Go!」
ジャンプマスターがクロウの尻を叩くと、クロウはドアへと歩みを進めてドアから飛び出し、それに続いて途切れる事無く第2小隊の隊員達が次々とC-130Jから飛び出した。
空中に花咲いていく幾つものオレンジ色の13式空挺傘、灰色の空を彩るそれはゆっくりと連なる様に、白い雪原へと降りて行く。
「パッケージ分離」
装備の入ったバックパックを分離してぶら下げる、着陸時の身体への負担を減らす為だ。
「5点接地、5点接地……!」
滑空している進行方向とは逆に足先を流し、無理にありで着地しようとせず、パラシュートに引きずられるように脛の外側、尻、背中、肩の順に転がりながら着地。怪我をしたり雪に足が刺さって折れる事も無く、また地面が柔らかい雪である事も幸いして、身体の方にダメージはほぼ無かった。
着地後、雪の中からもそもそと起き上がった降下要員達は、素早くパラシュートの回収に掛かる。小さくパラシュートをまとめ終えると、ケーブルを辿って装備を背負い、分隊毎に集合後、小隊が1か所に集合した。
機械化歩兵の正しい運用ではないが、これが第2小隊初の単独任務になる事に、隊員は高揚感を抱いていた。