第185話 決壊
異世界の川にも、一応堤はあった。
しかし、それは現代基準で言えばあまりにも脆く、貧弱であった。
増水した川の水は堤に打ちつけて削れ、土壌に沁み込んで堤防の中に水の通り道を作る。堤防から水が沁み出している報告は既に受けていたが、止めを刺したのは明らかに鉄砲水だった。
堤の頂点を水が越え、一気に崩壊、濁流が流出し、市街地に雪崩れ込んだ。
リトルバードやHMMWVで回収出来た街の住人はまだ幸運だった、不幸だったのは、避難指示を真に受けなかった住人や、聞こえなかった住人、家財を持って逃げようとした結果、逃げ遅れた住人らだ。
水は川だけでなく、運河からも上がってきた。
元々水運はそこまで活発では無かったが、街の中まで入り込んでいた狭い運河の水が溢れ、街を沈めていく。
「貴方!逃げて!」
「アリッサ!」
「誰か!子供が!」
街は悲鳴に包まれる。
濁流が運んできたのは水だけではない、山の上から土砂や流木と一緒にベルム街を襲った。流された時に流木に撲殺された住人や、瓦礫に足を挟まれ、身動きが取れなくなり水位が上昇、そのまま溺死した住人もいた。
地下室に居て避難指示が聞こえなかった住人は地下に流れ込んだ水に沈み、流れが強い場所では弱い建物が瓦礫や水に流され、中に避難していた住人ごと倒壊するなど、被害はどんどん、手が付けられない程広がっていく。
ラスカ河本流に架かり、ベルム街の南北を繋ぐ橋の橋脚は、鉄砲水によって上流から流れてくる流木が次々と当たり、水の勢いに押されてついに押し流され、勢いを増す濁流に瓦礫を追加する結果になった。
北側の風俗街を中心とするベルム街北部への陸路は完全に孤立、橋の崩落時に渡河禁止の命令を無視して渡っていた数人が行方不明。
街のあらゆる道、あらゆる路地に濁流は隙間なく進入し、そこにある物を押し流す。人々の生活の跡が、水の底に消えていくのだ。
ギルド組合にも水が殺到、勇敢な魔術師達がシールド魔術や土の魔術で浸水を防ごうと奮戦したが、水の勢いを殺し切れず、彼らが瓦礫の一部になるまでさほど時間はかからなかった。
料理の美味いあの店にも、平等に水は流れ込む、食材や調理器具、皆が楽しみに眺めたメニュー表も、フロアに流れ込んだ水に浮かび、当時に賑わいは見る影もなく破壊されていた。
装具屋のポーションや武器、薬草、魔石も渦巻く濁った水に飲み込まれていく。
普段は街の人々の命を繋ぎ、恵みをもたらす水の流れるラスカ河。だが今は人々の命を奪い、生活を奪う濁流と化し、そこに存在していた。
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本部基地 災害対策本部
ガーディアンでは堤防決壊直後から、待機していた全部隊に次々と命令が下っていく。
「第1小隊、空中からの救出になる。ホイスト救助の装備を整えて出撃してくれ」
「了解した」
「エリス、分隊はお前に預ける」
「分かった」
小隊長の健吾と俺の副官、第1分隊の副長のエリスは待機室に向かって駆け出す。救難装備も一応の備えはあり、定期的に訓練もしているので扱えるのは間違いは無い。
更に空中からの救助となるとそれなりの訓練がいる、訓練中の第3小隊はまだ訓練が足りていないので実戦に出せる状態ではないし、第2小隊に至っては機械化歩兵部隊の為ヘリボーンは未経験だ。
そんな中で空中でホイスト救助が可能なのは特殊戦を主眼に置く第1小隊だけだ、自惚れに聞こえるかもしれないが、俺も俺達もそれなり以上の訓練も経験も積んできた。
「シュバルツ大尉、ハワード大尉、第2と第3の小隊はボートを準備しろ、水の勢いが無くなり次第水上からの捜索、救助活動に移行する。準備が出来たら別命あるまで救護所の指揮下に入れ」
「了解」
シュバルツ・ラインハルト大尉とハワード・ジョンストン大尉の2人の小隊長が同じように待機室に向かう、救護所は避難所と一緒に召喚した施設だ、本部基地と空軍基地の間に設置した体育館の様な施設に隣接しているので、基地機能の拡張はしていない。加えて基地の中に避難民を入れる事もないので基地内の治安は保たれる、既に工兵隊と後方支援隊が仮住居・食事・被服・入浴・衛生支援に入っており、避難民受け入れ準備はもうすぐ完了するとの事だ。
また避難所はヘリパッドも併設しているので、ヘリから救助した要救助者はそこに下ろす、空軍特殊部隊のCCTも臨時航空誘導の為に待機中だ。
「池田少佐、戦車部隊は別命あるまで避難所で工兵隊の指揮下に入れ、小野寺中佐、同じく別命あるまで砲兵隊は避難所で後方支援隊の指揮下に入れ」
「仰せのままに」
「了解」
端的に言えば避難所を手伝ってこい、という事だ。水害となれば、復興の瓦礫撤去まで戦車部隊と砲兵部隊の出番はない、今最も人出を必要としているのは恐らく避難所の筈だ。
災害対策本部にも幸いな事に災害派遣慣れした自衛官の召喚者が複数居る、彼らから助言を受けて部隊全体を動かし、必要な物を必要な場所に召喚するのが俺の役割だ。
「エリス!」
俺は本部を孝道に預けて一旦抜け、準備をしている第1小隊の待機室を覗く。
「お前、ダメだろ最高指揮官が持ち場を離れちゃ、ヒロトは出動禁止だからな」
「分かってる、準備は」
「大体終わった、後はヘリに積み込んで出発するだけだ。私はクレイと出る」
いつものコンバットシャツとコンバットパンツに身を包み、ホルスターにP226を挿したベルトキットにYATESのレスキューハーネスを装備した彼女の手には担架が握られていた。
「訓練でやった事を思い出せ、救助もそうだが、怪我には注意しろ、無事に帰ってこい」
「それは恋人としてのお願いか?団長命令か?」
「命令だ」
「ふふ……そう硬い顔をするな、緊張が皆にも伝わるぞ」
エリスが肩に触れた手で、自分がようやく肩に力が入っている事に気付く。思い方の力を少し抜き、深呼吸をすると少し楽になった気がした。
「分かってる、無事に帰って来るさ」
「心配だ」
「もちろん、そっちも分かってる」
エリスがキョロキョロと周りを見回し、突然口づけをしてくる。軽く触れるだけのキスだが、それでも彼女の想いは伝わって来た。
「行ってくるぞ」
「ああ、待ってる、気を付けてな」
全員無事に帰ってきますように、そう心の中で祈りながら俺はエリス達を見送った。
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LBTのスリーデイライトパックパックを背負い、5.11タクティカルのベイルアウトバッグを肩にかけて雨の中ヘリへと走る。割り当てられたヘリはMH-60Mのスーパー61、パイロットもいつものウォルコットとエイルだ、それにいつもはガンナーをしているパトリックも乗っている。
バックパックの中には救難装備が、ベイルアウトバッグの中には容器を改良し、スパルトパウチになったポーションがぎっしり入っている。
各ヘリには3人の隊員が乗りこむ、より多くの住人を拾えるようにだ。ブラックホークの場合定員は12人、私達を除けばあと9人拾える計算になる。
ベルム街の住人の内、水没している地域の住人は後何人居るだろうか、場合によっては複数回、数10回往復する必要があるかもしれない。
『スーパー61、離陸する』
「了解」
ウォルコットも離陸前のいつもの前口上も無く、スーパー61は離陸する。この床下の浮遊感も慣れたが緊急出撃だ、それに浸っている暇はない。街までの距離は然程無く、離陸してすぐ、激しく窓に打ち付け流れる雨の滴の隙間から、その光景ははっきりと見えた。
街が河の一部になってしまっている様だった、流れる濁流の中に街が沈んでしまっている。
「酷いな……」
「えぇ……」
クレイも頷く、こんなの生まれて初めて見た光景だ。濁流は渦を巻き、瓦礫と流速で水の威力は増していく。
道と言う道は茶色く濁った水の底に沈んでしまっているが、建物は辛うじて水没していない。避難できた人々はその建物の屋上階や屋根の上に避難している様で、着の身着のままと言った風に避難した人々が見える。
とは言え水位は既に人間の大人の背丈を超えており、建物の1階は完全に水没している様だ。この中で何人が生き残ったのだろう……一瞬そんな事を考えるが、すぐに頭から振り払う、今はこの任務に集中しろとヒロトに言われた気がして頭を切り替える。
「機長、ウォルコット、聞こえるか!」
『聞こえますよエリス、どうぞ』
「河に近い方から、住人を拾っていこう!」
『了解、向かいます!管制聞こえるか、こちらスーパー61、ラスカ河に近い方から住人を拾う』
『こちら管制、了解した』
ヘリは街の北を流れるラスカ河の近くで待つ住人の回収に向かう、無線を聞くと他にもスーパー64が北側地域で住人の回収を行う様だ、空中接触には十分注意せねばならない。
気を引き締めろ、自分に強く言い聞かせる。今までの作戦や任務とは全く性質が違う今回のこの出動、注意しなければならない事もこれまでとは違うだろう。
河の北岸にほど近い建物の上空10mにウォルコットはヘリをホバリングさせた、いつもはM134Dミニガンを取り付けガンナーが座る席だが、今日はそれは外してあるその窓から外、機体の下を覗き込む。
屋根の上へと逃げて来た住人が、こちらを見ながら驚いた表情を浮かべている。ざっと数えると8人くらいか。
『ここでホバリングさせる!住人の回収を急いでくれ!』
「了解した、クレイ、パトリック、釣り上げた住人を頼む」
「了解、お気をつけて!」
キャビンドアを開けるとヘリの起こす音がさらに大きくなる、普段は外してあるが緊急用装備として取り付けられたホイストとハーネスを連結し、安全を確認。
キャビンの縁に足を掛け、ラぺリング降下の要領で待機する。
「ホイスト下ろせ!」
『了解、降下開始!』
ホイストのケーブルが繰り出されていき、下を見ながら無線で着地点との距離をパトリックとやり取りし合う。
地面との距離が近くなるとスピードを緩め、ゆっくり着地する。
「こちらはガーディアンだ!今から貴方方を避難所へと移送する!」
ヘリの騒音に負けない様に腹から声を出す、彼らは驚きを隠せていないのか、口を開けて私と上空のブラックホークを交互に見ていた。
「た……助けに来てくれたのか!?」
「その通りだ!1人ずつアレに吊り上げてここから移動させる!優先は怪我人と老人、女子供!何人いる!?」
「俺達は家族は4人だがここには8人居る!水があふれる前に、あんた達の呼び掛け通りに道端の人らを避難させた!」
そう答える中年の男性は自分の家族を指差した、決壊前の避難の呼び掛けを聞いていたのだろう、他の街の人もこの家に避難させていた様だ。
「怪我をしている者は!?」
「居ない!年長者から頼む!」
要救助者の中には老人が1人いた、まずはこの人からだ。
「この紐には触らないで!最悪死ぬぞ!」
ホイストのケーブルには触らせない様に気を配らなければならない、ヘリは様々な理由で帯電している、空中放電もしては居るが限度があり、ホイストのケーブルに触れれは最悪感電死もあり得る。
放電には気を遣ってはいるが、それでも気を付けなければならない、と言うのは戦闘捜索救助の講義で何度か聞いた。
サバイバースリングに私と要救助者を繋ぎ、ホイストを巻き上げてもらう為に上空に合図を送る。
「要救助者確保!上げてくれ!」
『了解!上げます!』
ケーブルがホイストに巻き上げられ、ゆっくりとホバリングしているMH-60Mに向かって上昇していく。
「ほ、ほあ、ほああぁ……」
「おばあちゃん、大丈夫だ、落ち着いて……」
この異世界でヘリに吊り上げられるなんて経験は無いだろう、10mは訓練された私達でこそ慣れた高さだが、一般人にとってはそうでもない、恐怖を感じる高さだろう。下を見て暴れ出さない様に落ち着けながら、ゆっくりと上昇し、ヘリに収容する。
「おばあちゃん、着いたぞ、もう安心だ」
「はぇ……ありがとう。……これが貴女達の“空飛ぶ風車”の中かい……」
空飛ぶ風車、そんな呼ばれ方もされてたな、ヘリは。
そんな事を思いながらヘリの中に要救助者を引き込んでサバイバースリングを外し、パトリックが座席に座らせる。
クレイが特異魔術でまとめて吊り上げる事は出来ないだろうか……とも思ったが、接地していない為要救助者を感電させる恐れがあると思うと容易に試せない。
「1人ずつ吊り上げていくしかないな」
「エリス様、次は私が」
クレイはそう言ってホイストのフックをハーネスに引っ掛ける、次は彼女の番だ。
「分かった、ホイスト制御は任せろ」
「お願いします」
クレイが私の時と同じように降下していく、屋根の上で1人をサバイバースリングに繋いだと思ったら、特異魔術のマフラーでもう2人を巻き取ってこちらに合図を送った。
『エリス様、お願いします!』
「了解した!」
なるほど、と思いながらホイストをゆっくり巻き上げる、あの方法ならクレイを通じて接地している為、要救助者を感電させる恐れはない。その上クレイの能力ならこうして複数人をまとめて吊り上げる事も出来る、回収がより早くなるな。
「重くないか?」
「平気です、不思議と重量は感じないんですよね、これ」
ヘリの中まで要救助者を引き込むと、マフラーを解いてスリングも外す。
クレイの特異魔術、いろんなところで役に立つな……。マフラーで巻き取っていた子供の頭を撫でて座らせるクレイを感心しながら見つめる。
残り4人の回収も、想定の倍の速さで終了した。
「全員収容完了!避難所へ!」
『了解!スーパー61、避難民の収容完了、避難所へ向かいます!』
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臨時だが建物を召喚して作った避難所と救護所は、救助開始から1時間たった現在、ヘリ部隊が拾ってきた住人が入り始めていた。
「濡れた衣服を着替えたい方はこちらに!着替えが用意してあります!」
簡単な物だが着替えを用意し、怪我人や急病人には医療を提供し、仮設住宅が決定するまでの一時的な居場所としてここを開放している。
水に浸かって避難してきた人もいるらしく、それなりに広いスペースとして用意したシャワー室は泥を落としたい住人ですぐに一杯になった。
「到着の方でベルム街の住民の方は青のゲートへ!それ以外の方は黄色のゲートへお願いします!」
「避難者名簿を作ります!文字の読めない方、書けない方は隊員に申し出て下さい!」
隊員の呼び掛けの通りにぞろぞろと人が動く、避難所の動線は事前に考えられたものの様に思えたのも無理はない。よく見てみるとヒロトの召喚した召喚者の中に、骨格や顔立ちがヒロトに似た人物が混ざっている、恐らく同じ人種なのだろう。
「手際が良いですね……」
「あぁ、これだけの施設を稼働させるのを、この短時間でやってのけるとはな……」
クレイの独り言に全面的に同意だ、もしかしたらそう言った動線確保や避難所の役割分担に長けた人物が指揮を採っているのかもしれない。
スーパー61から最後の1人を下ろすとキャビンドアを閉める、救助を待っているのは今下ろした人達だけではない、まだ街では救助を待つ人達がたくさん居る。
『燃料はまだ余裕がある、もう2、3往復は出来るかもしれないが、あんた達は平気か?』
「私は大丈夫だ」
『私も行けます、問題ありません』
『了解、本部、こちらスーパー61。救助第2陣行きます』
ウォルコットは無線でそう報告し、雨の中避難所のヘリパッドで臨時の管制を行う空軍特殊部隊CCTの指示に従って離陸する。ヘリは再び街へ機首を向けた。
雨の勢いも、心なしか弱まった気がする、気がするだけかもしれないが。
「この雨も早く止んでくれればいいんだが……」
『すぐとまではいかんが、今日の夜には止むそうだ』
操縦桿を握るウォルコットが、無線越しにそう話しかける。
「本当か!?」
『あぁ、気象隊からの報告があった、高気圧が近づいてる、前線も東に押し出されてるから今夜にでも止むだろうって』
ああ、良かった。心からそう思う、降雨によるこれ以上の増水が無ければ河の様子も落ち着き市街地への浸水も止まる。街の中の流れが止まればボートでの救助活動も可能になるだろうし、そうすれば救助出来る人の数も多くなる。
何より流れのよって建物が弱体化しているところもあるはずだ、流れる水に耐えられず建物が倒壊する危険が少しでも減れば、犠牲者の数も減るだろう。
今私達が出来る事は、1人でも多くの住人をヘリで回収する事だけだ。
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救助活動開始から3時間、日没が近づくにつれ、ヘリでの活動も限界になってきた。日が暮れれば航空機での捜索救助活動は更に難しくなる、上空は管制されているとは言え、墜落や空中接触、救助員が滑落して事故になる可能性が高まるのだ。
救助の報告を災害対策本部から聞きながら、この次にどうすべきかを考える。
ギルド組合が被災している様だが、こちらは建物が頑丈だ、すぐに倒壊すると言う騒ぎになる事は無いだろう。
俺が気になっているのは日没までに拾いきれなかった住人だ、このままでは浸水した建物の上階で一夜を過ごすことになるだろうが、食料、水、衣類などが足りているだろうか。
「救援物資をハンガーに集めてくれ、水、食料、毛布とか。レイザー隊は1730まで救助を続行、スーパー隊は帰投した機体があれば救援物資を積んで、救助がまだ行われていない住宅に届けてくれと伝えろ。空いてるチヌークはあるか?」
「タスカー01、伯爵屋敷に物資を搬入完了、帰投後は命令待ちです」
「帰投次第救援物資を積み込むように伝えろ、輸送先はギルド組合」
「了解」
航空隊の指揮官が各航空機に命令を出し始める、伯爵の屋敷へ物資輸送を行っていたMH-47G、タスカー01にも帰投命令を出したのは、ギルド組合への物資輸送に充てる為だ。
ラジオも無線も無いこの異世界で、組合にどれだけの人が取り残されているか正確な情報は分からないが、あの建物は常に多くの人で賑わっていた。今回もそうだとすればかなりの人が取り残されている事になり、それらが大人しく一夜を明かせるとは思っていない。
あの場には一般人に混ざって、荒くれものの傭兵や冒険者も居る。最悪内ゲバが発生して血の海だ。
「今憲兵隊はどれだけ動かせる?」
「避難所の治安維持に1個小隊が付いているので、即応出来るのは1個小隊です」
「フル武装で準備させろ。ギルド組合への支援物資搬送を手伝って、現地の整理と警備に行ってもらう」
「了解」
憲兵隊長の命令一下、ヘルメットにプレートキャリア、戦闘服と言うフル装備に身を包んだ憲兵が集められた。
憲兵はガーディアン内外の治安維持を目的に設立した部隊だ、不正などの取り締まりや捕虜の管理、内部の監査組織としての意味合いが強いが、対外的には街での警備なども行う。
彼等の装備は一般の歩兵部隊と何ら変わらない、今回は想定する場所が場所なだけに機関銃を持つ者はおらず、散弾銃の所持率が高い様に見える。
今回の様な懸念があるのなら、逮捕術や制圧法の心得がある彼らが適任だ。
「君達の任務はギルド組合内部の治安維持である、支援物資をギルド組合に送るが、それの略奪防止や建物内での乱暴狼藉を働く者の排除だ。もし襲撃されたり制止を聞かなかった場合は、武力の行使を許可する」
「「「了解」」」
「支援物資の搬入作業を手伝い、タスカー01に搭乗せよ、君達の働きを期待する!以上!」
もちろん、彼等からの報告如何によっては、特殊部隊である第1小隊を投入するつもりではあるが、現地の様子がどうなっているかが心配な所だ。
着陸した黒いチヌークへの物資搬入を俺も手伝いながら、彼等の無事を祈る事しか今は出来ない。
何しろ俺は、作戦参加資格剥奪中の身分なのだから。