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第174話 魔術文字学

今回から異世界の金貨銀貨などの貨幣価値を修正します、正直最初から決めて書けばよかったのですが、見切り発車の作品がここまで長続きするとは思っていなかったので……行き当たりばったり申し訳ありません。


多分そのうち大規模な書き直しが入ると思いますが、その時は70話以前も大きく変わると思います、多分。

テックス・マクダエル、魔術文字学者、42歳男性。

グライディア王国の王都から北に20km、王国の最高学府として知られる王立魔術大学に教授として勤務している彼だが、研究しているのは魔術文字。既に廃れた技術であり、どちらかと言えば魔術考古学に近い分野の研究だ。


魔術文字は地面や木の板、石板などに刻まれる事で、流れる魔術の方向を自在に操る事が出来る。古いダンジョンにはこの魔術文字を使ったトラップがある物も存在し、落とし穴や致死性のトラップにも使われている。

魔法時代と呼ばれる時代に、魔術の才能が無い人間によって作られ、人間も亜人も魔術文字を使って新しい魔術を体系立てようとしたが、流れを制御出来ても出力が大したものにはならず、応用の範囲が狭かった為に徐々に廃れていった。


「こんな素晴らしい技術を廃れさせてしまうなんてな……」


魔術文字は魔術の流れる方向を制御出来るだけ、それが何の役に立つのだ。そんな事は魔術学生の頃からずっと言われてきた。

確かに魔術の方向を制御するだけだ、それは認めざるを得ないだろう。しかし、重要なのはそれを“魔術の才能が無い者”も文字が書けるという事だ。本人の魔術でなくとも、才能の無い者が書いた魔術文字には魔術を流すことは出来る。


魔石から取り出した魔術を使えれば良いのだが、魔術文字を作動させるのに必要な魔石は非常に高価だ、成果の乏しい彼の研究室の研究費では賄えなかった。

魔術文字の研究が進めば、誰もが普遍的に使用可能な魔術道具や魔術装置が開発されることになるのは間違いない。そしてそれは、必ず人々を豊かにする。


「せめて魔力を増幅させる記号があれば……」


魔術文字に存在する記号はいくつかあるが、彼の思い描く機能のある記号はまだ見つかっていない。


帰宅した彼は今日、レベルの高い魔術師でもある同僚の教授に「そろそろ現実的な魔術研究に移ったらどうだ」と言われていたのが堪える。


帰宅しても誰も居ない、数年前にはこの家にも私を迎えてくれる妻と娘が居たのだが、この家にはもうその声も無い。


少ない稼ぎでも熱意のある仕事、それが妻と娘の目には「夢を追いかけ続けるだけ」に見えたらしい。数年前、自宅に帰ったら妻と娘はおらず、何もかも空っぽだったのを思い出す。


「このままでいいんだろうか……」


低収入、魔術のレベルの低さ、周囲からの視線____不安な老後が脳裏を過る。

そんな不安を振りほどく様に、保冷庫から酒を取り出した。不安になったときは、これが解決してくれる。



翌日、酒が残り痛む頭のまま出勤した。馬車出勤出来る収入を得ている高位魔術師や成果を上げている教授達がうらやましくなる。

研究室に着くと、たった一人の助手がもう来ていた。


「あ、教授、おはようございます」


「おはよう……早いな君は」


ヨセフ・レイテフ、魔術文字研究室のたった一人の研究生であり、今年この魔術大学の学士を取得する予定の男子学生だ。

大変に優秀な学生なのだが、何故この研究室を選んだのか分からないとテックスは思っている。一度聞いてみたが、少年期に頃にダンジョンに親に黙って行き、そこでダンジョンのトラップとして使われていた魔術文字の精巧な配置に驚いたと同時に感動したのだという。

だとしても、わざわざ不人気で成果も少ないこの魔術文字学研究室にしたのは何故だろうか、そう言う事なら、最魔術考古学とか、いろいろあっただろうにとテックスは思う。


とは言うものの、大切な学生だ、彼に失望されない様にと研究にも一層力が入る。


「今日のご予定は?」


「近くにあるダンジョンは調べ尽くしてしまったしな……一先ず、見つかった魔術文字の解析だな……」


作製した魔力文字記号一覧を取り出し、先日の野外探索(フィールドワーク)に行った際の羊皮紙ノートを取り出す。


「新しく見つかった魔術文字記号はありましたか?」


「魔力の流れる時間を制限する記号、これは新しいぞ。学会に発表出来るかもしれない」


とはいうものの、その記号が何に役立つのか、と言われて終わりだ。発表はもう少し煮詰めてからでもいいと結論付ける。


「どうせこんな分野を研究している物好き等少ない、先を越される事は無かろう」


その自信は、彼の魔術文字研究の自信の表れでもある。魔術文字研究で、成果でも知識でも扱う技能においても、彼の右に出る物は居ない。

研究者としてはピラミッドの下の方にいる彼だが、魔術文字研究者という狭い世界の中では頂点に立つ存在なのだ。


「……誰か来たか?」


ノックの音が、聞こえた気がした。扉の向こうには、何となく人の気配もする。

最近、ノック音に敏感になっている気がする。先々月の事だが、研究成果も無い教授が大学から追い出された事があり、その話を聞いてからノックが怖くなった。


コンコンコン、と、今度こそ間違いなくノックの音がした。


(オーガ)が出るか蛇が出るか……


「どうぞ」


失礼します、と断って入って来たのは、見慣れない服に身を包み、髪を清潔そうに刈り上げた20代半ばの男性だった。


「ギルド・ガーディアン渉外科、コリー・ステニスです。テックス・マクダエル教授にご用件があり、訪問させて頂きました」



===============================



研究室に備え付けのソファにコリーと名乗った男性を座らせる。


「お茶も出せずに申し訳ない、そもそもこの研究室にはこういった来客が極端に少なくてね」


「いえ、お構いなく」


テーブルを挟んだ対面のソファにテックスが座ると、興味深そうにコリーは研究室を見回した。


「……期待外れだったかね、他の教授の部屋は魔石や魔術薬品のサンプルで一杯だが、魔術文字の研究はノートとペンが主な物でね」


魔術文字は文字の研究だ、目立つものと言えば過去の研究成果が記録された大量の羊皮紙ノートと、魔術文字記号一覧表位な物で、禍々しい色や綺麗な色の魔術薬が沸騰していたり、宝石にも似た魔石も無ければ、魔法陣も展開していない。


「いえ、自分も魔術文字を講習以外で見たのは初めてでして、色々な文字にいろいろな役割があるのだなぁと」


人の()い笑みを浮かべる彼に、とても戦闘員とは思えないと感想を抱えたテックス。

ガーディアンの制服は奇妙な物で、紺を貴重としたジャケットに黒いラインが入っている。右胸にはガーディアンの紋章、肩についているのは恐らく階級章だろうと推測する、どんな階級なのかは分からないが。


「ところで、ギルドが私にどんな用件で?ガーディアンと言えば傭兵のギルドだろう?」


テックスの知っているガーディアンと言えば、ノイマン伯爵領の麻薬カルテルを検挙し、少人数でドラゴンを撃破し、公国に侵攻された国境線を奪い返したという事、クロスボウの様な見慣れない武器を使っている事くらいだった。


「えぇ、ですが私の様に、後方支援の隊員も居まして、特に私は基地の運営部署の1つ、と言いましょうか。武器を手に戦う訳では無いのですが、広くガーディアンの活動を知って貰ったり、対外各所への交渉や関係作り、と言ったことを行うギルドになります」


「兵站を担当する、と言ったところかね」


「はい、本日はその件で教授にお話があり、お忙しい中お邪魔させて頂きました」


「この研究は忙しくもないから構わんよ、要件を聞こう」


「結論から入ります、テックス・マクダエル教授、魔術文字研究者としてガーディアンに移籍して頂けませんか」


唐突の提案に空白が生まれる、ガーディアンに、移籍?

ますます分からない、と混乱するテックス、ガーディアンに、傭兵に必要な人材から最も遠い人材の、私が?


「もちろん、それ相応の待遇をさせて頂きます、まず……」


「い、いやいや、ちょっと待って欲しい。理由を聞かせてくれ、揶揄っているなら君をここから追い出さなければならなくなる」


「揶揄っているだなんてとんでもない、まずは理由をお話しますと、最近魔術道具に関しまして、我々の方で技術研究局を設立しました、まだ準備室の段階ですが、そこで魔術文字の研究をして頂きたい。研究目的は2つ、ガーディアンの資金源確保と、民衆へと移動手段の普及です」


鞄から封筒を取り出す、開けると中にはパンフレットが入っていた。紙の存在を知らないテックスは「偉く上質な羊皮紙だな……」と呟きながらそれを読む。


「魔術文字の研究を応用すれば、魔石を動力とする“自動車”を作り出すことが出来ると、我が方の技術部門の見解が出されまして、その研究を教授に手伝って貰いたいのです」


「ふぅむ……馬無しで走る荷車か……」


想像図では、馬車に連結する荷車のような物が、馬が引かずに走っている様子が描かれている。


「しかし魔石を動力にするなら、取り出せる魔力量が少なすぎるぞ」


「我々は既に、魔術文字上で魔力量を増幅する事が可能な方法を知識として有しております。論文にはしていませんが」


「何だと!?」


テックスは驚きを隠せない、彼がずっと追い求めていた理論を、今目の前に居る男は握っている。


「我々に無いのは魔術文字の知識だけ、この2つを組み合わせれば……」


「魔石からの魔力を取り出して、魔術の才能が無い者でも扱える魔術道具を作ることが出来る……!」


彼は二つ返事で了承しそうになったが、ぐっと堪える。知識は財産だ、タダでくれてはやれない。


「……私の知識を買おうという事か、決して安くは無いぞ。最下層の研究者とは言っても私もこれで食っている身だ、安売りは出来ない」


底辺研究者が何を言っていると言われそうだが、彼にとっては飯の種なのだ。移籍後の待遇によっては可否が変わって来る。


「月に白金貨5枚、金貨10枚でいかがでしょう。必ず年1、成果によっては年に数回の昇給があり、賞与も出ます。そして衣食住の内、住は無料、衣も食も格安で提供出来ます。もちろん研究費はガーディアンの予算から出ます、完全週休2日、有給は年に18日です」


「ごッ……」


「福利厚生としては、隊員と同じジムと売店が使えます。住居内の設備が破損した場合の無用交換など、でしょうか」


詳しくはパンフレットに記載されています、という言葉が耳に入ってきて、軽く確認したが唖然とした。白金貨5枚と言えばこの魔術大学の中で最も成果を上げている教授と同じくらいだ。白金貨1枚で、1ヶ月生活をしてもお釣りがくる。

それに衣食住と福利厚生の充実具合、大学よりも待遇が良い。


「ゆ、有給とは……」


「休暇中でも出勤日の約7割の給与が支給される申請型の休暇の事です、ほぼ全員が使って街に繰り出したり、旅行に行ったりしています」


「何という贅沢な……」


「職場として用意出来るのは専用の研究室と研究環境、それから助手を付ける事くらいになりますが、いかがでしょう」


よりよい給与と待遇、魅力的な仕事環境。これで自分が大学の教授じゃなかったらその場で転勤を決めていた所だが、そうしていないのはやはり大学側の事情があるからだ。

今面倒を見ているヨセフに学士を出すのはこのままだと私だ、それを放棄する訳にはいかない。


「……魅力的な条件だが、私も面倒を見ている学生がいる、彼に学士を取る教員は私なのだ、それを放棄する訳には……」


「なるほど……彼ですか?」


作業をしているヨセフを見るコリー、彼にもお話をしましょうという言葉が出た時、テックスは耳を疑った。


「何か彼が……」


「いえ、悪い話ではありません」


渋々と言った風にテックスはヨセフを呼び、隣に座らせた。


「君、魔術文字は好きかい?」


「もちろん」


コリーの問いにヨセフは即答した、こんな辺鄙な研究室に来るほどだ、魔術文字が好きでなければこんな研究室には来ない。


「魔術文字を仕事にしたいとは思うか?」


「思いますが、そんな仕事がありますか?」


「ある」


そう言い切るコリーに、テックスはまさか、と思った。


「ヨセフ君、と言ったね、君もガーディアンで雇いたい、どうかな?」


え、と声を上げるそれにテックスは待ったをかけた。


「ちょっと待ってくれ、彼は優秀な学生だ、学士を取得する才能もある。今引き抜いたら学士号が……」


当のヨセフは口籠る、実はまだ彼は就職が決まっていなかった。大学を出た後の進路が決まっていない事に悩んでいた彼には、飛びつきたいような案件だろう。


しかし、その為には大学を中退してガーディアンに就職しなければならない。学士号を捨てる気にもなれない気持ちがヨセフの中で迷いを生んでいた。


「一先ず、こちらからはその条件を提示させて頂きます。来週にまた来ますので、その時にお返事を聞かせて頂ければ」


席を立ちながら、良いお返事を期待しています、と言い残し。コリーは研究室を後にした。

残されたテックスとヨセフは、コリーが置いて行ったパンフレットを眺めながら、自分の将来の事を思い浮かべていた。



===============================



翌週、再び研究室を訪れたコリーをテックスは出迎えた。


「先週の話だが、是非お引き受けしよう。大学当局側に移籍の意向を伝えたら、あっさり許可された」


テックスの申し出に対し、“ようやく厄介者が居なくなる”と言いたげな態度で学長が辞任を許可したのだ。研究成果の碌に出ない研究者を抱えておかなくて済むとでも思っているのか、こんなにもあっさりと。正直拍子抜けだった。


「お荷物が居なくなって清々しているとでも思っているのだろう、呆気なかったよ」


「心中、お察しいたします。我々の下で益々魔術文字を発展させましょう。……彼は」


コリーが言っているのはヨセフの事だろう、私が担当教授である以上、私が学士号認定をするのだが、正直こっちの方が手間取ったと思う。魔術文字の研究など専門にしている教授や学者はこの大学に居ない、魔術文字に関しては齧った程度以下の教授の方が多く、ヨセフをどの研究室でも引き取りたがらなかった。

一昨日ようやく決まったのだが、ヨセフは研究テーマはそのままに、親しい教授の研究室で引き取ってくれる様で、そちらに移籍する事になった。学士号も問題なく出るという。


ヨセフもそれに関しては納得し、承諾も済んでいる。


「良かったです、彼は今日は?」


「まだ来ていないね、今日も来るよ。何か用かい?」


「彼の就職を我々が引き受けるので、契約書を持ってきました、サインをしたら郵送して頂き、内定となります」


労働契約書、異世界でもある程度しっかりしている企業やギルドは契約書を作っている、これの有無がその企業やギルドの質を決めると言ってもいい。


「渡していただけると幸いです」


「分かった、引き受けよう」


「教授には準備が出来次第、我々の拠点にお連れします。ワーギュランス公領、ベルム街です」


ワーギュランス公領、王都はこの王国の東側に位置している為、王国の反対側になる。距離にして

長旅になるな、と声には出さず呟く。900km以上はある為、王国を横断する旅支度と、自宅の荷物を輸送する馬車の手配も必要になる。


「荷物をベルム街に送る馬車の手配もある、2週間ほど準備に欲しい」


「分かりました、では2週間後、ここにお越しください」


そう言ってコニーが差し出した紙に書かれていた地図に示されていたのは、王国郊外の平原だった。丘の向こうで、人家がない、人目に付かない場所だ。


テックスは、転移魔術でも使うのだろうかと思いつつ、その地図を受け取る。彼も学のある人間だ、地図くらいは読める。


「それでは、また2週間後」


そう言ってコリーは先週と同じように姿勢を正して頭を下げ、研究室を出て行った。

ヨセフが来たのはそれから1時間後だ。


労働契約書を渡すと、喜んで記入を始めた。


「親御さんは?」


テックスは大学からほど近い王国郊外の実家から通っているので、他の学生よりは負担は少ない。


「大喜びでしたよ、勤務地は驚かれましたが、待遇が良いので親に楽させてあげられそうです」


「そうか、なら良かった」


「えぇ、しかし卒業まで教授の教えを受けられないのは残念ですね……」


「それはすまないと思っている、本当に。しかし君は優秀だ、必ず学士を取得出来る……追いかけて来てくれるのを楽しみにしているよ」


「はい!」


元気よく返事をするヨセフ、恐らく彼がこちらに来るのは春過ぎになるな、無事に卒業してくれれば、それでいい。そうテックスは思う。


彼は研究室を振り返る、10年以上を過ごした研究室と別れるのも惜しいが、荷造りもしなければなるまいと、思い立って荷造りを始めた。



==============================



「見事に空になったなぁ」


2週間後、空っぽになった我が家を前にして、感心したように呟くテックスが居た。

研究室の荷物は既に物流ギルドの引っ越しサービスに任せ、大学に研究室の鍵も返却。自宅の荷物も同じようにギルドに任せた、この家も来週から競売に懸けられる様だ。

元妻と娘には転勤する旨と、転勤先は伝えていない。少しばかりの復讐心と、夢を追う元夫の事など気にしないで暮らして欲しいという自虐混じりの心遣いからだ。


「さて……」


一週間以上の旅になるので、路銀を少し多めに、荷物は最低限で現地調達する予定だ。

コリーから貰った地図を頼りに、丘の向こうへと向かう。王都の壁を越え、更に1時間程歩くとその地点だ。


「何もないが……」


「テックス教授!」


呼ぶ声に振り向くと、そこにはガーディアンの制服を着たコリーが立っていた。


「いやぁ良かった、待ち合わせ場所が分からなかったらどうしようと心配しまして」


「大丈夫だ、地図は読める……ここは何もないが、転移魔術でも使うのか?」


「いえ、こちらに」


コリーに案内されるままに丘を越えると、テックスは首を傾げた。


緑色で、目を離せば草に紛れてしまいそうな服を着て覆面をし、黒いクロスボウの様な武器__最近、国の西側で戦争中の公国が持っている“銃”に似ている___を持った4人程が、姿勢を低くして何かをしている、何をしているのかは分からないが、1人は細長い棒の着いた箱の様な物に向かって何かを話している様だ。


「彼らは……?」


「彼らはガーディアン航空軍団、略して“空軍”の隊員達です。これも彼らの任務を想定した訓練の一環でして、今回の教授移相任務に訓練として参加しています」


教授は知らない、彼らはガーディアン空軍特殊作戦研究部隊。団長ヒロトが新たに部隊拡張において召喚した、特殊作戦能力を持つ“空軍の”特殊部隊で、主に戦闘捜索救助や航空機の着陸や攻撃を誘導したり、現地の気象情報を収集する部隊である。


今回はその中でも、パラシュート降下する部隊や物資、ヘリの着陸地点の確保する前線航空管制官(FAC)や、空爆や近接航空支援の誘導を行う統合末端攻撃統制管(JTAC)等の任務を合わせる戦闘管制官(CCT)のチームが参加している。


「彼らが航空機を誘導し、我々はそれに乗って拠点へ向かいます」


「コウクウキ……?」


「来ましたよ」


コウクウキ、という聞き慣れない単語を考えていると、その音は聞こえて来た。

バラバラと空気を叩く音、そして森の上から姿を現したのは、翼の端にプロペラを付けた航空機、CV-22オスプレイ。MV-22オスプレイの空軍向け、特殊作戦対応型だ。


「あ、あれは……」


「その航空機と呼ばれるものです、空を貨物を積んだまま高速で、飛行する事が出来ます」


平原の上空を旋回したCV-22は固定翼機モードから垂直離着陸モードへ移行し、ヘリコプターの様に平原へ着陸する。

着陸と周囲の安全確保を確認した戦闘管制官(CCT)がCV-22に近づき、コリーとテックスに合図する。


「さぁ、行きましょう」


「あ、あぁ、うむ」


目の前の光景に驚きを隠せないテックスを連れて、コリーはCV-22に乗り込んだ。


「教授!これを着けてください!」


「何だって!?」


機内の騒音のせいで言葉が聞き取れない、コリーはテックスにヘッドセットを渡し、着けるようジェスチャーする。

ヘッドセットを耳に当てると、聞こえて来たコリーの声に教授は驚いた。


『聞こえますか』


『あ、ああ、聞こえる。だがこれはどうやって……』


『我々の技術のお陰です、席に座ってシートベルトを、飛行中は絶対に外さないでください』


見様見真似でシートベルトを装着する、戦闘管制官(CCT)達もCV-22に乗り込み、キャビンを管理するマスターがサムズアップした。


『これから離陸します!』


コリーの声と同時に、ふわりと浮遊感を感じる。

CV-22はカーゴハッチを開けたまま王都を離陸、ガーディアンの基地を目指しで飛行を始めた。

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