第167話 軍事法廷
ここは、法廷だ。
「では、第1回ガーディアン軍事法廷を開廷する、被告、高岡大翔は前へ」
いつもなら俺が座っている執務室の椅子には孝道が座っており、俺はその正面に立つ。俺の両脇にはソファが置かれ、片方にはエリスが、片方には健吾が座っている。
「訴状を読み上げます、被告、高岡大翔は、収容所脱出後、出撃禁止期間があったのにも拘わらずバスティーユ強制収容所救出作戦に出撃し、自身の管理を怠った。原告エリス、間違いないか」
孝道が訴状を読み上げてエリスに呼びかける、エリスはソファに座ったまますっと背筋を伸ばして応える。
「その通りであります、2週間の凄まじい収容所生活で休息期間を取ると言っていましたが、その休息期間を破り出撃しました。これは自身も部隊も危険に晒しかねない行為だと考えています」
「被告大翔、間違いは無いか?」
裁判長を務める孝道が俺に向き直る、俺は訴状に間違いが無いことを確認して頷いた。
「間違いありません、2つの収容所を開放した後に休息を取ると言っていましたが、ソヴィボル収容所の潜入後は間違いなく休息が必要な期間が存在しました」
「しかしながら」
俺の言葉を引き継ぐ様に発言したのは小隊長の健吾だ、健吾は弁護人席となっている俺から見て右側のソファに座っている。
「バスティーユ収容所の開放作戦に出せる戦力は実質的に第1小隊のみ、不足する歩兵戦力の中で彼が欠ければこの作戦は成功しなかったでしょう。もちろん休息期間を破った事は褒められた事ではありませんが、戦力と彼の働きを鑑みて、減刑すべきだと考えます」
孝道がメモを取りながら考え込む、裁かれる立場の俺は、裁判長たる孝道が発言を許可した時でないと発言が出来ない。
「……原告、被告とも、その他に主張は」
孝道の声にエリスが静かに手を挙げた、これ以上の罪があったかと俺は思い返すが、思い当たる節が______ありすぎて分からない。
ソヴィボル脱出の時の回収ヘリに乗らなかった事とか、克也の呼び掛けに1人でのこのこ出て行った事とか、分隊員に無茶に近い攻撃命令を出した事とか……
「原告エリス」
「ソヴィボル強制収容所の作戦でありますが、本来であれば捕虜として潜入し、処刑のリスクが非常に高い任務でありました。この様な任務は組織のトップであり、また戦力の要である団長がやるべき任務では無いと考えます、これについてもまた、危険行為として提示させて頂きます」
それもそうだ、武器も無い状態でいつ死ぬかも知れない危険を冒して収容所に潜り込んで脱出の機会を窺う。それも団長の俺自身がやるなんて前代未聞だろう。
俺もデータ収集の為に必要な潜入と分かってはいたが、あれは危険だったと俺も思う。
「被告大翔、原告の主張に間違いはないか?」
これについても間違いは無いので、俺は頷くだけだった。
「裁判長」
「弁護人健吾、どうぞ」
健吾が挙手して発言が許可される、健吾は何かのレポートを手にしながら発言した。
「確かに彼が行った任務は危険極まりないものでした、しかしその危険な任務を行ったからこそ、公国の尋問方法や収容所で何が行われているか、捕虜の待遇、病理データ等の貴重なデータが手に入ったわけであります。これは彼らが行った任務があったからこそ得られた物であり、その功績は大きく、減刑に値するものと考えます」
健吾が持っているのは俺が脱出してからまとめた捕虜レポートだった、尋問方法や捕虜の扱い、収容所内のヒエラルキー構造、拷問や処刑の方法などが書かれているものだ。
「……なるほど。他は?」
孝道の声に上がる手は無い、俺はどんな判決が下されるのか、正直ハラハラしている。
「それでは、被告人に耳栓と目隠しを」
これから俺への刑を吟味するのだろう、別室が無い為ここから移動できず、俺は目隠しをされ、遮音イヤマフを付けられて視覚と聴覚を遮断される。
真っ暗で何も見えず、音も聞こえない。暗闇は俺に無限の世界を感じさせ、自分の動く筋肉の音やタップノイズだけが聞こえる、静寂が喧しいとはこの事だろう、キーンと耳の奥で何かが鳴っている音が異様に耳立った。
やがて目隠しが取られてイヤマフも外され、明るさが目に入る、顔を顰めてしまうが、正面に居る裁判長の孝道に向き直った。
「判決を言い渡す」
孝道が口を開く、さぁ、どんな罪状になるのか。
「被告人、高岡大翔を、1週間の基地外出禁止、及び4か月の作戦参加資格剥奪の刑に処する物とする。これはソヴィボル強制収容所の作戦からバスティーユ強制収容所の作戦までの行動を鑑みての刑である」
4か月の作戦参加資格剥奪か……年が明けるな。
「異存は無いか?」
「質問なら」
「どうぞ」
孝道が発言を許可する、判決自体に不服は無いが、それによって疑問が1つあった。
「訓練はどうなりますでしょうか、練度維持の訓練等は許可されるのでしょうか」
「訓練は作戦ではないので許可は下りるものとする。ここでの“作戦”は、“商隊護衛等の通常業務・依頼に伴う作戦”と定義する事とする」
つまり依頼があっても俺は出て行けないらしい、フル編成で出せるのは、第2小隊のみとなる。
「他は」
孝道が質問を促すが、俺には訊く事はもう無かった。弁護人席や原告からもそういった声は上がらない。
「ありません」
「ではこれにて、第1回ガーディアン軍事法廷を閉廷とする、皆お疲れ様」
裁判長の孝道の声で緊張が緩んだ、俺も肩の力を抜き、緊張の糸が切れて溜息を吐いた。
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「ふぅ……」
俺はソファとテーブルがいつもの配置に戻された執務室の机で溜息を吐く、その様子を見ていたエリスがクスッと笑う。
「どうだった?裁きを受ける気分は」
「いいものじゃない事は確かだな……というか、ここまで凝る必要ないのに」
「馬鹿、お前が無茶な作戦と出撃を切り返すからだ」
先程までこの執務室で開かれていたのは簡易法廷、エリスが“基地に帰ったら覚えておけ”と言ったのはこの事だった様で、やたら凝っていた。
これを機に本格的にガーディアンの組織内法を整備するのもいい、組織も大きくなったが、その組織の行動が制限されているのが簡素な法と言うのも中々ぞっとする。法務部や憲兵を立ち上げる必要もありそうだ。
西の砂漠から帰還して3日目、ようやくこの基地に帰って来られた。あの砂嵐の転生者から全員生還出来たのはかなり運が良かった。
墜落したブラックホークは爆破の後に西部方面隊主導の回収チームが組まれ、回収出来るものは回収され、回収出来ないと判断されたものはその場で徹底的な破壊措置が取られた。
同時にあの無人の町の調査も行ったが、多くの事は分からず未だに調査中だ。
因みに今回の作戦で搭乗機のMH-60Mを失ったウォルコットらのヘリクルーは、機体側面に61と書かれた真っ黒な新品のMH-60Mを俺が召喚し受領、愛機が戻った彼らはそれはそれは喜んでいた。
機体や装備を喪失しても、召喚すればノーコストで元に戻るというのはかなり便利なものだ。
「……あ、そうだ、報告書があったんだ」
俺がこの基地を留守にしていた間の報告書が幾つかある、施設管理科などからの改善の提言書、主計科からの軍拡計画書、評価試験隊からの評価報告書に仮想的部隊の規模拡張提言書、そして驚いたことにギルド組合からの手紙や他のギルドからの合同訓練の提言まで来ていた。
とりあえずそれらは後で考えるとして、俺がまず真っ先に手を付けたのは、西部方面隊の士官教育の報告書だった。
士官教育は通常と同じく、13週間の基礎教育課程、5週間の士官教育課程の後、6週間の実習があり、全ての履修に半年を要する。
現在基礎教育課程6週間目、こちらもライフルを用いて実践射撃などの“銃による戦闘”を学んでいる所だろう。ガーディアンの戦闘は従来の異世界の戦闘とは全く異なり、銃を使って集団先頭を行う。一騎当千の戦闘や魔術師による個人能力主義の戦闘から集団戦闘主義への移行、当然ながら教官達への質問も増えているらしい。
「……西部方面隊か、彼らも良くやっているな」
「エリスもそう思うか?」
「あぁ、彼らを食堂で見かけることもあるが、皆いい顔をしている。ガーディアンの貴重な戦力になるぞ、本部部隊に引き抜きたいくらいだ」
「なるほどな……」
引き抜き、というエリスの言葉は提案ではなく、独り言の類だろう。
俺も西部方面隊から人員をいくらか引き抜いて本部部隊の戦力に当てようと考えたが、彼らは彼ら独自の経済体制や地域コミュニティを維持している。それを削ってまでこちらに引き抜く事は正直言って好ましくないと結論付けている。
もちろん、実習の後に配属先の希望を受け付け、この本部勤務になりたいという者が居たら話は別だが。
「……教育は割と順調に進んでいるみたいだな……後西部方面の関係書類は……っと」
「これじゃないか?」
エリスが報告書の束の中から探り出した分厚い封筒が2つと普通の厚さの封筒が1つ、封筒には“救出捕虜の処遇に関する報告書”と纏められてある。
捕虜はバイエライド郊外に設営された簡易仮設住宅で少し休んで貰った後に、各々の故郷へと返した。王国軍の捕虜は王都に戻る馬車を手配し、公国に居られなくなった者はバイエライドやジャララバードで新たな居場所を見つけた。王国北部から連れて来られた者も多いらしい、王国北部は山岳地帯となっていて、冬になると雪で閉ざされる。まだ夏の間に帰すべきだという結論に至り、帰っていったという。
捕虜の大半は栄養失調、そして何らかの疾患を抱えていた。皮膚病や不衛生からくる感染症、全員衛生兵と軍医の治癒魔術で完治したものの、後少しでも脱出が遅れていたら俺もそのようになっていた可能性が高い。
それから、気になるのは収容所に収監されていた種族だ。
最も多いのはやはり獣人、それからドワーフやエルフなどの妖精種族。これらは種族迫害により収監された者達だろう。公国の理念や政策はもう知っている、彼らはその被害者だ。
少数ではあるが人種族もいる、こっちは公国内で反公国活動をしていたり、亜人を匿ったり逃亡ルートを確保していた者だろう。
「公国は何を考えてるんだろうな……」
「人種族だけの国を作る……ねぇ……一応情報部に探って貰ってるけど、人種族だけの国を作る動機が推測でしかないからな……」
「今は推測でも構わない」
エリスはそういう、どうやら聞きたいらしい。俺は情報部が提出してきた公国に関する調査書を取り出して表紙を捲りながら話す。
「奴らは転生者の事を“神に選ばれし者”って呼んでる、国家運営にその“神に選ばれし者”とやらが関わってると見ても差し支えないだろう。あのニルトン・シャッフリル銃を作っている事から恐らく軍事方面でもかなり深く関係してるな」
「銃を始めてみた時は驚いたが……ヒロト達の世界は本当にあんな兵器で戦争してるのか……」
「あぁ」
銃は“殺しの効率化”には最適だ、剣の腕が無くとも弓を引く力が無くとも魔術の才能が無くとも、自分より力の及ばない上位の存在を殺し得る。
それを一国の軍隊が仮に全ての兵士に与えたとしたら、周辺諸国のパワーバランスは根底から覆る。
「兵器や戦術もそうだが、かなり根深い所まで転生者が関わってるな」
「そうでないものまで……公国兵が“神に選ばれし者”を自負するくらいだもんな……神に選ばれているのは殆ど人種族だから、人種族以外は神に選ばれていない……という事か」
「ご明察、多分あそこまで人種族に拘るという事は転生者は人種族しかいないと考えても良いだろうな。だから他種族は迫害する、典型的な選民思想だな……」
悍ましいな……とエリスは溜息混じりに独り言のように言う。しかし統一民族や選民思想と言うのは思わぬメリットを生む。
「だがな、人種族で国家を統一するってのはこれはこれで利点があるな」
「どういうことだ?」
「人種族という単一種族に絞ってしまえば、国家というシステムを組み上げた時に運営が楽なんだ。妖精種族や獣人の事を考えなくていいし、他種族の主義主張をほぼ完全に排除出来るからな」
目から鱗だったのか、それとも戦慄したのか、綺麗な碧い目を丸くするエリス。国内の種族を人種族に限定してしまえば種族差別は生まれない、そういう意味では確かに国家の運営は楽になる。国家の暴虐の様に見えて、実は平和な国になるのかもしれない。
「……だからと言って、他種族を迫害するのは既に時代遅れだ。他種族狩りなんてもう100年以上前の話、私だって文献でしか見聞きしたことが無いくらいだぞ」
「昔はあったのか」
「……あぁ、実は100年以上前は種族同士は相容れない存在だった、だがそれが100年前に終わった。100年前の思想を持ち出すとは、時代遅れも甚だしい」
……エリスの話には興味があるな、他種族狩り、後で教わろう。情報部も何かヒントになるかもしれない。
「……なるほどな……どっちが国家の本音なのかは知らんし、それともアイツが言ってた“シェリス・ハーキュリー”とやらにはまた違う思惑があるかもしれんな」
それが何だかは分からないが重要な要素になって来るかもしれない。
「ま、俺に取っちゃどうでもいいがな」
「……そうか?」
目の前にいるのがエリスだからという事もあって、ついつい本音が漏れる。
「考えてもみろ、ガーディアンの最初の理念を」
「自衛、だったな。こちらに火の粉が降りかからない限り……ってところか?」
「そうだぞ、俺達は自衛の為に力を持った、そしてその力をちょっと分けているだけだ。俺にとっては公国が勃興しようが滅亡しようが、心底どうでもいい」
俺自身、公国に対するスタンスはそんな感じだ、克也の奴、死ぬ間際に「俺達が作る未来をあの世から見ている」とかそれっぽいことを抜かしていたが、俺自身未来を変えようとか、世界を変えようとかって気は全く無い。
残念だったな、こんな奴に倒されたってアイツ今頃あの世で悔しい顔で地団太踏んでるに違いない。
ただ降りかかる火の粉は、払うだけだ。
「あとは……っと……」
公国の調査は情報部に任せる、俺は他に仕事が無いかと思いながら書類を漁る。
「……そういえば、王女殿下が視察したい、とか言ってなかったか?」
「……ぁー、言ってたな。来てるかな……?」
そう言えばそんな事を言っていたなと思い出す、今の今まですっかり忘れていた……
「視察の受け入れ準備をするか、王女殿下はもうベルム街にいらっしゃるのかな」
「王女殿下の騎士団の斥候はベルム街に帰投しているらしい、明日には到着するだろうな」
「分かった、渉外科に日程調整の交渉に行って貰おう。視察部隊の選定とか、前回作戦の時の映像編集とか……やることが一気に増えたな、どれから手を付ければいいやら……」
「とりあえず落ち着こうか、エイミーを呼んでくる、紅茶でいいか?」
「あ、あぁ、すまない、頼む」
エリスがエイミーを呼びに行く間にどこから手を付けていいかを考える、朝からとなるとプログラムを組んだ方がいいだろう。駐屯地祭形式で行くか、それとも普通に視察で行くか……
「失礼します、紅茶をお持ちしました」
色々考えている間にエイミーとエリスが戻ってきた、トレーにはアイスティーの入ったポットとカップが3つ乗っている、エリスが誘った様だ。
「エイミーも一緒にいいよな?」
「もちろん、ありがとう、お疲れ様」
「僭越ながら、ご一緒させて頂きます」
俺達はソファに場所を移し、一緒に紅茶を楽しむ事にした。
西の砂漠から久しぶりにこっちに戻って来てゆったりした時間を過ごす、砂漠の町では何が美味かったとか、生活する上で何が不便だったとか。こっちに帰って来てから向こうの暑さに慣れてしまってこっちが涼しく感じるだとか、そんな他愛もない、仕事抜きの雑談をする。
話題が落ち着いたころにエリスが切り出した。
「それで、どういうスタイルにするんだ?視察は」
「閲兵や訓練検閲って訳じゃないからな、視察だからそんなに派手な奴じゃなくても良いだろう。ガーディアンの日常訓練を見せればいいかなって」
午前から始まるのであれば、組織説明、部隊説明、基地内に視察、昼食、射撃訓練の視察に体験搭乗……出来るのはそれくらいだ。
「総火演とか航空祭とは違うからな……大々的にやる必要はないだろ」
「ソウカエン?」
「俺の居た国ではな、年に1度、使用期限の切れそうな弾薬の処分も兼ねてかなり大きな訓練検閲をしてたんだ。総合火力演習で総火演、普段の任務だと別の兵科がどんな役割をしているか分からないから、それを知る目的もある」
なるほどな……とエリスは頷く、自分が普段その兵科に居ると、別の兵科の任務は知っていてもどのような働きをしたり、どのように連携を取ったりするかはよく知られることは少ない。
そう言った意味で全兵科の連携訓練を大規模に行う、これが総合火力演習だ。
「ガーディアンでもその内やりたいな、私も機甲科や砲兵科がどんな仕事をしているかあまり知らないし」
「私も兵科違いのお仕事を見たことは少ないですし、いい経験になるかと」
エリスもエイミーも賛成してくれる、意外な好感触、これはいつか実現しそうだ。
「そうだな、そのときは王女殿下も招こう、きっと驚かれる」
その前に、ガーディアンをしっかりと見せておかなければならない。
やるべきことが頭の中で整理されていく。
「じゃ、仕事にかかろう、渉外科には骨を折ってもらう事になるが、俺達もやることが多くなるぞ、エイミー、紅茶ご馳走様」
「お粗末様でした」
また新しい仕事が増えたな、作戦とはまた違った事で忙しくなるぞ。そう思いながら俺は渉外室を訪ねた。
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ベルム街
西へと伸びる街道上に位置し、ここから北の王国北部や大陸奥地へと進んでいける陸運の要衝。最近この町の運河の整備計画も上がっていて、今まで細かった運河の物流も盛んになることが見込まれている。
「この町は物流と農業で更に豊かになっていくな……嬉しい限りだ」
本心から嬉しそうにそういうのはこの王国の第3王女、アレクシア・ルフス・グライディア殿下だ。
西の砂漠から帰還した彼女の傍らにいるカイ・ライノルトも、全くですと言う風に頷く。
レムラス伯爵の屋敷の客室を間借りし、事務作業を行っていた。
レムラス伯爵とワーギュランス侯爵の打ち立てた運河整備計画、現在の運河をより広くし、水運を発展させる計画だ。
これにより名実共にこの町が“西の物流を支える街”となる。
その整備計画にいろいろと考えを巡らせていると、部屋のドアがノックされる。
「失礼します、殿下、ガーディアンの担当者がお見えです」
「あぁ、今行こう」
ガーディアンの基地を視察する予定だったな、その日程の摺り合わせだろう。アレクシアはそう思いながら応接室へと向かう。
「初めまして、ガーディアン渉外科長のリリー・サイマルスです」
リリーと名乗った女性、彼女が交渉担当なのだろう。
「グライディア王国第3王女、アレクシア・ルフス・グライディアだ、座ってくれ」
着席を促すと、彼女の方から口を開いた。
「王都から遥々お越し頂きありがとうございます、国境では大変お疲れ様でございました」
「こちらの視察を受け入れて貰って誠に感謝する、日程の摺り合わせだな?」
「その通りでございます、まずは……」
会議は恙なく進み、準備期間も含めて3日後という事になった。