第161話 バスティーユ収容所
ストルッカ視点
スーパー64のコールサインを持つヘリからロープを収容所の屋上へと垂らす、耳元のヘッドセットから流れてくる通信によれば、どうやらデュラハン1-1と1-2の降下地点が変更になるらしい。
俺達は作戦通り変更なしだ、このまま続行する。
「屋上に敵多数!射撃に注意!」
ガンナーのグレアム・ハイデッガーが注意を促しつつ、ドアガンとして装備されているM134Dミニガンを射撃、毎分6000発近い7.62㎜NATO弾がばら撒かれ、屋上を掃射していく。
スーパー65も分隊を降下させながらミニガンを射撃、屋上へつながる階段から湧いてきた警備兵を文字通り木っ端みじんにしていき、ファストロープで降下を終えた狙撃分隊の各分隊から攻撃を開始。
手にしているMCXやM4、SR-25でミニガンの撃ち漏らしを片付けてくれている間にデュラハン1-3も降下、狙撃分隊と合わせて12人の降下を確認したヘリはダウンウォッシュとローター音を残し離脱、ミニガンによる上空援護に入る。
俺はMAGPUL CTRストックを肩に当て、暗視装置の白黒の視界の中で」引き金を引いた。
引き金を引くたびに、彼らから言わせれば“光の鏃”が鎧や兜をいとも容易く貫く。
ヘリのダウンウォッシュが過ぎ去る頃には屋上を完全に制圧、ガーディアン以外はバリスタと警備兵の死体だけが残った。
「デュラハン1-4、続け」
ちらりと声の方を見ると、第4分隊の分隊長、スティール・ライン准尉が階段から建物内へ降りていく。
あの分隊長、ヒロトさんと同じくこの間まで収容所に居たのに元気だな、と思う。すでに回復したのだろうが、彼が死傷しない様に祈る。
「ロープとC4用意」
俺の号令に了解と返した各員が、バックパックから加工したC4爆薬とデト・コード、雷管などを出す。
俺は屋上に打ち込まれたバリスタの杭の強度を確かめる、人間が2〜3人ぶら下がっても大丈夫そうだ。
仲間のバックパックからロープを出し、その杭と保険の為に城壁上部の胸壁へと巻いて固く結び、カラビナをロープにかけ軽く引いて締める。
懸垂降下装置にロープを絡め、安全を確認する。
これから行うのは“ラぺリング降下”と呼ばれる、高所から降りる降下方法の一種だ。ラぺリングで3階へ降りて壁に爆薬で穴を空け、そこから侵入し内部を制圧する。
囚人の収容されているのは正方形でいうところの“辺”の部分、“頂点”に当たるところは階段か警備室になっているので囚人を巻き込む心配は無い。
ラぺリングを前提としている為、第3分隊の隊員は全員ラぺリング用ハーネスを付けている。
爆薬や貼り付けるダクトテープ、コード等を持ち、取りやすいポーチやポケットに入れておく。
「ハーネスよし、環よし、爆薬よし」
「準備良し」
隣で準備をしていたトミーも降下用意が出来た様で頷く、ライフルを後ろで背負い、収容所も屋上から下を覗き込む。
「高さ約15m、3階部分の窓だ」
「了解」
トミーも真剣な表情で降下していく、3階の小さな採光窓のところまで何度か足を付きながら降下。
ロープを絡ませてブレーキをかけ、両手を放してもフリーになるように調整する。宙ぶらりんになったら復帰出来ないので気を付けつつ、壁にC4を張り付ける。トミーは起爆装置を準備していた。
壁の採光窓のすぐ下に爆薬を大きな円にセット、2人が通れる大きさのが空けばいい。
「ケーブル繋げ」
「了解」
爆薬と起爆装置をケーブルで繋ぎ、屋上で待機している班に伝える。
『了解、退避を』
無線でルイズからの指示、爆破の被害範囲から退避しつつベルトのポーチからMk.13BTV-ELフラッシュバンを取り、レバーを押さえたままピンを抜いて待つ。トミーも同じようにフラッシュバンの投擲準備に入った。
『3秒前、2、1……』
ドン!
塔の壁が派手に吹き飛び、大穴が空くと同時にフラッシュバンを投げ込んだ。
炸裂と同時にホルスターからP226を抜き、振り子の様に突入する。片手で構えながら着地するとロープから手を離し、近接戦に特化したC・A・R Systemの構えで室内をクリアリングする。
爆破した塔の内側は階段ではなく幸運にも警備室だった様で、C4の爆破で大部分を巻き込み、不幸にも大半の警備兵が戦闘不能になっていた。
運良く生き残った警備兵を優先的に始末し、それが終わると戦闘不能な警備兵にP226で止めを刺していく。見た目死んでいる奴も、死んだふりをしている可能性があるので頭に2発。まだ呻き声を上げている奴も頭に9×19㎜パラベラム弾を撃ち込んで黙らせる。
「屋上班、制圧した、入り口クリア」
『了解』
制圧完了、カラビナを外し、装弾数が少なくなったP226のマガジンを交換する。
ベルトのフラップ付きの方のマグポーチから満タンのマガジンを抜き、交換、残弾の少なくなったマガジンは抜いたほうのマグポーチに戻してフラップを閉じておく。
P226をホルスターに戻し、スリングで身体に密着させていたM4を展開、室内の掃討を改めて確認している間に分隊員が次々とラぺリングで降下、突入してくる。
「屋上は完全に掌握、他の塔のからの攻撃と下からの攻撃を押さえてます」
最後に降下してきたルイズがカラビナを外しながら報告、その通りに外からは建物内とは違い、散発的な発砲音が聞こえて来た。狙撃部隊は減音器をライフルに着けているので、そのように聞こえるのだろう。
「よし、ここから中に入る。1-3Aは左回りに、1-3Bは右回りに制圧開始だ。ルイズ頼むぜ」
「了解」
扉を開けてクロスオーバーの要領で施設内に雪崩れ込む、恐らくは爆音で様子を見に来た警備兵と鉢合わせ、クロスボウの引き金が引かれる前にダブルタップで頭を撃ちぬき、警備兵の脳をぶちまけさせる。
銃声に気付いた警備兵の反撃体制が整う前に引き金を引く、この世界に存在しない筈のライフル弾は防弾でもない警備兵の兜を容易く撃ちぬき、先程の警備兵と同じ姿へと変貌させる。
4人が廊下でダイヤモンド隊形になりながら角のドアへ取りつく、ハンドサインで引き戸であることを伝えると、SAW手ウェンディがドアの取っ手に手をかける。
ここから先は収容区画だ、敵と囚人の区別をつけての攻撃が重要になる。
俺はウェンディに頷いて合図すると、彼が開けたドアから中へと入っていった。
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エリス視点
デュラハン1-2と共に角へと向かう、ここから先デュラハン1-2は階段で2階に上がり、私達1-1Bは施設を反時計回りに制圧していく。
階段のある塔から1-2は上階へ上がっていく、私は班を率いて1階の囚人が収容されている区画のドアの前へ。正方形の施設の“辺”に当たる区画だ。
クレイが特異魔術のマフラーを使い扉を開け、デュアルスイッチでハンドガード上部のLA-5で照準を合わせる。
ヒロトの世界の夜間戦闘技術は凄まじいものだ、今までの夜間戦闘は片手に松明、片手に剣を持って戦闘をする、もしくはそもそも戦闘を避ける、というものだった。何しろ夜は視界が利かないのだから。
しかし、ヒロトの持ち込んだ暗視装置は暗闇に視界を与え、夜の戦闘が劇的に変化した。
スイッチを押すとレーザーが公国兵に真っ直ぐ伸びていき、引き金を引くとレーザーの通りに弾丸が飛ぶ。
弓矢より遥かに貫通力の高い5.56㎜NATO弾は鎧を貫き、倒れこむ警備兵に更に打ち込んでいく。
胸と頭、最低でも2発を撃ち込み、確実に止めを刺す。
訓練に訓練を重ねた反射、その成果が出ていると今感じる。
銃声に驚いて、廊下の両側の牢屋に入れられている囚人たちが悲鳴を上げる。固い壁に跳ね返り跳弾しない様に、正面の敵を撃ち続ける。
「牢の奥へ!」
「下がって!」
エイミーやアイリーンが声を掛け、そして後は見えないが恐らくは手ぶりを使って囚人たちを牢の奥へと引っ込ませる。
クレイと相互に援護しつつ前進しながら射撃する。
不可視のレーザーが突き刺さり、ポイントが合うたびに引き金を引く。石造りの床に空薬莢が落ち、奏でる澄んだ金属音は次弾の銃声に掻き消される。
「く、くそっ!」
「侵入者だ!銃を持って___」
奥の方から銃やクロスボウなどの飛び道具を持ってくる敵が居るが、そいつらは最優先目標だ。近い奴より先んじて銃口を向け、モノクロの世界の中で真っ直ぐ伸びるレーザーが敵と交わった瞬間に引き金を絞る。
指先の感覚で、引き金を素早く、しかし丁寧に絞る。
暗闇の中で敵がこちらを見つける前に敵を仕留めていき、糸が切れた操り人形の様に敵が崩れ落ちるのを見届け、剣や槍を手に突進してくる敵も倒れて完全に動かなくなるまで撃ち続ける。
引き金を引いた時に反動の感覚が違った、恐らく弾切れを起こしたのだろう。
M4に安全装置を掛け、右腰のホルスターからP226を抜く。
狙いは付けない、銃口を敵の方に向けて引き金を引く。
剣を躱し、槍の間合いに入る前に敵を遠ざける意味合いが強い。
「リロード!」
「カバー!」
アイリーンがカバーに入る、アイリーンの後ろに入ると同時に彼女は射撃開始。
私は拳銃をホルスターに戻し、M4を再び持ち上げる。ベルトのHSGIのシングルTACOマグポーチに収まっていたP-MAGを抜き、空のマガジンと交換。空のマガジンは展開していたマグポーチに戻す。
ボルトストップを押しボルトを前進させて、空になっていた私の銃は戦う力を取り戻す。
「レディ!」
「クリア!」
装填終了と共にアイリーンが制圧をコール、隣を進んでいたクレイは拳銃に持ち替えており、私と同じように拳銃をホルスターに収めるとライフルをリロードする。
「こちらデュラハン1-1B、制圧した、次の棟に向かう」
『1-1A、了解した。こっちも角のタワー内を制圧した、最後の棟の制圧に架かる、斜線方向には出るなよ』
「1-1B、了解、これからタワーに出る」
無線で1-1A___ヒロトの班に連絡すると、アイリーンの援護位置につく。
ドアに軽く触れチェック、鍵がかかっているのを確認すると、先程と同じくクレイの特異魔術でドアの鍵を破壊して開け、素早く突入する。突入手順も訓練に訓練を重ね、仲間と共に習得した成果だ。
塔の中に突入、レーザーを警備兵のバイタル___胴体部分にピタリと合わせ、引き金を引く。
もちろん突入しながらの射撃は動きを止めない、止まってしまうと後続が閊えてしまい、強力な魔術やクロスボウなどの攻撃を集中されて各個撃破されてしまうからというのは剣を扱っていた頃からの室内戦闘のセオリーと一緒だ。
その頃と違うのは、指先だけで効率良く敵を殺すことが出来る“銃”という武器と適した装備が手元にあるという点だ。
剣士が剣を振るう前に、銃兵が引き金を引く前に撃ち殺す。5.56㎜NATO弾の前には、鎧も無力だという事を思い知らせる。
「タンゴダウン、クリア」
タワー内を制圧、この空間に落ちている物は敵の血と武器と死体、そして空薬莢だけになった。
部屋には剣や銃が置いてある机が1つ、収容区画とは別の方向に扉が1つある。
階段前のプレートには“女囚棟”と書かれている。
「ここが女囚棟か……」
「ヒロトさんたちを待ちますか?」
エイミーの提案に、私は少し考える。
中に居るのは女囚、そしておそらくは……
それを考えると、この中に男性を入れるのは得策ではない、女囚達も、そんな姿を見られたくは無いだろう。
だが4人で一気に……というのも、また得策ではないだろう。ならば……と思い、無線のスイッチを入れる。
「1-1Aへ、こちら1-1B、女囚棟を発見した、突入するが、タワーの確保を頼みたい。そちらの制圧が完了次第、来てほしい」
『こちら1-1A、了解した。制圧は完了、今からそっちに行く。撃つなよ』
「了解した……1-1Aが来る、撃つなよ」
「了解」
「了解」
ヒロト達の到着は早かった、「カミングイン」の声に「カムイン」と返し、私たちが入って来たのと反対のドアから入って来た。
「随分早かったな」
ヒロトがそう言う、私もこんなに早く見つかるとは思っていなかった。
そう思いながらプレートキャリアの取りにくいマグポーチからベルトのスピードリロード重視のマグポーチへとマガジンを移す。
「そっちこそ早かったな、1階は完全制圧ってことだな」
建物を1周したことになる、上階から降りてくるものが居なければ1階は完全制圧したことになるだろう。
「ヒロトはバックガンを、背中を守ってほしい」
「了解、気を付けて。……C2、こちらデュラハン1-1、1階制圧完了、女囚棟を発見。これより女囚棟の制圧に入る」
ヒロトがC2を通して本部にそう報告を入れている、再び私がポイントマンだ。
扉をソフトチェック、鍵は無いが押戸らしい。こちらから押すとドアのヒンジがギィ……と鳴り、下へと続く階段が目に飛び込んでくる。
ワイヤートラップの類は見当たらない、そのまま降り、進んでいく。
「侵入者だ!」
「処刑場への道は塞がれたぞ!」
「防御に入れ!」
そんな声が階下から聞こえてくる、待ち伏せされているのだろう。
ゆっくりと、足音を立てない様に階段を下りていく。暗視装置の白黒の視界の中、IRのレーザーがまっすぐ伸びる。
恐らくは階段の下階からの光を暗視装置が拾っている、その光の向こうから影が薄っすらと見える。
「侵入_」
警備兵をレーザーで捉え、引き金を引く。生み出される銃声と反動、5.56㎜NATO弾は罵声をあげる警備兵を貫き、反対側へと血しぶきを噴出させる。
倒れこんだ敵の頭に止めの1発を叩き込み、更に先へ進む。
階段を曲がれば待ち伏せているだろう、ハンドサインでフラッシュバンを指示。後ろにいたアイリーンが私のプレートキャリアの背中のポーチからMk.13BTV-ELフラッシュバンを取り出す、一旦それを私の視界に入れる様にして、私が小さく頷くとピンを抜いて踊り場の向こう側に投げた。
カラン……と石畳の階段を転がり、1.5秒ほどの時間をおいて炸裂、凄まじい光と音が漏れ出して敵の目と耳を潰し、混乱から立ち直る前に踊り場の向こう側へと一気に降りる。
レーザーが警備兵に当てられから射撃までは1秒もかからず、警備兵のバイタルに2つの風穴が空いて倒れこむ。
もう一人の警備兵も私の後ろに着いていたアイリーンが横に展開、始末したようだ。
私が撃った警備兵はまだ生きている、苦しいだろう、今楽にしてやる。止めに頭に1発を撃ち込むと、警備兵は二度と呼吸をすることも考える事も無くなった。
扉の向こうにもまだ数人の警備兵が居るのか、声が聞こえてくる。女性の悲鳴と警備兵の怒声、ヘッドセット越しに聞き耳を立てる限り、ここには数名。
ソフトチェック、ここにも鍵がかかっている。警備兵の鍵を漁っている暇はない。
振り向いてハンドサインで3番目に居たクレイに鍵を壊すように指示、クレイは頷くと赤いマフラーを伸ばし、ドアの隙間に差し込んで静かに
鍵を切断する。
ゆっくりとドアを開ける、やはり待ち伏せされていた。ライフルを掴まれて短剣を注そうとしてくるが、私の武器はライフルだけじゃない。
剣を刺そうとしてくる手を押さえながら素早くホルスターから拳銃を抜き、狙いをつけずに敵の身体に押し付ける様に引き金を何度も引く。力が弱まったところで中に押し入るように押し退け、頭に止めを刺してこの世から去ってもらう。
奥の方から悲鳴が聞こえてくる、収容者の女性たちの声だろう。
この警備兵の奥にいた警備兵もアイリーンが撃ち抜くと入り口はクリア、ホルスターに拳銃を戻しながらM4に持ち替えて再び構え、中へと進入する。入り口から右へ延びる通路が恐らく牢屋だろう。
カッティングパイで角をクリア、後ろのアイリーンがカバー位置に入り、今度は私の後ろにはクレイが入る。クリアできる限界で止まると、一気に突入し、敵より先に引き金を引く。
レーザーが暗視装置の視界を舞い、5.56㎜NATO弾が引き金を引く度に銃声を奏でて命を奪う。敵の身体に食い込む弾丸を、敵の鎧は食い止めることが出来ない。
突入から10秒も経たない内にこの区画の警備兵は全滅、目標確保の通信を入れる。
ここの中も独房の様に鉄格子で仕切られた小さな部屋が通路の両脇に並ぶ、部屋は“行為”を行えるようにか地上の独房よりは広く、収容者は20から30人程で、どれも少女だった。
公国兵への抵抗を強く示す目をした少女、諦めた様に虚ろな目で股から白濁の汁を垂れ流す少女、恐怖に泣く少女……
収容所送りにされた妙齢の女性の用途など、兵士の慰み者と相場が決まっている。
エイミーが女囚達の悲鳴を抑えるために落ち着かせ、クレイはまだ中に居た方が安全だからと言いながら全ての鍵を壊しにかかる。
「……想像はしていたが、酷いものだ」
倒した警備兵の頭に止めを刺しながらそう呟きながら、女囚達の様子を檻の外から見る、避妊薬は使われていたのか、妊娠している者は居なかった。
「どうします?」
私に声を掛けたのはアイリーンだ、暗視装置とヘルメット、似たような装備だが、その程度で見分けがつかなくなる筈がない。
「女性たちの服はどうします?、このまま帰りのヘリに載せるわけには……」
アイリーンの言う通り、彼女らは全裸だ。何か着るもの……最低でも大きめのタオルを用意しなければならない。
流石に全裸のままヘリには載せられないし、基地にも戻せない。女囚達もこんな姿を見られるのは嫌だろう。
「備蓄倉庫からタオルか何かを拝借しよう、アイリーンとクレイはこの場の確保を。エイミー、ついてこい」
「了解」
私はエイミーを連れてか言ってきた階段を上がる、足元が確認できないほど薄暗いので、暗視装置はまだ必要だ。
「ヒロト、カミングアップ」
『了解、カムアップ」
誤射されない様に声を掛けてから地下から上がる、ヒロトは上で地下への入り口をしっかり守っていたどころか、死体の数がいくつか増えていた。
「早かったな」
「お陰様で」
ヒロトに訓練で鍛えてもらったお陰だ、と意味を込めて返す。異世界の戦術が無ければもっと時間がかかっていたし、犠牲者も出ていただろう。
「下にタオルと毛布が必要だ、30人分」
「倉庫にあるはずだ、さっき制圧してきた、手伝いは必要か?」
「頼む、エイミー、行くぞ」
「ブラックバーン、一緒に来い。グライムズとヒューバートはこの場を確保」
ヒロトは二人を残して倉庫に共に向かう。
タオルと毛布を持ってくるまでそう時間はかからず、各フロアから制圧の報告が上がり始めるのにそう時間はかからなかった。