第159話 夜中のFOB
バイエライドFOB 03:00
誰もが眠る深夜であるにも関わらずFOBは明りに包まれている、航空機格納庫からはヘリが引き出され、待機所になっている格納庫の片隅で隊員が戦闘準備を整える。
机の上には5.56×45㎜NATO弾や7.62×51㎜NATO弾、手榴弾などの弾薬が山積みにされ、P-MAGが大量に置かれている。それぞれ装備を身に着け、マガジンに弾薬を詰め、ポーチに手榴弾を入れている。
「新しい弾薬箱開けて」
「そっち弾薬足りてるか?」
「手榴弾くれ、フラグの方」
「はい、無線機のバッテリーどこだっけ?」
「そっちだ」
そんな声が飛び交いながら出撃準備を進めている、俺は標準の戦闘服であるG3コンバットシャツとコンバットパンツを身に着けて、ブーツはMERRELL MOAB2-MID XCRを履いた状態で戦闘装備を整える。
俺のプレートキャリアはJPC2.0、プレートはドラゴンの鱗を加工し従来より薄く軽いが防御力は段違いに高い"ドラゴン・アーマー"と、衝撃吸収力に優れたソフトアーマーをセットにしたものを入れてある。
背面をポーチZIP-ONパネルが取り付けられており、3つのポーチの内2つは3連フラッシュバンポーチだ。
その内の4つに机の上からMk.13BTV-ELフラッシュバンを手に取った、ポーチの中にフラッシュバンを入れ、蓋を閉じる。
右側カマーバンドの後方に着けているラジオポーチにはAN/PRC-152無線機を入れ、ケーブルを通してPTTスイッチを右胸へと取り付ける。
ユーティリティポーチの中は照準器や暗視装置、無線機のバッテリーを入れておく、使うときは背中から仲間に取ってもらうようにして置くので優先順位は比較的低めの物だ。
可能であれば手に届くところにユーティリティポーチがあるのが望ましいが……動きが制限されるので俺は付けたく無い。
カマーバンド右側の手前側にはメディカルシザーとブリーチングバー、左側後方に取り付けられたポーチにCAT止血帯を入れておく。
JPCを身に付け、フロントフラップにカマーバンドを挟み込んで固定、マグポーチはフロントに3つ、カマーバンド左手側に1つ、それぞれ5.56×45㎜NATO弾を満タンにした黒のP-MAGを入れた。
アドミンポーチには今回の作戦に必要な収容所の地図などすぐに取り出せる物を入れた。
ベルトはRaptor TacticalのODIN Mk.3、MOLLEがレーザーカットされた細いベルトで、ファーストラインはつねに身につけているので弾薬はもう入っている。
左腰前側に取り付けられているATS ダブルピストルマグポーチは前側はスピードリロードの為に蓋が外されており、後ろ側はヘリボーンの際にマガジンが脱落して1度にマガジンを無くすことが無いように蓋は閉じてある。
マグポーチにはP226のマガジンが入っている事を確認、マガジンには9mm拳銃弾が10発込められている。その後ろはITW FASTマグポーチで、こちらにも25発装填したP-MAGが入っている。
最近のマガジンは進化していて満タンでもスプリングがヘタることは無いというが、それでも念のため5発、ライフルとハンドガンのマガジンから弾を抜いてある。
一層の事普段ファーストラインに入れている用のマガジンと作戦に使う用のマガジンを使い分けた方がいい気がするな、と思いながら抜いてあった弾薬を5発、込め直してからそれぞれポーチを戻す。
メディカルポーチの中には、試作型の「携行ポーション」が入っている。
傷口の回復や簡易的な輸血、毒に対する血清、魔力の回復を目的とした魔術薬で、いわゆる"回復アイテム"として市販されている物だが、容器がガラスの為に割れやすいのが欠点だった。
一度の回復に十分である100ml程がペットボトルに詰められ、試作型として提供されている。
今回初めて実戦投入されたものだ、今後メディカルポーチの中身はこれに置き換わっていくだろう。
メディカルポーチの隣には念の為持っている止血帯、それからM67破砕手榴弾が入ったポーチで、右腰のSafariland 6378ALSホルスターにはP226が収められている。
ヘルメットはこちらもドラゴンの鱗を加工し、従来のFASTヘルメットよりも軽量だが防御力に優れる"FASTドラゴン"ヘルメット。セットアップは、シュラウド、マウント、暗視装置のセットに、カウンターウェイトポーチ、IRストロボ、ARCアダプターに接続されたCOMTAC3ヘッドセットと標準的な装備だ。
暗視装置は今まで複眼型のGPNVGを使っていたが、訓練でCQBの際にその大きさが仇となり嵩張ると言うのがわかり、双眼型のPVS-15に逆に乗り換えた。
またこのPVS-15も従来型とは異なる少々特殊なものだ。
ヘルメットの後ろ、PVS-15のカウンターウェイトが入っているRaptor TacticalのSentinelカウンターウェイトポーチには、黒地に白文字、ボストントラフィックのフォントで新たなコールサイン「DR11」と書かれたパッチが貼られている。
今回の作戦に当たって、部隊コールサインを一新、部隊にも名前を付けた。
ガーディアン第1歩兵小隊、部隊名は「ナイトフォース」、コールサインは「デュラハン」。
夜間の特殊作戦を得意とするNightと、姫騎士物語で姫を救出するKnightを掛けたものだ。
パッチは夜を駆ける騎士、全員パッチはコンシャツの肩のベルクロスペースに付けられている。
ただ、今回助けに行くのは残念ながら姫ではないが……
「集合」
了解、と答えた隊員数名がパラパラと集まり始める、補給や調整作業の手を一旦止め、分隊ごとに集合する。。
「作戦を再確認する!」
集合した隊員を前に俺は声を張り上げる、乾燥したバイエライドの空気は喉に堪えそうだ。
「30分後に出発!目標は50km西のバスティーユ強制収容所、作戦内容は収容者の救出!先鋒として俺達がまず降下する!続いて機関銃分隊と迫撃砲分隊が広場に降下!人質搬出ヘリのLZを確保する!人質を解放したらそれぞれヘリに乗って撤収!基地に帰投する!」
「了解!」
俺の声に小隊が応える、続いて小隊長の健吾が声を上げた。
「近くには翼竜の屯営地があるが気にするな、空の敵は戦闘機が片付けてくれる!各フロアを制圧し、必ず全員で帰還しろ!」
「了解!」
深夜であるにも関わらず、彼らも負けじと元気よく声を張り上げる。
健吾を始めとする小隊本部のメンバーは基地に残り、救出した収容者の整理を行うのと同時に不測の事態が起こった場合のQRFとして機能する。
「では、出発まで待機とする。時間になったら号令をかけるので、それぞれ待機!」
その声と共に全員がぞろぞろと持ち場に戻っていく、弾薬やハイドレーションの水の補給がまだの隊員はそれらの補給し、無線機の調整がまだの隊員は作戦開始までに終わらせる。
エリスも準備を終えたのか、背面の鞘にククリ刀を差したJPC2.0を身に着けてヘルメットを持ち、待機に入っていた。
「終わったか?」
「あぁ、私はな。無線のチェックも終えてる、後は最初のマガジンを持っていくだけだ」
見ればエリスのポーチはベルトもプレキャリも満タン、指差すテーブルの上には弾薬の込められたP-MAGとP226のマガジンが置かれている。
エリスのプレキャリの特徴と言えば背面下部に右手で抜ける様に水平につけられたククリ刀だ、彼女が剣士だった証だろう、近接戦闘の時にもこれを使うことが多い。
「作戦続きですまない」
「ヒロトも一緒だ、救出からそんなに時間が経ってないのに作戦参加とはな。……基地に帰ったら絶対、意地でも休んで貰うからな?」
「分かってるって」
どうやらエリスは何が何でも俺を休ませるつもりらしい、身体が鈍らない程度に訓練くらいはさせてくれるだろうか。
俺もこれが終ったらしばらくは休むつもりだったからいいのだが、俺も部隊も纏めての休暇になるかもしれない。
と、俺はエリスの背中のラジオポーチのバックルがされていないのに気が付いた。
「エリス」
「ん?」
「背中、ポーチ開いてる」
言いながらエリスのプレキャリの背面左側のTYR Tactical Dropdown/Tilt-out style MBITR152ポーチのバックルをキチンと閉じる、空いたままだと無線機が脱落しかねない。
他に開いているところがないか確かめてエリスの肩を軽く叩く。
「ん」
「すまない、ありがとう」
そう言って笑うエリス、戦闘や訓練の時に見せる真剣な表情とのギャップがあって、俺が惚れたところの1つでもある。
今回も強いエリスに期待しよう、そう思っていると飛行場の方からジェットエンジンのタービン音が聞こえてくる。ヘリのエンジンが始動した音だ。
そろそろか、そう思って装備の最終点検を行う。弾薬、無線機、ヘルメットに暗視装置、ヘッドセット、PTTスイッチ、忘れ物は無い。
周りを見ると全員それぞれの装備を整え終え、補給も済ませた様だ。
「装備を相互に点検!」
号令と共に分隊集合、8人がそれぞれ2人1組になってそれぞれの装備を点検確認する。
近くにいたのはたまたまブラックバーンだ、彼の背中の装備をチェック。
バックパネルのハイドレーションバッグは入れ口がベルクロで完全に塞げるように改造されており、グリップにカモフォームが巻かれたボルトクリッパーが差し込まれている。
ブラックバーンの他にも小隊の数人はボルトクリッパーやブリーチングを持っている、突入用の機材だ。
ユーティリティポーチにフラグポーチ、ラジオポーチと基本的な構成に、カマーバンド後方にはWarrior Assault SystemのメディックポーチIFAKが入っている。中身はもちろんポーションだ。
「ラジオ良し、フラグ良し、ユーティリティ中身……よし」
プレキャリの背中はOK、次はベルトの装備だ。
ファーストラインも後ろはダンプポーチにメディカルポーチに止血帯と基本的な構成を踏まえ、グレネードはTYR Tacticalのアサルターフラッシュバンポーチを付けている、スピードリロード重視のフラッシュバンポーチだ。中にはもちろんMk.13BTV-ELフラッシュバンが1発。
全ての装備に不具合が無いことを確認、チェックOKだ。
「メディカルポーチ、CAT、フラバン……OK」
「ありがとうございます、どうぞ」
「頼む」
次は俺がチェックしてもらう番だ、ブラックバーンは背中のポーチを開け、中を確認しては閉める。背中が少々引っ張られる感じがする。
俺もぼーっとしている訳ではない、手の届くところ、つまり前面のマグポーチに弾薬が満タンなのをチェック、ファーストラインのマグポーチの弾薬をチェック。ホルスターからP226 を抜き、そのマガジンもチェックする。
PTTスイッチにヘッドセットのケーブルがしっかり差さっているのも確認、血液型パッチもしっかり張ってある。
コンシャツの腕のベルクロスペースに“DR11”のパッチもしっかり貼ってある、見える範囲ではOKだ。
「背面ポーチ良し、ベルト良し」
今度はお互いに向き合い、ヘルメットの確認をする。
暗視装置、NVG用ランヤード、ヘッドセットにストロボ、確認。
「NVよし、ストロボよし」
「確認しました」
「ありがとう、完了だ」
準備完了、エリスもクレイとペアを組んで装備を確認し終えた様だ。互いに確認することも、互いの信頼が無いと出来ないことだ。
「分隊毎に集合!」
声を掛けると、届く範囲にいた分隊8人が集合する、全員が“DR11”のパッチを付けた俺の分隊だ。
「全員最初のマガジンは持ったな?」
「はい」「あぁ、持ったぞ」
各員がそれぞれ、5.56×45㎜NATO弾の詰まったP-MAGと9×19㎜パラベラム弾の詰まったP226のマガジンを持っている。
「マガジン挿せ!安全装置確認!」
先ずP226にマガジンを差し込む、スライドは引かず、ハンマーもダウンしたままだ。
続いてM4、あらかじめチャージングハンドルを引きハンマーを起こしてある為、安全装置がかかっている状態だ。
マグウェルにマガジンを差し込み、再び安全装置を確認。
「……よし、これから久しぶりの作戦になるな」
「無茶はしないでくださいよ」
CQB-RのM4にB&T GL-06を持ったグライムズがそう言う、笑ってはいるが、この分隊、この部隊の総意だろう。
だから俺も笑って答えた。
「大丈夫だ、これが終ったら俺はいっぱい寝る」
分隊のメンバーから笑いが帰ってくる、そうだ、俺は帰ってきたらいっぱい寝る。エリス抱いて寝る、性的な意味ではない。
「よし、行くぞ!恐れる事は無い!!」
「「「前へ進め!!!」」」
恐れる事は無い、前へ進め。ガーディアン全軍のスローガンだ。
全員で声を出し、気合を入れて士気を高める。死にかねない状況に飛び込む自分に、死ぬ訳にはいかないと言い聞かせる。
「搭乗!」
分隊が一斉に格納庫に隣接された駐機場へ走り出す、乗り込むヘリは機体側面に61と白いマーキングのあるスーパー61だ。
「おぉ、お前も一緒か」
「ご一緒しますよ、ヒロトさん」
先にヘリに乗っていたのはランディ率いる第1狙撃分隊、クリスタやカイリー、マーカスも乗っていた。
「頼りにしてるぜ」
「えぇ、任せてくださいよ」
そう言うと自分のライフル、SIG MCXをトンと叩く。
彼のMCXの弾薬は.300AAC Blackout、Aimpoint T2とEOTech G33STSMagnifireブースターをタンデムしている。
ハンドガードはM-LOKでAN/PEQ-15とSurefire M300が取り付けられているのだが、最大の特徴は7.5インチバレルにハンドガードが9インチ、ハンドガード内部からOSS Helix-QD 726TIサプレッサーが生えているところだ。
MCXはモジュラーライフルなのでこういった組み合わせが出来るのが強みで、狙撃分隊の狙撃手は狙撃銃のサブウェポンにMCXを持ち、それぞれ思い思いの調整とカスタマイズを施している。
ヘリの轟音の中、第1分隊8人全員が乗り込んだ。
『ご搭乗の皆様、本日はナイトストーカー・ヘリコプターにご搭乗頂きありがとうございます、機長のウォルコット・クリストフでございます』
スーパー61のパイロット、ウォルコット・クリストフのいつもの調子の挨拶が始まる。この機のパイロットは陽気で、離陸前のこの空気はいつも助けられている。
『管制塔からの離陸許可確認』
『了解、それでは皆様、出発します。しっかり掴まって、バスティーユまでの約30分、快適な空の旅をお楽しみ下さい』
その直後、ゆっくり機体が浮き上がる。基地の明りの中、5機のMH-60Mと2機のUH-60M、2機のUH-1Nと2機のAH-1Wが離陸した。
基地の明りが見えなくなった頃、暗視装置の電源を入れて下ろす。
今回の暗視装置で暗闇を照らすのは緑色ではない、白黒の濃淡で輪郭がはっきりとした、モノクロに近い世界。
この暗視装置はいわゆる“白管”と呼ばれるもので、従来型の暗視装置より解像度が高く、輪郭がはっきりと見えるので目標の早期発見にも繋がる。
今回初めて実戦投入するものだが、訓練での反応は良かったので問題は無いだろうと思う。
外の景色を見ると、時速200kmで巡行するヘリはあっという間に砂漠を抜け、少しずつ緑が増えた街道に沿って飛び始めていた。
『機内の皆様、左手をご覧ください』
出発してから15分ほど、ウォルコットがコックピットからインカム越しにキャビンへと呼びかける。言われて見てみると、こんな夜中にも拘らず騎馬の集団が4騎、バスティーユ方面へと走っている。
『ソヴィボルからの公国軍の伝令でしょうか、撃ちますか?』
キャビンの外側に足を投げ出すように座っていたクリスタが減音器を付けたSR-25のチャージングハンドルを引き、初弾を装填して銃口を外に向ける。
「いや、いい。無駄弾を使う事はない、どうせ今この距離にいたとしても伝令はバスティーユの作戦までには間に合わん、このまま行こう」
『了解』
クリスタは伝令と思わしき騎馬の集団から銃口を外し、安全装置を掛けた。
暗視装置の白黒の世界の中、総勢11機のヘリが編隊を組んで異世界の空を飛ぶ。まだ夜も明けていない真っ暗の空を、存在しない筈のメインローターが切り裂いて一直線にバスティーユ市を目指す。眼下には街道と草原、時折田園風景と、公国軍によって滅ぼされた集落や町が見えた。
残り5分、時間を確認した直後、インカムに通信が入る。
『こちらレイピア・リーダー、ヘリボーン部隊を目視で確認』
レイピア隊だ、彼らのF-4Eは2020ターミネーター仕様なので夜間爆撃能力がある。
『こちらスーパー61、収容所上空の掃除を頼むぜ』
『任せろ、すぐに済ませてやる』
ヘリの轟音の隙間から更に轟音が聞こえ、俺達のヘリを追い越す。暗闇では尾を引く戦闘機の排気口しか見えないだろうが、暗視装置越しのモノクロの視界では4機の機体がはっきりと見えた。
ヘリボーン部隊のヘリと同じくらいの高度を、戦闘機部隊が追い越していく。
バスティーユ到着5分前、作戦開始だ。
=====================================
第3者視点
バスティーユ・ブレイク作戦と名付けられたこの作戦の第1段階、航空優勢の確保及び、周辺の防空設備の破壊。
その為に出撃したのは、剣の様に宵闇を切り裂くように飛ぶ戦闘機が4機。
バスティーユ市は北側と南西の2か所に竜騎兵隊の屯営地がある、大規模な南西側の爆撃が彼らの任務だ。
レイピア1と2の2機は制空装備、3・4の2機は重爆撃装備で、AIM-7Pスパローと胴体中心線下部の増槽以外はJDAMと無誘導爆弾を満載している。JDAMの座標入力は終えており、後は投下するだけだ。
潜伏した特殊部隊が居れば、レーザー誘導爆弾を使えるのだが、今回はそれはない。
MQ-9リーパーからのレーザー誘導は可能だが、リーパーを投入するのは航空優勢が取れてからだ。
『作戦開始、3と4は上昇。2、続け』
『了解』
『了解』
バスティーユ市上空5000ft、号令と共にレイピア3と4のF-4Eが爆撃の為上昇、1と2が空中警戒待機に入る。
『レーダーコンタクト、敵翼竜、6機。BRAA000 18 1900……低空だ、真北から来る』
“テリア”のTACネームを持つレーダーシステム士官、ジャレッド・ベルナップ大尉がレーダー画面に目を落として言う。敵の翼竜のレーダーで発見した。
『Roger、スパローでやる、マスターアームオン、レーダー切り替え』
『Roger』
パイロットのショーン・マクラウド大尉、“マックス”の指示に従って、レーダーを切り替え、スパローミサイルを使用可能にする。
マックスは操縦桿を操り、機首を北に向ける。ヘッドオンで撃つとしても18マイルなんて戦闘機ではあっという間だ。
『レーダーロック』
“テリア”のコールに“マックス”が操縦桿のミサイル発射スイッチに指を掛ける。
『レイピア1、FOX1』
先手必勝、コールと共に機体下部のパイロンからAIM-7Pスパローが投げ出される。
異世界の空に、ミサイルの白煙が伸びていった。