第158話 再集結
お久しぶりです、この話が難産でした
バイエライド
岩の多い砂漠の真ん中の街だ、海岸線から45kmほど内陸のこの町はまだまだ暑さに見舞われている。
オアシスが近くにあるとはいえ、暑いものは暑いのだ。
「いっち!いっち!いっちに!」
「「「そーれっ!」」」
掛け声を上げながらFOBの中を走り回る集団がある、ただ走り回るだけではない、整然と列を組み、歩幅を合わせた持続走だ。
俺はその訓練の風景を、司令部庁舎の窓から眺めていた。
「シェロニモ!遅れてるぞ!」
「サー・イエス・サー!」
後方を走る教育隊の教官が隊員に対して怒号を飛ばす、暑い中、ただ隊員を走らせているわけではない。
彼らの手には自動小銃、イスラエルのIWI CTAR-21が握られていた。
彼らの訓練も第2段階、体力作りから射撃などに移行するため俺が召喚し、貸与しているものだ。
西部方面隊のライフル選定に際して、主戦場でどのようなライフルが活躍するかを考えた。
彼らの主戦場は砂漠、そして市街地だ。砂塵に弱い作動機構のライフルでは兵士の命を危険に晒す事になる、可能であれば砂塵や不純物に強い作動機構のライフルが好ましかった。
また、ジャララバードやクァラ・イ・ジャンギー要塞などの戦闘で、銃弾の貫通しない石造りの建物の多いこの地では近接戦闘が多発するというデータも参考にした。バイエライドでも今後、逃げ出して指揮系統を外れた公国兵がテロや事件を起こすことが考えられる。
路地も狭く、建物も間、又は中で戦闘を行う事を考えると、取り回しの良いライフルが選ばれるのは必然である。
その他、拡張性や使用弾薬、操作系関係等で、タボールの中でもコンパクトモデルであるCTAR-21が選ばれた。
中でも俺が重要視したのが「弾薬・弾倉の互換性」だ。
本部部隊のM4が使うのは5.56×45㎜NATO弾とSTANAGマガジンであるが、これと同じ弾薬と弾倉をCTAR-21は使用する。
共通の弾薬、弾倉を使うメリットはかなり大きい。戦闘中の弾の貸し借りも可能、補給の点から見ても一括で同じ弾薬を召喚すればいいというのは非常に楽だ。
「やってるなぁ」
西部方面隊のランニングを窓から眺めていると、飛行場に続々とヘリが着陸してくる。
MH-60MとUH-60Mの2種のブラックホーク、MH-47Gチヌーク、MV-22Bオスプレイの3種は本部の機体だ。
今回バスティーユ強制収容所の襲撃、もとい収容されているレジスタンスと王国軍捕虜の救出作戦に必要な機材や装備、物資がこのバイエライドFOBに集結しつつある。
飛行場にはC-130Hハーキュリーズ戦術輸送機が着陸し、機内からは装備を整えた隊員が下りてFOBの方へと入ってくる。
コンコンと今は暫定的に俺のオフィスと化している隊長室がノックされる。
「どうぞ」
ドアに声を投げると、ドアを開けて入ってきたのは俺の副官のエリスだ。
「ヒロト、集まってきた、格納庫へ頼む」
「了解、行きますかね」
今俺は制服ではなく、戦闘服に身を包んでいる。腰にはファーストラインを装備しているが、プレートキャリアやライフルは自分のロッカーの中だ。
バイエライドFOBには派遣されてきた部隊の簡易宿舎がある、そこへの割り当て表を持って部屋を出る。
……そういえば本部基地には簡易宿舎無かったな、後で召喚しておこう。
航空機格納庫の方へ向かい、ハンガーの1つに入ると既に隊員達が集合していた。
全員見知った顔だ、リハルトやレイがもともとこっちに来ていた本部部隊のメンバーと合流する。
ガーディアン中央第1小隊、特殊戦の専門部隊がバイエライドFOBに集結した。
「各分隊の隊長は点呼終了後に集合してくれ!それ以外の者は点呼が終わり次第自室へ!」
全体に声を掛けるとそこかしこで点呼の声が響き、それを終えた隊員達は分隊長を残して部屋割りを見ながら簡易宿舎の方へと入っていく。
「お疲れ様です」
「おう、お疲れ」
分隊長の殆どは先の収容所からの脱出援護の為殆どがFOBにおり、第1小隊の隊員がようやく全員揃った事に一先ず安堵している。
「またこっちでの作戦ですか」
「ああ、ここでの作戦が終わったら俺もようやくベルム街に戻れる」
早く帰りたい……割と本気でそう思っている。そろそろここにいるのも1ヶ月だ、早く帰りたい。
「お疲れさん」
俺を呼ぶ声、そちらの方を向くと、本部部隊のナツがこちらに向かってくる。情報部のローナも一緒だ。
「お、今回もC2か?」
「あぁ、上から見といてやるよ、任せろ」
作戦時、ナツと孝道の2人はMH-60Mに乗り、上空から地上部隊を指揮する役割がある。恐らく今回もそうなるだろう。
「西部方面隊の教育、そっちの方はどうなってる?」
「どうもこうも、基礎教育課程は同じだ、コッチも銃を使い始めたところだよ」
ナツは教育隊のまとめ役も兼ねており、今回の西部方面隊育成の為の士官教育も担当する事になっている。
士官も下士官も基礎教育課程では同じ教育を受ける、その為最初の13週間はどの過程でもやることは同じなのだ。
「お疲れ、心配したぞ」
今度は孝道だ、俺の脱走作戦の援護部隊を離れた本部から指揮していた。上空からはずっと衛星で見ていたらしい。
「心配かけたな、留守の間の采配、ありがとう」
「ああ、後はどんなもん?」
「バスティーユを開放したらこの作戦は終わり、早く帰りたい……」
本音を漏らしながらお互いに苦笑する。
「作戦会議をしたい、各自装備を置いたら作戦室へ集合で」
「了解」
一足先に作戦室へ向かい、準備をする。手順はいつも通りで、決めることと言えば突入順路と降下ポイント、開放フロアの順くらいなのだが、決めておかないと作戦に支障が出る。
パソコンを起動しネットワークの衛星画像から作戦目標の地図を出す、大きめのタブレット端末それぞれに情報を送り、建物の地図を表示する。
「ハイテク化したなぁ」
「何がだ?」
各部隊の隊長が座る席に水のボトルを置いていたエリスが俺の呟きに反応して顔を上げる。
俺が知っている、もしくは見たことある作戦会議と言えば紙を壁に貼り付けて指し棒で指しながら行うか、黒板で行うのが常であった。いや、それを今でもやっているところはもちろんあるだろう。
しかし技術の進歩はさらなる効率化を呼ぶ、紙は電子化され、黒板はホワイトボードになり、地図を書く手間はプロジェクターに取って変わった。
前面のスクリーンにプロジェクターで地図を投映され、端末とリンクを確認する。
「……よし、準備完了」
「こっちも終わった」
会議の準備を終えると同時にドアがノックされる、返事をするとドアを開けて入ってきたのは、装具を置いてきた隊員達だ。
装具を置いて、とは言うが、FOBの中では戦闘服に1stラインと呼ばれるベルトキットのみを身に着け、腰のホルスターにはP226が差さっている。
「お疲れ様です」
「お疲れさん、まぁ座ってくれ」
第1小隊の面々と支援する火器小隊、狙撃小隊の各分隊の分隊長、スーパー63から航空部隊と地上部隊の指揮を執るナツと孝道が入室。
俺は団長の為、孝道やナツ、健吾と同じく前の席に座り、第1分隊の席にはエリスが座る。
「今回決めておきたいのは各分隊の降下ポイント、人質回収のヘリ着陸ポイント、航空支援の手配、撤収ヘリの手配だ。手元の端末を確認してくれ……ナツ、孝道」
俺が2人を指名すると、ナツから口を開く。
「まずは情報部から……作戦目標はバスティーユ強制収容所、正方形の要塞の様な監獄で、建物の周囲を水路が囲んでいる。その前には広場があり、広場と水路を繋ぐ橋は1つだけ。広場と建物の周囲を囲むように高い壁が聳えていて、出入り口は北側の大通りに面した1つだけだ。内部協力者からの情報を統合して加味したところ、収容者は約420人、警備兵と看守は合わせて50~60人、救出後の囚人はヘリで輸送する、囚人回収ヘリのLZは収容所前方の広場だ」
それぞれが持つ作戦用端末にはバスティーユ強制収容所の全図と、収容所前に広がる広場に丸く囲まれたLZの文字が浮かび上がる。
「続いて地上部隊指揮の私から。地上部隊の降下ポイントは、火器小隊が収容所前広場に展開、広場と橋を制圧。降下ポイントはこの4か所になると思う」
地上部隊を上空から指揮する孝道が端末を操作すると、LZの中に4つの円が表れる。LZ確保の為の火器小隊の降下ポイントだ。
「それから第1小隊の降下ポイントだが、収容所のそれぞれの塔の上に降下ポイントを確保する。狙撃分隊も同じ場所に降下し、それぞれ敵部隊の監視をして欲しい。第1小隊は内部の看守と警備兵を片付けて、完全に制圧出来たら囚人を開放、前の広場に着陸したヘリに囚人を乗せる」
「航空部隊からは、第1小隊と狙撃小隊はそれぞれMH-60Mに分乗、迫撃砲分隊は2個分隊をUH-60Mに、機関銃分隊はUH-1Nに分乗してそれぞれファストロープ降下してもらう。迫撃砲分隊の内1個分隊は基地にて待機、回収した囚人の治安維持に当たってくれ」
孝道とナツの説明を聞きながら、指揮能力、軍師としての才能が出て来たなとぼんやり思う。
2人は俺や健吾と違って最初は軍事に対して何の興味もなかった一般人だったが、こういう環境にいるからか、かなり戦術・戦略共に勉強したようだ。
孝道とナツがこちらに目配せすると、端末を操作しながら俺も口を開く。
「囚人が全員回収されたら俺達も広場に出て、乗ってきたヘリにそれぞれ乗って撤収する、撤収は火器小隊、第1小隊の順だ。ここまでで質問はあるか?」
俺が顔を上げて見渡すと、火器小隊の迫撃砲セクションを纏めるタリア・ハンドラス少尉から手が上がった。
「どうぞ」
指名するとタリア少尉が立ち上がり発言する。
「今回の作戦、我々迫撃砲分隊はヘリボーンでの迫撃砲展開はありますか?」
タリア少尉の指揮する火器小隊迫撃砲セクションは、M224 60mm軽迫撃砲を主に運用する分隊だ。
エルスデンヌの戦いにおいても彼女の指揮する迫撃砲セクションは森に入り、広範囲に展開する公国軍部隊の上から砲弾を雨霰と降らせた。
だが今回の戦闘、迫撃砲を展開設置し、攻撃する余裕は無いだろう。歩兵の頭数が足りない為、ヘリボーンの訓練を受けている迫撃砲分隊を「空挺歩兵」として導入する。
「いや、迫撃砲の展開はない、迫撃砲セクションの内2つを展開させる君達の任務は広場の確保だ、それを見越して適切な装備を選んでほしい」
「了解しました」
彼女は何か考えがあるのか、微笑みながら席に座る。
他に何か、と促す。しかし挙手は無い、この作戦を遂行するに当たり、一抹も不安は無い。
「後で作戦全体の流れを詰める、使用する装備を各部隊で抽出しておくように。では解散」
各自がテーブルの上の水のボトルを持ち、解散していく。俺は作戦室の電子機器を片付け、自分も編成と装備を考える。
恐らく収容所内部での戦闘になる、M4は短銃身……10.3インチのCQB-Rがいいだろう。
降下後の敵の掃討、及び分隊毎の制圧区画区分は……
「ヒロト」
考えながら片付けを終えて部屋を出ると、エリスが外で待っていた。壁に背を預け、腕を組んでいる。
「あぁ、待ってたのか」
そういうとこちらに向き直り、顔を乗り出してくる。甘い表情ではなく、作戦前の真剣な表情だ。
「……お前、出撃する気じゃないよな?」
……げ
バレてたか、というか、そりゃそう言われるわな。
前から「ソヴィボルともう1つの収容所を開放したら」2週間の休暇を取ると言ってはあるが、一応もともと捕虜になっていた身だ、俺の身が心配……という事なのだろう。
気持ちはわかる、収容所から帰ってきたやつがすぐに出撃、頭がおかしいと思われても仕方ないかもしれない。
誤魔化しても仕方ないし……というか、同じ分隊だから誤魔化しようがない。ので、正直に話す。
「……俺も出撃する、編成上仕方ないことだ」
「言いたいことは分かるが、ここは第2小隊の誰かに任せてヒロトは……」
「現状、完結している部隊でヘリボーンでの特殊戦を実行可能な練度を有する部隊は第1小隊だけだ、特殊な作戦に奴らを突っ込ませて死なせる訳にはいかん」
「……そ、それもそうだが……心配なんだ、お前の事が……」
心配をかけてしまっているのは申し訳なく感じるが、こればかりは仕方ない。
……エリスの恋人であるのと同時に、戦闘ギルドの団長なのだから。
ええい、とエリスがかぶりを振って俺を指差す。
「次の作戦が終わったら、私の命令を聞いてもらうからな!?」
お願い、頼みじゃなくて、"命令"と来たか……珍しいその口調に表情が少し緩む。
「よし、分かった」
「ふん、覚悟しておくんだな、ヒロト」
少し怒って見え、また少し楽しそうにも見えるエリスはそう言って俺の側を通り、どこかへ歩いていく、装備を考えるか、部屋に戻ったかどちらかだろう。
後ろ姿でもあいつは美人だなと思う、いい匂いするし。
俺も装備を確認しに行こう、久し振りの正規のミッションの為、感覚を思い出しておかなければならない。
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展開中、展開している部隊の分のロッカーは無い。
展開している隊員の為の簡易宿泊所はあるが、装備はその宿泊所のロッカーで自分の鍵をかけて管理することになっている。
部屋に戻り、自分のM4を手に取る。ガーディアンではM4をハードケースで支給しており、ケースの中には14.5インチバレルのM4A1と10.3インチバレルになっているCQB-Rが入っている。
今回はまた、狭い室内などでの戦闘になるだろう、CQB-Rに換装しておいた方がいい。
前後のピンを抜き、アッパーレシーバーをCQB-Rに換装する。使用する弾薬は5.56×45㎜NATO弾なのでバレルもそれに合わせてある。
CQB-Rのアッパーにはナイツのフォールディングリアサイト300mが載せられている、近接戦闘を主眼に置いたこのアッパーにはそれ以上の距離の戦闘でリアサイトを使う事は無いだろうと考えたからだ。
その前にはEOTech553ホロサイトを搭載している、重いだ何だ言われるが、俺はEOTechのホロサイトが見やすくて狙いやすく、しっくり来て好きだ。
ハンドガード右側の銃口近くにはSurefire M300フラッシュライトがマウントされていて、4面レールの間にカットされて埋められたSurefireのデュアルリモートスイッチで操作する。デュアルスイッチのもう1つはハンドガード根元側に付いているATPIALのAN/PEQ-15に繋がっており、手元もスイッチでこの2つを操作することが出来るようになっている。
フォアグリップはMAGPULのRVGを装備。フラッシュハイダーはサプレッサーを装着することも考えて、籠型からSurefireの4プロング、つまり4又のハイダーになっている。
ロアレシーバーは14.5インチバレルのM4と同じなので、ストックはMAGPULのMOEストックだ。
「……んし」
組み換え終えると射撃場の方から乾いた銃声が聞こえる。恐らく射撃訓練か、次の作戦に向けてアサルトライフルの調整だろう。
俺もそちらに向かおうかと思ったが、作戦を思い返すと未だ不十分な点がいくつかある。
その点を解消しに行こうと考えながら、俺は部屋を後にする。
向かったのは、バイエライドFOBの基地業務群詰所___
基地業務群との交渉を終え、西部方面隊の航空部隊との相談を終え、上層部団を率いて俺は今、FOBの飛行場にいた。
この基地と、次の作戦の戦力の増強の為だ。
「では、行きます」
俺がポケットからスマホを取り出し、航空部隊の指揮官に振り返ってそう言うと、上層部団は頷いて答えた。
「お願いします」
俺はスマホを起動し、召喚のアプリから兵器を召喚する。
目の前が光に包まれ、その光が形を作り、実体化していく。
中から現れたのは、2機のCH-47Fとパイロット、ロードマスター、整備士達だ。
これで先ず、“収容者を空路搬送するヘリの確保”が完了した。
囚人は420人、囚人搬送用のヘリはMH-47GとCH-47F合わせても6機、1機辺り50人を乗せると考えると、数が足りなかったのだ。
これでチヌークは合わせて400人を空輸出来る、残りの20人は本部からのオスプレイで輸送する。
召喚されたばかりのパイロットたちと挨拶を交わし、航空隊隊長らとも挨拶を交わす。
「早速だが訓練に入ってくれ、数日後に作戦がある。君たちに期待しているよ」
そう言うと“召喚者”の彼らは勢いよく、任せてくださいと言い切った。任せても良さそうだ。
加えて420人の簡易宿泊所となるプレハブ小屋を何棟か準備、基地の北側に仮設住宅を召喚した。
これで作戦の装備面での不足はない、後はシミュレーションを重ねて想定訓練を繰り返すだけだ。
作戦決行前日
そろそろヘリ部隊と航空部隊が壊しまくった橋も簡易的なものが出来て伝令が大慌てで情報を伝えに入っているところだろう。
「明朝0400時より、バスティーユ強制収容所襲撃作戦を開始する。作戦の目的は、エルヴィン・ロンメルの指揮下にあったレジスタンスの開放だ」
俺は可能な限り声を張り上げる、作戦室はそれなりの広さがある為、しっかりと聞こえるように。
プロジェクターには作戦目標であるバスティーユ強制収容所の全景が表示されている。
「建物には先ず第1小隊が施設屋上から降下、収容所施設内を制圧する」
プロジェクターには第1小隊、俺達の部隊の降下ポイントが示される。各分隊と狙撃分隊が降下し、分隊は屋上から侵入、狙撃手は屋上から下の動きを監視する。
「狙撃分隊は地上の動きに注意、外壁の塔上の敵と広場の敵を抑えてくれ。続いて機関銃分隊と迫撃砲分隊が広場を確保、囚人回収ヘリのLZとする」
これは打ち合わせ通りだ、変更点と言ったら作戦に参加するヘリの追加くらいだが、チヌークが8機駐機程には広い。
何しろこの広場は銃の訓練にもしばしば使われているらしく、いわば公国軍のニルトン・シャッフリル銃の射撃場になっている様だ。
「囚人を回収したら俺達も迎えのヘリに分乗し、基地へと戻る。作戦は敵地のど真ん中で展開する、その為本部基地から航空支援を呼んである、必要があれば適宜活用しろ」
航空支援機は既にFOBの飛行場に到着している、今回が初の実戦投入になる機体だ。
「加えてこの強制収容所は公国の竜騎兵隊屯営地から約5kmと近い、その為作戦前にレイピア隊がここを爆撃し、上空を掃除しろ」
プロジェクターの画像は一旦引かれ、少し離れた竜騎兵隊屯営地が映される。
作戦の第1段階として、ヘリボーン部隊が到着する前に敵の航空戦力を可能な限り削り、翼竜などの攻撃に対し脆弱なヘリを守るために戦闘機を投入するのだ。
夜間攻撃能力を持つF-4Eのみの出撃、夜間攻撃能力を持たないチーター隊のF-5E、レッサー隊のA-4Mは待機だ。
その代わり、新たに召喚した航空機を多数投入する。航空支援は万全だ。
「情報部から」
一通り作戦を説明すると、情報部のナツから手が上がる。
「バスティーユには“女囚棟”という女性収容者のみを集めた区画があるらしいと情報を得た、まぁ……何をしているかは想像に難くないが……」
作戦室の空気が張り詰める、クァラ・イ・ジャンギー要塞でも好き勝手やってたあの公国の事だ、女性収容者を集めてすることなど容易に想像がつくが、あまり考えたくないことが起こっているだろう。
「そこから救出した女性収容者のケアも重要と考えます」
「分かった、それに関しては後で軍医と話を詰めておく。作戦について質問はあるか?」
作戦室を見渡す、挙手は無い様だ。
「各自装備の点検、調整に入れ。配布した作戦要綱をもう一度よく確認しておくように。では解散」
そう言うと隊員たちはそれぞれの持ち場に戻っていく、装備の話をしたり、銃の最終調整に向かう隊員もいる様だ。
バスティーユ強制収容所、俺の居た世界の同じような監獄はフランス革命で襲撃、解体された。今度も囚人開放として史実と同じ道のりを辿ることになるだろう。
収監されているレジスタンスの救出作戦、ロンメルの依頼通り完遂して見せる。