第14話 突入
「あれだ!」
教会が見えてきた。
フレームは鉄パイプだけなので、声が周囲に聞こえる。
「全車教会前で停止!突入するぞ!」
後ろに声を投げ、更に進む。
教会前に到着、3台が停車する。
[伝授]直後とは思えない程、2人の操縦テクニックはなかなかの物だ。
ベルトに取り付けたFASTマガジンポーチの具合を確かめる。
俺、ガレント、ユーレクのベルトには予備マガジンが入ったFASTマガジンポーチが2つぶら下がっている。
「降車!」
俺、エイミー、ガレント、ユーレクがSOVから降り、俺は新たな道具を背負って教会のドアへ走る。
「な、何だ貴様ら!」「ここで何してr」
2人の衛兵が槍で行く手を阻む。
俺はM4の狙いを衛兵の足に付け発砲、エイミーはホルスターから拳銃を抜き、もう1人の肩を撃ち抜く。
パパパパン!パンパン!
「ぐわぁ!」「ギャァァ!」
衛兵が倒れ、道を開ける。
俺はドアに駆け寄り、新たに出した道具を持つ。
警察などが良くドアを破ったりするのに使うバッテリング・ラムだ。
バッテリング・ラムは金属の筒に取っ手を付けた様な簡単な道具だが、強化な解錠道具だ。
1度目は水平に振り、鍵の辺りにバッテリング・ラムを叩きつける。
2度目はドアのヒンジを狙い振り下ろす。
3度目はもう一度鍵の辺りを狙い、ドアが吹き飛び、開く。
教会の中に向かって叫んだ。
「エリス!迎えに来たぞ!」
「ヒロト!」
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「みんなその場に伏せろっ!」
俺は場内に叫び、招待客に注意を促す。
向かってきた鎧騎士に、バッテリング・ラムを叩きつける。
「そらぁぁ!」
「グフゥッ!」
胴体に命中、呻き声を上げて崩れる。
別の騎士が俺に向かってサーベルを振り下ろそうとするが、間にバッテリング・ラムを割り込ませて受け止める。
ダダン!
脇腹の鎧を弾丸が貫通、視線をやるとユーレクが援護してくれた様だ。
ガレントもセミオートで確実に鎧騎士を撃ち倒していく。
ユーレクに感謝しつつ、また騎士に視線を戻す。
俺を斬りつけようと振り下ろされる刃を躱し、足の付け根を狙ってバッテリング・ラムを振るう。
バキィッ!
足の付け根は、というか関節は骨と違って脆い。
「ウガァァァ……!」
殴られた騎士は足を押さえてのたうち回る。
「次ぃ!」
今度は大勢で囲もうとしている様だ。
俺はM4を構えようとするが、俺と騎士の間に影が割り込む。
「ヒロトさん!下がって下さい!」
エイミーだ。
エイミーはMINIMIを小脇に抱え、足下を狙い引き金を絞る。
ダダダダッ!ダダダダダダダダダダダッ!
鎧騎士が次々と倒れていく。
エイミーが薙ぎ払った騎士達が最後らしく、鎧騎士は全滅。
「ふん、丁度いい余興だ」
奪ったサーベルか、私物かは知らないが、ケインがサーベルを構えてエリスの前に立つ。
エリスをよく見ると、手錠の様な物で柱と片手首を繋がれている。
「言っただろう?手を出したら殺すと。そんなに殺されたいのか?」
「やれるもんならやってみろ!」
俺は3人に待機する様に左手を上げる。
勿論怖い、怖いがビビっていたら俺や仲間が死ぬ。
それにビビって何もしなかったら、何も始まらない!
ケインが矢の様な速度で向かって来て斬りつけて来るが、バッテリング・ラムを割り込ませて防ぐ。
俺は防御した時の勢いを利用しその場で一回転、遠心力を味方にバッテリング・ラムを振るうがしゃがんで交わされる。
俺はバッテリング・ラムを上に反らし、ケインはサーベルで下から俺を切り裂こうとする。
ドゴン!
先に俺のバッテリング・ラムが地面に叩きつけられる。
どうやらレベルアップと共に身体が強化されているらしい。
ケインはバク宙で距離を取る。
教会の床が叩きつけたバッテリング・ラムの形通りに凹んでいた。
「終わりだ!」
ケインが駆け出し、居合斬りの要領でサーベルを横に振る。
俺は逆側にバッテリング・ラムを一度反らし、思い切り横に振った。
バギン‼︎
金属の砕ける音。
暫くの沈黙の後、金属が床に落ちる音がする。
両者の手に残った物は。
ケインの折れたサーベルと俺の無傷のバッテリング・ラムだった。
俺はすぐさまバッテリング・ラムを手放し、ホルスターから拳銃を抜く。
パパン!
ダブルタップでケインの肩を撃ち抜く。
「ひっ!ひぃぃいぃい!」
ケインは情けない悲鳴を上げ、肩を押さえて床に転がる。
さっきまでのデカい態度や自信が嘘みたいだ。
その間に俺はエリスに駆け寄る。
「エリス!大丈夫か⁉︎」
「あ、あぁ、大丈夫だ。暴力も強姦も無かった」
「良かった。手錠を撃つ、動くな」
俺はM4のセーフティを外し、セミオートで鎖を撃ち抜く。
鎖は呆気なく砕け、エリスは自由の身に。
ウエディングドレス姿のエリスの腰を抱き寄せ、ケインに向き直る。
「エリスは貰っていく!」
それだけ言うと、のたうち回るケインの横をすり抜けエリスを教会の外へ連れ出す。
エリスはケインを見る事すらしなかった。
「よしみんな、後は逃げるぞ!」
「了解!」
ガレント、エイミー、ユーレクが返事をし、教会の外へ出るとエリスをお姫様抱っこする。
「ひ、ヒロト⁉︎」
「こっちだ!」
エリスは顔を真っ赤にするが、そのまま敷地外に停めてあるSOVまで走る。
停めてある場所に着くと、それぞれがそれぞれの車両に乗り込む。
俺、エリス、エイミーは1号車、ガレントとユーレクは2号車へ。
俺はエリスを助手席にのせ、エイミーは後部席へ。
「出発!」
エンジンをかけ、アクセルを踏む。
SOVは、タイヤを鳴らして走り出した。