第139話 レジスタンス
場内に侵入した俺達は、近い部屋からクリアリングする。
パスパスッ
恐ろしい程に減音器との相性の良い.300AAC Blackoutは、先ほど表門へ増援に向かった獣人族の公国兵の頭を貫き、吹き飛ぶように倒した。
無音のままに命を刈り取る.300BLKは、ジャララバードのような交戦距離の短い場所の夜間戦闘には最適だ。
廊下を警戒しながら進み、先頭を進む俺は一旦停止、エリスも廊下の反対側で止まった。
廊下のこちら側の壁と向こう側の壁、両方にドアがある。
俺はドアの周辺を目視で確認、ドアは廊下側に開くタイプだ。
俺はドアノブに手をかけ、すぐ後ろのグライムズに合図する。グライムズも準備は万端の様だ。
指でカウントを取る、3、2、1……
ドアを引いて開け、グライムズ、ヒューバート、ブラックバーンの順に部屋に突入する。エリス班も部屋に突入、俺とエリスはバックガンとして突入した班の背後を守る。
部屋の中には何も居なかったのか、両班とも銃声を響かせることなく部屋から出てくる。
今度はブラックバーンが先頭、俺が殿だ。
と、次に突入予定のドアが開く。エリスの進行方向側だ。
「クソッ、レジスタンスどもはまだ制圧出来ないのか!?」
「薄汚いレジスタンスの癖に、あんな連射出来る銃を持ってるなんて聞いてないぞ!」
「どうもグライディア王国の民兵が混じっているらしい」
「それが理由になるか!早く制圧しろ!」
明りのない暗い廊下に、人種族の指揮官らしき人物が出てくる。獣人種族ほど夜目が利かないのか、かなり近いにも関わらず気づいていない。
ブラックバーンが膝撃ちの姿勢になり、グライムズが立射の姿勢を取って射撃、狭い通路で火力を上げる“ハイ・ローテクニック”だ。
パスパスッ、パスッパスッ
指揮官を含め、参謀らしき人物も出て来たが、2人が纏めて始末した。
「司令!」
後を追うように出て来た公国兵にも立て続けに.300BLKを叩き込む、入り口で倒れた公国兵が道を塞ぎ、通れなくなったところで部屋の正面に立つ。
空気が抜けるような音を立てながら撃ち出される.300BLKは公国兵を捉えていく、こちらも訓練を積んできたのだから、敵はその反射速度を上回る速度でこちらを撃ってこないと意味がないのだ。
逃げ場を失った公国兵に次々と銃弾が撃ち込まれ、物言わぬ骸への変貌を遂げる。公国自慢の鎧も、.300BLKの運動エネルギーには敵わない。
部屋の中の見える敵を全員射殺、どうやらその部屋は指揮官室や、指揮所のような部屋であったらしい。
銃弾の貫通しない石造りの壁、地図の広げられたテーブル、ロッカーに、本国からの指令書と思しき羊皮紙の書類もあった。
敵が居ないことを確認して突入陣形、クリスクロスの要領で突入する。死角に敵が居た場合に備えた念の為だ。
部屋の中のロッカーを調べる、1人が開けて、1人がM4を構えていつでも撃てるようにしておく。
グライムズがドアを開け、俺がドアを開ける。
槍兵が、すぐに突き出せるナイフに持ち替えて隠れていた、銃口は向けたまますぐに引き金を引ける姿勢で投降を促す。
「今すぐ出てこい!早くしないと殺す!」
これで出てこなかった場合、すぐに射殺出来るというのは交戦規定で決まっている。
怯えて出て来た公国兵に銃口を向けたまま武器を全部捨てさせる、隠しナイフ等も全部だ。
持っていた使い捨てハンドカフで後ろ手に拘束、部屋にあったロープで足も縛り上げ、舌切り自殺を防ぐためにロープを噛ませてずた袋を被せて拘束する。
このまま部屋に放置するのも何なので、本部に通信を入れておき、後で回収することにした。
「HQへ、こちらA1-1、行政区役場内で公国兵1名を拘束。現在回収は困難である為位置をマークしておいてくれ」
『了解』
俺達は唸っている公国兵をそのままにして、役場内の制圧に戻る。
会議室、医務室、事務所、トイレ、この役場内に存在する中枢をすべて制圧する。
職員用廊下を進み、エリスは2階へ続く階段へと昇っていく。
俺の率いる1班は1階、玄関ロビーに続くドアの前へと到着、ハイレディ・ポジションを取りつつドアノブに手をかけ、トラップがないことを確認しつつドアを開けた。
キィ……とヒンジが鳴りトレッキングシューズで足音を出来るだけ立てないように玄関に続く部屋へと入る。
その部屋は弾薬と魔石が積み上げられており、敵はここを補給拠点にしている様だ。
敵はここまで俺達が浸透して来ている筈もないと高を括っていたのか、ニルトン・シャッフリル銃を担いでいた。俺達に気づいた敵はすぐにニルトン・シャッフリル銃を構えなおして1発発砲したが、構えも狙いもグダグダの銃弾は俺達の足下のかなり逸れた場所に命中した。
コッキングハンドルを動かす前に、俺達は引き金を引いていた。
消音された銃声に、.300BLKは乗っている。
反動を受け流し、敵に命中し確実に死ぬまで撃ち続ける。
3発の.300BLKが命中した敵は銃を取り落として倒れ、近くにいた敵が驚いて逃げ出すが逃がす訳もない。
夜の闇に紛れて逃げ出そうとした公国兵の背中を、.300BLKが捉える。
「て、敵sh……ガッ!?」
敵は叫ぶのを強制中断され、背中から胸へ弾丸は貫通した。
そこへさらに2発3発4発と.300BLKが命中し、その命は神の元へ召し上げられる。
丁度ボルトがホールドオープン、素早くホルスターからP226を抜き、M4を下してクリアリングする。
部屋の中の公国兵を12秒で全滅させた俺達は音を立てずにそのスペースに浸透、壁伝いに移動しつつ次の廊下へと進む。図らずも公国兵の補給拠点を確保し経戦能力を奪った俺達はさらに先へ、この先は玄関ロビーだ。
今のうちにリロード、P226をベルト左腰のローライドUBLを噛ませたホルスターに戻し、プレートキャリアの最も抜きにくい場所のマガジンポーチからP-MAGを1本抜き、M4に差し込んでボルトストップを押すとボルトが前進してM4に力を取り戻させる。
抜いたマガジンはベルトの後ろに取り付けたダンプポーチに放り込み、再びM4を構えた。
ここは一定間隔でランタンが置かれており、暗視装置はいらないほど明るい。WilcoxL4G24NVGマウントを跳ね上げ、緑色の視界から普通の夜目に切り替わる。
しかし玄関へと向かうほど暗くなっていき、玄関の前はまた暗視装置が必要なほど暗かった。マウントを下げて再び緑色の明るい視界を取り戻した。
廊下をエリスと合同で隙無くカッティング・パイでクリアリング、玄関へと抜ける。
玄関は真っ暗だったが、時折暗闇でニルトン・シャッフリル銃のマズルフラッシュが光る。それ以外の光源はほとんど無く、当然ながら魔術ランタン等も1つも無い。
夜間の戦闘は暗いほうが便利だと言える。確かに明るければ自分の足下も確認出来て安全だし、敵も狙いやすい。それに敵に向けて光を照射して敵を探したいという気持ちもわかる。
しかし、こちらが光を付ければ暗所の敵から位置がバレてしまうし、影も作りやすくなってしまうという危険もある。
公国軍はその夜間戦闘のセオリーをしっかり把握し実践している、流石は正規軍兵士と言ったところだ。
だが今回ばかりは相手が悪かった、何しろガーディアン第1小隊は、夜間戦闘やヘリボーンなどの特殊戦を得意とする部隊なのだ。
暗視装置の視界に、時折魔銃のマズルフラッシュが浮かび上がる、増幅管を通してそれがはっきりと見え、相手の位置も射撃姿勢も丸見えだ。
暗がりを利用して公国兵の背後へ展開、無線で外の第4分隊とコンタクトを取る。
第4分隊の撃った弾に当たらぬ様、カウンターに隠れながら移動した。
「A1-4、こちら1-1。敵の背後に到着、位置についた。射撃を開始する」
敵は銃声でこちらに気付いておらず、また咽頭マイクのおかげで銃声や雑音は入らず、小さな声も漏らさず拾ってくれる。
『了解、5秒後に射撃中止する』
無線の向こう側でスティールがそう答える、それで通信は終わり、俺達は耳を澄ませた。
瞬間的に大きな音、銃声などは、聞き続けると耳を傷める原因になる。これを「外傷性難聴」と呼ぶのだが、この銃声などをカットするのが俺達が着けているCOMTAC M3ヘッドセットである。
そのヘッドセット越しに、減音器を取り付けた銃声が途絶えた。
その瞬間、俺達は一斉に立ち上がり、緑の視界の中で引き金を引いた。
まさか後ろから攻撃されるとは思っていなかった公国軍のこちらへの反応は遅れ、脳内で状況確認をしている間に俺達の.300BLKの餌食になる。
まるで標的射撃でもしているかのようだった、パニックになって固まるか、身を隠そうとする公国兵にNVモードにしたEOTech553ホロサイトのレティクルを公国兵に合わせる。交戦距離は30m、狙うのは当然頭で、射法はダブルタップだ。
俺達から身を隠そうとした公国兵だが、第1分隊からの射撃を逃れるべく隠れた遮蔽物は、第4分隊から丸見えだ。
反対側に展開する第4分隊の精確な射撃に捉えられ、5.56㎜NATO弾に貫かれた公国兵は遮蔽物に自らの血の染みを作っていく。
撃たれた公国兵の頭の反対側から血と脳漿が飛び出し、敵の命を刈り取っていく。
ヒューバートとエイミーの持つM249paraも火を噴き、ライフルには無い圧倒的な火力で公国兵に銃弾の雨を降らせていった。
時間にしてわずか12秒ほど、エントランスホールの敵を一掃し、制圧下に置いた。隠れている公国兵を確認、反撃を受ければ掃討しつつ第4分隊と合流する。
「よし、よくやった。ありがとう」
「いえ、これくらいなんてことありませんよ」
スティール達第4分隊の働きで役場を制圧出来たと言っても過言ではない、謙遜することは無いと思うが、スティールはM4の銃口を下げながら役場へと入る。
「指揮所と思しき部屋に捕虜が1名、後は射殺した。回収と弾薬の補給を要請する」
「ですね……了解。弾薬も少なくなってきたのでありがたい」
「どういたしまして」
俺は無線のマイクについたPTTスイッチを押し、要請をかける。
屋上にはヘリが着陸できるスペースもある、捕虜の回収もそこで行おう。
「HQへ、こちら1-1、公国兵1名を捕虜にした。それから戦闘で弾薬を消費、弾薬の補給を要請する」
『了解、ヘリの誘導頼む。それから必要な弾薬を知らせよ』
俺は分隊員の持っている武器を思い浮かべ、再びPTTスイッチを押す。
「5.56㎜NATO弾と、.300BLK、5.56㎜の方は弾薬箱2つ、内1つは4本ベルトで頼む」
『了解した』
それだけで無線は切れる、弾薬の補給と捕虜回収ヘリの要請は済んだ、暗視装置を下し、隣にいたエリスからパラコードを取り出してもらう。
「はい」
「ああ、サンキュ」
それを俺に渡したエリスは「いいって」と言って部屋の中の公国兵の拘束に向かう。
エリスから渡されたパラコードをサイリウムの先端に結び、中ほどからサイリウムの中のガラス管を折る。
サイリウムの中で2液が混ざり合い、赤外線発光を始める。暗視装置でしか見えない光がサイリウムから溢れてきて、俺はその紐を円を描くように振り回した。
程なくして、ジャララバード上空をヘリの羽音が包み込む。
公国軍はこの音に間違いなく気づいただろう、行政区以外の公国軍もヘリの羽音に気付き、「敵の奪還が始まった」と飛び起きるに違いない。
着陸誘導用のサイリウムを回しながら補給と捕虜回収のヘリに位置を示す、飛来したのは夜の闇に溶け込むようなカラーリングのヘリ、MH-60Mブラックホークである。
エリスとエイミーが捕虜を連れて屋上に上がって来たと同時に、MH-60Mが屋上に着陸する。
ドアを開けて降りて来たのは、リハルト・ゴルズ軍曹と、フィリシア・ペローウッド伍長だ。
「さっさと歩け!グズグズするな!」
捕虜にM4を突き付けながら歩かせる。公国軍なので、銃の恐ろしさというのは十分分かっているのか、頭陀袋を被せられたまま素直に歩く。
「捕虜を引き受けます、弾薬は注文通りに」
「助かった、ありがとう」
リハルトとフィリシアは持って来た弾薬箱を下ろすと敬礼し、捕虜をヘリに乗せてすぐさま飛び立って行った。
「弾薬の補給が来たぞ、足りない者は順次補給にかかれ!」
弾薬箱を持って公国軍が弾薬補給所にしていたスペースに行くと、役場を完全制圧したメンバー達が揃っていた。
手分けして弾薬を配分、空になったマガジンに5.56×45mmNATO弾や.300BLKを次々と詰め込んでいく。
ヒューバートやエイミー達SAW手は弾薬庫をガパッと開けると、ジャラジャラとベルトリンクで連結された5.56×45mmNATO弾を肩に掛けたり、別のマガジンに繋がったまま入れていく。
俺も全てのマガジンに.300BLKを装填、再びマガジンが満タンになる。
作業の進み具合を見ると、他のメンバーも丁度装填作業が終わったようだ。
「準備出来たか?」
「出来ました!」
「同じく完了!」
エリスが最後のマガジンをポーチに入れて、蓋を閉じる。
「よし、行くぞ!」
全周警戒の陣形を取り、役場の入り口まで進む。
先程まで敵が陣取っていたエントランスホールに展開する。
「こちら1-1、各隊、状況知らせ」
『こちら1-2、北壁よりラインフォーメーションで進行、役場ラインまで到達』
『こちら1-4、1-2の西側に展開、ラインフォーメーションで役場ラインに到達』
どうやら役場周辺までを制圧したようだ、行政区の南側にある役場まで制圧出来たと言うことは、行政区の半分以上をガーディアンが掌握した事になる。
「いいか、このまま行政区を突き抜ける。全員警戒を怠らずに敵を行政区から叩き出す」
『1-2、了解』
『1-3、了解』
『1-4、了解』
全員からの返答が来る!戦う準備も、従う準備も出来ているようだ。
俺達はFAST"ドラゴン"ヘルメットにマウントを介して取り付けているGPNVG-18複眼型暗視装置を下ろし、警戒しながら行政区を南に向かって進んで行った。
===========================
第3者視点
ジャララバード居住区
「おい!四つ目の化け物達が行政区を進んで来る!」
「なんだあの銃は!?あんなに連射が効く銃なんて聞いたことが無いぞ!」
剣や槍、クロスボウ、新型の"異世界の銃"であるニルトン・シャッフリル銃を携えた公国兵が右往左往している。
突然始まった王国民兵"ガーディアン"の夜襲、行政区の指揮所に集まっていた指揮官がほぼ全員戦死し、公国軍の指揮系統が乱れていた。
残っているのは、ガーディアンの2倍ほどの兵力と、各区画に置かれた簡易指揮所のみだ。
「どうする!?」
「どうするって……!」
「指揮官に指示を仰ぎに行くぞ、奴らに神に選ばれし者の軍勢の力を思い知らせてやる」
バタバタと路地を駆け抜けて行く公国兵、その建物の中で息を潜める存在もあった。
「王国民兵だと」
「話にあったガーディアンか」
レジスタンス達である、バイエライドやクァラ・イ・ジャンギー同様、このジャララバードにも潜伏していたのだ。
それも1人2人ではない、ここにいるだけで、500人を超えるレジスタンスが一般市民に紛れて生活している。
「公国兵が何故こんなに動揺を?」
「敵がガーディアンって事か……もっと強烈な理由があるのか?」
指揮官が戦死して指揮系統に乱れが生じている、とは流石に言えない公国兵だが、その動揺は市民が気付くのには十分だった。
「多分奪還作戦が始まったんだ、さっきから銃のような音がする」
「それからトンボの羽音みたいな音も聞こえた、あれって確かガーディアンの……」
「そうだジェロニモ、確か"空飛ぶ風車"って公国兵は呼んでたな」
「シェロニモだって言ってんだろ、しかしそしたら公国兵の力も弱まる……公国からジャララバードを取り戻すチャンスだぞ」
シェロニモ、と訂正した男は、部屋の一角に移動する。
床板を引き剥がすと、狭い路地でも取り回しが良い様に短くされた槍が数本と両刃で刀身長めのダガーが出て来た。
レジスタンスはその武器を分散し、民家の床下や壁の中に隠していたのだ。
「おいワデル、他のレジスタンスにも伝えろ」
「了解、気を付けてな」
ワデルと呼ばれた男が、武器を持たずに家を出ていく。
居住区の公国兵がだんだんと慌ただしくなり始める、そんな中、居住区の1つの家から始まったレジスタンス達の行動は、居住区全体に広がりつつあった。
「よし、行くぞ、ジェロニモ」
「シェロニモだっつーの!」
2人の男は、ダガーを手に取って居住区へと繰り出した。
===========================
深夜のジャララバードの路地裏、警戒に当たる公国兵2人組の背後から、首筋に向けてダガーが突き立てられる。
「ぐっ!?」
「なっ!?……ぐはッ!?」
同僚が首にダガーを突き立てられて驚いた公国兵の胸からは、槍先が突き出ていた。
夜の闇の中、2つの死体が出来上がる。
レジスタンスが動き始めると、居住区でレジスタンスと公国兵の戦闘が始まった。
レジスタンス達は居住区の狭い路地を有効活用し、神出鬼没の攻撃を公国兵に繰り返していた。
そして武器も統一されておらず、ある者は床板を剥がしてダガーや短槍、クロスボウを持ち出し、ある者は包丁で公国兵の首を切り、またある者は釘の生えた棍棒やレンガで公国兵を撲殺していった。
そしてレジスタンス達は、始末した公国兵から武器を奪い始めた。
サーベルを始め、ジャララバードの市街地では使いにくいがリーチのある長槍を奪って、ダガーと併用するレジスタンスも現れる。
果ては奇襲で銃を奪うレジスタンスも現れた、彼は集団の最後尾の公国兵に、ナイフだけで襲いかかる。
ナイフを首に突き立てられた公国兵は銃を取り落としかけ、その銃を奪ったレジスタンスの男はボルトハンドルを操作しながら次々と公国兵を射殺して行く。
遠距離では命中精度の悪いニルトン・シャッフリル銃だが、10mも無い距離なら外さない。
射殺した5人は全員ニルトン・シャッフリル銃を持っていたので、銃と予備弾倉を全て回収しておく。
「ジェロニモ、お前の分だ」
「何回言わせんだ、シェロニモだって言ってるだろ」
銃を投げ渡され、受け取ってマガジンを確認する。まだ弾は入っている様で、スプリングにもテンションが掛かっている。
「後はこの銃は別のレジスタンスに配ろう」
「射程短いし当てにくいから近距離での使用に止めろよ」
そう言って公国兵から奪った銃は、公国に抵抗する「市民」に分配されて行く。
銃が市民の手に渡った直後、公国兵の戦死が急速に増えていった。
レジスタンス達が、自分達の街だと言わんばかりに居住区を取り戻して行く。
しかしレジスタンス達も無敵ではない、ある場所では公国兵に包囲されて槍で串刺しにされ、ある場所では袋小路に追い詰められて剣でその身体を解体されて行く。
居住区ではレジスタンス達と公国兵の散発的な銃撃戦も見られ、銃の扱いに長けた公国兵が連携してレジスタンスを追い詰めるが、追い詰められたレジスタンスは持ち前の地の利を生かして遊撃戦を繰り返した。
「誰か教会の鐘を鳴らせ!夜中だが知るか!民兵に聞こえるように!!」
「自分が行きます!」
レジスタンスの1人が教会に向けて走り出す、居住区のど真ん中にある教会だ。
数分後、教会にある鐘が、夜中の3時頃だと言うのにジャララバード全域に響き始める。
戦局は、明らかに流れつつあった。