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第137話 ジャララバードでの休息

私事ではございますが、パソコンを購入いたしましたので、初めてパソコンから投稿しています。案外書きやすくて驚いています。

18:30 ジャララバード軍事区 公国軍元司令部


「あぁ……疲れた……」


そうボヤいた俺の頭上を、司令部を離陸したチヌークがバイエライドの方へ飛んで行く。


司令部の表門から司令部に戻って来ると、小隊本部の隊員が退かした障害を再び元の位置にセットする。


軍事区全ての制圧が終了し、司令部に戻って来てヘルメットを脱ぐ。

司令部は表口、裏口共に封鎖され、鉄条網とクレイモア地雷によって障害が構築されている。


車輌は司令部の隣の馬屋に止めてあり、即応可能な体制が整っている。

司令部に入れば一応は安全だ、戦場のど真ん中だと言うことは理解しているが、一応の拠点となっているのだから。


「お疲れ様です、ヒロトさん」


「おう、お疲れ」


東ブロックを制圧していた第2分隊の分隊長、SAI GRYライフルを持ったガレント・シュライクが通りすがりに声を掛け、片手を上げて応えた。


他の分隊も戻って来ており、それぞれ休息を取っている。


部屋は用意されていないが、CH-47Fが空輸して来たコンテナがバラックとなり、自室として当てられている。もちろん男女は別になっているが。


その他にも、清潔そうな仮設トイレ、シャワールームなど、生活におおよそ必要な設備が整っている。


俺達が戦闘をしている間、建設工兵隊や小隊本部分隊、手が足りないところは他の隊から借りてでも、生活インフラをここに整えてくれたのだ。


俺達がしっかり休息を取って、万全の状態で戦える様に。

司令部入り口の段差に腰掛ける、彼等は補給や整備の為に、未だ忙しなく動いていた。


「……ありがたいことだな……彼らがこうして裏から支えてくれるから、私達は全力を尽くして戦える」


同じ事を考えていたのか、エリスがそう呟いて隣に腰掛け、ヘルメットを脱ぐ。


「……だな……全くもってその通りだ」


「私達も、彼らの気遣いに応えられる様に戦わなくちゃ」


俺はその言葉を聞き、強く頷きながら頭を揉む。FASTドラゴンヘルメットは軽いからずっと頭が締め付けられるのは想像以上にストレスだ。


「お疲れ、エリス」


俺はそう言いながらエリスの頭にポンと手を置き、揉む様にワシワシと撫でる。


「む……」


エリスはピクッとするが、特に嫌がる様子は無い。自惚れても良いなら、少し嬉しそうにも見える。


広場の方に目をやると、先程離陸して行ったチヌークから降ろされたであろう荷物を解いていた。


中身はレーションらしい、小隊長の健吾と、小隊副官のカレン・ブーゲンビル軍曹が配布を始めていた。


「おーい!飯だ!レーションですまんが」


「米軍のMREじゃないでしょうねェ!?」


誰かが声を上げ、周囲が笑いに包まれる。


「あんなクソ不味いモン食わせて士気を下げる訳ねーだろ!自衛隊の戦闘糧食だよ!自衛隊の飯は美味いんだぜ!?」


手元を見ると、確かにOD色のパックが積まれている。

ガーディアンでも、士気を保つ為に"食"については拘っている。ガーディアン2期生の入隊の折、村から避難して来た料理人をガーディアンに引き抜いて給食担当の職を与えているくらいだ。


戦闘糧食も、上手くなければ士気も下がる。世の中には飯が不味くて暴動が起こった軍隊もあるくらいだ。


そこで様々な国のレーションを食べ比べ、行きついた結果が「自衛隊のレーションが最も美味い」というものだ。


ガーディアンは自衛隊の戦闘糧食Ⅱ型を、レーションとして正式採用している。


「今日のはウィンナーカレーと肉団子だ!人数分しかないから早い者勝ちだぞ!並んで受け取ってくれ!」


健吾の呼び声に、隊員達がぞろぞろと並び始める。カレンと協力してレーションを受け取った隊員達が好きなところで食べ始めた。

ピクニックテーブルを陣取ったり、ベンチに座ったり、自室に持ち込んで食べる者もいた。


「エリス、ウィンナーカレーと肉団子、どっちがいい?」


「肉団子はこの間食べたからな……今日はウィンナーカレーがいいかな」


「わかった、待ってろ」


俺はJPC2.0を脱ぎM4を置いて、レーションを貰いに行く。

すでに何人も隊員が並んでおり、後ろに並んで自分の番を待つ。

隊員達は団長である俺が後ろに並んでも、俺を譲ろうとはしない。俺がそのような階級や役職による序列で列を譲られることを好まないからだ。


そういえば今の基地に引っ越してきた直後の飯の順番も、最初はよく譲られてたっけ……と思い出す。

エリスと一緒に飯のトレーを持って並ぶとまだ馴染んでいなかった隊員に譲られたが、譲る事はない、一緒に戦う仲間だから、そうして壁を作ったり遠慮したり、団長だからというような配慮はしないで欲しいと伝えそれが段々と受け入れられてきた。


第2期生___ドラゴンに村を追われ、希望者を募って入隊したクロウやシュバルツ達にもそう伝えており、やがてそれも受け入れられた。


階級はあくまでも指揮系統を作るためのものであり、上の者が下の者を抑圧したりするものではないというのが俺の考えだ。


そんな事を考え、思い出しているうちに順番が回ってきた。


「まだ残ってるか?」


階級上、指揮上の上官でもあり、古くからの友人でもある健吾にそう尋ねる。


「ああ、まだ両方ともあるぞ」


「ウィンナーカレーと肉団子、1つずつくれ」


「1人1つだぞ、欲張りだな」


「いや、エリスの分だよ」


「はいはい分かってるよ、1つずつな」


ケラケラと笑いながら健吾は1セットずつと簡易加熱剤を袋に入れて俺に手渡す、俺はそれを受け取って、こちらに転生してきてからの恋人であり、戦友、相棒のエリスのもとへ戻る。


「ほい、こっちがウィンナーカレーだ。簡易加熱剤もあるぞ」


「ありがとう。あ、これ、エイミーが淹れてくれた紅茶」


「エイミーの?」


エリスから紙コップを受け取り、隣に座りながら辺りを見回しエイミーを探すと、いつ持ってきていたのか自前と思しきティーセットで皆に紅茶を提供している。


その隣ではグライムズがコーヒーの準備をしていた、ガーディアンの隠れた名物、紅茶派とコーヒー派の対立構造はこんなところにまで……


苦笑しながら簡易加熱剤の用意、セットになっている袋の中に一緒に袋から出した加熱剤を入れる。加熱剤は空気に触れるとあっという間に熱くなるので、もたもたしていると火傷をするので注意が必要だ。


これで少し待つことになる、大体15~30分程だ。

袋から湯気が昇り、温かくなったら食べごろだ。


熱くなった袋から気を付けてパックを取り出し、ラベルを剥がせば食べられる。

俺は先に五目チャーハンのパックを開けた、パックを確保するためだ。

いい匂い戦闘後の疲れた身体にこの匂い、腹が鳴るのも当然か。


「いただきます」


スプーンを出して五目チャーハンに刺し、掬う。湯気の出るそれをふーっと冷ますように吹き、口へ運んだ。


ネギや椎茸の香り、豚肉の重厚感がちょうどいい味付けの飯とマッチして、とても美味い。即席の戦闘糧食としては、間違いなくトップレベルだ。


「うん、美味いな……」


もち米なので粘り気が強く腹持ちも良い、飯を美味く食べられる工夫はどの国でも様々な方法があるが、ここまで高度なのも日本くらいだろう。


食べ進めるうちに、隣からこれまた美味そうな匂いが上がる。

エリスが2つある白米のパックの内1つに白米を移し、空いたパックにカレーを入れていた。


「いただきまーす」


手を合わせて食べ始めるエリス、異世界では食べる前の祈りをするらしいが、エリスにこの意味を聞かれた時に教えたら、こちらのほうが気に入ってしまったようだ。


スプーンで白米を崩し、カレーに浸けて食べる。

エリスは美味しそうにカレーを頬張り微笑む、戦闘中のエリスとはまた違った魅力的な表情だ。


「ふふ……美味しい……」


隣から香ってくるスパイスを含んだ香りは確かに美味しそうで、俺は次はウィンナーカレーにしようと密かに決意した。


俺も五目チャーハンを食べ終えるとそのパックに肉団子を開ける。

白米のパックも開け、肉団子と一緒に食べる。

こっちもこっちでとても美味い、濃い中華風の味付けが白ご飯にとても合う。


「騎士団の頃は戦闘中の食事と言ったら、干し肉とピクルス位だったのに、戦闘中なのにこんな美味しいものが食べられるなんて、思いもしなかったぞ」


エリスが付け合わせの炭焼きチキンを食べながら言う。この異世界の住人には戦闘中にこのような温かい食事にありつけるのは高級将校くらいで、末端の兵士はお世辞にも高いとは言えない質の食事で戦場に赴く事を強いられていた様だ。


「戦闘糧食がこれだけ美味しければ、士気も上がるな」


カレーを口に運びながらエリスはそう言った、食事はストレスだらけの戦場における数少ない娯楽だ。状況如何によっては、兵士の唯一の楽しみと言っても良いだろう。


俺も肉団子と白ご飯を一緒に咀嚼しながら頷く、疲れた身体に、この濃い味付けが沁みる。

空腹だったこともあり、あっという間に食べ終えてしまった。


「ご馳走様でした……」


口の中をさっぱりさせようと、エイミーが淹れてくれた紅茶を飲む。さっぱりとしたアールグレイのアイスティーが、口の中を洗い流してくれる。


ゴミを袋に詰めて小さくし、まとめて捨てる。

エイミーから2杯目の紅茶を受け取って来ると、エリスも食べ終えていた。


「ほい」


「あ、ありがとう」


エリスは紅茶で喉を潤し、一息つく。


「疲れたろ?夜まで休んだほうがいい」


「ああ……ここまで長引いたり緊張感のある作戦はどうしても疲れが出るな……」


砂っぽい乾いた空気、昼と夜の寒暖差が体力の消耗を激しくさせる。訓練とはまた違った環境は、体力と精神力の両方を容赦なく奪っていく。

地の利は公国軍にあり、その事も不安を加速させる。色々な事がストレスとなって疲労感が増す、こういう時は兵をしっかり休ませ、自分も休むに限るのだ。

紅茶を飲み終えた紙コップを握りつぶし、廃棄物のコンテナに投げ入れる。


「休む前に少し報告しなきゃな……」


「あ、私も行く」


エリスも立ち上がり、自分のM4とプレートキャリアを持って今は俺達の司令部となった建物の中に入ってく。

ふと広間から近い部屋に簡易ベッドが並べられているのが見えた、ここの戦闘で負傷者が出たという報告はあったが、そんなに重傷者が出たのかの部屋を覗き込んだ。



そこには、衝撃の風景が広がっていた。



「あ゛あ゛~……」


隊員がベッドに横になり、衛生兵に処置を受けていたのだ。

念の為に言っておくが、処置(意味深)では無い。

怪我でもしているのかと思ったが、どうやら違うらしい。そして衛生兵のセレナやスニッドが、横たわる隊員に手をかざし、隊員の身体とかざした手の間でピリピリと電気が流れている様だ。


「……なあエリス、あれは何だ?」


「あれ?ああ、電気マッサージの事か。雷魔術を限界まで弱めて施術しているんだ」


振り向き投げた質問に彼女はそう答える。想像したが、どうやらどうやら電極マッサージの様なものらしい。


どうなんだろう、魔術を直接浴びた事が無いので、よく分からない。


「ヒロトさんもどうですか?この次ですが」


セレナが施術をしながら振り向く、興味有り気に見ていたのに気付いたのだろう。


「いいのか?じゃあ……」


空いているベッドに近付こうとした時、袖を軽く引かれる。エリスだ。


「ヒロト、小隊長達が待ってるぞ、そっち早く行かなくちゃ」


言われてハッと思い出す、デブリーフィングがあるのを忘れかけていた。


「すまんすまん、魔術にこんな使い方もあるんだなってびっくりして、ついな」


頭を掻きつつ、その部屋を出る。

さ、デブリーフィング終えたらとっとと寝よう。


===========================


ブリーフィングを終えて、自室に戻って来た。どうやらクァラ・イ・ジャンギー要塞での戦闘で被弾や敵の攻撃による負傷者が5人程出た様だが、死者はゼロ。

要塞を確保し、砲兵中隊と迫撃砲小隊は要塞に入ったらしい。


後はこちらからの報告、道が狭いので白兵戦の有効活用すべし、という報告で、後はゆっくり休めと解散になった。


現在時刻は19:40、エリスと分かれて充てがわれた自室に入り、M4とプレートキャリアを置いて、新しいコンバットシャツとコンバットパンツ、着替えを持って、シャワーを浴びに行く。


基地の中では1st(ファースト)ラインのみを着用、ベルトにはホルスターやハンドガンのマグポーチが取り付けられていて、いざとなったら拳銃のみだが反撃する事も可能だ。


シャワーは野外入浴セットのシャワー室を整備して貰っている為、問題は無い。

浴槽は場所の兼ね合いから用意出来なかったが、戦闘の合間、戦場でこれだけあれば十分だ。


幸い1つ空いている様で、脱衣かごに脱いだコンバットシャツとコンバットパンツを入れておく。


よっしゃ、風呂だ、戦場だが、こんな環境で風呂に入れるのはありがたい。

シャワー室に入り、空いているシャワーの前に座る。


「あ、お疲れ様です」


隣のシャワーを使っていたのは、第3分隊の副官ルイズだ。


「ああ、お疲れ。気にせず疲れを癒してくれ」


「ええ、ありがとうございます」


言葉を交わし、シャワーを出して頭から浴びる。


「……うわっ!?」


「どうしました?」


髪を流した水が、茶色い。

髪から流れたまっ茶色の水が、洗い場の床に落ちて排水溝に流れていく。

……やばい、病気か……?砂漠だけで発生する奇病か……?

俺は少し慌てたが、隣でシャワーを浴びているルイズは笑っていた。


「はははっ、ビビりますよね!俺も最初ビビったんすよ。砂漠の砂ってヘルメット被ってても入って来るんですね……」


それを聞いて少し安心した、なるほど、砂漠の砂が入り込んで流れてきたのか……

言われて少し意識してみると、髪の中が少しじゃりじゃりするような気がする。

これはしっかり洗わないとハゲそうだ……


「毛穴に砂が入り込んで詰まりそうですね……」


「ああ、しっかり洗っとけ、将来ハゲたくなけりゃな」


俺達は言いながら、頭を洗い流した。



「ふぅーぁ……」


シャワーを終え、汚れたコンバットシャツとコンバットパンツを洗濯して戻ってきた。

ベッド脇に掛けていた腕時計の時間を確認、夜戦になる事を考えたらもう寝たほうが良い時間だ。


しかし、基地ではエリスと寝ているし(意味深な意味でも)、FOBでもエリスと相部屋だった。一人で寝るというのは、本当に久しぶりに感じる。

この孤独感は嫌いではないが、何か物足りなく感じるのは、エリスと寝るのに慣れたからだろうか。

眠ろうと思ったそのその時、部屋のドアがノックされた。


『ヒロト……居るか?』


聞きなれた声、エリスの声だ。


「エリス?」


ベッドに寝転びかけていた俺は身体を起こし、ドアを開ける。

ドアの前には、俺と同じコンバットシャツとコンバットパンツを身にまとったエリスが、いつもの様に立っていた。


「どうした……?寝ないのか?」


「寝る前に、声を聴きに来たのと……ちょっとやりたいこと」


エリスのその表情が「迷惑かな……?」と戸惑っているように思えた。


「……いいよ、入りな」


「ん、ありがとう」


エリスが部屋に入るとドアを閉め、エリスはベッドに座った。


「……夕方、雷魔術マッサージ見ただろう?」


「ああ、見た。風呂上がりに覗いたらもう閉まってて残念だったが……」


そう、風呂上がりのマッサージを受けようと思ったが、既に衛生兵は撤収済みだったので、残念ながら雷魔術マッサージを受けることが出来なかった。


「その……私も出来るんだ……その……雷魔術マッサージ」


「……本当か?」


「ああ、どうだ?今宵はヒロト専用のマッサージ師になってやるぞ?」


「ぜひ頼む!」


エリスの口から出たのは、願っても無い申し出だった。


「よーし、じゃあうつ伏せで、横になってくれ」


彼女の言葉通り、俺はうつ伏せになってベッドに転がる。

横になった俺の腰にそっと手を当てると、攻撃魔術とは違う、優しく淡い黄色の光が彼女の掌に灯る。


雷精(らいせい)よ、少し力をお貸し下さい……」


囁くようにそう言うと、ぱりぱり、と音を立てながら電気が走る。感覚はするが不思議と痛くは無い。やはり魔術だからだろうか?

そして、その電流が流れるごとに、疲れや凝り、痛みも、まるで電気分解されている様に解されていく。


「あぁ~……」


「ふふっ、どうだ?気持ちいいか?」


「ああ、気持ちいい……」


「そんな年寄りみたいな声出して……」


「何言ってんだ、転生してくる前は25歳だったんだぞ、精神的にも十分おっさんだよ」


「なーんだ、寂しいこと言ってくれるな。身体は同い年なのに永遠に追いつけないじゃないか……」


エリスは寂しそうにそういうと、若干反応に困ってしまった……そんな顔すんな……


「……私な、さっきこのマッサージをヒロトが受けようとしたとき、ちょっと、ちょっとだけな、胸がちくってした」


いつもの凛々しいエリスとは声音が違う、弱弱しい声音だ。


「……セレナがヒロトに触れるの……ちょっと嫌だったんだ……ふふっ、可笑しいよな、ヒロトより長く一緒に戦って来た戦友に対して嫉妬だぞ?」


俺はかける言葉を探していた、25年も生きてきて、今こんな状況でかける言葉なんて、誰も教えてくれなかったし、そんな言葉が必要な状況に陥る事も無かった。

俺は必死に考えた言葉を、足りない語彙力と拙い文章力で必死に絞り出す。


「……いや、俺は正直……そんな独占欲を抱いてくれるのは嬉しいし……俺だって嫉妬位するさ……」


「……いいのかな……そんな感情を抱いても……」


「あー……その、何だ?そういうの含めて、恋愛なんじゃねーの?」


そういうと、エリスは俺の背中にギュッと抱き着いてくる。待ってコンシャツだしめっちゃ当たってるんだけど……!


「……ヒロト……大好き」


「……ばーか、俺の方が好きだっつーの」


そういいながら身体の向きを変え、エリスをしっかり抱きしめた。


しばらくそうしていただろうか、エリスが小さく欠伸をしたのを感じた。


「……そろそろ寝ようぜ、部屋まで送っていくよ」


「贅沢を言えば一緒に寝たいけど……そうだな、部屋で寝るとしよう」


エリスを女性用バラックまで送っていく、外の空気は砂漠の夜らしく、少し冷たい。


「そういえばエリスはマッサージして貰ったのか?」


「ああ、ここに来る前にセレナにな。結構よかったから、ヒロトにもしてあげようと思って」


こいつ超かわいいな……嫁にしたい、嫁にしよ。


「ん、送ってくれてありがとう。また作戦の時に」


「ああ、おやすみ、冷えるからちゃんと布団かけて寝ろよ」


エリスはバラックの前でそう言って振り返り、微笑みを浮かべながら小さく手を振り、バラックに入っていった。

俺も足早に自分のバラックに入り、目覚まし時計でアラームをセットして布団をかぶって寝ることにした。


久しぶりに寝た一人の夜は、やっぱり少しだけ寂しかった。


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