第13話 いざ教会へ
2日後、エリス視点
結婚式はもっと嬉しい物だと子供の頃から思ってた。
でも、実際は何の感慨も浮かんでこない。
牧師が何か言っているが、全く頭に入って来ない。
横目に、ケインが自慢気な表情で前を向いているのが見える。
何が自慢なのか全くわからない、分かりたくもない。
ヒロト……大丈夫かな……
「……〜新郎は、永遠に夫婦の愛を誓いますか?」
「はい、誓います」
ケインが答えているが、私自身は本心からこいつと愛を誓う気は無い。
「では、新婦。あなたは生涯夫を支え、隣で暖かく見守り、永遠に夫婦の愛を誓いますか?」
その時だった。
『な、何だ貴様ら⁉︎』『ここで何してr』
パパパパン!パンパン!
『ぐわぁ!』『ギャァァ!』
外からだ、衛兵の誰何が一瞬で悲鳴に変わる。
「何だ……?外か?」
ケインも牧師も、招待客の全員も怪訝な表情で教会の外へ繋がるドアに注目する。
そのドアが、ドゴン!ドゴン!と、鳴り、揺れる。
そして
バァン!とドアの蝶番が壊れ、内側へ吹き飛ぶ。
外から漏れる光の中に、希望を見つけた。
「エリス!迎えに来たぞ!」
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少し前、近くの森
屋敷で既に自己紹介はした。
セレナ、ガレント、スニッド、エイミーは良いとして……
メンバーの男+俺と比べて少し小柄な男はユーレク・クライフス(17)。
もう一人はブラックバーン・マーズ(16)。
女子がもう1人、クレイ・パルディア(16)と言うらしい。
今隠れ家のメンバーには森の入り口に集合して貰った。
大勢で移動すると目立つからだ。
メンバーは7人、全員がエリス派だ。
エリス派、というのは、屋敷の中での派閥だ。
エリスに従い、ケインとの結婚に反対していた者たちらしい。
ケインは屋敷の中でも評判があまりよろしくなかったようだ。
俺はエリスを攫ったあと、エリスを連れて旅に出ようと思っていた。
彼らもあの屋敷での仕事がよっぽど不満だったようで、俺たちに着いて来てくれるという。
隠れ家でそう聞いたとき、本当に頼もしい仲間を得たな、と涙ぐみそうになった。
話を戻す。
俺は屋敷でMP5SD6をセレナに預け、新しい武器を出した。
前世、アメリカ軍の主力小銃だった、M4A1カービンだ。
これから俺たちの主力小銃になっていく銃でもある。
何故この銃を選んだのかというのは、2つ理由がある。
まず1つに、レールシステムが装備されているからだ。
俺の出したM4はMWSなので、ハンドガード4面と機関部上部に装備されているレールシステムに様々なアクセサリーを取り付けることが出来る。
現在俺たちのM4にはTangodownのバトルフォアグリップが取り付けられている。
照準器を調整する時間が無かったのでダットサイトやスコープは載っていない。
2つ目に派生バリエーションの多さだ。
M4には様々な派生バリエーションがある。
バレルの短い近接戦用のMk.18やM733
狙撃銃型のM110(SR-25)
その他にも、機関銃型や偵察ライフル型などが存在する。
しかし、M4にも欠点がある。
主な物は作動方式だ。
M4は、発射ガスを直接ボルトに吹き付けるリュングマン方式を採用している。
その為内部機構がガスの残りカスで汚れやすく、また熱も直接伝わる為長く撃ち続けていると最悪ハンドガードやレシーバーから発火したり、弾詰まりなど作動不良を起こす可能性がある。
そこで、俺はショートストロークガスピストン方式に改良するキットをM4に組み込んだ。
ショートストロークガスピストン方式は、取り込んだガスでピストンを短い距離後退させ、ピストンに取り付けられているピストンロッドがボルトをキックし後退させるというものだ。
これによって作動不良は大幅に減少した。
ガスピストン方式の欠点は、内部機構が動く事による命中精度の低下だ。
リュングマン方式は内部で動くパーツがガスピストン方式より少ない為、命中精度は高いと言って良い。
しかし、ガスピストン方式の方がメリットが多い。
前世では、個人的にこれを購入し、組み込む兵士も多いという。
そして銃身過熱。
M4は、M16より銃身が短い分早く過熱する傾向がある。
しかしこれも熱に強く、過熱しにくい17-4鋼をコールド・ハンマー方式で製作したバレルに換装する事で解決した。
前世のアメリカ軍では主力部隊の他、NAVY SEALsやグリーンベレー、果てはあの反米意識の強いフランスまでもが採用していた。
本当はSCARやACRにしようと思ったが、前世でかなり思い入れがあったのと、出回っている情報の多さからくる安心感、そして俺が唯一内部をネジ1本に至るまで分解し、組み立てた事があり、この銃の扱いには絶対の自信があるからだ。
SIG516は検討したが、新しすぎて情報が少なく、不明瞭な点が多かったからだ。
下手に新しいが細部が不明な銃を使用するより良い。
しかし、ガスピストンはいちいち組み込まなければならない為、3丁しか無い。
現在、俺、ユーレク、ガレントが所持している。
勿論使い方は教えてある。
エイミーは引き続きMINIMIを担当して貰っている。
「よし、じゃあ移動しよう」
と言って俺はスマホを取り出し、操作。
目の前にはランドローバー110ーーそれを特殊部隊用に改修したSOVが3台現れる。
「うわっ!召喚魔法⁉︎」
「何だこれ?」
メンバーが驚き、珍しそうにSOVに近づく。
「これに乗って移動するぞ、2台目はガレント、3台目はブラックバーンが運転してくれ」
指名された2人が驚いて顔を見合わせる。
「いや、やった事ないですし……」
「大丈夫だ、ちょっと来てくれ」
スマホを操作し、ガレントとブラックバーンの写真を撮る。
と、ガレントとブラックバーンが淡く発光し始める。
「な、何です?これ?」
ブラックバーンが驚きの声を上げるが、笑って流す。
暫くして発光が収まると、ガレントとブラックバーンがまた驚きで顔を見合わせる。
俺は2人ににこやかに問いかける。
「どうした?」
「いや、これは……」
「俺たちにも運転出来ますか?これ」
俺が今使ったのは[伝授]システムだ。
これは俺がこの能力を相手に使用した際、相手がその道具を操作・運転・操縦を行う事が出来る能力だ。
これでSOVの運転手は俺含め3人、今は充分だ。
「教会に着いたら俺とエイミー、ガレント、ユーレクは降車、中に突入する。いいな?」
「了解」
「わかりました」
返事を聞くと、全員がSOVに乗り込む。
俺は新たに出した道具を後ろに積み込み、運転席に座る。
「出発!」
ディーゼルエンジンの音を響かせながら、3台が出発した。