第126話 本隊要請
注意事項
今回のこの前書きは、投稿フォームで言う所の「本文」に当たります。
さて、先日より話題になっている「2CHeard」と言う中華サイトへの無断転載騒動ですが、どうやら作者名だけでなく注意書きをした前書き後書きも削られ、1番あらすじも削られる様です。
確認したらこの作品も無断転載されておりました。
尚、このサイトを覗きに行くのは止めた方が良い様です。
ウィルスに感染したら、情報を抜かれたりする可能性があります。
Twitterで見かけた良い方法として「後書きか前書きに本文を乗せ、本文には注意書きや前書き後書きを書く」と言うのを見つけました。
対策と言うよりは抵抗に近いですが、ここで試してみます。
本作「ミリヲタが異世界に転生して、現代兵器を駆使して仲間達と生き残っていく話」の原作者は「中井 修平」です。
掲載サイトは「小説家になろう」のみで、その他サイトには掲載しておりません。
https://ncode.syosetu.com/n4340cw/
今後とも「ミリヲタが異世界に転生して、現代兵器を駆使して仲間達と生き残っていく話」と中井修平を、どうぞよろしくお願い致します。
それでは本編をどうぞ!
俺はFOBに戻ってから司令室に入った。FOBには鍵を掛けて居た為、騎兵隊が中に入って物色した形跡は無い、尤もロンメルからの信頼も厚い騎兵隊が興味本位や盗み目的でもFOBに侵入する事は考えられないが。
俺はスマートフォンを取り出し、FOBに戻った部隊に装備の解除と点検、待機を命じた。
しかしまだ俺はやらなければならない事がある、上空を旋回し、待機中のタロン隊の着陸場所を作らなければならない。
幸いFOBにロンメルが待機してくれていた為、交渉に大きな席を設ける必要は無さそうだ。
「エリス、エイミー、ヒューバート。3人は装備を解除せず来てくれ」
「何かあったのか?」
エリスがヘルメットを脱ぎながら怪訝な表情を浮かべるが、俺は首を横に振る。
「大した事じゃ無いが、タロン隊の着陸地点を作らなきゃならん。ロンメルと交渉後、すぐそちらに向かう」
「あぁ、そういう事か。良いぞ」
「私も行けます、ヒロトさん」
「いつでもどうぞ」
三者三様の返事をして頷く、俺はその3人を引き連れてFOBの門のところで入っていく車輌を呆然と眺めているロンメルに声を掛けた。
「ロンメル、上で待ってる仲間を下ろさなきゃならない。土地を借りることは出来ないか?」
「あ……あぁ、あの空飛ぶ風車の事か?」
空飛ぶ風車とよんで上空を飛ぶAH-64Eを指差す。
「そうだ、あいつらは地上に降りないとエサが食えない。下ろさないと仲間が死ぬ事になってしまう」
「あぁ……そうか。街の東側に広い土地がある、あの辺りは誰も使ってないから、そこなら良い」
街の東側の入り口あたりには、確かに空き地とも呼べる広いスペースがあった。そこを借りて良いと言う。
「分かった、助かる。行くぞ」
「了解」
エリス、エイミー、ヒューバートの3人は返事をして装備を身につけたまま先程まで乗っていたランドローバーSOVに乗る。
FOBの営門を出た俺達は街を抜け、街の東へと抜けて行く。
FOBから距離にして2km程だろうか、空き地というか、明らかに街の外と思われる場所に出る。
俺はそこで車を止め、車から降りてJPC2.0のアドミンポーチからiPhoneを取り出す。
恐らくヘリの燃料もそろそろ限界に近いだろう、召喚アプリから施設、"ヘリパッド"を召喚した。柵に囲まれた100m四方のコンクリートの地面が現れ、給油や整備に必要な設備と簡易兵舎が召喚される。
設営が終了し、給油設備がきちんと稼働する事を確認してから無線を繋ぐ。
因みに燃料タンクは地下にある。
「こちら1-1、タロン隊、レッドスモークを目印に着陸せよ」
俺はそう言いながらスモークグレネードをわき腹のポーチから取り出し、ピンを抜いてその辺に投げる。地面に落ちたスモークグレネードはすぐに赤い煙を吐き出し始め、広範囲に舞い始める。
『了解、感謝します』
反応はすぐに来た、返答が来てから1分もしない間に、ヘリのローター音が聞こえてきた。
4機のAH-64E"ガーディアン・アパッチ"が上空を通過、旋回してレッドスモークを頭の方にし、ダイヤモンド編隊を組んでゆっくりとヘリパッドに着陸した。
「エンジンをカット、給油を始めてくれ!」
『了解』
無線の声が耳元から聞こえ、コックピットの中でエンジンをカットオフするパイロットが見える。
メインローターとテールローターの回転が少しずつ小さくなっていき、最後には完全に停止した。
俺はヘリパッドに足を踏み入れ、先頭の機体のパイロットに声を掛けた。
タロン隊の隊長は、モーガン・ディーレイ大尉だ。
「モーガン!サニード!よく来てくれた。皆のお陰で公国軍も暫くは要塞から出られないだろう」
「ありがとうございます、ラプトルの森の亜竜に比べれば、拍子抜けでしたがね」
ラプトルの森のカノーネン・アンキールの硬さは確かに苦戦しそうだ、何しろ30mm機関砲が効かず、ヘルファイア対戦車ミサイルと戦車砲でしか撃破出来ないのだから。
それに比べて人間ってのは脆弱だ、30mm機関砲でもオーバーキルになり、撃ち込む所によっては22口径の小さな弾丸でも致命傷になるのだから。
「これから本隊を呼ぶ、到着まで5日はかかるだろう。ローテーションを組んで緊急発進体制を整えてくれ、整備道具は小屋にある」
「了解、ありがとうございます」
ディーレイはそういうとヘリパッドの床下にある給油機構からパイプを機体につなげていく、整備士が居ない為パイロットのみで整備を行わなければならないが、仕方がない。
俺はヘリパッドの周辺の防御を鉄条網とブロックによって強化し、バイエライド臨時FOBへと戻った。
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基地に再び戻り、俺は電話を使って本部と連絡を取っている。
「あぁ、クァラ・イ・ジャンギー要塞は陥落した。奪還の為に戦力が足りない、本隊の派遣を要請する。すぐにだ、施設は俺達が確保する。……あぁ、頼む」
受話器を置く、何とか本隊の派遣要請を取り付ける事が出来た。
いかんせん要塞攻略には頭数が足りな過ぎる、支援兵科含め35人では攻略は不可能だ。
クァラ・イ・ジャンギー要塞を再び陥落させるには、俺達か主力部隊を呼び寄せる必要がある。
所謂"中隊戦闘群"を編成、要塞を攻略して行く事になりそうだ。
もちろん敵も主力部隊を揃えてくる、今までの質であればいくら数が増えたところで特に支障は無かったが、銃が出て来た事により取れる戦術なども変わってくる。
頭の中で作戦を立てながら司令室から出る、やる事が山盛りだ。
司令部に行ってロンメルと交渉、本隊の受け入れ先を探さなくてはならない……
俺は1stラインを身につけ、ライフルを2点スリングで担ぎ、背中に回す。
そのままFOBの指揮をエリスに任せ、司令部に向かった。
司令部の中は豪華とまでは言わないがそれなりの装飾が施されており、近い部屋からは治療の痛みに負傷兵が声を上げていたり、別の部屋からは士気高揚の為の兵士の掛け声が聞こえて来る。
司令室は奥、魔術ランプに照らされた部屋に入ると、ロンメル指揮官は奥の椅子に座って待っていた。
「遅れて失礼、やる事があってな……」
「あ……あぁ、良い。私も君に少し聞きたい事があった」
ロンメル指揮官が机に肘を付きながら俺に話し出す、彼女の両脇にはクルトとミハエルが立っており、サーベルを腰に下げ近接戦用に短く切り詰められた槍を持っている。
「君達が戦っている様子をレジスタンスの戦士が見ていた。あくまで報告が上がって来ている程度なのだが……君達と敵が似た武器を使っているのが気になったようだ。……私もそんな事は思いなくないが……一部の戦士の間では敵と君達が結託していると疑っていると者もいる」
「……はぁ……?」
静かな声で唐突にそう切り出され、俺は混乱した。
「もちろん私が疑っている訳では無い、君達は王国民兵としてこの地を救いに来てくれた勇敢なる兵士だ。……だが、そう言う不安がある以上、レジスタンスの戦士は君達と安心して戦えない」
……なるほど、一応状況は確認出来た。
つまり敵に銃を持った奴がいるという事で、似た武器を使う俺達の公国軍への関与が疑われているという訳か。
気持ちは分かる、俺がロンメル指揮官の立場なら、疑うのも無理は無いだろうと思う。
「大きな音が出る武器、見えざる礫、光の矢を放つクロスボウに良く似た武器。……君達が使っているのもそれと同じ物だ。私達は守護者を疑いたくは無いが……事と次第によっては」
その言葉とともに、ミハエルとクルトに槍を喉元に突きつけられる。
俺はさっと手を顔の横に上げ、手を出さない事を示す。
「……俺達が公国軍と関与していない事を証明すれば良いのか?」
俺がそう言うと、ロンメルの狐耳がピクリと動く。
「……可能なのか?」
「あぁ、可能だ。身の潔白を証明するには、公国軍の使ってる武器と俺達が使ってる武器の違い。俺自身の身分を君達に打ち明ける事で恐らく出来ると思う。それが証明になればだけど……」
「そうか……武器を下ろせ」
ロンメルがそう言うと、クルトとミハエルは槍を下ろす。
どうやらロンメルのスタンスは「私は信じているが、部下に少し疑っている派閥がある」という事らしい。
本気で俺を殺すつもりも無いらしい、クルトやミハエルも同様だ。
「正直なところ、私は君達を信じたい。だがレジスタンスの戦士も長年戦って来た仲間だ」
「分かってる、どちらを取れとは言わない。……実はだな、クァラ・イ・ジャンギー要塞とジャララバードの奪還の為に、ベルム街から部隊を呼び寄せている、ここに駐留する許可と駐留場所が欲しい」
ロンメル自身が信じてくれているのはとても助かる、彼女の為にも、早急にレジスタンスの疑いを晴らす必要がある。
彼女は暫く悩む様に眉を寄せるが、1つ頷いて答えた。
「分かった、君達の身の潔白が証明されたら、それも許可しよう」
「助かる、早速今夜にでも疑いを晴らしに行く。その間にと言っては何だが……ガーディアンの隊員達とも交流させたい。武器のデモンストレーションも兼ねて……是非ロンメル指揮官には出席していただきたい」
「あぁ、その席も用意しよう。無防備と思われるかもしれないが、レジスタンス達を要塞から逃がしてくれたんだ、君達が公国軍と繋がっているとは思わないが、報告を待っているよ」
俺は騙すつもりも嘘を吐くつもりも無い、25年以上生きて来た中で、失った信頼を再び築き上げるのは並大抵の努力では足りない、死ぬ程努力が必要と知っているから。
ロンメルも俺の良心を信じると言ってくれた、答える他に方法は無い。
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第3者視点
レジスタンス司令部の前の広間、正面にオアシスを望むこの場所に、本来ならこの異世界に存在し得ない装備を身に付けた兵士が揃っている。
彼らはガーディアン歩兵第1小隊第3分隊。車輌による戦闘を得意とするこの隊は、風俗街における戦闘で車輌部隊が分断されつつも見事全員生還させた精鋭である。
分隊長はストルッカ・スミス准尉、彼が握っているのはM4A1カービンだが、彼なりのカスタマイズが施されている。
ストックはMAGPUL CTRストックに換えられ、ハンドガードもMOEハンドガードに変えられている。
MOEとはMagpul Original Equipmentの頭文字を持ったもので、MAGPUL独自の機器、という訳だ。
レールの無いハンドガードには別パーツを使いレールを取り付けており、 Surefire M952Vを右側に、AN/PEQ-15を上面に取り付けている。
機関部上部には EOTech EXPS3ホロサイトを載せている。
このホロサイトはG33STSMagnifireブースターとタンデムする事が多いが、彼は単体で載せている様だ。
この分隊には"MAGPUL"のパーツを取り付けている隊員が多く、ストックやハンドガード、グリップまでMAGPULの流行が届いている。
もちろん他の分隊にもMAGPULのライフルパーツを取り付けている隊員も多いが、分隊のライフルがMAGPUL増し増しになっているのもこの分隊くらいだろう。分隊の"マグプライズ"が最も進んでいる。
オアシスの方向には鎧を着た人形が8体並んでおり、その前には50mの距離を開けて第3分隊2班の4名の隊員が整列している。
班長は、ルイズ・バルスター曹長である。
「では、これよりデモンストレーションを行います。大きな音がしますので、ご注意下さい!」
ストルッカが声を上げ、ロンメルやクルト達兵士の視線がルイズ達の班に集まる。
ルイズ達はアドミンロード、P226にマガジンを入れ、スライドを引いて初弾を装填しホルスターに戻す。
M4のチャージングハンドルを引き、P226とM4に慣れた手つきで初弾を薬室に準備させた。
ルイズはレールのハンドガードにAFG2アングルドフォアグリップを取り付け、AN/PEQ-15LAMとinsight M3Xフラッシュライトをデュアルスイッチで操作出来るようなっている。何も付けて居ないレールはレールカバーで塞がれており、タンカラーと黒の縦縞になっている。
ストックもCTRストックに換装されていた。
光学機器にはAimpoint マイクロT-1ダットサイトが載せられている。
「目標、前方人型標的!ダブルタップ4回、2回ずつ!射撃用意!」
ストルッカが声を張り上げると、ルイズ達4人がM4、SAW手のレベッカ・エルタス伍長はM249をハイレディ・ポジションで待機。
「撃て!」
号令と共にまずM4が火を噴く、彼らの性格なダブルタップは1人2体の鎧を着た人形に、撃った数だけ穴を開けていた。
石畳の地面に空薬莢が転がると、澄んだ音を立ててその場に響き渡る。
「撃て!」
次にM4と共にレベッカのM249が火を吹き始める、5.56mmNATO弾が金属板が貫通する音を立てながらベルトリンクが空薬莢と共に吐き出され、余りの勢いに鎧を着た人形が蜂の巣になり、破片が飛ばされる。
群衆からはどよめきが湧き上がり、ロンメルも驚いた表情を浮かべて口を半開きにしている、閉じなさいその口は。
「次!ピストルトランジション!5発5発!撃て!」
ストルッカが再び声を上げると、ルイズ達が再びM4を構えた。
そしてソードグリップでハンドガードを横から掴むと、セミオートで速射を始めた。
先程同様の射撃が5発、エジェクションポートを確認して安全装置をかけ、腰に下がっているSafariland6378や6004ホルスターからP226を抜いて射撃を開始。
パンパン!パンパンパン!
M4より更に軽い音を立てて次々と9×19mmパラベラム拳銃弾が命中し、カンカンと鎧に音を立てて穴を開けていく。
左右を確認し、P226をデコッキングしてホルスターに戻し、M4をタクティカルリロードして構えを解いた。
「どうぞ手に取ってご確認を」
ストルッカはそう言うと、標的になっていた人形の兜を持ってロンメルに渡す。ロンメルはその兜を受け取った、弓矢の貫通を防ぐ為の厚い兜は綺麗な穴がいくつも空き、蜂の巣になっている。
「次に狙撃をお見せします、こちらへ」
ストルッカ含めた1班が群衆を誘導する、その間に2班は空薬莢とベルトリンクを拾いきっていた。
司令部前広場から湖を望む展望台、そこで待機していたのは、第2狙撃分隊。
分隊長兼狙撃手のアンナ・ドミニオンが、L115A3のバイポッドを立ててプローンしていた。
隣ではニーリングの姿勢のエル・リークスが、暗視ゴーグルを通してレーザー測距装置付きの双眼鏡を覗き込んでいた。
傍らにはモニターがあり、標的近くのカメラの映像が映され、命中を確認する事が出来る。
「目標正面、700m、左から右の風、微風……」
レジスタンスの視線が注がれる中、エルはアンナに諸元を伝える。
狙っているのはオアシスの向こう側、700mの所にある、鎧を着た人形だ。
「撃て」
彼女はゆっくりと引き金に指を掛け、絞る様に引いた。
ダァン!
アサルトライフルよりも重い銃声、一瞬だけのマズルフラッシュ。音速の3倍で飛翔した.338Lapuaの弾丸は、700m先にある人形の兜を金属音を立てて吹き飛ばした。
その映像が流れると、再びどよめきが湧いた。
700m、弓矢や魔術では考えられない超射程だ。
「今の射撃、魔力の流れを感知した方はいらっしゃいますか?」
ざわめきの中、挙手をする者は誰も居ない。レベル4の魔術師も居るのに、誰1人として手を挙げる者は居なかった。
それもその筈、銃の全ては、火薬の燃焼ガスとバネで動いており、その洗練された技術の塊に魔術など入り込む余地すら無かったのだ。
「ガーディアンはこの武器をどのくらい保有しているんだ?」
1人の将校らしき人物がストルッカに質問を投げかける、彼は後方支援の様であまり前線には出ないが、ロンメルと共に作戦を立て共に闘ってきた証の様で、勲章をいくつも付けている。
「全員が1人1挺、ないし2挺を携行しています。場合によっては3挺を持っている事もあります」
これを全員が配備している、それを聞いてレジスタンス達は震え上がり、同時にガーディアンが味方でよかったと心から安堵する。
「疑いは晴れましたでしょうか?もし私達が裏切り者であったら、既に貴方方はあの標的と同じ様になっているでしょう」
「あ……あぁ……そうだな……」
レジスタンスの高位指揮官が集まっている場所で、現代兵器を装備したガーディアンの兵が大暴れすれば、恐らくレジスタンスは総崩れを起こす。
「して、ヒロト指揮官はどこに?」
「クァラ・イ・ジャンギー要塞です、貴方方と共に戦う為に必要な情報を取りに戻ってます」
ロンメルの問いにストルッカはそう答え、砂漠の澄んだ夜空を見上げた。