第122話 FOB設営
第3者視点
エリスは何だか少し不機嫌になっていた、それを心配したのか、エイミーが声をかける。
「エリス様、具合の方は如何ですか?」
「あぁ……体調は大丈夫だけど……」
エイミーはM249を携えたまま首を傾げる。
「……何か、ヒロトと他の女が一緒にいるのが気に食わん……大丈夫だと思うが、ヒロトもあの女が気になってた様だからな……」
「大丈夫ですよ」
別の方から声が掛かる、エイミーと同様M249paraを携えているヒューバートだ。
「ヒロトさんは浮気なんてしないですって」
「そうですよ、そうじゃなくてもエリスさんとヒロトさん、ラブラブじゃないですか。そんな心配ないでしょう」
アイリーンもそう続ける、エリスは少し考えた後、顔を赤くして首をブンブンと横に振った。
「そ、そうじゃなくて、いやまぁ確かにそれが心配ではあるんだが……」
エリスの声はごにょごにょと小さくなり、下を向く。その様子をエイミーは微笑ましげに見守っていた。
視界を動かし、司令部の方を見るとヒロトが出て来るところだった。
「あ、ヒロトさん来ましたよ」
「あ、あぁ、ヒロト。楽しめたか?」
「?何が?」
ヒロトは不思議に思って声を上げて首を傾げる、エリスの考えている様な事はなさそうだ。
それに一安心した様にDカップの胸を撫で下ろし、再びヒロトに向き直る。
「部隊の隊長同士の会合がある、一緒に来てくれないか?」
「あぁもちろん、行こうか」
彼女はニコリと微笑みヘルメットを脱ぎ、ヒロトと共に司令部に使われている建物に入った。
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ヒロト視点
「す、すまない……さっきは力が抜けてしまって……」
ロンメルは会合の時に先程の失礼を詫びた。
先程作戦室で奇襲部隊を撃滅したと俺が言った後追加の報告があり、公国軍が後退を始めたと言う知らせを聞いて脱力しその場にへたり込んでしまったのだ。
副官らしき赤髪の男に介抱されていたが、落ち着いた様だ。
「いや、気にしないで欲しい。そちらもこんな大規模な防衛戦を指揮する羽目になったの、初めてなんだろう」
「ともあれ来てすぐだ、状況把握もままならない状態だっただろうし、説明するよ、座ってくれ」
俺はロンメルに促されてソファに座る、エリスも隣に座った。
「今敵はジャララバードの街を我々から奪い、南からクァラ・イ・ジャンギー要塞付近まで侵攻している。西からの侵攻は湖の向こう5km付近で止まっている感じだ」
地図を指差す、南側の城塞都市"ジャララバード"は既に敵によって陥落、クァラ・イ・ジャンギー要塞近くまで敵が来ている様だ。
「……南からの侵攻はクァラ・イ・ジャンギーが最前線と言う訳だな。西からはこのバイエライドの街が最前線と……味方の配置は?」
「私達守備隊の主戦力は今の公国領土で活動していた反公国レジスタンスだ。北西10kmにはヴェレットの街には竜騎兵の屯営地があったがここも奪取された、レジスタンス達はクァラ・イ・ジャンギーとバイエライドに後退し、守備隊の戦力となっている。人数としては4000人程かな」
「なるほど……随分規模がデカいな」
「奴らに街を焼かれた者達もいる、ヴェレットの自警団や他の街のレジスタンス達だ。とは言えレジスタンスは組織的に動く訳でも無いから1度にその人数が動ける訳じゃない。実質即応出来るレジスタンスの人数は1000人に満たない程度だ」
「確かにレジスタンスも常に万全の体制で動ける訳じゃ無いしな」
「一つ良いか?」
エリスが手を挙げると、ロンメル少し首を傾げる。
「そちらの方は?」
「あぁ、エリス・クロイス。俺の婚約者で、頼りになる副官だ」
「エリスだ、よろしく」
「よろしく頼む」
エリスとロンメルが握手をする、エリスとロンメルは雰囲気が似ていて、2人の会話を文字に起こすと分からなくなりそう……と思った。
エリスが本題に入る。
「味方はレジスタンスと言ったが……相手は公国軍だろう?言っては悪いが寄せ集めだ、戦えるのか?」
元々騎士だったエリスの気持ちも分かる、レジスタンスと言う事は正規軍の訓練を受けていない非正規戦闘員だ、それが正規軍と行動を共にすると練度の違いから問題も生じると言う不安もあるのだろう。
「確かに寄せ集めも多いが、元公国軍や崩壊前の守備隊に居たものも多いのも事実だ、私が指揮を執った感じでは、そう言った元正規軍のレジスタンス戦士の練度は問題無さそうだ」
「信頼出来るのか?スパイの恐れとかは?」
「レジスタンスの特徴は1人1人の繋がりがとても強い事だ、自動的にスパイは締め出される」
確かに"部隊"では無く、エリス派の様な"人と人"の繋がりであればスパイが紛れ込んでもすぐに見つけ出す事が出来る。これは大きな利点だ。
「あ、そうだ。俺達はFOB……前線基地を整えないといけないんだが、40人ほどが収容出来て、且つ荷台を移せる様な広いスペースがある建物や区画は無いか?」
「それなら確か……司令部の近くにあるはずだ、来てくれ」
そう言うとロンメルは立ち上がる、俺はエリスと共にロンメルの後ろに着いて、FOB建設予定地へと向かった。
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「ここだ」
ロンメルに連れて来られたのは司令部の裏の大通りを挟んだ向かいの敷地。積み上げられた石の高い壁と鉄の門の向こうに見える建物は、例に漏れず石造りで建ってから何十年と経過している様だがボロボロの様には見えない。
少し汚れているのは長年使われて居なかったからだろうか。
「昔、ここに傭兵が本拠地を構えていてな……随分昔に解散したが、建物はまだ使える筈だ」
門を開けるとギィィ……と不気味な音を立てて門が久し振りに人を迎え入れる様に開く。
門の大きさは戦車でも通れそうな広さで、敷地は十分広く、中には建物が3つ立てられている。
母屋のドアはピタリと閉じられていて、木で出来たドアや窓に立てられた目隠し板が石造りの母屋から異様に浮いており、母屋の玄関と思われる場所には掠れて読めないが、傭兵組織の名前が書かれていたであろう看板が掲げられている。
もう1つ敷地内には2階建ての離れが建てられており、そちらも母屋同様の雰囲気を放っている。
もう一つは1階と2階に窓が1つずつしか無い、同じく石造りの倉庫だろう。
広く取られた戸口に、窓は目張りがされている。
ロンメルは母屋のドアに手を掛けると引く様に開く。
立て付けが悪く傷んでいるのかギギギと音を立てる、母屋の中は埃っぽい様な匂いが漂い、数十年ぶりの外の空気に喜ぶ様に埃が舞っていた。
中に入ると、ロンメルの靴の音が中でコツンコツンと反響し、その足音を俺達のゴムの靴底が立てる足音がゴツゴツと追う。
「古い建物だがまだ使える筈だ、手続きはこちらでしておくから好きに使うといい」
「あぁ……助かる」
そう言うとロンメルの頷いて建物を出て行った。
俺は僅かに陽の光が入る建物の中を見回し、ふぅ、と1つ息を吐く。
「どうする?」
「この家を改造してFOBにする、皆をここに呼ぶぞ」
「了解」
エリスは無線を使い、司令部に残っていた隊員を呼び寄せる。俺はその間に母屋の中の探索を始めた。
玄関ホールの左の部屋は広い食堂だ、全員とまでは行かずとも、30人ほどは入りそうだ。
食器やテーブルも埃を被ってはいるが、そのまま残されている。
キッチンの裏口を開けると井戸があり、また目張りがされている。
どうやらここを拠点としていた傭兵はこの屋敷を放棄するときに、次の主人を迎えられる様にあらゆる所に目張りをして行った様だ。感謝である。
キッチンから玄関ホールに戻り、反対の部屋はリビングになっていた。
埃の積もったソファとテーブル、装飾品が持ち去られているのが少し残念ではあるが、この部屋なら待機室に使えそうだ。
階段近くの部屋は書斎だった、ここで日記をつけていたのだろうか、同じ様に埃の積もった机と空っぽの本棚がある。
ここは司令室にでもしよう。
玄関ホールから2階へと階段が続いていて、2階へ上がると部屋が廊下の脇に連なっている。
その部屋の一つのドアを開けると、2人部屋と思しきベッドが2つある部屋と、1人部屋と思しきベッドが1つの部屋がいくつもあった。
「2人部屋が10部屋、1人部屋が15部屋か……結構あるな」
かなり広い屋敷の様で、母屋だけで40人近くを収容する事が出来る。
部屋の数を稼ぐ為か部屋自体はそこまで広くはないが、それにしても休むのであれば十分な広さだ。
問題は床もベッドも例外なく埃をかぶっている事だ。
「……総出で掃除だな」
俺はそう言いながら階段を降り、母屋から出て離れに行こうとすると、丁度エリスが誘導した仲間の車列が門を曲がって入って来るところだった。
俺も誘導を行うべく庭に出る。
「倉庫側にバック駐車してくれ!手前から1輌ずつだ!」
手前から2輌のランドローバーSOV、3輌のM1044 HMMWV、1輌ずつのM998 HMMWVとコヨーテ戦術支援車、LAV-25A2、LAV-Lが横並びに駐車する。
隊員が整列、俺はその前に立ち、続ける。
「ここがガーディアンの一時的な拠点となる、しかし見ての通り建物が古く中も埃をかぶっている状態だ。ガーディアンがバイエライドに来て最初の仕事は基地の設営、即ちここの掃除である!」
一部からはえぇーとブーイングの様な声も上がるがその隊員も冗談めかした笑いを浮かべており、本気でない事も見て取れる。
「街に掃除用具の買い出しを終え次第、俺達はここに戻り掃除を行う!第1及び第3分隊は母屋を、狙撃分隊は離れを、輸送隊と衛生兵は倉庫を掃除する様に!またこれだけ広いと手が足りないところもあるだろう。持ち場の仕事を終えたら手伝いに向かう事、以上!」
「了解!」
そういうと素早く荷物を降ろし、降ろした荷物の留守番と警備、掃除道具の買い出しの2つに隊を分け、車輌を借りて街へと向かって行った。
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「さぁどんどん進めて行こう!夕飯までには終わらせるぞ!」
箒とモップを銃を配る要領でガスマスクをつけた隊員達に配って行く。
そのうちの何人かはバールを持っていて、窓の目張りを剥がすつもりの様だ。
因みにガスマスクは舞い上がった埃を吸い込まない様にする為だ、別に屋敷の中にガスが充満しているとかそういうホラゲーじみた事では無い。
屋敷の中は埃をかぶっている以外は状態が良く、掃除をして布団やマットレスなどを綺麗にすればすぐにでも住めそうだ。
俺もバールを手にし、屋敷の窓を目張りしている板を外して行く。
テコの原理で釘ごと板を引っぺがし、板は湯沸かしの燃料にでもする事にする。
電気と水道はすぐにどうにかなるものでは無い……いや、スマホがあればどうにかなるが、あいにくスマホは基地に置いて来た。
数十年間に渡り積もりに積もったであろう埃を履き出し、薬剤の染み込んだモップで床を拭いて行く。
モップのクロスはあっという間に真っ黒になる為、一拭き毎に取り替える始末だ。
ガスマスクしてて良かった、してなければ舞い上がった埃で掃除もままならない。
2階の部屋を担当する俺は窓の目張りを全て外し、ベッドを外へ出して家財道具を綺麗にする班に回す。もちろん終わったら手伝うつもりだ。
1掃きする毎に埃が集められ、ちりとりに乗せられて外の火のついたドラム缶に埃が放り込まれる。
床を隅々までモップがけして綺麗にしたら、また次の部屋へ。これを繰り返す。
皆の協力もあり、屋敷全体の掃除はその日の夕方には終わった。
しかしマットレスが乾いておらず、今日の寝床は寝袋になりそうだ。
砂漠地帯は昼と夜の気温の差が激しい、夕方になりコンバットシャツ1枚だと涼しいくらいになっていて、このまま陽が落ちれば肌寒くなるだろう。
電気は引けなかった為魔術ランプに灯を灯し、各隊員が食堂へと集まった。
今日の夕飯は戦闘糧食、OD色のパックのレトルト食品である。中身は煮込みハンバーグだ。
隊員達は各々に割り当てられた部屋や食堂で食べ、ゴミを回収してからまた作業にかかる。
部屋の掃除は終わっている為、車輌に積んだ武器弾薬を倉庫に置いておく作業がまだ残っている。
弾薬は1階の倉庫へ、食料や燃料缶などは2階へと運ぶ。
2階から1階に荷物を降ろす為に重力式のエレベーターなんかも設置しても良いかもしれない。
「5.56の弾薬箱くれー」
「7.62mmのはそっちの棚だ」
「AT-4はここで良いか?」
「そこで良い、砲弾は下のラックに」
「燃料缶これで最後だ、上に持って行ってくれ」
隊員達が声を掛け合いながら物資を倉庫に運んで行く、こちらの作業もひと段落つきそうだ。
俺はその様子を見ながら街で買ってきた物を用意し、作業にかかる。
用意したものは黒の塗料と鑿、木槌、そして看板用の木の板だ。
木の板にペンでレタリングし、その線に沿って鑿と木槌で掘って行く。
作業が終わっていた隊員達も何事かと見に来るが、すぐに分かったらしく笑みを浮かべる。
溝を掘り終えると次は塗料でその溝に黒を落として行く、すると看板の文字が浮かび上がってきた。
それを乾燥させ、塗料が完全に乾ききったら終了だ。
母屋の玄関の上、昔この地に拠点を構えていたであろう傭兵の看板があった場所は、新しい看板に差し替えられた。
その看板には"ガーディアン バイエライド臨時FOB"と書かれていた。
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ここを"臨時"のFOBとしたのは、ガーディアンの本格的なFOBとしては少し手狭な上、一時的な活動拠点に過ぎないからだ。
俺達は王国から本隊が到着すればそちらに守備をバトンタッチして撤退するし、他のギルドも到着するだろう。
バイエライド臨時FOBはその為の拠点だ。
「とりあえず、お疲れさん」
「あぁ、ありがとう」
ベッドに腰掛け、向かいに座るエリスとジュースで乾杯する。
エリスは未成年、この世界では未成年の喫煙や飲酒が明確に禁止されている訳では無いが、子供に酒を飲ませるのはタブーとされている。
「そう言えば、そろそろエリスも誕生日か?」
「私か?私の誕生日はもうすぐだ。9月2日……私も18歳になる」
「そうか……エリスと初めてあってからそろそろ1年だな……」
「もう1年経つのか?早いなぁ……色々あったな……」
「あぁ、俺はこの世界に来てから驚きの連続だよ、魔術に亜人、魔物、物語の中でしか知らない種族もいるからな……」
「私も驚いた、違う世界には、こんな進化した武器や技術があるなんて知らなかったからな」
瓶に入った果実ジュースを飲みながらエリスは微笑み、自分のM4に目を向ける。ストックとグリップ、載せてあるサイトのタンカラーがアクセントになっているM4だ。
「そういえば……お前、今日ここについた時、拗ねてなかったか?」
「いや……別に拗ねてなんて」
「何だよ、正直に言えよ」
俺は苦笑しながら果実ジュースを飲む、エリスは昼間見た拗ねた様な表情を浮かべながら唇を尖らせ、目を逸らした。
「だって……私を置いてロンメル指揮官のところに1人で行ってしまったからな……」
「俺が取られるとでも思ったのか?」
エリスはぎくっとして赤くなる、プルプル震えた後、顔を赤くしたままこっちに向き直る。
「っ……あぁ、そうだよっ!ロンメル指揮官は少し私に似てたからなっ!ヒロトの心がロンメル指揮官に動いてしまわないか心配だったんだっ!」
拗ねた様に言いながら自分の太ももをバシバシ叩くエリス、耳まで真っ赤だ、それもまた愛しく思う。
「あっはは、大丈夫だよ。お前以外には心は動かないさ、寧ろ俺よりいい男が出て来たらそっちに取られないか心配なまである」
「む……私だってヒロト一筋だもん、他の男になんて興味無いもん!」
「エリス派の元騎士団でもか?」
「あいつらは私の弟子とか、弟みたいなもんだ。恋愛感情はないぞ、お互いに尊敬、尊重し合ういい関係だ」
最後だけエリスは真面目な口調に戻って言う。元騎士団団長だけあって面倒見が良く、皆の姉の様な存在だ。
エリスがまたM4に目をやる、エリスに銃を見せた時は驚いていたな……そんな事も思い出す。あれからもう1年経ったのが嘘の様だ。
「ここは砂が多いけど……砂塵にあまり強くないというM4は大丈夫なのか?」
エリスは最初期からのメンバーであり銃の長所短所を初期訓練で叩き込んでいる上、ミリタリーヲタクの俺と一緒にいるので自然と銃の知識は身に付いてくる、その上での発言だろう。
「あぁ、こいつはガスピストンキットを組み込んであるから、レシーバー内に砂やガスの残り滓が溜まることは殆ど無いんだ」
「あぁ、そっか。改造してるんだったな……」
エリスはラックに立て掛けられたM4を手に取る。
「……少し整備しておくか、こいつにはいつも世話になってる」
「あぁ、そうだな……」
俺もラックに立て掛けられたマガジンの着いてないM4を手に取る。
因みにM4やP226、M249などの個人用銃器は部屋で個人が管理する事になっている。
部屋に置いてあるペリカンケースを開けると、CQB-Rとクリーニングロッドが入っている。
レシーバー後部のピンを抜き、アッパーレシーバをスイングさせる。
チャージングハンドルを引き、ボルトキャリアを引き抜く。
ブラシでボルトキャリアを綺麗にし、オイルを吹いておくが、この時オイルを吹き過ぎると余計な埃を読んで吸着させてしまうので注意する必要がある。
次にハンドガードをバラす、デルタリングを押し下げて下部のレールを外し、ネジ止めされている上部のレールも外す。
普通のM4ならここにガスチューブが見えるが、俺達のM4はその代わりに組み込まれたガスピストンキットが見える。
ガスピストンキットを外し、ブラシとウエスで綺麗にする。ここが汚れて詰まったりすると、最悪の場合銃が作動しなくなったりもするのだ。
綺麗にし終わったらオイルを吹き、組み込んでハンドガードを組み上げる。
銃口の中もクリーニングロッドで綺麗にし、清掃は終わりだ。
向かいでエリスも同じ様に整備している。
組み上げたM4の銃口を窓から外に向けて1度だけ引き金を引き、空撃ちする。
カツン、と撃鉄が落ちる感覚が手の平を伝い、問題ない事を告げる。
チャージングハンドルを1度引き、撃鉄をコックしておけば整備終わりだ。
「……よし、終わり」
俺はエリスがM4を整備するのを見ながら、今度はP226の整備を始めた。
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司令室と化した書斎、ここには無線機が机の上に1つ置かれていた。
アンテナはコードを伸ばして窓の外まで伸びており、衛星通信も可能になっている。
「HQへ、こちら偵察隊、感明送れ」
『偵察隊、こちらHQ、感明良し』
HQに出たのは健吾だ、本部にも待機要員がおり、ヘリでここまで3時間で到達出来る体制を整えてある。
1日で来られる距離なら問題無かったのだが、何せ車でここまで5日間だ。
「FOBを設置した、バイエライド司令部の東側にある空き家だ。明日の昼、物資投下を頼みたい。投下する物資は弾薬、燃料、医療品、食料などの補給物資と、ホットライン開設のための電話機があるとありがたい」
『了解、0000時までに必要な物資をメールで送信してくれ。それまでには用意する』
「了解、それじゃ頼むぜ。通信終わり、以上」
そう言って俺は無線を切る。
その人日付が変わるまでに、必要な物資をメールで送信した。