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第119話 王国有事

グライディア王国の王都"バルトサンドラス"では、国王陛下が演説を行った。


「我が王国の西の国、シュラトリク公国が不穏な動きを見せている」


白く髭を蓄えた老人が玉座から立ち上がり、各大臣やギルド組合の組合長の前で呼び掛ける。


彼の名前は"ハルス=マスティン=グライディア"、グライディア王国現国王である。

王族の中でも王国騎士団出身で、隠居間近の国王陛下がこの演説を行っている理由は、グライディア王国の国境にある。


隣国の"シュラトリク公国"、その公国内部の流れが、良好な魔石鉱山のあるグライディア王国の侵攻へと傾き始めた為だ。

数年前に新たに生まれたこの国は、領土拡張を目指して日々周辺国との軋轢を生んでいた。

公国の軍備が大した事無ければそれで良いが、王国が仕入れた情報によればその公国は今までのどの軍隊よりも士気が高く、強いと言う。

実際既に侵攻を受けたレグランド帝国の帝国軍や帝国騎士団は何度も敗北しており、帝国の領土の20%を奪われているらしいのだ。


「国内に拠点を構える戦闘ギルドをグライディア王国"民兵"として迎え、臨戦体制を整えよ」


国王陛下の勅令が、あらゆる貴族へと届けられる。


陛下が王座に座ると、頸が隠れる位の赤毛の凛々しい女性が国王陛下の前まで出て跪く。


「陛下、報告致します西の方で注目すべきギルドがあると聞きました」


「ほう……アレクシア、言ってみるが良い」


女性の名前は"アレクシア・ルフス・グライディア"、ハルス国王の娘、王位継承権は3位である。


「はっ、西の辺境のワーギュランス公領、レムラス伯爵の領地に本拠地を構える戦闘ギルドで、名は"ガーディアン"と呼ぶ様です」


「どうせ大した事無いのだろう?王室騎士団や近衛兵団より練度のあるギルドなど、聞いた事無い」


アレクシアの言葉を一蹴したのは、議事堂の近衛団長席に座る長身で筋肉質の男、"ジャスティン・カニェーク・グライディア"、王位継承権2位、現近衛兵団団長である。


「法螺話も大概にしろアレクシア」


「ジャスティン、声を荒げるな」


冷静にそう言ったのは"ウィリアム・ランベル・グライディア"。王位継承権1位の次期国王である。

彼は国を任される身になるべく勉学に励み、今は国王補佐官の座に就いている。


「静粛に」


国王陛下が手を挙げて静かに言うと、場が静まり返る。


「ガーディアンか……そのギルドは何か目立った功績はあるか?」


アレクシアはニヤッと笑い、顔を上げて報告する。


「……ガーディアンが擁する兵士の殆どは魔術師では無いにも関わらず、50人以下という少数でドラゴンを討伐したと言います。2体目のドラゴンを討伐したのは、僅かに12人だとも」


「そんなに少数でか!?」


「どんなギルドなんだ……」


議事堂にいた貴族達が騒めく、ジャスティンやウィリアムですら驚いた顔をしていた。


「……ふむ……ではアレクシアに命ずる、"ガーディアン"と言う戦闘ギルドを視察しに行って来い。そなたの擁する騎士団も遠征の良い機会だろう」


国王陛下がアレクシアに命じると、アレクシアが再び深く頭を下げた。


「はっ、承りました。では行ってまいります……父上」


「良い報告を期待しておるぞ」


議事堂は更に辺境防衛の策を練る為に、議論が白熱して行った。


その中でアレクシアは1人、ガーディアンの視察について考えを巡らせていた。


===========================



ガーディアンの基地では、部隊が忙しそうに動いていた。

大型兵器の部隊整備がかなり進んでおり、第2小隊を含めた部隊の教導も含めて全部隊が合同の訓練を行っていたからである。


まずは虎の子の戦車部隊だが、2個小隊8輌が1個中隊14輌へと増加した。

中隊長は適性を診断し指揮能力のテストをした結果、岡本(おかもと)隼人(はやと)大尉から新たに召喚した戦車の乗組員となっていた池田(いけだ)末男(すえお)少佐にバトンタッチした。


岡本大尉もこの事については納得しており、今後戦車部隊は池田少佐の指揮の下で動く事になる。

余談だが富士教導団の4輌はそのまま戦車教導隊の車輌となり、実戦を教え練度向上に役立っている。


砲塔に"士魂"と書かれた14輌の90式戦車が訓練を終えて基地へと帰投する、先頭の戦車のハッチから身を出していた池田少佐がこちらに向けて敬礼すると、俺はそれに答礼した。


戦車隊は撤収したが、まだ目の前では訓練が続いていた。


『TOT"フジ"発動!TOT20秒前!』


目の前では砲兵隊が射撃訓練を行っていた。

米海兵隊からの召喚でガーディアンの砲兵火力の中核を成し、出番が少ないながらもこれまでの訓練野良成果を遺憾無く発揮しているのは、砲兵隊第1射撃中隊のM777A2 155mm榴弾砲である。


8秒が経過したところで、同じM777A2 155mm榴弾砲を装備する第2射撃中隊の榴弾砲が火を噴く、それだけではない。

少し離れた場所に展開しているのは、ガーディアン初の自走榴弾砲だ。


自衛隊も採用しており、優れた自動装填装置を装備している99式自走155mm榴弾砲だ。

99式自走155mm榴弾砲は第3射撃中隊と第4射撃中隊に6輌ずつが配備されており、これで砲兵隊の砲門数は24門、1つの砲兵大隊の出来上がりである。


『弾着……今!』


24の砲弾がほぼ同時に空中で炸裂、それもただ炸裂するだけではない、空中に富士山の形を描いていた。

100分の1秒単位の調整が必要なこの射撃は、海外から自衛隊の練度が高く評価される一因でもある。それをやってのけるとは、砲兵隊もかなり練度が上がったと見れる。

だが富士山の形が歪であることを見ると、まだ陸上自衛隊特科隊の練度には敵わない様だ。


『撃ち終わり!』


数秒遅れて砲弾の炸裂する音が耳に届く、M777A2と99式自走155mm榴弾砲は即座に陣地転換を始めた。

第1及び第2射撃中隊の海兵隊員達も、今までの彼らとは思えない速度で陣地転換を始め、M777A2をHMMWV(ハンヴィー)に繋ぐ。


なぜガーディアンの砲兵隊は違う種類の榴弾砲を採用しているのか。

それは各砲の持つ特徴と、それを生かした戦術にある。


ナポレオンの時代から戦闘の鍵を握り、「戦場の神」とまで讃えられた存在の砲兵だが、戦車の様な分厚く頑丈な装甲を持っている訳でも無いので、敵の攻撃には脆弱である。


更に火力の発達した現代戦闘では、同じ場所に留まって砲撃を繰り返していると、レーダーで場所を逆探知されて即座に反撃を受けてしまう。


なので自走榴弾砲の様に自走化し、速やかな陣地転換を行える様にするのが"自走砲"の役割だ。


ではM777A2や、自衛隊などで使われているFH-70などの"牽引砲"はどうだろう。

基本的に車輌で牽引される"牽引砲"は、陣地転換の能力は自走砲より低いと言わざるを得ない。


しかし牽引砲には自走砲が逆立ちしても手に入れられない"軽量"という利点がある。


特に軽量なM777A2はCH-47Fの様な大型輸送ヘリだけでなく、UH-60の様な中型汎用ヘリでも輸送可能だ。


湿地や山岳地帯など、自走砲が越えられない様な障害でも、牽引砲の様な軽量な砲であれば空輸で軽々と越える事も出来るのだ。

更には牽引する車輌もタイヤな為、長距離を移動するのに便利と言う利点もある。


その為ガーディアンではどちらも対応出来る様、M777A2 155mm榴弾砲と99式自走155mm榴弾砲の混合運用を行っている。


地上部隊、特に戦闘部隊が充実して来て、目標としていた"中隊戦闘群"へと近付きつつある。


「後は歩兵の頭数が欲しいな……」


視察用のランドローバーに乗り込みながら、さらなる部隊拡張計画を考える。

あまり大きくするの身動きを取りにくくなるが、歩兵はその頭数が重要になる事がある。

少なくとも250人……1個中隊規模は欲しいところだ。


ランドローバーを走らせながら基地へと戻る、車輌を戻している最中に中央通りを通り抜けて言ったのは6輌の車輌。

LAV-25のファミリーである"LAV-AD"、25mmガトリング機関砲とスティンガーMANPADSを装備した対空タイプだ。

ガーディアンでも"高射部隊"の整備が始まったのである。


ランドローバーを車庫に止め、先程通過して行ったLAV-ADが身を休める格納庫へと足を向ける。

戦車隊、砲兵隊の格納庫群に並ぶ格納庫が高射部隊の格納庫だ。


中を覗くと、演習が終わったと思われるLAV-ADが補給と整備を受けて居たところだ。

更に格納庫の端、オーバーホール用のスペースに置かれ、工房と整備士、評価試験隊の隊員が整備を行っているのは、"ガンタンク"の愛称で知られる87式自走高射機関砲だ。

ゲパルト対空戦車に良く似たこの自走高射砲は自衛隊のみが採用しており、2門のエリコン製90口径35mm機関砲KDAで敵を文字通りハエの様に叩き落とす。


格納庫の端で施されている改良の内容は

・ガン・ミサイルコンプレックスの防空能力を発揮する為に91式地対空誘導弾又はスティンガーMANPADSの発射装置を砲塔の砲身脇に取り付け、照準装置やFCSもミサイルに対応させる。

・車体を74式流用から90式流用に変換し、機動力の向上を図る。


の2つがメインである。


この異世界において空から来る脅威といえば、ご存知翼竜(ワイバーン)だ。

各国の軍隊は航空戦力として翼竜(ワイバーン)を有する竜騎兵部隊を保有しており、軍隊のみならず裕福な貴族や戦闘ギルドも翼竜(ワイバーン)の竜騎兵部隊を保有している。例を挙げると"ドラゴンナイツ"などだ。


それだけでは無く、翼竜(ワイバーン)は野生にも存在し、M134ミニガンによる暴風雨の如き7.62mm弾も弾き返す硬い鱗を持っている。12.7mm弾でようやく貫通レベルだ。


そんな敵から部隊を守る為、より大口径高威力の防空兵器が必要となった。

因みに翼竜(ワイバーン)の飛行高度はおよそ1000m以下、3000mはギリギリ到達するかしないか程度である為、中距離地対空ミサイルや弾道ミサイル防衛(BMD)に用いるPAC-3の様な大型装備は有していない。


翼竜(ワイバーン)がブレスで攻撃の際には高度を下げる必要がある為、携行(M)式地(A)対空(N)ミサ(P)イル(A)シス(D)テム(S)でも十分対応可能であるという結論が出ているし、引越し前の戦闘でも実証済みだ。

そこへこう言った高射砲が装備に加われば、ガーディアンの野戦防空能力は更に高まる事となる。


俺は忙しそうに隊員が動く格納庫を覗き込んだだけで、その場から離れようとする。

その時、中の隊員が気付いて敬礼、俺はすぐに答礼を返してニコリと微笑み、格納庫を後にした。


高射隊格納庫から執務室に入ると執務机の緊急確認用ポストに1枚の信書が入っていた。


「ん……?」


封筒のサインはレムラス伯爵のものだ、何か急を要する案件なのだろうか。

封筒を開封し、中を確認する。

俺は手紙に書いてある事を読むと、只事では無い事を確信した。


なぜなら明日、講堂にこのベルム街の全ての傭兵・冒険者を始めとした戦闘ギルドが集められるのだから。


===========================


翌日、昼前


昨日の信書の通り、講堂にはベルム街にいた全ての傭兵・冒険者などの戦闘ギルドが集められる。

流れ着いてベルム街に来た者や、ベルム街に拠点を置く"ドラゴンナイツ"や"クルセイダーズ"もここに来ている。

講堂にはざっと100人程が集まっているだろうか。


少し前までベルム街のNo.2の戦闘ギルドとして鳴らしていた"アーケロン"は俺達が1人残らず始末した為、ここには居ない。


「やぁ、Mr.ヒロトとは君の事かな?」


そう言って近づいて来たのは金髪ををオールバックにしている俺より遥かに大柄な男で、鎧姿が威圧感を加速させる。


「私はカナリス・フルブラック、"ドラゴンナイツ"の団長だ」


「初めまして、かな?カナリス。高岡ヒロトだ」


彼は鎧を外し、握手を求める。俺はそれに答えて彼の手を握った。


「アーケロンの1件で、君の部下は残念に思う。しかしそれをバネにして伸びるガーディアンはこの街の誰もが応援しているよ。我々も交流が欲しいと思っていたところだ、紳士的に行こうじゃないか」


「ありがとう、こちらもドラゴンナイツは前から気になっていた。先輩ギルドから色々学ばせて頂くよ」


どうやら彼には敵意はないらしい、味方でなければ撃つのでは無く、敵でないなら友好的に接するのがガーディアンの外交術。渉外科とそう方針は決めてある。


もちろん自衛の為、俺の身に付けるベルトの右腰にはP226、左の腰には予備マガジンが3本と金属製の手錠が1つ、ナイロン製の手錠が4つほどぶら下がっており、ペッパースプレーやテーザー銃も携行しているが……


カナリス団長とそこで別れ、俺は席を探すと今度はクルセイダーズのキルアと会った。


「あぁ、いつかの」


「おいおい忘れてしまったのか?寂しいな」


「冗談だ、覚えてるに決まってるだろキルア団長。元気してたか?」


前回の仕事から俺はキルアと暫く会ってない、その銀髪と背負った剣は健在だった。


「もちろん、そっちはどうだ?」


「俺達もだよ、今日は何の集まりなんだ?」


そう、俺は何故今日ここに集められたのか聞いていない。何か知っているかと思って聞いたが彼も首を横に振った。


「俺も聞いてないんだ、ただ王都の方で何かあったとこの間護衛した商人から聞いた」


「何かか……」


「さぁ……?」


キルアも分からないらしく、首を傾げながら席に座る。俺も隣の席に座ったら。


程なくしてこのベルム街を収めるレムラス伯爵が壇上に上がり、声を上げる。


「皆、集まった様だな」


一言そう告げると、騒めきが一気に静まる。


「今から貴殿ら傭兵・冒険者を、"グライディア王国民兵"として迎え入れる」


ざわっとまた少し講堂が騒がしくなる、議長を勤めるギルド組合の組合長が「静粛に!静粛に!」と場を鎮める為に発言するとその騒がしさも治まって行った。


騒いだり静まったり忙しいなと思いつつ、伯爵の言った内容を反復して考える。


確かにギルド組合に登録したギルドは、その時に拠点を置くまたは訪れた国の国王や皇帝など国家元首が"民兵"として招集出来る。


もちろんそれを受けるか受けないかは自由だが大半はそれを受ける、高額な報酬がゲット出来るからだ。

では招集する様な事態はどの様な場合であるか?

それは「有事の際」である、首都の方で政変があったり、隣国の侵攻があった時、その招集権は発動される。


「グライディア王国の西の国境、レグランド帝国との国境に新たな国が建国された、その名を"シュラトリク公国"と言う。その国が周辺国への軍事的圧力を高め、魔石鉱山の豊富な山岳地帯の奪取を目指して侵攻を目論んでいるとの話を掴んだ。既に侵攻は開始される寸前の段階だろうが、我々は国を守る為、貴殿らを民兵として招集、西の守りに当てたいと、軍部とワーギュランス公爵からのお達しだ」


なるほど、隣国の侵攻への備え……と言う訳か。


「我々も騎士団を率い領地の防衛を固める、貴殿らはより上位の公爵からの指揮下に入り、それぞれ行動して欲しい。民兵の招集に応える者は、この場で挙手して貰いたい」


伯爵がそう言うと、招集されたギルドや冒険者が我こそはと手を挙げる。


「我々の戦闘隊が、迫り来る敵を蹴散らしてやりましょうぞ」


声の方を振り向くと、青い髪のイケメンが立ち上がり胸を張る。

動きを妨げない様な鎧と腰に下げたサーベル、肩に付けられた紋章は"剣を加えた猟犬"である。


「我ら"セイバードッグ"に、是非先鋒を務めさせて頂きたい」


"セイバードッグ"


ベルム街に拠点を置く冒険者ギルドのNo.3である。モットーは「突撃こそ戦争の華」。

魔術師も多く擁しており、地上戦闘での能力はNo.1の"ドラゴンナイツ"をも凌ぐと言う。

また突撃戦闘のみならず、"ドッグ"の名を冠する事もあり偵察も得意だと言う。


俺もその場で手を挙げる、キルアも、カナリスも手を挙げていた。


「では、割り当てる部隊を述べる、まずは先鋒、公爵からの指名だ。西の国境で王国軍到着まで防衛線を守って貰いたいのは」


"セイバードッグ"の青髪団長が立ち上がる、先鋒や偵察を務めるのには彼らは自分達の力が役に立つと思ったのだろう。

しかし、伯爵の口から出て来たのは衝撃の発言であった。全員にとって。


「ガーディアンを指名する、公爵閣下からドラゴン討伐の功績を信頼しての事だ。期待に応えられる様に頑張って欲しい」


「……えっ?」


俺の口からもセイバードッグ団長の口からも出た言葉だ、その場の誰もが予想していなかっただろう。


「加えてドラゴンナイツに西の空の守りについて貰う、ワーギュランス公領最大の竜騎兵部隊も、期待してるぞ」


「畏まりました、仰せのままに、伯爵」


「他のギルドにも追って公爵からの命令が下る、西や街の防衛に回される事になるだろうから、それまで待つ様に」


レムラス伯爵が組合長に目配せすると、組合長が発言する。


「それでは以上で解散とします、続報はギルド組合に貼り出しますので、1日1度は必ず確認して下さい」


そう締めくくられ、喧騒を取り戻す講堂、隣に座るキルアが肩を叩いて来る。


「凄いじゃないか、公爵直々の指名とは」


「そうか?」


「謙遜する事は無い、この街のギルドで有事に駆り出された事があるのは俺達とセイバードッグだけだ」


「ベルム街トップのギルドにこんなに早く駆け上がるなんて……」


向こうの席に座っていたカナリスも、こちらに歩いて来て肩をポンと叩く。

キルアも俺を凄い凄いと褒めて来る、何と無くくすぐったい。


確かにベルム街に来てからまだ1年も経っていない、ここに拠点を構え、No.2を排除し、ドラゴンを討伐して公爵の指名を受ける様になったのは現代兵器のおかげとも言える。


「止してくれよ、褒められ慣れてないんだ。何かこそばゆい」


俺はそう言って席から立ち上がる、講堂を見回すと意気込むギルドの団長達が講堂から出て行くところだった。


「帰って報告しないと、仲間達も不安がる」


「そうだな、一緒に戦う日を楽しみにしてるよ」


カナリスが手を差し出して来る、また俺は彼の手に握手を返した。


「あぁ、お互いに気を付けよう」


「気を付けてな、無事に帰って来てくれ」


「ガーディアンの戦士だ、そんなに簡単にくたばる訳にはいかんよ」


キルアともそう挨拶を交わし、俺は講堂を後にする。


俺が出た講堂からは「さぁ一杯飲みに行こう!付き合え兄弟!」「まだ昼間ですし畏れ多いっす!」とカナリスとキルアの声が聞こえていた。


議事堂を出て他のギルド同様、馬車を停める小屋に停めていたランドローバーSOVに乗り込もうとした時、突然肩を掴まれて馬車小屋に引き込まれた。


「お?」


状況が把握出来ず間抜けな声を上げる間に壁に叩きつけられ、肩から背中にかけて痛みが襲う。

叩きつけられた瞬間腕が動く、咄嗟にP226を抜いて相手の首に銃口を押し付けようとした瞬間、目の前のそいつから声が降って来た。


「テメェか、調子に乗ってる新参者ってのは」


見上げるような形になるが相手の容姿を確認すると、青い髪の長身のイケメンが俺の胸倉を掴みあげていた。


「あぁ、セイバードッグの」


「ガーディアンだかトレビアンだか知らねーが、あんまり調子に乗ってると潰すからな」


「……ドラゴン討伐した功績を信頼してって公爵が……」


「関係あるか、テメェ誰に喧嘩売ってるか分かってんのか?ベルム街のギルドNo.3、アーケロンの居なくなった今No.2だぞ?」


P226から手を離し、テーザー銃とペッパースプレーに手を掛けた。


「それNo.1じゃ無いと意味無い気が……」


「知るか、まぁでも仕事は仕事だ。お前らが西の辺境で無様に助けを求め、俺達が到着するまで何人に減ってるか楽しみにしてやる」


そう言うと青髪のセイバードッグ団長は手を離す、どうやらここでやり合う気は無いらしく、そのまま踵を返して去って言った。


「……ッつーか、名乗れっつーの」


俺は居なくなった青髪に悪態を吐きながらランドローバーSOVに乗り、エンジンをかけて車を基地に向けて走らせた。

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