第112話 基地改装
昨日は申し訳ありませんでした……
「急げ急げ!」
「モタモタするなよ!」
「戦車隊!急げよ!」
「あと6分で終了する!待ってくれ!」
「5分でやれ!」
『航空隊、全機離陸。ホールディング・エリアBにて待機』
基地は現在大忙しだ、ありとあらゆる物資や装備を隊員総出で基地から運び出して居る。
まるで引越しでもするかの様だ。
上空にはガーディアンが保有するヘリが全て離陸し、山の上へと飛行しそこで滞空している。
戦車部隊は90式戦車の砲塔を旋回させて後ろを向け、基地の外に戦車を運び出している。
輸送隊は保有するトラックを使い、補給隊や武器科から燃料や武器弾薬を預かり受けて運び出していた。
隊員達は忙しなく動き、基地の司令部庁舎から物資を搬出、決まった位置に並べ積み上げて行く。
俺は基地の外に立てたタープの下の机に資料を並べ、スマートフォンで資料の写真を撮っていた。
今から行うのは、基地の拡張である。
部隊を拡張したら今のままでは手狭で無理がある事が判明した。
宿舎の方は今のを増築すれば済むのでそれでいい、格納庫区画の方も基地面積を広げて格納庫を増やせばいい。問題は司令部庁舎の方だ。
700人収容の食堂も混雑する様になってきたし、兵士の待機所もこのままでは手狭だ。
なので新たに様々な兵科ごとの事務室兼待機室を作り、それを統合した"作戦棟"の建設を考えている。
建設とは言っても実質召喚なのだが……
「第2歩兵小隊、点呼完了、全員確認!」
第2歩兵小隊の小隊長であるシュバルツ・ラインハルトが敬礼、答礼で返す。
基地の召喚時に中にいると、改変された施設の壁に埋まったり、消えたりと都市伝説のフィラデルフィア実験の様な事になってしまうと神が電話して来た。
家具も同様になると言うので、かなりの時間をかけて司令部庁舎にある家具や整備道具などの小物も全て持ち出している。
主に変更するのは食堂や会議室が集まる司令部棟と、各兵科の事務所兼待機室と広くしたロッカールームがある作戦棟だ。
「砲兵中隊、点呼完了、全員確認」
「戦車小隊、点呼完了、全員掌握」
「対装甲機動中隊、点呼完了、全員掌握」
「迫撃砲小隊、点呼完了、全員確認」
「基地業務群、全員確認、点呼完了」
「輸送中隊、全員掌握」
「工兵中隊、全員確認完了」
「基地警備小隊、全員確認!」
特に司令部庁舎は入念にチェックし、既に第1小隊の隊員によりトリプルチェックが入った。
これで基地の中には、文字通り人っ子一人居ない状態になる。
俺はその報告を聞いて頷き、基地の見取り図をスマホの写真で撮った後、全員に向き直る。
「これより基地の改築を始める!これに置いて、地震に似た地面の揺れなどが想定される!各員怪我のないように構え、新たな我々の基地と共に、これからを過ごして欲しい!」
「了解!!!」
全員から割れんばかりの答えが返ってくる、俺は大きく頷くと、スマホを操作し、見取り図を記した召喚のページを出す。
「では……召喚!」
画面の"召喚"アイコンをタップする。
その瞬間、基地が光に包まれ、ゆっくりと揺れ始めた。
基地を包む光は形を変え、ゆっくりと想定した基地の形に変わっていく。
この揺れは麓の町に影響しないだろうか……などと考えているうちに、光は形をはっきりとさせ、具現化。建物に色がついていく。
そしてゆっくりと光の中から建物が現れ、実体化した。
新しい基地は、棟が2つ、格納庫や飛行場も従来より大きくなった。
これが、俺たちが新しく生活していく基地である。
「……さぁ、と言う事で新しい基地になった。事前に配布されたレジュメを見て、物資を戻して行ってくれ。戻し終わったところは他を手伝いつつ、休憩を取って通常業務へ!」
「「「了解!」」」
そう言うと隊員達は一斉に動き出す、戦車や装甲車の乗組員は自分の車輌に乗り込み、車輌を格納庫に運び入れていく。
小隊本部も臨時指揮所としていたタープを畳み、撤収していく。
俺も纏めた自分の荷物を持ち、作戦棟にあるロッカールームへ。
ロッカールームの自分のロッカーを決め、自分のペリカンケースに入った自分のM4とプレートキャリア、ベルト、ヘルメット、ポーチに弾倉、即応でクリップにまとめてある弾薬、無線機などを自分のロッカーに戻す。
ロッカーは前に比べて少し大きくなっており、予備の戦闘服やプレートキャリア、マガジン、弾薬箱などを余分に置いておける様になった。
自分の荷物を置くと、外通路を使って管理棟にある執務室へと向かった。
新しい執務室は管理棟、2階の階段を上がって右手側の通路にある。今までとほぼ同じ配置だ。
司令部庁舎の階段を2階は基地業務群の事務室が大半を占めており、人の出入りが前に比べて激しくなった。
執務室は前に比べて少し広くなり、調度品も増えた。応接用に置いてあるテーブルや椅子もランクが一つ上のものが置かれている。それ以外のものはこれまで通りだ。
書類を置き、持って出ていた資料などを全て所定の場所に収めて一息吐く。
すると、コンコンとドアをノックされる音が聞こえる。
どうぞと返事をしてドアが開くと、入って来たのはエリスだった。
彼女はパタンとドアを閉めるとニコニコしながら何やら待っている。
あぁ、そうか。そうだったな。
仕事も既に片付いているし、躊躇いも断りも理由は無い。
「基地を見て回りたい、だろ?」
エリスは嬉しそうに微笑みながらウンウンと頷く、俺は釣られて微笑み、書類を置いて執務室を出た。
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エリスとのこの案内デートが、施設を召喚した際の楽しみになっている。
執務室を出て右の通路を行くと、基地業務群の事務所がある。
「ここは?」
「基地業務群の事務所だ、作戦以外の整備とか補給とか、後は生活の事とかで何かあったら、ここに来ると良い」
業務科毎に部屋が分かれており、執務室に近い方から順に事務科、主計科、渉外科。通路を挟んで情報科、通信科、整備科。
また一つ通路を挟み、施設科、衛生科、補給科。そして管制科、武器科である。
どの事務所も隊員たちが忙しそうに動いており、荷を解いて業務開始に備えて居た。
「施設科……ヒロトが前に言ってた……リクジョウジエイタイの工兵とは違うのか?」
「良い質問だな、エリスの言う通り、ガーディアンの基地業務群の施設科は工兵とは違う。陸自の施設科の様な事は工兵中隊がやるんだ」
エリスは事務所の間の通路を歩きながら納得する様に声を上げて頷くが、直後に別の疑問が浮かんだのか質問を投げてくる。
「じゃあ基地業務群の施設科はどんな事をやるんだ?避難民にテントを張ったり?」
「そういう事もするけど、基本的には基地の設備の保守管理だな。窓が割れたとか、雨が吹き込んでくるとか、ドアの立て付けが悪いとか……」
「なるほど、じゃあそういう事が起きたら、基地業務群の施設科に、だな?」
「そういう事!」
俺とエリスはくすくすと笑いながら1階へ降りる、因みに3階はトレーニングルームになっていて、ランニングマシンなどの筋トレ用設備がある。
1階の階段を降りると、目の前は大食堂になっている。
以前は700人収容出来たが、その数を増やし、現在は800人程が同時に食事を取れる。
厨房では早速ファルが飯の準備をしていた、俺は鼻が効く方だと思うが、今日のメニューはさっぱりおろしハンバーグだろう。
「食堂、広くなったか?」
「あぁ、前より広くなって、だいたい800席くらいあるかな?」
「……ガーディアンもそんなに増えたのか……」
「最初は10人とか、そのくらいだったもんな……大きくなったもんだ……」
エリスは感慨深そうに腕を組んで頷く、どうでも良いけどコンバットシャツのまま腕組まれると胸が強調されるんですけどね……
食堂前を歩くと、トイレの角に以前は無かった通路が追加されている。
そちらに行ってみると、右手には倉庫が、左手には前には無かったPX以外の店が増えている。
「あれ?PXか?ここは……」
「ん、ショップか。個人装具とかを取り扱うんだ」
「ふーん……入ってみても?」
「どうぞどうぞ……遠慮なく」
エリスと一緒にそのショップに入ると、隊員が品出しをしている。ここの運営を担当するのは基地業務群の中でも武器科の隊員達である。
「どうも、お邪魔するぞ」
「お疲れ様です」
武器科の隊員達は作業の手を止めてまで敬礼し、答礼を返すと再び作業を始める。
「おぉー……」
網棚のフックに掛かっているのは開封前のポーチやグローブなどのナイロン系や、フォアグリップやホルスターなどの精密機器ではないアクセサリーパーツである。
「LBTにCRYE、EAGLEにVTAC、High Speed GearやPARACLETE、TYR、ATS、esstac、Blue Force GearにMayflower RC……色々揃ってる」
特殊部隊御用達から、一般部隊向けまでのアパレルメーカーで作られているポーチなどが、天井近くまでたくさん並んでいる。
その場で試着して、使い勝手を見てみる事も出来る。今後銃器以外のポーチなどの相談は、俺の所では無く此処に来ることになるだろう。
フォアグリップもTangoDownにKnight's、MAGPULと品揃えがいい。
エリスはポーチの一つ一つを手に取ってゆっくり見て回る、他にも色々見たいポーチなどもあるみたいだ。
それに混ざって、GALAPANIAのスリングやシェルキャディなども置いてある、すごい品揃えだ。
反対の壁のショーケースに入っているのはスコープやダットサイト、ライトなどの精密機器だ。
LeupoldやVortexなどの狙撃用スコープや、M4やMINIMIに載せるTrijiconのACOGや、1.5倍と4倍で倍率の切り替えられるELCANのSPECTER DRなどのショートスコープも並ぶ。
ダットサイトはAimpointのCOMP M2やM3、小型改良の究極型であるT-1やT-2。SIGHTRON JAPANのMD-30Xなどのチューブタイプのダットサイトや、EOTechの551や552、553、EXPS-3などのホロサイトもショーケースに見える様に置かれている。
ライトも有名どころのSUREFIREはもちろん、俺も愛用しているInsightのM3Xなども販売されている。
これらは隊員が申請すれば経費で落ちる上に、自腹でも購入出来る。しかも購入金額は地球で買うのよりも90%ほど安い。
例えばACOGは実際は30万円近く、金貨30枚はするが、このショップでは金貨2枚、約2万円で買える。レプリカもびっくりだ。
「あ、これいいな……」
エリスが手に取ったのは、MAGPULのMOEストック、タンカラーだ。
「お、MOEストック……俺も買っておこう」
と言う訳で、MOEストックの黒とタンカラーを1つずつ経費で購入。経費だとカッコつかない?そう言うカッコつけは街に下りてからやるんだ。
新しいパーツを手に入れた俺達はPX側から別の通路に抜けると、右手はシャワールームとランドリールームになっている。
「こっちも広くなったな?」
「あぁ、シャワールームは80人が同時に使える。男子も女子もな」
男女別になっているシャワールームにはそれぞれ80のシャワーが用意されており、作戦や仕事の後の身体の汚れや汗を流すことが出来る。
ランドリールームも充実していて、ずらりと並ぶ洗濯機の数は100個近い洗濯機で隊員達がそれぞれ選択する事も出来る。
「作戦の後はどうしてもシャワー浴びたくなるからな……」
「分かる、汗でちょっと気持ち悪いよな……」
そんなことを話しながら歩くと、2つ目の出入り口が、そのすぐ近くに医務室がある。
医務室の担当は健吾と衛生兵、基地業務群衛生科の隊員達であり、召喚した兵士は現代技術で、異世界の現地民は治癒魔術によって怪我や病気の治療を行う。
医務室は外から直接負傷者を運び込める様に、出口近くにあり、担架が通れる様に開口部は大きく設けられている。
「医務室も大きくなってるな……」
「ベッドも8床に増えた。スペース的にはもっと増やせるけど、それはさらに基地が大きくなってからだな」
そう言いつつ右側の通路を見ると、別の棟に繋がる渡り廊下になっている。
向こうが新しく構成した"作戦棟"だ。
「あっちは?」
「作戦棟だ、各兵科の事務所とロッカー……作戦室と指揮所がある」
初めて設立した建物の為、そちらにも行って見る事に。
作戦棟はかなり大きく、バレーボールコート4面を有する体育館の2倍以上の大きさがある。
そんな作戦棟の1階は、男女に分かれたロッカールームになっている。
ロッカールームには管理棟よりも小さいがシャワールームもあり、男女でそれぞれ40のシャワーが備え付けられていた。
「あれ、ここにもシャワーが?」
「あぁ、ここがいっぱいになったら向こうに……って感じだな」
「なるほど、2箇所に分散する事で混雑を緩和してるのか……」
「一応その為に、ロッカールームも男女共に2つずつある」
「確かにそうすれば混まずに済みそうだ……」
もちろんロッカールームからは直接航空機格納庫や車両格納庫の待機場所に出られる様になっていて、ロッカー自体も少し大きくなっている為予備の着替えや弾薬、銃火器なども入れる事が出来る。
「この上は?」
「兵科事務室、行ってみるか?」
そう言うとエリスが頷いたので、階段を登って2階へ。
2階も管理棟の2階の様に兵科事務室があり、こちらは歩兵や機甲、砲兵、工兵、輸送などの部隊の事務所兼待機室がある。
その部屋のドアにその兵科の名前と兵科記号が記されているのが特徴だ。
「事務所と言うが、基本的には隊長室みたいなもんだ。小隊長や中隊長に用があったらココ、だな」
「ふむ……ヒロトはいつも通りか?」
「あぁ、俺は執務室だ」
ふーん、とエリスが相槌を打ちながら2階を歩いていると、見慣れない兵科記号がある。
長方形の中に丘の様な曲線がある記号のドアだ。
「ヒロト、この記号は?こんな部隊あったか……?」
「高射部隊、対空砲を装備して空からの敵を排除するんだ」
「翼竜とか?」
「そうそう、俺の世界だと攻撃して来たヘリに対して反撃したり」
「翼竜は戦場においても脅威だからな……私達歩兵では対処も出来ないし、そう言う部隊も必要だろう」
「これから設立予定だ、ぜひ活躍して欲しいね」
エリスと一緒にくすくす笑い会う。
因みに作戦棟の地下1階は武器科が管理する武器弾薬庫があり、地下2階にはCombat Operation Centerと呼ばれる戦闘指揮所がある。
COCと略されるこの部屋はモニターなどでその情報をここに集約し、それを元に本部隊が各部隊に指示を出す部屋だ。
そして地下3階には、500mのシューティングレンジがある。アサルトライフルのゼロインは基本的に300〜350m程で行われるが、より長いシューティングレンジを設けた事によりアサルトライフルのゼロインがよりやりやすくなった。
俺達は1階に戻り、車両格納庫の方へと向かう。
今まで中央通りの右手にずらりとHMMWVやランドローバーSOVなどの汎用車両が並んでいたが、今度は右手の航空機格納庫側に伸びる通路があり、その両側の屋根の下にHMMWVやランドローバーSOVが並んでいる。
1棟の車庫に対してHMMWVが4輌並んでおり、ランドローバーSOVなら6輌入る。
その格納庫群が中央通りに3つほど並んでおり、左手には宿舎が2棟に増えている。
その奥まで歩くと、兵科毎の格納庫がずらりと並んでいる。
中央通り左手には機甲と砲兵、その奥に輸送中隊。
左手には歩兵科の装輪装甲車と歩兵戦闘車の格納庫がある。
将来の部隊拡張を考えて、語り広めに格納庫のスペースを確保。砲兵は大隊以上、機甲は20輌以上の戦車を格納出来る様な広さを取った。
歩兵科もIFVである89式装甲戦闘車も20輌を格納出来るし、その状態でほぼ同じ数のピラーニャⅢを格納出来る様になっている。
つまり、格納庫はめちゃくちゃ広いのだ。
それだけガーディアンも組織として大きいものになったという事だ。
「……凄いな……」
「ガーディアンの戦力もデカくなったな……」
中に搬入される車輌群を見ながら、2人で格納庫の間の通路を歩いて航空機格納庫へ。
余談だが、航空機格納庫と作戦棟の間には、隊員の待機室があり、QRF……緊急対応部隊がそこへ待機し、即応体制を整える様になっている。
航空機格納庫を覗いてみると、着陸したヘリは各機、整備を受けて羽を休めていた。
軍拡に際し、ヘリ部隊も拡張した。
MV-22Bが更に3機増え、AH-64もE型改修され、2機増えた4機になっている。
AH-64Eの愛称は"ガーディアン・アパッチ"、アパッチの最新型である。
ガーディアンが"ガーディアン・アパッチ"を装備する、と言うのは、AH-64Dを召喚した当初からの目的だったのだ。
これで対地攻撃の戦力が更に増強され、地上部隊の空からの援護もより強化された。
加えてCH-47Fチヌークが4機に増え、新たにUH-60Mが装備された。
UH-60Mは、現在装備しているMH-60Mブラックホークの基本タイプであり、MH-60Mの様な特殊戦装備は無いが、兵員及び物資輸送や救難、など、陸軍の空中戦術の根幹を成すヘリコプターである。
これが新たに4機配備され、これでガーディアンの航空戦力は
UH-60Mブラックホーク×4
CH-47Fチヌーク×4
MV-22Bオスプレイ×4
AH-64Eガーディアン・アパッチ×4
OH-1ニンジャ×1
それに加えて第160NS特殊戦飛行隊と名付けたが、隊員達からの要望で名称を戻した第160特殊作戦航空連隊、通称"ナイトストーカーズ"の特殊戦ヘリが15機。
MH-60Mブラックホーク×5
MH-47Gチヌーク×2
MH-6Mリトルバード×4機
AH-6Mキラーエッグ×4機
航空戦力はかなり充実して来た、合計で32機である。
「これがヘリじゃなくて……ティルトローター機、だっけ?」
翼の畳まれたオスプレイを指差しながらエリスが歩き、俺が頷いて答える。
「そう、オスプレイはティルトローター機だ。ヘリと固定翼機のいいとこ取りをした航空機だな」
ティルトローター機とヘリの違いは、俺がオスプレイが配備される時に延々と説明したので、多分皆分かってる。なにしろレジュメまで配って説明したくらいだからな……
「……ガーディアンも大きくなったな……」
エリスが航空機格納庫を歩きながらしんみりと言う、その感じは俺も感じていた。
転生してからそろそろ1年、正直ここまで大きくなるとは思わなかった。
広大な航空機格納庫を歩きながら、エリスの手を繋ぐ。指を絡めた恋人繋ぎだ。
「……今でも時々、お父様やお母様に言わず勝手に出て来てよかったと思うんだが……間違いない。私は今、ヒロトと一緒にいられて幸せだ」
エリスはこちらを見上げて眩しい笑顔を向けてくる、頭を撫でると気持ち良さそうに目を細め、幸せそうに微笑む。
俺は宿舎にすぐ戻り、この幸せそうな笑顔を存分に頂くことにした。
……まだ昼間だけどな!