表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

104/215

第106話 vs転生者

俺が死んだのは強盗に入られたからだった。

恐竜が好きで化石収集をしており、家の半分を占拠する様な化石の量で一人暮らしの家に遊びに来た友人にも呆れられた程だ。


いつもの様に化石を磨いて少し席を外していたら、窓が割れる音がした。

不審に思って部屋を見に行ったら、泥棒が部屋を漁っていた。

これまでも何度か化石が盗まれそうになった事はあったものの何とかなったが、今回は違った。


泥棒の手には、バールが握られていたのだ。

流石に武器を持っていた相手には歯が立たず、横に振り回されたバールが側頭部を直撃、鋭利な先端が俺の腹へと振り下ろされた。

その後、強盗は俺の上に乗り、何度も何度もバールで俺の腹や胸を突いた。


痛みに悶えながら、俺は気を失った。


次に目が覚めたのはあの1LDKだった、そこで俺は神と出会う。50くらいのおっさんの容姿で、髭を蓄えた神っぽい神では無かった。


そこで告げられたのは、俺は地球では死んだという事。俺が生きていた世界で、俺が生きた証は消されている事。

そして1番衝撃的だったのは、俺がこれから異世界へ転生する、と言う事だ。


「転生するにあたって、1つ能力を授けようと思うんだけど……」


俺は咄嗟に口が動いていた。


「その異世界で最も強い生物は!?」


「ドラゴンや亜竜、翼竜の類だね」


「じゃあそれらを意のままに操る能力を下さい!」


「君ならそう言うと思ったよ、では君にはその能力をあげよう、それじゃ、頑張ってね」


そう言って俺はいつの間にか足元にぽっかり空いていた落とし穴に落とされた。


落ちる最中、翼竜(ワイバーン)に助けを求めて見た。

翼竜(ワイバーン)が落ちる俺を追ってくる、俺は強く心に願い、助けを求めた。

すると翼竜(ワイバーン)は目を赤く色を変え、ゆっくりと落ちる俺を背中に乗せ、そのまま飛び始めたのだ。


「……右……」


俺が右に行く様に支持すると、その通りに右に旋回し始める。

俺は、俺の能力に自信をつけ始めた。

その後は各地を旅して行った、どうやらこの世界はお決まりの様に中世風、もしくは古代ローマ風といったところか、そして当然の如く魔術が存在する世界なのが最も驚いた。


世界観の違い、そして文化の違いにもかなり戸惑いはあったが、それでもこの世界を知りたいと各地を旅した。


そして旅する内に疑問を抱く様になった、神はどうして俺をこの世界に送り込んだのか。


それを知る手がかりを見つけたのは、グライディア王国とレグランド帝国の国境。

その洞窟に居た、シェリスという銀髪のハイエルフと出会った。

このハイエルフは、今まで何人か俺達の様な"転生者"に会った事があるらしい。

俺の様な"地球で死んで、こちらに若返って生まれ変わった人間"に。


「貴方、どうやってこの世界へ?」


「……向こう(地球)で死んだら、神の部屋に居た、能力を貰ってから、こっちに落とされた」


俺は事実をそのままに話した。

彼女は驚いた様な表情を浮かべる、その顔は誰もが驚くほど美しかった。


「なるほど……貴方も"神に選ばれた"のですね……」


「神に?」


「この世界に来る時に、神の部屋へ呼ばれた、と言う事ですよ。貴方はこの世界を変える"神に選ばれし者達"の1人なのですよ」


……そう言う考え方をしたのは初めてだった。

神の存在を信じた事は無い、けど実際問題として神に会っている身だ。

これは"神に選ばれた"と言っても差し支え無いだろう。


「アヤト・クロカワ様、私達と共に、"神に選ばれし者"達と共に、世界を変えてはみませんか?」


「……具体的にどうやって?」


「世界は神に選ばれし者によって、平和に統治されるべき……私達は、そう考えて行動しております。まずは、そのベースとなる国造りから始めるのですわ」


シェリスから持ちかけられたのは詰まる所、世界征服だった。

普通に考えれば世界征服は悪役がやる事、普通なら断る事だろう。

しかし、俺は少し考えてしまった。


良いのだろうか、協力しても。

______良いんだ、異世界には俺を縛る法は無い。


しかし、そんな事をすれば後ろ指を指されて生きなければ。

______完璧にすれば、そんな奴は居なくなる。


やはり、世界を手に入れるとは容易では無い。

______だから努力するんだ、そうすればお前の好きな物は何でも手に入る。


許されるのだろうか、そんな事をして。

______成功すれば俺達が法、俺達が倫理観だ。


______前世で散々縛られたんだ、今世ではハッチャケても良いんじゃないか?


欲・倫理観・衝動。人間、心のどこに悪魔がいるかわからない。

どうやら俺はこの女と話しているこの短時間のうちに、その悪魔に取り憑かれてしまったらしい。


しかしこの悪魔も、計画が成功すれば天使に変わる。


「……分かった、協力しよう」


唸りまくって考えた末の結論をシェリスに言い渡す。

俺の目はどうやら、亜竜の様に赤くなっている様な気がした。



それから事が進むのは早かった。

シェリスが掲げる"国造り"、国防に必要な"軍隊"と、経済に必要な"金"、国民となる"人"を集める。

転生者のほとんどは"軍隊"を作るという仕事に従事していると言う、俺もその一端を担う事になった。


俺の能力によって振り分けられたのが、まずは竜の巣。

ドラゴンの派生である双頭の"ツインドラゴン"や翼竜(ワイバーン)の巣食う、籠の様な山地だった。


その場で経験値を積み、俺が次に踏み入れたのがこの"ラプトルの森"

俺が死ぬ前に憧れた恐竜の様な亜竜が生息する森だった。


様々な亜竜に俺の能力を試した。ゲオラプトルにトリケラトプスに似た"トライデント・ホーン"、そして最も恐れられていた"カノーネン・ディノザオリア"の2種。


例外があったものの、概ね俺の能力は通用した。

俺のラプトルの森での仕事は、この亜竜達を"神に選ばれし者"達の戦力とする事。


その為に、俺は亜竜達を操って、ラプトルの森全体をまずは手に入れようとした。

先住民を焼かせ、喰らわせ、多少手法は過激でもこの森を手に入れようとした。


手に入れようとしていたのに……!


===========================


「何故、お前らは俺の邪魔をするんだ!お前も"神に選ばれし者"の1人だろうが!!」


洞窟の入り口で、マントを羽織った敵の転生者が叫んでいる。

神に選ばれし者?俺は神に選ばれた自覚など無い。


健吾、孝道、ナツの3人と俺。俺の周りの転生者はこれだけだが、例外なくまずは"神の部屋"へと通されている。

だが少なくとも俺は、神に選ばれたとは思っていない。


「知るか、お前がラプトルの森に入って来なければ良かったんだよ。大人しく捕まれ」


「捕まりなどするものか!お前らの方がここで死ぬ番だ!」


洞窟遺跡の中からは、カノーネン・ディノザオリア______正確にはカノーネン・レックスとカノーネン・アンキールが1頭ずつ出てきた。

更にラプトルがそれを援護するかの様に、5頭が展開する。


まだ手札を出すか、こいつ。


お前に切れるカードは、それが最後だよ。


火炎弾(ブレス)には注意!各戸に攻撃!」


M4のセレクターをセミに入っているのを確認引き金に指を掛ける。

発砲しようとした瞬間、名前を呼ばれた。

周囲をキョロキョロと確認すると、俺達の後方からネルトラプトルに乗った人影が近付いてくる。


「……ゴードン!?」


村のラプトルマスターの1人、ゴードンが3頭のラプトルを引き連れて俺の前へ滑り込む。

俺は無線で全員に「撃ち方待て」と指示、一旦引き金から指を外す。


危うく撃ち殺す所だった、ゴードンがネルトラプトルから降りて俺に向き直る。


「最後に敵の姿を拝んでやろうと思って駆け付けた、外は亜竜の死体だらけだったけど、あれは全部ヒロトが?」


「全部俺が、じゃない。あっちの部隊がやった」


指差す方向には、岩陰に隠れる様に90式戦車と87式装甲戦闘車が展開していた。


「えげつないな、あそこまでやるとは……」


「奴を追い出す、それに必要な戦闘だ」


グォルルァァ


カノーネン・レックスが注目を集める様に吠える。ガーディアン全員とゴードン、そしてラプトルの視線がそちらに向いた。


「何だ森の亜人め、たかが3頭のラプトルでこの私が止められるとでも?もう遅い!この森は私の物、亜竜は私の軍隊なのだ!」


「……勝手な事を……!この森は俺達と亜竜の!共存の森だ!お前らの好きになんてさせるか!」


ゴードンは転生者に怒鳴り返し、ラプトルに伝わる様に"敵"を指した。

ゴードンのラプトルは吠え、転生者に向かって突進していく。


「異世界人如きが歯向かうなど!我ら神に選ばれし者!」


転生者はステッキを俺達に向けると、カノーネン・レックス、カノーネン・アンキール、ラプトル5頭が突っ込んでくる。


「作戦変更!ラプトルを援護する!」


俺は再びライフルを向け、全員に指示を出す。

各隊から了解が帰ってくる、戦闘開始。


敵のラプトルにACOGに乗ったRMRダットサイトで狙いを定め、引き金を絞る。


銃声が周囲の岩肌に反響する。発射薬(パウダー)は銃身内で弾丸に殺傷には十分な運動エネルギーを与え、銃口から飛び出す頃にはマッハ3程までに加速されていた。


4.54g(62グレイン)の弾丸はあっという間に距離を詰め、ラプトルの身体にめり込んだ。

中でタンブリングを起こし、体内を傷付ける。


それでも止まらないラプトルに対して2発、3発と撃ち込む。

M249を持つヒューバート達のSAWガナーはフルオートで制圧射撃、間違えてゴードンのラプトルを撃たない様に射線上には細心の注意を払っての射撃を行う。

敵のラプトル達は5.56mm弾の弾幕に身体をズタズタにされて地面を転がる。


ゴードンのラプトルを捕食しようとカノーネン・レックスが襲い掛かるが、それより早く89式装甲戦闘車の射撃がカノーネン・レックスを止めた。


HEDP弾丸は命中する度に小さな爆発を起こし、カノーネン・レックスを小さく傷付けていく。

重い音と共に89式装甲戦闘車は次々発砲、計4門の砲口が火を吹いていた。


2輌がAPDSに弾種を切り替え射撃を開始、徹甲弾の貫通原理を進化させたAPDSはカノーネン・レックスの皮膚に深く突き刺さり、致命弾を与えるには十分だった。


トドメとばかりに砲塔脇の79式対舟艇対戦車誘導弾が発射され、カノーネン・レックスの頭に命中、首から上が綺麗に吹き飛ばされた。


それでも迫るラプトルを止めようと、カノーネン・アンキールが立ち塞がる。

巨大なハンマーでラプトル達を横薙ぎにしようとしたが、それより先にカノーネン・アンキールの尾を"矢"が貫通した。

そう、タングステンで出来た矢は90式戦車の砲口からマッハ4という高初速で飛び出し、尾の中程を貫いで潰れ落ちる。


自慢の尾を傷付けられて怒ったのか濁った咆哮を上げて炎を吐こうとしたが、吐こうとして開けた口にJM33 APFSDSが飛び込んだ。


装弾筒(サボット)を3分割にして弾芯だけがカノーネン・アンキールの口内へ突き刺さり、喉から体内を蹂躙して反対側の鱗を貫通、串刺しにした。

その際、火炎弾を生成する器官を直撃し誘爆、カノーネン・アンキールを内部から自爆させた。


「くそっ!お前ら!神の選択に背くのか!」


流れ弾に被弾したのか、杖は折れて肩から血を流している転生者が叫ぶ。

神が俺を選んだから何だ、俺は"今"を生きていて、この依頼を完遂する為に此処にいる。


俺達の任務は、仲間の、人々の守護者となり、戦う事だ。

そして依頼は、ラプトルの森に紛れ込んだ、転生者の排除。

つまり、狙いは元からお前なんだよ!


赤い目をしたラプトルに向けて、M4の銃口を向けて引き金を何度も引く。


ラプトルの障害を俺達が排除し、竜人族の障害となる転生者へとラプトルが突進する。

遂に転生者は背を向けて洞窟の中へと逃げ出すが、ラプトルは当然の如く追い付いた。

そして守りの無くなった転生者の背中へ、ラプトルの鉤爪が突き立てられた。


「ぐっぁあぁぁああああ!!!!」


濁った悲鳴、俺が転生する時に刺された際も、こんな声をあげたんだっけ。


「やめろ、いだいっ!痛いぃっ!あっ!おい!う、腕は……!あ"あ"あ"あ"っ!!!」


ラプトルの1頭が転生者の手をもぎ取る。返せとばかりに転生者が視線を向けた時には既に手首から先は無くなりラプトルの胃袋の中だ。


ラプトルは鉤爪で皮膚を裂き、鋭い爪で噛み付いてどんどん血塗れにしていく。失った手首からはボタボタと血が滴り落ち、地面にシミを作る。


「た、助け……助げぇ"ぇ"ぇ"……!」


ラプトルが群れて転生者の肉を啄ばむ、が、その転生者の助けに応えるかのように瞳の紅いカノーネン・レックスが、洞窟の奥から現れた。


転生者に群がるラプトルは怯まず吠えるが、カノーネン・レックスもそれをかき消すように大きく吠える。


ラプトルが少しずつ後退り、転生者から離れて行った。


「た、助げ、だずげで……」


助けを求めて血塗れの身体を引き摺り、カノーネン・レックスに助けを求める転生者。


カノーネン・レックスはグロロ……と唸って答えたようにも見えた。

転生者は救われたと思ったのか、希望の光が見えたような表情を浮かべていた。


あのまま逃したらマズい、そう思ってM4を向け、引き金に指を掛ける。

ACOGのRMRで狙いを定め撃ち抜こうとしたその時、カノーネン・レックスの瞳の紅が消えて黒に変わる。


「え……?」


その声を発したのは俺やエリスではない、転生者だ。

瞳が黒に戻った、つまり洗脳の解けたカノーネン・レックスは、転生者の両脚に食らいついた。


「あ"あ"あ"あ"あ"!何で!?何でぇぇぇ!?」


転生者は更に濁った声を上げ、カノーネン・レックスは何度か噛み直して下半身を完全に咥え込む。


あのカノーネン・レックスは、自らを縛っていた転生者の呪縛から解放したのだ。もうあの転生者に操られる事も無い。


ブグォォォァァァァァ!!!!


咆哮を上げながらカノーネン・レックスに近づくのは、異世界製スピノサウルスである"スパイナス・ディノス"である。


カノーネン・レックスはスパイナス・ディノスの方へ、転生者を咥えたまま振り向く。


「あ"あ"あ"あ"っ、えっ、嘘だろ、おい、止めろ、止めろ止めろ止めろ止め______あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!」


差し出されたような状態になっていた転生者の上半身に、今度はスパイナス・ディノスがバックリと噛み付いた。


2頭が転生者の身体を奪い合って引っ張り合い、その度にスパイナス・ディノスの口の中でも濁った声を上げる。


やがて、それぞれ逆側に首を振った。


ボチン!


鈍い音を立てて、腰か腹辺りから転生者の身体が真っ二つにされた。

ラプトルの森を蹂躙していた男の最期は、自らが操っていた亜竜に食われるというものであっけなく幕を閉じた。


===========================


「……死んだな……」


「あぁ」


撃破確認するまでもない、と言うかそこまでして撃破確認したくない死に方をした。あれは間違いなく死んだだろう、むしろあれで死ななかったら人間じゃないと思う。


スパイナス・ディノスとカノーネン・レックスは分け合った人肉を咀嚼しながら、残り物には興味が無いという風な態度でその場を去っていった。


「……助かったな……」


「あぁ、危なかっな……」


周辺の全ての亜竜が野生に帰り、立ち去ったのを確認。上空を飛ぶ観測ヘリOH-1も周辺に反応は無いと言う。


俺達はそのまま調査の為、転生者の拠点となっていた洞窟へと足を踏み入れた。


洞窟の中は相変わらず暗い、ライトが必要なくらいだった。

ライフルのライトとヘルメットの側頭部に付けたライトを点灯させ、600lmの光が洞窟内部を照らす。

しかし、洞窟の中を照らすのはLEDの人工的な光だけでは無い。


壁の一定の位置と距離に埋め込まれている光る魔石がある為、洞窟の中は真っ暗と言う訳では無く薄暗い感じではあった。


ただ、やはり魔石の光だけでは不十分。


「おっと……」


エリスが声を上げる、何かに躓いて転びそうになった様だ。


「大丈夫か?」


「あぁ、皆、足元の石の隙間には気を付けろ」


「了解」


「了解」


トレッキングシューズのソールが床の石を踏みしめ捉えるのを感じ取る、ゆっくりだが、最奥地へと進んで行く。


ブラックバーンとクレイが持っている50口径用の弾薬箱がカチャカチャと音を立てる。


やがて進むと、広間に出た。

とても広く、後ろには人が通れそうな大きさの通路。俺達が前に来たのはそこだろう。


ここであの転生者が生活をしていたのだろう、片付けられていない食器などもあり、食事の後や書類などの痕跡が見られる。


「書類は全部持ち帰る、その後でここを爆破、離脱しよう」


「了解」


洞窟に潜入している第1分隊各員が返答し、情報収集という名の廃墟漁りを始める。


書類にはやはりあの転生者が言っていた様な"神に選ばれし者"と言う組織についてが書かれていた。

流し読みしながら書類をまとめ、ダンプポーチに入れられるだけ入れて入らない分はそのまま持つ。


と、食器棚の近くに透明なケースを見つけた。

ガラスで出来たそれの中に入っていたのは、ラグビーボールの様な形をした掌より少し大きめの物。


「エリス」


俺はエリスを呼ぶ、異世界の知識は俺より間違いなくエリスの方が豊富だ。

エリスは書類を抱えたまま駆け寄る、両手で胸の前で書類を抱える姿が可愛いが今はそんな事を考えている暇は無い。


「どうした?」


「これって……」


それを見せたエリスは一瞬固まった、俺も推測だが、見た目から判断は出来る。


「……あぁ、ラプトルの卵だ」


ガラスのケースの中にあったのは、ラプトルの卵。

恐らくゲオラプトルの卵だろう、そんな物体がケースの中に2つ入っていた。


「攫ってきたか、それとも産ませたか……」


「どちらにせよ、それだけの頭は奴にはあったって事だ」


ラプトルは孵化してから成体になるまで数ヶ月、戦力化するまでの時間が短い為、こうして繁殖させてラプトルの数を増やしていたのだろう。


「これはここには置いていけないな……」


もちろん卵も回収、俺は皆を見渡す。


「皆どうだ?終わったか?」


「こっちOKです」


「こっちも大丈夫です、行けます」


「よし、仕掛けるぞ!」


「了解」


「了解」


ブラックバーンとクレイが弾薬箱を開けて中身を取り出す。

中はあったのは、C4爆薬が目一杯詰まっていた。

それを壁や重要な部分に貼り付け、ケーブルをセット。コードリールに繋ぐ。


「セット完了」


「こっちも完了だ」


「隊長、全部終わりました」


「了解、総員退避、総員退避!」


全てのC4爆薬を重要部分にセット、コードリールは十分にある。

俺は書類とラプトルの卵を持ち、分隊全員で走って広間を出た。


コードリールを引っ張りながら無事に外まで出ると、起爆用ガジェットにケーブルを繋ぎ、エリスに渡す。

起爆役はエリスだ。


「起爆用意」


「起爆用意」


洞窟の出口、死角になるところに全員退避する。

全員の退避が確認してから、エリスは起爆用ガジェットの安全ピンを抜く。


「起爆」


「起爆」


エリスが復唱、ガジェットのスイッチを捻った。

カチリと音が響き、一瞬の沈黙の後、トンネルの中からゴォン!という轟音と共にブワッと風が出て来た。

爆破は成功、ラプトルの森から転生者を完全に排除した瞬間だった。


俺はその中で1人、持ち出したラプトルの卵に視線を落としていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ